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2024/02/01

特定顧客向けの「修理依頼サイト」を Azure 上で再構築、PaaS 機能の積極的な活用で TCO を 1/3 にまで削減することに成功

浄水器事業や散水事業、金型事業などを展開し、アフターサービスの拡充にも積極的に取り組んでいる株式会社タカギ。同社では、特定の企業顧客からの修理依頼を受け付けるサイトを他社クラウドの IaaS から Microsoft Azure へと移行しています。その最大の目的は、他社クラウド上へのデプロイおよび開発プラットフォームとしてローコードの開発サービスを利用していたソフトウェア ライセンスなどのコストの大幅削減と、OS やミドルウェアの運用管理にかかる作業負担を軽減すること。そのために Azure の PaaS 機能を積極的に活用すると共に、アプリケーション部分を .NET でスクラッチ開発しているのです。これによって TCO を 1/3 にまで削減することに成功し、運用管理の負担も軽減、アプリケーション開発者からの細かい変更要望にも対応しやすくなりました。なお Azure への移行とモダナイズを円滑化するため、FastTrack for Azure と Azure 移行およびモダン化プログラムも活用。インフラ構築を担当した株式会社エーピーコミュニケーションズも高く評価されています。

Takagi

以前の「修理依頼サイト」で問題になっていた高いコストと運用管理の負担

1961 年の会社設立以来、「人の暮らしに快適と潤いを与え社会の発展に貢献する」を経営理念に掲げ、顧客により良いものを提供するための挑戦を続けている株式会社タカギ (以下、タカギ)。「全従業員の物心両面の幸福を追求する」「人の暮らしに快適と潤いを与え社会の発展に貢献する」という 2 つの考え方の下、社員全員の創意工夫とチャレンジ精神によって、浄水器事業や散水事業、金型事業などを展開しています。また、これらの製品を開発、製造、販売するだけではなく、故障した際の修理依頼を Web サイトで受ける仕組みを設けるなど、アフターサービスの拡充にも積極的に取り組んでいます。

「修理依頼サイトは一般のお客様を対象にした B to C のものだけではなく、大口でご購入くださる特定企業のお客様向けのものもご用意しています」と語るのは、タカギ IT推進部 ITソリューション一課で課長を務める谷本 大輔 氏。これは 2016 年に構築され、顧客企業内のシステムと連携する形で、修理依頼などを入力できるようになっていると説明します。

しかし以前の特定企業向け修理依頼サイトは、大きく 2 つの問題を抱えていたと振り返ります。

「1 つはシンプルに、かなりのコストがかかっていたということです。当時のシステムは、他社パブリック クラウドの IaaS 上で Windows Server 2012 を動かし、その上でローコード開発製品を使って構築されていました。しかしローコード開発製品のライセンス料とパブリック クラウドの利用料が高く、このコストをどう低減するかに頭を悩ませていました」。

もう 1 つの課題は、IaaS 上で稼働していたため、OS やミドルウェアの運用管理に多大な作業負担がかかっていたことです。

「当社の IT 部門は潤沢な人材がいるわけではなく、IaaS の保守運用はかなりしんどいものでした。運用管理に関しても、できるだけ省エネ (人に依存しない) で管理できるシステムが必要だと考えていました」。

これらの悩みの解決に向けた動きを開始したのは 2022 年 10 月。このサイトで使っていた Windows Server 2012 が 2023 年 10 月にサポート終了 (EOS) になるため、このタイミングに合わせて新しいサーバー環境を構築することになったと、谷本 氏は説明します。

この時の前提条件となったのが、それまで使っていたパブリック クラウドとローコード開発製品の利用を、全面的にやめることでした。そのうえで、Microsoft Azure の PaaS をフル活用する案と、他社メガクラウド IaaS を使う案が比較検討されます。ここで最終的に選ばれたのが、Azure の PaaS をフル活用する案だったのです。

充実した PaaS 機能を評価し Azure を採用、FastTrack for Azure も活用

それではなぜ Azure が選択されたのでしょうか。その理由の 1 つは、PaaS 機能が充実していたからだと谷本 氏は説明します。「IaaS 上で OS を動かす場合には、OS のパッチ適用などを自分たちで行う必要がありますが、PaaS ならその必要がありません。”省エネな管理” を求める当社にとって、最適な選択肢だと考えました」。

しかし Azure の採用は、すんなりと決定したわけではないとも語ります。実は既にタカギでは、Azure との比較対象となった他社メガクラウドが利用されており、そのクラウドを使えばいいのではないか、という意見も出ていたからです。

この意見の具体的な内容について「当社にとっては Azure を本格的に使うのは初めてだったこともあり、セキュリティで問題が発生しないかを危惧する声がありました」と言うのは、タカギ IT推進部 ITソリューション一課の蓑代 成功 氏です。また実際に Azure を使うことになった場合、Azure の経験者がいなかったため、その中のどの機能を選択するのが妥当なのかの判断が難しいのではないか、という指摘もあったと振り返ります。

このような声に対して、いかにして説得力のある回答を提示するか。この難題に直面した谷本 氏のチームは、マイクロソフトに相談を持ちかけることにします。そこで提案されたのが、FastTrack for Azure (FTA) の活用でした。これは、Azure を導入するお客様に対して、マイクロソフトの製品開発チームに所属するエンジニアが伴走してお手伝いすると共に、お客様自身のプロジェクト推進を支援する各種コンテンツを提供するというプログラムです。

「FTA の提案は 2023 年 1 月にいただいたのですが、マイクロソフトの標準的なスタイルに合わせたガイダンスを受けることができ、こちらが検討しているシステム構成の妥当性や、セキュリティ面での問題の有無などについても、第三者視点からの評価を受けられます」と蓑代 氏。特にセキュリティ面ではさまざまな知見を得ることができ、最終的にこちらが作成したシステム構成に太鼓判を押してくれたため、上層部への説明もしやすくなったと言います。「これは本当に助かりました」。

FTA の支援の下、Azure 採用に消極的だった一部の人々を説得したうえで、Azure の採用を正式に決定。2023 年 3 月にはマイクロソフトから、構築パートナーとして株式会社 エーピーコミュニケーションズ (APC) が紹介されます。その翌月には構築プロジェクトをキックオフ。まずは APC とオンラインでミーティングを行いながら、グランド デザインが作成されていきます。そして 2023 年 7 月には Azure 上での検証環境が完成します。これと並行してアプリケーション開発にも着手。C# によるスクラッチ開発が進められていきます。

2023 年 10 月にはアプリケーション開発とテストが完了。検証環境をほぼそのまま引き継ぐ形で、10 月 10 日に本番稼働がスタートしています。

takagi Technical Diagram

強固なセキュリティと高い拡張性を実現、IaC 化で変更要望への対応も容易に

今回構築されたシステムの全体像は図に示すとおり。App Service や Azure SQL Database、Azure Front Door、Azure Firewall など、複数の PaaS で構成されていることがわかります。C# で開発されたアプリケーション群は、App Service と Azure Functions の上で稼働しています。なお Azure への移行とモダナイゼーションを円滑に進めていくために、マイクロソフトが提供する「Azure 移行およびモダン化プログラム (Azure Migrate & Modernize Program)」も活用されています。

このシステム構成について「セキュリティに対するタカギ様の意識がきわめて高いこともあり、システム内部はすべて Azure Private Link で閉域化し、Microsoft Defender for Cloud と Azure Key Vault によるセキュリティ強化も施しています」と語るのは、今回のプロジェクトに参画した、APC ACS事業部 エンジニアリングマネージャーの土居 幸平 氏。またどのシステムでも汎用的に使われるシステムリソースをシステム全体のハブとし、図の中の点線で囲まれた部分 (App Service+Azure SQL+Azure Functions) を追加するだけで簡単に拡張できるよう、「ハブ&スポーク型」の構成にしていることも、大きな特徴だと説明します。「そしてもう 1 つ注目していただきたいのが、IaC (Infrastructure as Code) を実現している点です。ほぼすべてのインフラをコード化し、タカギ様に納品する際にもこのコードを納品させていただきました」。

IaC 化されたシステムはタカギとしては初めての経験でしたが、「これまでのシステムに必要だった膨大なパラメーターシートが不要になり、当社の運用負担を大きく下げるうえで、重要な貢献を果たしています」と谷本 氏。また蓑代 氏も「細かい変更要望に対応しやすくなり、開発担当者からは、前より良くなったと言われています」と語ります。

それでは以前のシステムの最大の問題だったコストは、どこまで低減したのでしょうか。

「Azure への移行によって、システムの TCO は 1/3 にまで低減しました。その中でも大きいのが、ソフトウェアのライセンス コストがゼロになったことです。パブリック クラウドに支払っていた費用も、以前に比べて半減しています」。

APC による支援も高く評価されています。

「グランド デザイン策定のプロセスで要望が増えていきましたが、APC は期日通りに環境を構築してくれたため、十分な検証を行うことができました。また細かい要望にも対応していただき、保守運用や拡張性にも配慮したシステムにしてくれました」 (蓑代 氏)。

もちろん Azure の PaaS 機能を活用したアプリケーションのモダナイズも、今回のシステム移行において重要なポイントだと評価されています。

「実はまだ他にも、高コストな他社プライベート クラウドを使っているシステムが残っているので、これらもぜひ Azure へと移行して PaaS 化したいと考えています」と谷本 氏。またその他の IaaS やオンプレミスのシステムも、PaaS でモダナイズしていくことが視野に入っていると語ります。「Azure OpenAI Service の活用や、CI/CD を実装していくことも検討しています。これらの取り組みもぜひ引き続き、APC とマイクロソフトにサポートしていただければと思います」。

FastTrack for Azure(FTA)は終了したプログラムで、現在は提供されていません。

“新しい修理依頼サイトの基盤として Azure を選んだのは、PaaS 機能が充実しているからです。IaaS では OS のパッチ適用などを自分たちで行う必要がありますが、PaaS ならその必要がありません。”省エネな管理” を求める当社にとって、最適な選択肢だと考えました”

谷本 大輔 氏, IT推進部 ITソリューション一課 課長, 株式会社タカギ

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