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2023/10/13

INPEX が AVEVA PI System を Azure 基盤に移行。データ分析力強化によって持続可能なエネルギー開発を推進していく

エネルギー産業の持続可能な未来を追求する INPEX は、同社が利用する IoT データ管理ソフトウェア「AVEVATM PI SystemTM」の基盤をオンプレミス サーバーから Microsoft Azure へと移行しました。IoT プラットフォームのクラウド化は、同社のシステム運用を効率化するだけではなく、Microsoft 365 E5 との連携によるデータの可視化やビジネス インサイトの獲得、アプリの内製開発など、さまざまな可能性をもたらしています。デジタル変革戦略を推進するための Azure 移行事例をご紹介しましょう。

INPEX CORPORATION

国内最大のエネルギー開発企業が直面したシステム運用の課題

日本最大級の総合エネルギー開発企業、株式会社INPEX。世界約 20か国で石油、天然ガス、再生可能エネルギーの探鉱や開発、生産、販売を行うほか、クリーンエネルギーの取組みを展開しています。

INPEX はエネルギーの安定供給とエネルギー トランジションを両輪で推進し、気候変動をはじめとしたサステナビリティの課題に取り組むとして重点テーマを定めました。目標達成に向けて、水素や再生可能エネルギーといったクリーン エネルギーの安定供給や、CO2 貯留技術の開発、石油や天然ガス事業の効率化・クリーン化が進められています。

さまざまなエネルギーを合理的に扱うには、デジタル技術の応用が不可欠です。業務のデジタル化においても、INPEX は業界に先駆けてきました。

同社では Office アプリや Microsoft Teams などのコミュニケーション ツール、豊富なセキュリティ機能を備えたマイクロソフトのクラウド サービス Microsoft 365 を、コロナ禍以前から導入しています。デジタル人材の育成にも力を入れており、本社社員の 10 人に 1 人が Microsoft Power Platform を使って業務フローの改善に取り組んでおります。

同社のプラントやパイプライン、LNG 基地についても、2014 年より、AVEVA PI System を使ったデータの収集と分析がおこなわれてきました。 AVEVA PI System とは、現場から本社まで企業内のあらゆるユーザーにリアルタイム オペレーション データを提供するデータ管理インフラです。企業内でデータの利活用推進することでユーザー間の連携およびコラボレーションを促進し、包括的なオペレーションの最適化を支援します。 操業現場で設備機器が問題なく稼働しているかどうかを、また本社で中長期的な生産量の進捗を、それぞれダッシュボードから確認することができます。AVEVA PI system は電力や石油化学、製造業を中心に、世界中のさまざまな設備やセンサーのデータを収集、活用するプラットフォームとして幅広く利用されています。

オンプレミス基盤での AVEVA PI System 運用には一つの課題があったと、株式会社INPEX 資材・情報システム本部 情報システムユニット デジタル企画グループ 川村浩平氏は振り返ります。

「国内の AVEVA PI System は新潟のオンプレミス サーバーで運用していたため、重大な問題が起きた場合、300 km 離れた現場に駆けつけなければならないというリスクを抱えていたのです。ハードウェアと OS の保守が 2021 年末で終了することもあり、改めて基盤を検討した結果、クラウドへの移行を決断したのです」(川村氏)

AVEVA PI System の移行基盤として INPEX が選定したのは Azure でした。

安定性とセキュリティ、周辺業務との親和性から、新たな基盤に Azure を選択

以前から INPEX は、既存システムの基盤を Azure に移行するクラウド シフトを進めてきました。そのため、AVEVA PI System の移行に際しても、Azure が第一候補だったと川村氏は言います。

「システムの安定稼働を考えた際、『障害の少なさ』は非常に重要なポイントですが、Azure は安定して利用することができているという実績もあり、当初から第一候補として考えていました。また、他の業務にもマイクロソフト製品を使っていたので、親和性の高さも決め手の一つでした」(川村氏)

サイバー攻撃のニュースが目に付くようになった昨今、エネルギー インフラの担い手として、INPEX には高いセキュリティ要件が存在します。「クラウド セキュリティの勘所」を押さえた上で、移行は進められていきました。

「デフォルトではインターネットを使う設定になっていますから、閉域網の Azure ExpressRoute に切り替えることがまず前提です。また、Azure のさまざまな機能のうち、どこまでが社内ネットワークで、どこからがインターネットなのかを把握しておかねばなりません。幸い、INPEX のセキュリティ部門は既に Azure 利用のノウハウを有していましたし、移行を担当してもらった三井情報に詳しく主導してもらったこともあり、不安無く進めることができました」(川村氏)

AVEVA PI System の基盤移行を担当した、三井情報株式会社 DX・CX技術本部 DX技術部 シニアエンジニア 佐々木章好氏は、基盤としての Azure を次のように評価します。

「操業データは非常に重要であり、アクセスを厳格に統制されているお客様が多くいらっしゃいます。その点、Azure は高度なセキュリティ ガバナンス機能が用意されているため、その信頼性の高さから、重要なシステムの基盤として広く利用されています」(佐々木氏)

さらに現在の INPEX にとって Azure の利用は欠かせないと、川村氏は続けます。

「今は石油や天然ガスだけではなく、さまざまなエネルギーの安定供給や技術開発にチャレンジしていく必要があります。その際、オンプレミスではプロジェクトに見合ったサイズのサーバーを調達するところから検討しなければなりませんが、Azure はサイジングが容易で、従量課金制で利用することができます。新たな価値を創りあげていく上で、無くてはならない基盤です」(川村氏)

2022 年 1 月 8 日、AVEVA PI Systemの中核部分を、新潟のオンプレミスサーバーからAzureへ移行しました。計画通りに進んだこのプロジェクトにおいて、二通りの移行方法を提案したと、三井情報株式会社 DX・CX技術本部 DX技術部 第一技術室 平野悠介氏は説明します。

「システムを止める場合と止めない場合のそれぞれを提示し、前者をご判断頂きました。まったく止めずに移行することも可能でしたが、サーバーに過負荷がかかり、最悪の場合、長時間止まってしまうリスクがあります。こうしたリスクヘッジと、数か月前からリハーサルを実施する綿密なスケジュール調整によって、スムーズに移行を完了することができました」(平野氏)

操業現場とのスケジュール調整には苦労もあったと、川村氏は当時を振り返ります。

「システムを 8 時間停止するというデータ取得の空白を鑑みて、LNG 船の入港がないタイミングに移行を計画していたのですが、船の運航は気象条件に大きく左右されます。スケジュールの組み替えには現場との密な調整が必要でした。とはいえ、最初から『止めて移行する』ことを決め、リハーサルで段取りを綿密に確認できたことで、無事にシステム移行を成功させることができました」(川村氏)

Azure 移行がもたらす時間の効率化とデータ活用の拡大

AVEVA PI System の Azure 移行は、INPEX にとってどのようなビジネス的価値をもたらしたのでしょうか? この問いに対し、川村氏は「IT 担当者が高度な分析に時間を割けるようになった」と答えます。

「5 年という期間で考えた時、総費用だけで見ればクラウドもオンプレミスもほとんど変わりません。しかし、サーバーのメンテナンスやリプレイス作業がまるごと無くなったことには、大きな価値があります。IT 担当者が、データの可視化や利用、分析のために時間を割けるようになったのです。さらにユーザー視点で見た場合は、メンテナンスが無くなることで、実利用時間が長くなるというメリットももたらせています」(川村氏)

Azure というクラウド基盤の利用によって AVEVA PI System の利用は更に広がりました。INPEX では現在、AVEVA PI System から抽出したデータを元に「機械学習による発電所ガスタービンのトラブル兆候」「熱交換器のメンテナンス基準」などの分析が、IT 担当者とデータ サイエンティストの連携によって進められています。

Azure と AVEVA PI System の連携が後押しする INPEX の DX 戦略

今後はマイクロソフト製品を活用し、データの統合、可視化や分析をさらに進めていきたいと、川村氏は展望します。

「AVEVA PI System は操業データのプラットフォームですが、事業の進捗を判断するには、コストなど他のデータも見ていかなければなりません。AVEVA PI System には Web API が用意されていますから、経営に必要なデータを統合し、Microsoft Power BI などで可視化していくことによって、より迅速な意思決定を可能にしていきます。また、Microsoft Power Apps によるアプリ開発などの応用も、社内で広がっていくと思います」(川村氏)

AVEVA は、マイクロソフトとの協業による「産業イノベーションの支援」に力を入れていくと、AVEVA株式会社 ソリューション営業本部 第1営業部 宮嶋 茂也氏は力を込めます。

「私たちは AVEVA PI System のデータ連係のためのAPI や SDK を豊富に用意しています。データをどんどん活用していただくことが我々の願いだからです。自社内だけでなく、協業先にもセキュアにデータを渡すためのプラットフォーム "AVEVA Data Hub" の提供も始めました。このプラットフォームの基盤も Azure です。我々はマイクロソフトのパートナーとして、今後も産業界のイノベーションを支援して参ります」(宮嶋氏)

「IT 担当者として、今までは特定のシステムだけで閉じて考えていましたが、最近は『AVEVA PI System と Azure の PaaS を連携すれば、こんなことができるのでは?』と、組み合わせて考えるように発想が変わってきました。今後も、Azure の徹底的な活用を通じて、INPEX における DX 戦略を加速させていきます」(川村氏)

浮体式洋上ウィンドファーム (集合型風力発電所) や、メタネーション (水素と CO2 から都市ガスの主成分であるメタンを合成する技術) の試験施設などの建設、運営を進める INPEX。こうした持続可能なエネルギー開発においても、データの可視化や分析は欠かすことができません。先進的なデジタル テクノロジーを駆使する同社が、ネットゼロカーボン社会を現実のものにしていくことでしょう。

Top画像写真 太田拓実

“システムの安定稼働を考えた際、『障害の少なさ』は非常に重要なポイントですが、Azure は安定して利用することができているという実績もあり、当初から第一候補として考えていました”

川村 浩平 氏, 資材・情報システム本部 情報システムユニット デジタル企画グループ, 株式会社INPEX

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