1. 情報漏洩の実情
実際に、どのような会社で、どのような情報漏洩事件が発生しているのでしょうか。まずは、情報漏洩の実情から押さえておきたいと思います。
1-1. 後を絶たない情報漏洩事件
近年、情報漏洩に関する事件がニュースを騒がせています。顧客情報や会員情報、中には銀行口座や資産情報など、重要な個人情報が漏洩するケースも見られます。顧客情報がライバル会社に流れる、などはまだ可愛いもので、これらの個人データが、いわゆるブラック マーケットにおいて高値で取引されることもあります。これらの個人情報が悪意ある第三者に渡り、悪用される可能性がある以上、これらの情報漏洩事件がなくなることはありません。
1-2. による情報漏洩
東京商工リサーチが 2021 年 1 月に発表した調査によると、2020 年度に発生した上場企業とその子会社における情報漏洩の事故件数は実に 103 件にも上ります。これは 2013 年の 107 件に次ぐ 2 番目の水準となっており、事故によって漏洩した個人情報は実に 2500 万件以上にも上ることがわかります。
情報漏洩の原因として最も多かったのは「ウィルス感染・不正アクセス」で 49.5%、次いで「誤表示・誤送信」が 31.0% となっています。昨今のビジネスにおいて、必要不可欠な存在となっているメールですが、実は宛先間違いをはじめ、このように単純なヒューマン エラーによって重大な情報漏えい事故が生じているということがわかります。
1-3. 増加傾向にあるメール誤送信
メール誤送信は今に始まった問題ではありません。あるリサーチ会社が 2019 年に企業を対象に行った意識調査では、メールを誤送信したことがあると回答した人が 6 割以上という結果が。しかも送った本人が誤送信に気付くケースは 7 割、残りの 3 割は送り先の指摘で発覚したという回答でした。
最新の調査結果を見ても、その誤送信の状況に大きな変化は見られません。一般財団法人日本情報経済社会推進協会が 2021 年 10 月に公開したプライバシー マーク取得企業を対象とした情報漏洩事故統計を見ても、情報漏洩事故の発生原因の 1 位は「誤送付」で約 60%、そのうちの 30% は「メールの誤送信」だったといいます。メール誤送信による情報漏洩は減ることはなく、むしろ増加傾向にあると発表しています。
1-4. コロナ禍とメール誤送信多発の関係
ここまでメール誤送信が増えてしまった要因として考えられるのが、コロナ禍により急速に普及しているテレワークの影響です。在宅勤務はオンオフの切り替えが難しいことから、業務への集中力が失われ、メールを誤送信するなどのミスを引き起こしやすいと考えられています。システム上の問題ではなく、こういった個人のミスによって情報漏洩という重大なインシデントが引き起こされるというのは、意外にもセキュリティ対策の盲点になっているのは確かです。