日本マイクロソフト後援による香川大学リカレント専門講座「Kadai DX 塾」開催。香川県における DX 推進の取り組みを語る
2023 年 2 月 10 日・17 日の 2 日間、香川大学地域人材共創センターは令和 4 年度香川大学リカレント専門講座として『「Kadai DX 塾」 ゼロから始めるデジタル トランスフォーメーション』を開講しました。
香川大学は 2022 年 5 月 20 日より日本マイクロソフトと連携協定を締結し、昨今ニーズが高まっている DX 推進人材の育成を通して大学改革と地域活性化に取り組んでいます。
日本マイクロソフトの後援を受けて開催された本講座では、香川大学が実践してきたノウハウや実際の成果が共有されるとともに、変革の最前線で活躍する教員や現場担当者によるハンズオンセミナーが提供され、Microsoft 製品による業務効率化や DX の奥行きと可能性を感じさせるものとなりました。
官民連携で DX に取り組む「かがわ DX Lab」の新拠点に期待が高まる
今回、レポートするのは「Kadai DX 塾」の冒頭を飾った香川県政策部デジタル戦略総室 デジタル戦略課長 藤澤 朝美氏による「香川県における DX 推進の取り組み」紹介です。
藤澤氏によれば、「デジタル化の推進」は、令和 4 年度県政の重点的な取組みとして位置付けられており、県庁一丸となって取り組みを進めているといいます。
デジタル化戦略の推進、生活・産業・行政分野のデジタル化推進、デジタル人材の育成等をねらいとした 109 事業が 21 億円の予算を投じて進行しています。
多岐にわたる「デジタル化の推進」施策のうち、とくに重点的に取り組んでいるのは「かがわ DX Lab」事業と、「Setouchi-i-Base」を拠点とした活動です。
「かがわ DX Lab」は、「デジタルによるまちづくり」に共に取り組む官民連携コミュニティで、香川県と県内の全自治体での取組みを 2022 年 4 月から始めており、週に 2 回のディスカッションと各種のイベント開催を行ってきました。
2023 年 4 月には高松シンボルタワー内に「かがわ DX Lab」の活動拠点施設がオープン予定で、民間事業者を迎えて、官民連携による地域 DX のハブとなることをめざします。
施設内には、カンファレンスルームやカフェコーナー、ミーティングブースを備えるほか、県内外の民間事業者が入居できるサテライトオフィスも 7 室用意されるそう。加えて、行政と民間事業者、DX に知見のあるフェロー(有識者)をつなぐマネージャーが常駐するといいます。
「かがわ DX Lab」での取り組みについて、藤澤氏はこう話します。
「DX には決められた手法や方法論がなく、『喫緊の課題であることは認識しているものの、どこから手をつければよいのか分からない』という声も上がっています。
『かがわDX Lab』は、行政課題や地域課題解決のために、官民が一緒になってともに学び、ともに考え、ともに取りくむ、文字どおり研究室。民間事業者の皆さんとわれわれ行政が一緒になって、現場でのフィールドワークや DX の実証実験に取り組みたいと考えています。ときには法律の壁や実務の壁が立ち塞がることもありますが、できない理由を探すのではなく、解決できる方法を前向きに模索していきます」(藤澤氏)。
「『かがわDX Lab』ではさまざまな取り組みをおこなってきました。代表例が、香川県および県内全 17 市町主催による『マイナちゃんピオンシップ・かがわ 2022』です。このイベントではマイナンバーカードの新たな利活用方法についてアイディアを募り、全国から多数のご応募をいただきました。最優秀賞に選ばれたのは hamano 氏による『ワンニャンバーカードスマート 愛犬家シティ構想』で、マイナンバーカードの空き領域にペットのワクチン接種状況などを登録してはどうか、というものでした。国内でも愛犬家が多いと言われる香川県の特徴を考慮した素晴らしいアイディアで、ここ香川県からイノベーションが生まれる可能性を予感させるものでした」(藤澤氏)
好調な「Setouchi-i-Base」からは事業化例やフリーランス独立例も
2 つ目の柱となるのが、 2020 年に整備された「Setouchi-i-Base」での取り組みです。
デジタル社会を牽引する情報通信関連産業の育成とともに、いかなる業態においても喫緊の課題となっているデジタル人材の育成に、「Setouchi-i-Base」を拠点に取り組んでいます。
同拠点では、アプリ開発等人材支援講座(かがわコーディングブートキャンプ)や、Web デザイナー等養成講座、また起業や第二創業を目指す学生や起業家等に向けたアントレプレナーシップ養成講座など、様々な講座やセミナーを実施することによって「デジタル人材の育成」に取り組んでいます。
現在、「Setouchi-i-Base」を拠点として活動する会員は 164 名、法人会員は 24 企業にのぼり、8 名のコーディネーターが日々の活動をサポートしているといいます。ビジネスプランコンテスト「瀬戸内チャレンジャーアワード」なども開催されており、ここからフリーランスとして活動したり、事業化したりするメンバーが少しずつ出てきている状況だといいます。
「Setouchi-i-Base」は、高松駅至近、ドロップイン利用も可能とのことで、「デジタルに興味のある方やチャレンジしたい方に是非、一度、ご利用いただきたい」と藤澤氏は言い添えます。ネットワーキングやビジネスマッチングイベントなど、多数開催されているそうなので、一度、覗いてみてもいいかもしれません。
藤澤氏はこうした成果に「手ごたえを感じている」としたうえで、さらに加速させるべく、県としての取組みに全力で邁進していきたいと表明します。
活動を通じて生まれた新たな出会いが香川県のデジタルトランスフォーメーションをけん引していくことが期待されます。
DX はあくまで手段。未来創造には民間事業者と県民の熱意も欠かせない
藤澤氏はこうした香川県の取り組みについて、国が 2021 年 5 月に定めた「デジタル社会形成基本法」、ならびにデジタル庁による「デジタル社会の実現に向けた重点計画」と軌を一にするものと語ります。
「DX はあくまでも手段であり、達成すべきゴールはその先にあります。すなわち、「安心・便利・豊か 人が主役のデジタル社会・かがわの形成」の実現です。そのために、行政が汗をかくのはもちろん、知見を持つ民間事業者の皆様と一緒に、目の前の課題やお困りごとを解決する革新的なサービス生み出し、順次、展開を図っていきます。ここで大事なことは、そのサービスが県民の皆様に使っていただけるものであること。県民の皆さん自身がサービスを利用していただくことで、さらに革新的なサービスを生み出していく。こういった一連の取組みが好循環のサイクルとなり、「安心・便利・豊か」で、一人ひとりが主役となって活躍できるデジタル社会の実現をめざします。本日ご紹介した 2 施設はその良きハブとなり、香川県の未来を創造していくダイナミクスを生み出してくれることでしょう」(藤澤氏)
藤澤氏によるトークは、このあとに開催されるハンズオンでの実践を通し、DX 人材として現場の業務改善から、ひいては社会の変革に取り組む人々を勇気づけるものでした。全国から注目を集める香川県からどのような成功例が生まれるのか、期待が高まります。
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