社内でうまくデジタル トランスフォーメーション (DX) が進まない場合に利用できる外部サービス紹介
2022 年 7 月 18 日
DX を推進する必要性は重々承知していても、社内リソースが不足しているために取り組めないという企業は多くあるのは事実です。案外知られていないのが、DX を推進するために活用できる外部サービスがあるということ。本記事では、どのようなサービスがあり、どのように活用すべきなのか。ヒントになるような情報をお伝えしたいと思います。
1. DX の基礎知識
1-1. "変革" を意味する DX
急激に DX 熱が高まっています。DX は「デジタル トランスフォーメーション」の略語で、2004 年にスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマン氏が提唱した概念。「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」ことを意味していますが、「デジタル トランスフォーメーション = Digital Transformation」の直訳である「デジタル変換」というよりはむしろ、デジタルによってビジネス モデルや社会構造そのものを "変革" するという意味合いで使用される言葉になっています。
それは、日本の DX の遅れに危惧を抱く経済産業省が発表したガイドラインにも記された表現です。そこには「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネス モデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、業務プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とあります。まさにガイドラインにあるように「ビジネス モデルを変革」し、「業務、組織、プロセス、企業文化・風土を変革することで、競争優位性を確立」しなくては、企業は間違いなく、近い将来、立ちいかなくなってしまう、そんな警告を発しているのです。
1-2. DX を進める重要性
誰もが実感しているように、テクノロジーを抜きにしては、現在のビジネスは成立しません。それどころか、ますます変化していく市場や顧客のニーズに応えていくためにはテクノロジーの活用は必要不可欠です。さらに働き方改革とコロナ禍という流れの中で、リモート ワークは必須の仕組みとなりました。これもテクノロジー抜きでは導入できないものです。さらにいえば、テクノロジーの進化は留まることはありません。さらに加速するものと考えられます。
ビジネス感度の高いアメリカなどの DX 先進国は、このテクノロジーの進化を先取りし、どんどん新しいビジネス モデルを仕掛けてくるでしょう。DX に乗り遅れている日本の企業は、その気運にすら乗ることはできません。このグローバルな時代、国際的な競争力を強化していくためには、まさに DX の推進は必須といえます。
2. DX が進まない原因とは?
どうして日本企業においては、思うように DX が進まないのでしょうか。その要因を考えてみたいと思います。
2-1. DX が進まない 4 つの理由
2020 年に、一般社団法人日本能率協会が実施した「DX の取り組み状況」の調査によると、全国主要企業約 530 社中、5 割を超える企業が DX 推進、もしくは検討に着手済みと回答しています。ところが、中小企業に限定すると 34.9% と低く、企業規模によってばらつきがあることがわかります。どうして、中小企業では DX が進まないのでしょうか。その要因は「問題意識の低さ」「DX 推進の責任者の不在」「社内浸透が困難」「I T 部門のリソース、すなわちエンジニア不足」があげられます。
2-2. もっとも重大な阻害要因は「上層部の認識不足」
上層部の認識不足による問題意識の低さは、もっとも大きな障害となります。一般社団法人日本ビジネスプロセス・マネジメント協会の「業務改革実態調査」によると、DX への取り組みについて、29.4% の企業が「経営会議など、上層部での重要な経営課題だと認識している」と回答。20.6% が「話題にはのぼっているが、具体的な取り組みや検討は行っていない」、12.7% が「必要性は感じるが、今のところ話題にのぼることはない」と回答しています。もちろん、認識はしていても、行動に出ない経営者もいます。本来であれば DX 化の旗振り役であるべき経営陣が、意識しないのであれば、DX の検討すら始まりません。しかも "DXの必要性を感じてはいても、具体的な取り組みを進めることができない" という経営者ならまだしも、"DX を進める必要などない" と言い切る経営者がいる会社は問題です。DX、デジタル化を進めなくても日常業務が遂行できてしまうため、優先度が低くなってしまうのでしょうけれども、実は多くの従業員がデジタル化の恩恵を受けることなく、不便を感じているかもしれません。そういった会社は今後、離職率も高くなり、一方で採用ができなくなる恐れもあります。
2-3. DX 推進の責任者の不在
DX 推進の "責任者の不在" も DX を進める上での大きな阻害要因となります。DX は経営者ひとりの力で進められるものではありません。基本的にはテクノロジーに知見のある幹部を中心に事業部門、I T 部門などから招集する複合的なチームで臨むのが理想ではありますが、その部門の垣根を越えたリーダーの存在は重要です。
日本能率協会の調査によると、企業内に DX の担当役員と推進担当部署が設置されていると回答したのは全体の 4 割程度。さらに専任となると、かなり低い割合を示し、専任の DX 担当役員がいるのが 7.9% で、兼務の 32.1% を合計して 4 割に留まっています。DX 推進専任の部署があると回答したのは 24.3% で、兼務で担当する部署の 24.3% を足しても 4 割に留まります。
専門のチームが存在しなければ、当然、DX が進むわけはありません。単なるスローガンに終わるのが関の山です。また専門チームがあっても、それをリードするリーダーがいなければそのチームは機能しません。旗振り役は、チームはもちろん、会社全体を引っ張りながら DX という目標に向かうことができる、そんな立場と力のあるリーダーを据えたいものです。
2-4. 社内調整、浸透が困難
DX 化を進めるためには、推進担当ひとりの力だけではどうにもなりませんし、旗振り役の役員だけがやる気になっても前には進みません。I T 部門はもちろん、各事業部門も巻き込む必要がありますが、様々な立場、ミッションを持つ関係者をひとつの方向に向かってまとめるのは、それほど簡単なことではありません。DX を進めるためには I T インフラの刷新や、各部門で運用管理している情報システムの一元化が必要です。場合によっては従来の業務フローをすべて見直す必要性も生じます。プロジェクトの規模が大きくなり関係者が増えていくと、中には DX 化に否定的な人も出てきます。前に進めるためには、そういった反対勢力を説得したり、根回しをする必要があります。社内調整の煩雑さが DX の推進を阻む可能性があります。
2-5. I T 人材の不足
I T 人材の不足も、DX を進める上での大きな阻害要因になっています。総務省が 2021 年 7 月 30 日に公表した「令和 3 年版情報通信白書」では、DX を推進する上でのデジタル人材不足の深刻化を指摘。「人材不足」を感じる日本企業は 5 割を超え、アメリカをはじめとする諸外国と比べて突出して高い数値になっていることが示されました。
経済産業省が公開する『DX レポート ~ I T システム「2025 年の崖」克服と DX の本格的な展開~』というタイトルのレポートの中で、多くの企業がレガシー システムを抱え、システムの保守運用に人材とコストがとられていると指摘。人材不足による DX の遅れにより、2025 年には最大で年間 12 兆円の経済損失が発生する可能性があると予測しています。
2019 年に発行された独立行政法人情報処理推進機構 (IPA) 社会基盤センターの I T 人材白書によると、I T 企業における I T 人材不足は、2016 年の 75.5% から 2018 年の 92% へと上昇を続けています。AI や IoT、インターネットを介したサービスの拡大に伴い、I T ビジネスの市場は急激に拡大を続けています。当然、それらの技術やサービスを支えるエンジニア不足も加速し、各企業が優秀な人材確保にやっきになっています。
3. リソース不足の際に活用すべき外部サービスとは?
どのようにして、リソース不足をカバーすべきか。もちろん採用や育成をこつこつ進めていくしかないのですが、このままではあっという間に時代の変化に取り残される可能性もあります。そんな時に活用したいのが、DX 推進をサポートする外部サービスです。
3-1. DX コンサルティングとは?
DX 推進をサポートする外部サービスの代表例が「DX コンサルティング」でしょう。DX を進めるに当たって、「何をどう進めて良いのかがわからない」という企業に対して、初期段階から寄り添いサポートをしてくれるサービスです。主に DX 推進に関する課題の抽出から、課題解決策の提案。実行する際も企業に入り込んで指揮をします。先に説明した、DX 推進の責任者のような立ち位置で進めていきますが、もちろん企業側の DX 責任者の存在も必要で、コンサルタントは企業側の責任者と密に打ち合わせをしながら、時にはアドバイザーとして、時には実行者として動いてくれる、大変頼りになる存在です。外部の DX コンサルタントを採用することで、自社の人材だけでは難しい DX 課題を解決しながら、DX 推進を加速させることが期待できます。
3-2. DX コンサルタントの役割
一般的には、「DX への取り組み方がわからない」「社内の開発リソースが不足している」「デジタル人材がいない、不足している」「システムの実装に難航している」などのケースにおいて、DX コンサルタントを登用することが多くあるようです。DX コンサルタントは、具体的には、以下のような役割を担っています。まずは DX課題の定義です。まずは企業の現状を把握し、理想の姿とのギャップを明らかにしたうえで、何が不足しているのか、何が問題なのかを定義します。まずは経営層と DX の理想のカタチを決め、その上で関係各所へのヒアリングを実施。より具体的に、リアルな実情を把握することがポイントになります。課題が浮き彫りになった時点で、実際に DX 課題の解決策の策定に入ります。コンサルタント本人、もしくは専門化の知見や経験をもとに、課題を解決するための手段を考え、企業の実情に合わせた形で提案します。前段階のヒアリングの段階で、しっかり現場の声を受け止めていれば、単なる絵に描いた餅ではなく、実行可能で、なおかつ効果も期待できるプランを提供できるはずです。
3-3. 実行から定着まで
プランができあがったら実行に移します。もちろん、当初のプラン通り、必ずしも順調に進むわけではありません。なのでプランを提出するところで役割が終わるというコンサルタントを登用するのは得策とはいえません。きちんと寄り添いながら、プランの進行を見守り、うまくいかない場合に都度、軌道修正をしてくれるコンサルタントとの契約が望ましいです。定期的にミーティングを行い、課題はすぐに解決する必要があります。つまずきを放っておくと、取り返しがつかなくなる場合もあるので注意が必要です。
さらに DX の定着まで寄り添ってもらうのが理想です。一度形ができあがっても、全従業員に浸透するまでには時間を要します。時にはトレーニングも必要になるので、きちんと定着するまで見守ってくれるコンサルタントが望ましいです。このように DX コンサルタントとの付き合いは長期に渡ります。企業との相性もあるので、登用前にしっかり見極める必要があります。
3-4. DX コンサルティング登用のメリット
外部の DX コンサルティングを採用するメリットについてまとめます。まずは、第三者の目線が入ることで、経営者や社員が普段気づかない課題を指摘してもらえます。あまり I T に対する知見がない企業であれば、テクノロジー目線で他企業からどの程度遅れているのか、一般的な企業と比較して何が不足しているのか、物差しのような目線で現状を伝えてくれるはずです。そのため、登用の際には同じような規模、業種でのコンサルティング経験があるのかどうかは事前に確認、採用の基準とした方が良いかもしれません。
また、同様に外部からスキル・ノウハウを取り入れられるメリットがあります。どんなに自社で頑張って勉強しても得られない知見を持っているコンサルタントであれば、思いもよらないプランを提案してくれます。これまで放置していた積年の課題を DX によって解決するチャンスともいえます。また、外部の人間が入れば、社員の意識も高まり、一丸となって DX に取り組む空気が社内に生まれるはずです。そして、きちんとコンサルタントが道筋を示せば、無駄なく効率よく、最短距離で目標にたどり着くことができます。人手や時間を考えると、外部コンサルタントにお願いしたほうが、コストが収まる場合もあります。一度、試算をしてみるのもお勧めです。
3-5. DX コンサルティングに依頼するうえでの注意点
DX コンサルティングに依頼するにあたり、いくつかの注意点があります。もっとも注意すべきは、何でもコンサルタント任せにしないことです。自分たち会社の DX 化を進めるのですから、基本的には自分たちの意志を持って進めるというスタンスでいるべきです。コンサルタントはあくまで、サポート役や知恵袋です。もちろんコンサルタントを信頼するのも重要ですが、出てきた提案やアイデアも鵜呑みにはせず、きちんと検証して採用してください。その会社の本質を理解しているのは社長であり、マネージャーです。自分たちもしっかり勉強して、提案内容を正しく理解しジャッジするよう心がけてください。
また費用が高額化しないように注意する必要があります。特に高額ツールやソリューションを採用すれば、何となく手品のように業務効率がアップするように感じるかもしれませんが、費用対効果を見極める必要があります。もちろん、信頼できるコンサルタントであれば、過度な投資を勧めることはないかもしれませんが、今現在、投資すべきもの、先々で投資すればよいものを明確に把握し、自社の状況に合わせたスペックのものに投資するよう心がけてください。
3-6. SIer と呼ばれる I T ベンダー
もちろん、SIer と呼ばれる I T ベンダーをパートナーとして選択するケースもあります。特に、現行のシステム構築や運用で付き合いのある会社にそのまま依頼すれば、すでに現状把握ができているので、すばやく DX 化推進プロジェクトが立ち上がるかもしれません。ただ、ひとつ懸念があるのは、既存ベンダーは企業と同じように課題が見えていない可能性もあります。またオンプレに強く、クラウド化に対する知見が薄い可能性があるので見極めが必要です。そもそも、そのベンダー自体、DX が進んでいるのか、チェックしてみると良いでしょう。
4. 最適な DX パートナーとは?
DX 推進に向け、大きなポイントとなるのが外部パートナーとの連携であることはわかりました。現在は、多くの I T 企業やコンサルティング企業が様々なサービスを提供しています。一体、どのような基準でパートナーを選定すれば良いのでしょうか。
4-1. DX パートナーとして求めるもの
日経 BP 総合研究所イノベーション ICT ラボが 2020 年に実施した「デジタル化実態調査」によると、DX パートナーを選定するうえで重視する項目として、「コンサルタント/技術者のスキル」「サービス料金の妥当性」「デジタル化戦略の立案能力」があげられていました。特に「コンサルタント/技術者のスキル」は「非常に重視する」の割合が 40.5%、「やや重視する」35.0% で、合計すると 75.5% に達しました。ところが会社名だけでは相手先のスキルを見極められないという声もありました。そういった意味でも、コンサルタントや I T ベンダーに対して、事例の提供を求める声が多くありました。
4-2. 日本マイクロソフトの取り組み
日本マイクロソフトは、「市場・お客様のデジタル トランスフォーメーション (DX)」に注力。クライアントの変革を支援しています。特に中小企業に対し、「ハイブリッド ワークの推進」「ビジネス プロセスのデジタル化」「スタートアップ企業と連携したインダストリー DX」といった 3 領域における支援、コンサルティングを行っています。
ハイブリッド ワークにおいて重要視すべきは、適正な文書管理です。企業にとって重要なノウハウやナレッジは、文書によって蓄積されますし、いつでも、どこからでも文書が共有される体制の構築が必須となります。社内文書の管理に必須となるグループウエアの代表格として認識されるのが「Microsoft 365」です。
「Microsoft 365」には、実に様々なアプリが用意されていますが、文書管理についても OneDrive、Teams、SharePoint といった 3 つのアプリを活用することができます。OneDrive はマイクロソフト社のクラウド ストレージ サービスで、Office ファイルをはじめ、画像や動画など、あらゆるデータを保存できる場所として認識されています。もちろん、他のユーザーとデータの共有や共同編集もできます。Teams は、特定のメンバーでのコミュニケーションやファイル共有、オンライン会議ができるアプリ、SharePoint は、限られたメンバーだけがアクセスできる企業内ポータル サイトなどを作成するアプリ。そこでさまざまな情報やデータを共有・一元管理することができます。
また新しい働き方が急速に普及するにつれ、以前よりも強く求められるようになったのがセキュリティ対策です。最新のセキュリティ対策として注目を集めているのが「ゼロ トラスト」という概念です。社内も社外も "何も信頼しない" を前提に対策を講じるセキュリティの考え方ですが、Microsoft 365 を採用することによって、企業はゼロ トラストを実現することができます。
さらに、Microsoft 365 に搭載されている Power Apps でアプリ、Power Automate でワークフローを、それぞれ簡単に作成することも可能。自分たちが本当に必要とし、使いやすい機能をスピーディに追加することで、自社の実情に合った DX を推進することができます。
DX の推進には、クラウド シフトも不可欠です。日本マイクロソフトでは、全国の中小企業に対し、「Microsoft 365」を中心としたクラウド活用による DX 推進を支援。キャンペーンやウェビナー、クラウド サービスの導入・活用の支援活動に注力。相談窓口を設置し、リモート ワークやハイブリッド ワークの導入方法、各種アプリのデモンストレーションなどを案内。中小企業に寄り添いながら、DX 推進を支援しています。
リモートワーク・ハイブリッドワークに適した環境設置のために
リモートワーク・テレワーク・在宅勤務環境を安全・快適に実現するためには、「セキュリティの確保」「Web 会議のためのデバイス選択」「グループワークのためのアプリケーション」など検討する課題も多く、またこれらを潤沢な資金で準備するのではなくコスト削減につなげることが大切です。
これらの達成のための Microsoft 365、Excel の使い方や、リモートワーク・ハイブリッドワーク環境を充実させるために以下の記事が参考になります。
- Microsoft 365・Excel: Microsoft 365 から、Excel の使い方など生産性を向上させるコラム
- Teams・Web 会議: Microsoft Teams を始め、Web 会議をワンランクアップさせるコラム
- リモートワーク・テレワーク: リモートワークやテレワークなど、新しい働き方のお役立ちコラム
自社に最適なリモート ワークの導入・運用方法とは? おすすめのガイドブック
中堅・中小企業のリモートワーク成功ガイド
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