桜木 力丸, Author at マイクロソフト業界別の記事 http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog Fri, 09 Dec 2022 01:34:22 +0000 en-US hourly 1 脳科学者がつくった EC メタバース「メタストア」開発秘話〜現実とはなんなのか。とある社会実験への招待〜 http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/retail/2022/12/09/metaverse-ec-neuroscientist-metastore/ Fri, 09 Dec 2022 01:11:01 +0000 「自分に見えているこの世界は、他の人たちと同じ世界なのだろうか?」と思い悩んだ経験を持つ方は、案外多いのではないでしょうか。
「現実を科学し、ゆたかにする」をミッションに掲げ、体験をデジタル化することで空間や時間、身体の制限を超えて「再現可能な体験の共有」を目指す株式会社ハコスコでは、メタバース空間に店舗や展示空間を開設できる EC メタバース「メタストア」を 2022 年 11 月から正式にリリース

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メタバース空間の小売店を背景に並ぶ男女

「自分に見えているこの世界は、他の人たちと同じ世界なのだろうか?」と思い悩んだ経験を持つ方は、案外多いのではないでしょうか。
「現実を科学し、ゆたかにする」をミッションに掲げ、体験をデジタル化することで空間や時間、身体の制限を超えて「再現可能な体験の共有」を目指す株式会社ハコスコでは、メタバース空間に店舗や展示空間を開設できる EC メタバース「メタストア」を 2022 年 11 月から正式にリリース。誰もが簡単に、0  円からバーチャルコミュニケーションを実現できるこのサービスは、法人・個人問わず幅広い活用方法が期待され、リリース直後から多くの反響を呼んでいます。

株式会社ハコスコ
代表取締役 藤井 直敬 氏

藤井直敬氏の写真

開発責任者 富田 有棋 氏

富田有棋氏の写真

社会実験の感覚でソリューションを開発するハコスコ社

――貴社の概要と提供しているサービスについてお聞かせください。

藤井 10 年以上前になりますが、私は理化学研究所で SR(代替現実)の研究をしていました。私は当時から「この技術を用いれば専用ハードウェアを使わなくても仮想空間を体験できる」と思っており、周囲の関心も高かったものの事業化したいという手は上がらず、ダンボール製のビューワーを開発したことをきっかけとして、自分自身で 2014 年に創業しました。

富田 私たちが提供するサービスは、ダンボール製 VR ゴーグルをはじめとする VR ソリューション、脳波計測アプリやニューロフィードバックなどのブレインテックソリューション、そしてECメタバース「メタストア」の開発・提供が中心となっています。

藤井 私は「現実とは何かを考えること」をライフワークとしている脳科学者です。ですから、ハコスコを脳の外側と内側の両方から現実を理解しようとする「現実科学」の社会実験プラットフォームに近い感覚で運営しています。ブレインテックなどはまさにその考え方に沿ったソリューションと言えます。
また、事業展開において私たちが大切にしているのは、「すべての人に安価で使いやすいサービスを提供すること」です。現在、ゲームプラットフォームとしてのメタバースはゲームという目的性を確立していますが、その他の領域ではまだ「なくても困らないもの」に留まっています。私たちはそれを、誰もが気軽に利用でき、日常生活で欠かせないものにしていきたい。そのために開発したのが段ボール製 MR ゴーグルであり、メタストアです。メタストアはデバイスやアプリケーションがなくても簡単にメタバース上で EC を始められる画期的なサービスです。

メタバース空間にあるECショップ

参考:
メタストア HP
ハコスコショールーム

PC とブラウザさえあれば、すぐに無料でも始められる「メタストア」

――メタストアは、無料版を追加して 11 月に正式にリリースされました。どのようなサービスなのでしょうか?

富田 メタストアは、EC やコミュニティ、展示などの空間をメタバース上に再現できる「EC メタバース」です。3D モデルを利用して、リアルな空間と同様の有機的なコミュニケーションを通じて顧客やチームメンバーとのエンゲージメントを高めることで、ユーザーの LTV(ライフタイムバリュー/顧客生涯価値)と売上の増加に貢献することができます。ターゲットとしては主に、コミュニケーションを重視する接客業やファンイベント、展示会などを想定しています。
メタストアを始めるには、特別な設備は必要ありません。PC とブラウザさえあれば誰でも簡単に利用可能で、学習コストが低く、すぐにスペースをオープンできます。導入から公開までのタイムスパンが短くて済みますし、競合サービスより安価に導入可能な価格設定も大きな特長です。

藤井 メタストアでメタバースを実用的な商用空間と定義している点は、市場に大きなインパクトを与えられると考えています。
まず実店舗が必要ありませんから、同程度の購入体験を提供できるのであれば、店舗としてはメタストアで売る方が効率が高いと言えます。また消費者にとっては、送料がかからない、ポイントが貯まるといったベネフィットがなければ、同じ商品ならどの EC サイトで買っても変わりませんが、メタストアは一般的な EC サイトでは提供できない「情報」という価値を付加して提供できます。ボイスチャット機能や今後実装予定のビデオチャット機能でコミュニケーションを図り、顧客と店舗とのエンゲージメントを高めることにより、商いの上で大切な「囲い込み」に役立てることができる。すなわち「店主の顔が見える」 EC サービスであることが大きな利点だと考えています。
個人的には、メタストアはセレクトショップのような店主の個性が前面に出るような業態に向いていると考えています。コンビニエンスストアよりは稀覯本を集めた本屋、ファミリーレストランよりはファンの集まるイベント会場のようなイメージですね。

――リリース後にはどのような反響がありましたか?

藤井 当初から想定していましたが、やはり自分でメタバース空間に店舗をつくることに対する心理的なハードルは高かったですね。ワークショップに参加していただくと、皆さん「こんな簡単にできるんだ」と驚かれます。ですから実際に手を動かすところまで誘導する作業を地道に進めることが必要だと思っています。
メタストアに興味を持たれた企業の皆さんとお話しをしたところ、共通して「イノベーティブな事業を起こさなければいけない」という課題感を持っており、メタバースをその可能性のうちのひとつとして捉えていることがよくわかりました。これまで打ち上げ花火的にメタバースにコストを掛けて、一時的な効果しか得られなかった企業も多かったようです。その点メタストアはかなり低価格で PoC を回せるので、本当に意味のあるメタバースの利用方法を試行できます。メタストアの効果は私たちとしても知りたい部分ですから、PoC のコストを両者で按分するといった提案を行うことも多いですね。

マイクロソフトとのコラボレーション効果を最大限に活用

――メタストアでは Microsoft Azure をプラットフォームとして活用されています。

富田 私は前職で Advanced Specialization を取得している企業に籍を置いており、Azure や HoloLens 2 を利用したアプリケーション開発に携わるなど、当時から日本マイクロソフトと頻繁に協業していました。ハコスコでも HoloLens 2  で 360 度映像を再生する「ホロスコ」というアプリケーションの開発や、メタストアではプロトタイプ版から Azure を使わせていただいています。
Azure は ARM テンプレートの利用によって一度つくったサービスの複製が簡単に行えるので、インフラ作業の工数を大幅に抑えることができました。また標準サービスの Application Insights によるログ監視と可用性テストによって、エラーの検知と保守作業を効率化できました。自分が使い慣れているだけでなく、知見のない作業者も簡単に扱えるのは大きな利点だと感じています。

――日本マイクロソフトには今後どのようなことを期待されていますか?

富田  Microsoft Mesh は、メタバース上でのコミュニケーションサービスとしてメタストアとの親和性が高いと感じており、期待値も高いです。今後メタストアに HoloLens 2 を対応させることも視野に入れていますから、その際にはぜひ利用したいと思っています。
また今年から Microsoft for Startups の採択を受けることになり、サブスクリプションサービスのコストを大幅に削減できました。コストを気にせずに Azure  の先進的な技術を検証できる点も含めて、大いに助かっています。また、メタバースに関する先進的な技術やノウハウの共有といったパートナーシップも大きなメリットですし、コンテストへのアサインやイベントへの登壇依頼といった事業支援も大変ありがたいです。これからも日本マイクロソフト主催・協賛のイベントや展示会には積極的に参加していきたいです。

ユーザーとともに、メタバースの可能性を探っていきたい

――今後の課題や展望についてお聞かせください。

富田 これはメタバースのサービス全体に言えることですが、導入時の効果をいかに持続させるかが課題だと考えています。導入後の管理運用コストに見合った施策を打ちながらいかに価値を維持するか。目先の宣伝効果ややっている感の充足で終わるのではなく、PoC を繰り返しながら検証を進めたいと思います。

藤井 正式リリースに際して、メタバースという利用用途が明確ではないものを世の中に受け入れてもらうためには、ユーザーの裾野を広げておく必要があると考えて無料版をリリースしました。まずは使っていただき、機能差分を超えたリクエストが出てきた場合にアップセルできればと思っています。ぜひ、「実験に参加してみる」くらいの気持ちでたくさんの人に使ってほしいですね。
また先日、3D スキャンアプリ「WIDER」を提供する株式会社 WOGO との業務提携を発表しました。WIDER を使えば、本来高価な設備が必要だった精巧な 3D モデルを、スマートフォンでスキャンした画像からつくることができます。その機能を活用してゆくゆくはメタストア内に 3D モデルを蓄積し、3D モデルの流通ネットワークを構築することで、付加価値をさらに高めたいと考えています。多言語対応やチケット機能も実装される予定ですので、海外へのサービス展開やライブコマース分野での活用も進むはずです。

――メタバースに興味を持つ方々にメッセージをお願いいたします。

藤井 メタバースは新たな可能性を持った空間であり、私たちも含めてまだ利用方法の正解を見つけた人はいません。ですから、メタストアのようなコンパクトなサービスでいろいろなことを実験的に試して可能性を探るのは、とても有意義なことだと考えています。
私たちはメタバースという奥行きと固定の空間性のある Web コミュニケーションによって、事業者は顧客エンゲージメントを増大させることができると考えています。その仮説を確かめるためにも、多くのユーザーに私たちと一緒に社会実験に参加していただき、ともにメタバースが持つ可能性を確認し、ベネフィットを享受してほしいと思います。

参考:
メタストア HP
ハコスコショールーム

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