Trace Id is missing
2024/03/21

全社スローガン「DIGITIZE YOUR ARMS」のもと、生成 AI の活用を開始、Azure OpenAI ServiceとPower Apps を組み合わせて、わずか 3 週間で社内提供を開始

2019 年初頭から「DIGITIZE YOUR ARMS (デジタルを武装せよ)」というスローガンのもとで、DX を積極的に推進している日清食品グループ。同社グループではその新たな取り組みとして、生成 AI の業務活用が始まっています。ここで採用されたのが、Azure OpenAI Service と Microsoft Power Apps の組み合わせ。業務でセキュアに生成 AI を活用できることや、デザイン性の高いユーザー インターフェイスを作成できることが高く評価されています。既に営業部門やマーケティング部門など、14 の部門で 100 種類を超えるプロンプト テンプレートを作成。それぞれの業務領域に適した使い方で、着実に成果を上げつつあります。今後は Microsoft Copilot for Microsoft 365 や DALL-E などの活用も検討。AI の活用領域をさらに拡大していく計画です。

NISSIN FOODS HOLDINGS CO LTD

ペーパーレス化やルーチン ワーク削減などを達成してきた日清食品グループの DX

1958 年に世界初の即席めんである「チキンラーメン」を世に送り出し、その後も「EARTH FOOD CREATOR」を理念として、即席めんや菓子、飲料などの事業をグローバルに展開している日清食品グループ。そのユニークなスタンスは商品開発だけではなく、マーケティングや広告にも現れており、新たな食文化を創造するパイオニアとして、多くの消費者から支持されています。

しかし同社グループのユニークさはこれだけにとどまりません。デジタル テクノロジーの活用でも、最先端を走っているのです。

その象徴とも言えるのが、2018 年 10 月に稼働を開始した日清食品株式会社 (以下、日清食品) の関西工場です。ここは次世代型のスマート ファクトリーとして構築されており、IoT 技術・ロボット技術で自動化・省人化を図り安心安全な製品の製造を実現。そしてその翌年には「DIGITIZE YOUR ARMS (デジタルを武装せよ)」というスローガンを掲げ、DX への取り組みを本格スタートさせました。

「このスローガンは 2019 年 1 月初頭に経営トップ自らが発信したもので、鎧兜に身を包んだ武士が数多くの『ひよこちゃんロボット』を従えている、非常に凝ったビジュアルも制作しました」と語るのは、日清食品ホールディングス株式会社 (以下、日清食品HD) 執行役員でCIO グループ情報責任者を務める成田 敏博 氏。そこには「グローバル カンパニーとしてさらなる成長を目指すには、非 IT 企業であってもデジタル技術を積極的に活用し、既存のビジネスモデルを破壊しなければならない」という、強いメッセージが込められていたと振り返ります。「日清食品グループは、2019 年を『デジタル化元年』と位置付け、さまざまな取り組みを推進してきました」。

まずスローガンが発信された 2019 年には、ペーパーレス化に向けた取り組みを開始。業務プロセスの中で使われていた紙を可能な限りなくしていきました。

2020 年には「エブリデイ テレワーク」を合言葉に、テレワークが可能な業務環境を整備。もともとは東京で開催された大規模スポーツ イベントに備えた取り組みでしたが、コロナ禍が後押しする形となって短期間で実現されています。

これと同じ時期に、ルーチン ワーク (定型業務) の削減に向けた取り組みもスタート。Microsoft Power Platform (Power Apps) などを活用した業務の自動化/効率化が進められていきます。業務部門の意識も「より付加価値の高い業務に集中していこう」と大きく変化していったと言います。

そして 2023 年 4 月には、生成 AI 活用の取り組みに着手。日清食品グループの DXは、新たなフェーズへと突入したのです。

CEO が入社式で生成 AI が作成したメッセージを披露、その 2 日後には全社活用プロジェクトをスタート

「生成 AI への取り組みも、経営トップのメッセージがきっかけとなりました」と成田 氏。2023 年 4 月 3 日に開催された日清食品グループの入社式で、日清食品HD 代表取締役社長・CEOの安藤 宏基 氏が、ChatGPT で作成したメッセージを新入社員に向けて披露しました。その際、CEO は「今の時代はテクノロジーを賢く駆使することで、以前の 4 ~ 5 倍のスピードで成長できるはず、短期間で多くの学びを得てほしい」と語ったそうです。テクノロジーに対する経営トップの期待の高さは、ここでもはっきりと表明されているのです。

「この時に驚いたのが、CEO が ChatGPT に触れたのは入社式のわずか 2 日前だったということです。『日清食品の課題を教えてほしい』と ChatGPT に尋ねたところ 7 つの課題が提示され、それが自分自身の考えと大きな違いがなかったそうです。これは恐ろしい時代になったと感じ、週末にかけてかなり使い込んだと聞いています」。

これを受け、成田 氏は「生成 AI 活用に向けた取り組みをすぐに始めるべき」だと判断。その日のうちに情報企画部内で希望者を募り、生成 AI 導入に向けたプロジェクトをキックオフしました。そしてその 2 日後の 4 月 5 日には、Azure OpenAI Service を活用した独自環境の構築を決定。生成 AI の基盤として Azure を選択した理由について、次のように説明します。

「既に複数の先行事例を見ていたのですが、Azure OpenAI Service を活用したものは短期間で成果を出していました。また公開されている ChatGPT をそのまま使うのでは情報漏洩の危険性がありますが、Azure OpenAI Service ならその心配がありません。さらに、社内情報基盤として Microsoft 365 を既に活用していたことや、Power Platform でルーチン ワーク削減を行っていたナレッジを活かし内製化することで経営層の求めるスピード感に応えられることも、採用の後押しとなりました」。

その後、生成 AI 活用に伴うリスクを整理したうえで、Azure OpenAI Service の環境整備に着手。「マイクロソフトの担当者と相談しながら、1 週間で動くものができあがりました」と言うのは、日清食品HD 情報企画部 デジタル化推進室 係長の武田 弘晃 氏です。「その後は細かい調整を行って、わずか 3 週間でリリースできる状態になり、4 月 25 日に『NISSIN AI-Chat』の社内提供を開始しました」。

生成 AI とチャットを行うためのユーザー インターフェイスは、武田 氏が Power Apps で独自に作成。その理由は大きく 3 つあったと言います。

「第 1 は、Power Apps の利用経験があり、活用のためのナレッジが蓄積されていたこと。第 2 はすばやく手軽に開発でき、さらにデザインの自由度も高いこと。そして第 3 が、Microsoft 365 や Microsoft Azure との親和性が高く、さまざまな機能と融合できるため、今後の発展も容易だと判断したからです」 (武田 氏)。

「これらのうち、特に重要だったのはデザインの自由度」と指摘するのは、日清食品HD 情報企画部 デジタル化推進室で室長を務める山本 達郎 氏です。

「既に社内には、デジタル技術や AI への抵抗感はほとんどなく、どの部門も『積極的に進めていこう』という前向きなスタンスでした。その一方で、日清食品グループはデザインに対するこだわりが強く、インターフェイスを工夫しないと多くの社員に使ってもらえないのではないかという危惧がありました。そこで社内デザイナーと一緒に 4 種類のデザインを提案し、経営トップに選んでもらったのです。採用されたのが、ログイン時に CEO からのメッセージを表示した後、チキンラーメンのキャラクターである『ひよこちゃん』が登場し、コンプライアンス上の注意点をレクチャーするものです」。

Azure OpenAI Service は使いやすかったため、デザインにこだわる時間を十分にとることができたと武田 氏は振り返ります。

14 部門で 100 種類以上のテンプレートを活用、利用率が 8 割を超えた部門も

2023 年 5 月には業務での活用に向けた取り組みがスタート。「スモール スタートで大きな効果が期待できる業務領域」という観点から、まずは日清食品の営業部門で利用することになりました。

「日清食品は全国を 8 つの営業ブロックに分けているのですが、各ブロックからプロジェクト メンバーを 2 名ずつ選抜し、『NISSIN AI-Chat セールス活用プロジェクト』を立ち上げました」と山本 氏。プロジェクトではマンダラ チャートを活用して対象業務を洗い出した後、合計 20 個のプロンプト テンプレートを作成し、本格的な活用を開始したと言います。「コーディネーター役の情報企画部も含め、20 名のメンバーが参加して作業を進めていきましたが、みんな楽しみながらやってくれました」。

ここで作成されたプロンプト テンプレートの 1 つが「食べ方アイデア出し」です。これは日清食品の商品の特徴を生かした「意外性のある食べ方」を生成 AI に複数提案させ、その中から営業担当者がユニークなアイデアをピックアップし、「日清食品らしさ」をプラスしてまとめ上げたものを、スーパーマーケットや量販店への提案に生かしています。

「プロジェクトが始まった頃は 28% 程度だった利用率が、2023 年 11 月には 7 割近くの営業担当者が NISSIN AI-Chat を使うようになりました。具体的な成果が見えてくるのはこれからですが、生成 AI の活用によって社内業務を効率化することで、お客様のために使う時間を倍増できると期待されています」。

次に着手されたのが、マーケティング部門への展開です。ここでは、キャッチコピー案を検討する際の「ユニークな言い換え」や、プロモーション案を検討するためのプロンプト テンプレートなどが作成されました。これらのテンプレートは 2023 年 10 月に公開され、翌月にはマーケティングスタッフの月間利用率が 8 割を突破。これらも含め、現在では 14 の部門から 100 種類以上のプロンプト テンプレートが提供されていると言います。

もちろん、日清食品HD 情報企画部でも活用が進んでいます。その一例として「IT に関する社内からの問い合わせ対応」を挙げるのは、日清食品HD 情報企画部 係長の松下 貴範 氏です。

「これまでに蓄積されていた数万件に上る問い合わせ履歴をAI-Chatに学習させたところ、そのまま使える適切な回答の割合が 55% に達し、24% の作業工数を削減できました。この取り組みで特に重要なのは、新人教育に活かせるということです。これまでは先輩社員が問い合わせ対応の “勘所“ を教えていましたが、今では AI-Chat がその代わりを務めています」。

この他にも、各業務領域で AI 活用を前提とした業務プロセスの構築を進めており、サプライチェーン マネジメント部門への適用なども検討。その一方で、Microsoft Copilot for Microsoft 365 の活用にも着手しており、会議の議事録作成や、プレゼンテーションで使用する Microsoft PowerPoint 資料の作成などに利用することが検討されています。さらに、Azure AI サービスの一部である「音声テキスト変換」や、画像生成 AI である DALL-E によるパッケージ デザインのアイデア出しなども視野に入っています。

「これらのマイクロソフトの AI サービスには、大きなポテンシャルがあると感じています」と成田 氏。その理由は、単独のテクノロジーとして提供されているのではなく、他のマイクロソフト製品や他社サービスとの連携や融合が容易であるため、ソリューションとしての有用性を高めることができるからだと言います。「日清食品グループでの生成 AI 活用は始まったばかりです。大量のデータを取り扱うことが求められる今、人力ではできないアウトプットを生成 AI に期待しています。これからも現場のニーズに応えながら、適用領域を拡大していきたいと考えています」。

“先行事例を見ると、Azure OpenAI Service を活用したものは短期間で成果を出していました。また公開されている ChatGPT をそのまま使うと情報漏洩の危険性がありますが、Azure OpenAI Service ならその心配はありません”

成田 敏博 氏, 執行役員 CIO グループ情報責任者, 日清食品ホールディングス株式会社

次のステップに進みましょう

Microsoft でイノベーションを促進

カスタム ソリューションについて専門家にご相談ください

ソリューションのカスタマイズをお手伝いし、お客様独自のビジネス目標を達成するためのお役に立ちます。

実績あるソリューションで成果を追求

目標達成に貢献してきた実績豊かな製品とソリューションを、貴社の業績をいっそう追求するためにご活用ください。

Microsoft をフォロー