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]]>このプロジェクトは“Acorn (Agroforestry Carbon removal units for the Organic Restoration of Nature)”と呼ばれており、将来的に約 40 億本の木を植え、150 万トン以上の CO2 を削減する目標を掲げる非常に野心的なプロジェクトです。
具体的には、アグロフォレストリー (農家が農作物や家畜のために使っている土地に木を植え森林と両立させること) によって大気中の炭素を吸収し、カーボンクレジットを生み出す取組みです。それによって、土地の質が向上し、農家の収入も増え生物多様性も回復することが期待されています。
以前の記事では、Acorn の概要をお伝えしました。本記事ではその仕組みについて少し詳しく見てみたいと思います。
ラボバンクは 2 年前にこのプログラムを開始しましたが、以来、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの小規模農家が、自分たちの土地に新しい樹木や作物を植え始めています。2022 年 4 月時点で、10 か国で 8,000 以上の農家が参加しています。日照りや干ばつなどの影響を受けている農家の人たちは気候変動がもたらす悪影響に気づいており、Acorn の紹介を受けこの問題に積極的に関わろうという人々が増えているといいます。
農地にどんな木を植えるかは、農家によって異なります。例えば、コーヒー農家の場合はシェードツリー (コーヒーの木を直射日光から守るために日傘の役割をさせる木) を植え、トウモロコシ農家の場合はアボカドやマンゴーの木などを植えたりします。アボカドやマンゴーの木は成長すると実がなるため、農家はそれを売って新たな収入源とすることもできます。
植樹していから最初の数年間は、新しい木に実がなることはありませんが、CO2を吸収するという大切な役割を果たしていきます。衛星やドローンを用いたリモートセンシングでどれだけの CO2 が固定されたかを計算し、CRU (Carbon Removal Units) と呼ばれる単位に変換します (1CRU は 1,000 キログラムの CO2 固定に相当)。
※CRU は Plan Vivo Foundation の認定を受けたカーボンクレジット
木は成長するに従い、年々 CO2 を固定します。農家は固定した CO2 を CRU に変換し、ラボバンクが運営する市場でオークションにかけることで、毎年収益を手にすることができるのです。
出典:Project Acorn 公開資料より抜粋
通常、農家が植樹して固定した CO2 のうち、85% を CRU に変換します。残りの 15% は、何かあったときのバッファとして使われます。例えば、火事で木が焼失したり、誤って伐採したりした場合、すでに販売した CRU を「なかったこと」にはできないので、バッファを持たせているというわけです。これは、植樹してから 20 年というモニタリングの期間中続くことになります。
CRU の最低価格は 20 ユーロとなっており、購入者は 1,000 CRU を 1 単位として購入する必要があります。Acorn は定期的にオークションを開催し、買い手の入札を受けて CRU を販売します。全ての購入希望者が公平な条件で購入できるように、オークションの販売価格は最も高い入札額ではなく、買い手が購入する意思を見せた金額で低いものが採用される仕組みも採用しています。
買い手は入札前に、ポータルを通じて CRU を生成しているプロジェクトの詳細を確認することができます。いつ、どこで、誰が、どのように CO2 を貯めたのかを正確に知ることができるので、自社が入札するにふさわしいかどうかを判断することができます。
出典:Project Acorn Webサイト
Acorn は農地の選定にも気を使っています。Acorn 自体が小規模農家を支援するプログラムであるため、農地は 10 ヘクタール以下でなければなりません。また、農地がプログラムに参加する前の数年間の間に農地の中で森林伐採が行われていた形跡があれば、その農地はプログラムの対象から外されます。農地を増やすために周辺の森林を伐採していないかどうかも事前にチェックするなど、プログラムが本質的な効果を発揮するための基準および調査に力を入れています。
こうしたことを低コストで実現するには、リモートモニタリングの活用が欠かせません。 Acorn では、Global Forest Watch などのオープンソースのデータセットを使って、プログラムに入る前にその農地が森林に分類されていたかどうかを確認する手法を採用しています。
また Acorn は、衛星画像を用いて客観的に CO2 固定量を測定できる技術を開発しました。CO2 を固定する木の成長と状態を把握するには、リモートセンシングの技術を用います。リモートセンシングとは、離れた場所から地表をスキャンし、センサーで情報を取得する技術のことです。センサーはドローンや飛行機、人工衛星などに搭載され、地球が反射したり放射したりする光をとらえて動作します。
例えば、LiDAR (測定対象物を 3 次元で表現するセンサー) を搭載した航空機を農地の上空を飛行させ、農地のデジタルツインを作成します。このデータと実地で測定したデータを掛け合わせることでより精緻に農地を把握することができるようになります。
Acorn では、衛星データも活用しています。主なデータ源は、欧州宇宙機関が運用する衛星「Sentinel-2a」と「Sentinel-b」です。さらに、他の衛星データ、例えば衛星搭載LiDAR (GEDI) やレーダーデータ (Sentinel-1) と組み合わせることで、世界中のさまざまな場所でバイオマスを正確かつ効率的に推定できるようになります。
Acorn は収集したこれらのデータをリモートセンシングのパートナー企業 (Satelligence や Space 4 Good など) に渡して分析を依頼し、最終的に固定された CO2 の量を算出することになります。
出典:Project Acorn公開資料より抜粋
Acorn は今後、木だけでなく土壌に蓄えられた CO2 についてもモニタリングして収益化できるように技術開発を行っていくことを表明しています。
Acorn のプロジェクトはまだ始まったばかりです。非常に壮大な目標を掲げている同プロジェクトですが、単体の銀行が行っているサステナビリティに関連する事業としてはかなり規模の大きなものとなっています。また、CO2 固定と小規模農家の支援を組合わせるというのは非常にユニークで、歴史的に農業に深い関りを持つラボバンクならではのプロジェクトであるともいえます。
マイクロソフトは Acorn の技術パートナーというだけでなく、市場に参加して CRU を購入するなど、Acorn が目指す目標に対して共にコミットして進めています。今後も、手を緩めることなく、ラボバンクが掲げる目標を達成すべく支援を継続していきます。
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]]>エリオット スミス
世界中の農家は、栽培する作物も栽培技術も異なるが、天候を知り、それが収穫の好不調につながることを熟知しています。
ムーサ ムコロさんも同じです。マリの農民であるムコロさんは、雑穀やギニア コーンを栽培しています。しかし、数年前から干ばつが彼の作物、そして他のマリの農家に大被害を与えています。2021 年、マリは過去 5 年間で最悪の干ばつに見舞われ、焼けつくような暑さと少雨のため、何百万人もの人々が食糧難の危険にさらされました。
「雨がたくさん降らないと、作物がうまく育ちません。」と、ムコロさんは通訳を介して語ります。
農家は天候不順の影響を最も受けやすいのです。文字通り労働の成果や穀物を得られないだけでなく、場合によっては自分たちの食卓を確保することもできません。収穫期がうまくいかないと、次のシーズンまで収入源がなく、多くの人が振り出しに戻ることを意味します。4 億近い農家が降雨に依存していますが、保険で守られている農家の割合はわずか 3% に過ぎません。
サイモン シュウォール氏は通信業界でキャリアをスタートさせ、アフリカの農村で銀行口座を持たない顧客がモバイル決済オプションを熱心に採用しているのを目の当たりにしました。2015 年の干ばつで多くの顧客が生活に困窮した後、シュウォール氏はこの電話モデルが農作物保険にも使えると考えたのです。
携帯電話で保険の支払いをするマリ共和国トゥレラ市の住民。写真: Nicolas Réméné.
世界を養う人々の所得分配の不備を克服することを使命とし、小規模農家向けに低コストの作物保険を提供するため、2020 年に Oko を設立しました。古代部族の信仰では、Oko は豊作を守護する神の名です。イスラエルに拠点を置くこの新興企業は、マリとウガンダで現地の電話会社やモバイル決済処理業者と提携し、このサービスを立ち上げました。しかし、Oko を効果的かつインパクトのあるものにするためには、現場でのアドボカシーが必要でした。
Oko は、インデックス保険という考え方でコスト削減を図っています。多くの保険契約では、保険金請求の確認や査定など、コストの不確実性を考慮した管理コストがあらかじめ組み込まれています。インデックス保険は、現地での検査ではなく、データ分析とリスク計算を活用し、地方の顧客にとってより安価で利用しやすい保険を構築します。また、遠隔気象モニタリングにより、当て推量や人的要素を保険契約から排除し、Oko は干ばつや洪水の際に迅速に行動することができます。
シュウォール氏は、「最終顧客と話をする必要があった」と振り返る。「農家が何を必要としているかを理解するために、農家と一緒に畑で時間を過ごしました。そして、農作物保険がどのようなものであるかを説明する必要があったのです。彼らは皆、不作の季節や干ばつに悩まされた経験がある。だから、保険に加入することのメリットを理解してもらえたのです」。
農家は携帯電話を使って Oko にサインアップします。農家は平均して、1 シーズン分をカバーするために約 20 ドル (米ドル) を支払い、平均して約 1.7ha (4.2 エーカー) をカバーすることになります。その後、Oko は過去のデータと気象データを使って保険リスクを分析し、保険料を決定します。リアルタイムのデータが深刻な干ばつや洪水を示した場合、Oko は直ちに農家に支払いを行うため、保険金請求をする必要がなく、農家は不作の季節から以前よりずっと早く立ち直ることができます。
干ばつ時のカリファブーグーの大地の硬さを示す農家の Kassim Koné。写真: Nicolas Réméné.
マリの穀物農家、セクー クーリバリさんは通訳を介して、「Oko は干ばつと降雨の両方に保険をかけているので、私は会員になったのです」と言いました。「最初の年は作柄が非常に悪かったのですが、Oko は干ばつのため、その損害を補うことができました。この地域の農家にとって、Oko はとても良いものだと言わざるを得ません。」
しかしシュウォールは、Oko がさらに大きなインパクトを与えることができると信じていた。彼は、Microsoft for Startups AI 4 GOOD アクセラレーション プログラム と Founders Hub に登録し、イスラエルの目的志向のベンチャー企業が社会の前向きな変革をもたらすために AI ソリューションを推進するのを支援しました。このプログラムの卒業生は、テクノロジ、人脈、助成金を得て、スタートアップ企業のインパクトのあるビジョンを実現するための支援を受けることができます。
マイクロソフト for Startups イスラエルのジェネラル マネージャーである Raz Bachar 氏は、「我々は、リーダーシップ チームと、人々の生活に変化をもたらすという彼らの情熱に非常に感銘を受けました」と述べています。「Oko の申請書を審査しているうちに、彼らが取り組んでいる問題の大きさと、彼らが世界に与える可能性のある影響について理解するようになりました。それ以上に、チームが自分たちのソリューションについて話すときの興奮が目に見えるようで、彼らの声から感情が伝わり、目の輝きを見ることができました。彼らは本当に感動的です。
Oko の場合、Microsoft Azure の堅牢なインフラとデータ ツールが、顧客関係管理 (CRM) プラットフォームの改善と、衛星気象データをより適切に分析し、その結果を計算するための機械学習アルゴリズムの構築を支援しました。さらに、マイクロソフトのプログラムでは、メンタリングやインパクトの測定方法に関するトレーニングに加え、研究開発資金も提供されました。
シュウォール氏は、「このプログラムのおかげで、本当にスケールアップすることができました」と述べています。「インフラやリソースを変更することなく、(自社設計の) プラットフォームを Azure に移行することができました。1,800 軒の農家を支援していたのが、1 万軒を超える農家を支援できるようになったのです。そして現在、マリの UN Women とプログラムを組んでいます。私たちの顧客層には女性の数が限られていることに気づき、そのギャップを埋めたいと思っています。
バマコにあるスタートアップの本社で、マリの降雨量の地図と衛星データを見せる Oko Mali の前カントリーディレクター兼オペレーション責任者の Mariam Doumbia 氏。写真: Nicolas Réméné.
Oko はシーズンごとに、リアルタイムの衛星データと降雨量モニタリングにより、健全な収穫のためにどれくらいの雨が必要かを判断します。雨量が基準値を下回ると、自動的に農家への支払いが行われます。
シュウォール氏はこう言います。「わざわざ電話する必要はない。農家の中には、『どうしてわかるんですか』と聞いてくる人もいます。アプリで『干ばつに遭いましたね、ここをクリックしてお金を受け取ってください』と伝えているのです。詐欺のリスクはありません」。
「とても簡単で、重要な情報を提供してくれる彼らの仕事には超満足しています。」とムコロさんは述べました。「Oko は天気予報の情報をテキスト メッセージで送ってくれています。雨が降りそうなときは教えてくれるし、その情報は常に共有されています。」
干ばつに見舞われた場合、シュウォール氏は、農民が支払った保険金で次の収穫のための新しい種を買ったり、燃料など街で売れるものを買ったりしていると言います。農家は保険に加入しているため、マイクロ融資を利用して農作物にさらに投資することができます。
Oko はマリとウガンダで強力な進出を果たしましたが、Oko が支援したい農家はアフリカやその他の国々に広く存在し、既存の顧客が満足して製品を使い続けられるようにすることも重要です。気候変動が大きな要因となりつつある中、迅速に対応し、農家に保険を提供する Oko の能力は、大きな影響を与える可能性があります。
シュウォール氏は、「まだ証明すべきことがある」と言います。「顧客獲得にかかる費用はまだ高い。私たちは、農家が季節ごとに保険に加入し続けられるようにしたいのです。そのためには、保険が良いものだと信じてもらわなければなりません。また、国際的にも成長したいと考えています。2025 年までに 100 万人の農家をカバーしたい。それが私たちの北極星です。このオペレーションが価値あるビジネス モデルであることを証明できればと思います。」
空を見上げ、土に手を触れる農家にとって、天候に左右されることなく仕事ができることは大きな安心感につながりました。
「Oko は私たちのために素晴らしいことをしてくれています。」とコウリバリさんは言いました。「他の農家への啓蒙活動も行っています。そのアイデアは素晴らしく、農家を大いに助けてくれています。」
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]]>The post Microsoft Azure で超パーソナライゼーションを目指す TD Bank グループ appeared first on マイクロソフト業界別の記事.
]]>北米・カナダの大手金融グループである TD Bankグループ (以下、TD) は、2019 年 4 月 23 日にマイクロソフトと戦略的パートナーシップを締結しました。TD が Microsoft Azure をクラウド基盤として使用し、データや AI リソースへの安全で俊敏かつ柔軟なアクセスを目的に設計されたツールを技術チームや設計チームに提供するというのが主な提携の内容です。
さらに、2022 年 1 月 26 日には、TD が持つデータ サービス群を Microsoft Azureのデータサービス群へと移行する ことを発表しました。Azure および Databricks を活用し、同社の顧客体験をさらに強化・進化させ、新しい商品開発をサポートするプラットフォームやツールを充実させることが目的です。
さらに、同社は 2022 年 4 月 26 日に、米国の南フロリダに DX を加速するための “テックハブ” を設置し、イノベーションとカスタマー デリバリー能力を強化することを発表しました。
TD のプラットフォーム & テクノロジー担当上級副社長であるグレッグ・キーリー氏は、「私たちは、当行の全拠点のテクノロジ チームとともに、お客様にサービスを提供し、急速に変化するお客様の期待に応えるため、俊敏性やイノベーション、スピードアップの推進に取り組んでいます。」とコメントしています。
このように、TD は大手金融グループの中ではクラウドや AI といった先端テクノロジの取り込みに非常に急進的な姿勢を持つことで知られています。
同社は最近、新しいテクノロジを活用して革新的な顧客ソリューションを実現したことで、Global Finance から 3 年連続で「Most Innovative Digital Bank in North America」、2 年連続で AI を活用したソリューションで「Celent Model Bank」に選出されるなど、複数の賞を受賞しています。また、8 年連続でダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・ワールド・インデックスに掲載され、今年はワールド・インデックスの北米拠点の銀行として最上位にランクインしています。
85,000 人の従業員と、米国とカナダに 2,600 万人以上の顧客を抱える TD のような大手金融機関が、なぜこれほどまでにイノベーションに先端的に取り組めるのでしょうか?
1 つは、社員のデジタル人材としての育成に本腰を入れていることが挙げられます。TD は、新規および既存の人材の成長を支援するため、社員のスキルと能力に継続的に投資し、Azure・クラウド・DevOps 技術など、部門を超えてグローバルに使用されている新技術や業界標準ツールに取り組む機会を社員に提供しています。
例えば、TD とマイクロソフトの強力な協力関係や Enterprise Skills Initiative プログラムを通じて、TD の社員 822 名がスキルセットの幅を広げ、Azure の認定を受けました。このようなスキルアップへの取り組みにより、TD の社員は社内からキャリアと経験を伸ばしていくことができます。
もう 1 つ重要な要素として「イノベーションを起こすための文化」が同社にあることが挙げられるでしょう。
同社は、独自のカルチャーと包括的な環境でリードし続け、最近ではフォーブス誌による「2021 年世界で最も働きがいのある企業」にも選ばれています。
テック企業でのキャリアを持ち、現在は同社のグローバルイノベーション部門を統括する Thomas 氏によると、同社の文化の枠組みには、”イノベーション” の “I” は “私” であるという考え方があるとしています。つまり、イノベーションは全社的な精神そのものであり、様々な障害を乗り越える大きな力になるという説明をしています。
イノベーションとは、最新の技術に手当たり次第に手を出すことではありません。Thomas 氏は、「銀行のような組織では、新しいアイデアや技術について話すために 40 人を部屋に連れてきても、そのうち 38 人はなぜそれがうまくいかないのかを話すだろう」と言っています。つまり、アイデアや技術に着目するのでなく、まずは顧客の課題に真摯に向き合い、それを解決するためにイノベーションに取り組むという、ある意味基本的な所に立ち戻るべきだとしています。
積極的に行動し、顧客のニーズに応えること。そうすることで、遠回りに思えるかもしれませんが、長い道のりを歩むことができるというわけです。
こうした文化を持つ TD は現在、デジタルチャネルにおける “超パーソナライゼーション” に力を入れています。
TD の Chief Digital and Payments Officer である Khalfan 氏は、「デジタルでつながった世界において、私たちはどのようにお客様をサポートできるかをこれまでとは異なる方法で考え、お客様が安心して金融の意思決定を行えるよう、高度にパーソナライズしたデジタル体験を創造しています」と述べています。
1 例として、TD のモバイル アプリは、AI を活用したデジタル ナッジを提供しています。残高不足の予測、政府の救済プログラムの利用を検討した方が良いかどうか、今後の定期的な請求に関する通知など、顧客にパーソナライズされ文脈に応じたプロアクティブなインサイトを提供しています。
また、会話型 AI を使用して、お客様が財務に関する情報を得たり、よくある質問にアクセスできるようにする仮想アシスタント “TD Clari” を開発し、米国顧客向けのモバイル アプリ内で実装しました。
「私たちは、お客様 1 人 1 人がユニークな事情を抱えていることを理解しており、適切な洞察とサポートでお客様を導き、お客様が決断する力を感じられるようなツールを提供したいと考えています」と Khalfan 氏は述べています。
コロナ禍で顧客がよりデジタルにシフトする中で、同社のデジタル・セルフ サービスを強化する顧客戦略は少なくとも 2 年早まりました。その勢いは今後、緩まるどころかますます加速することになるでしょう。マイクロソフトはこれからも、TD のデジタル変革を強力に支援していきます。
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]]>The post フィンテック エコシステムとのコラボレーションとその活用方法 appeared first on マイクロソフト業界別の記事.
]]>マイクロソフト マネージングディレクター フィンテック
Roman Chwyl
マイクロソフト 米国プライベートキャピタルチーム プリンシパル
Gerald Rhee
RomanとGeraldは、適切なテクノロジーパートナーがどのようにスタートアップエコシステムを変えることができるかを説明します。
コミュニティと社会的責任に注意を払う組織は、成長、牽引力、従業員の忠誠心を得る可能性がはるかに高くなります。実際、「2019 Aflac Corporate Social Responsibility Survey」1 によると、消費者のロイヤリティを獲得する可能性も高く、77% の消費者が社会的責任を重視している企業から購入する意欲を持っています。このことは、「危機における責任あるリーダーシップに関する従業員の視点」2、従業員の 95% が、ビジネスは従業員から顧客、そして事業を行う地域社会まで、すべてのステークホルダーに利益をもたらすべきと考えていることからも裏付けられています。そして、これらの統計は、ある重要な要素を指摘しています。
特に、後発のフィンテック企業は、金融の世界と消費者の金融への関わり方を大きく変えようとしています。しかし、この信頼を確立することは、市場に登場したフィンテックが直面する主要な課題の 1 つです。
もう 1 つは、規模です。リスクとコストを最小限に抑え、顧客の喜びと従業員のエンゲージメントを維持しながら、基幹システムのスケーラブルな近代化を実現するスマートなソリューションを見つけなければなりません。これらを両立することは非常に複雑な作業ですが、不可能ではありません。
そしてまた、銀行口座を持たない人や銀行を敬遠する人が、より伝統的な銀行ソリューションを利用する人と同じように世界と豊かに関わることができる金融ソリューションを利用できるように、政府と大企業が支援しなければならない曲芸でもあるのです。
Deloitte3 が指摘するように、大企業がフィンテックをスケールさせるために協力することは、スタートアップの停滞を避けるためだけでなく、双方が利益を享受するために不可欠となっています。顧客はワンストップショップを求めていますが、同時に、より速く、より創意に富み、管理負荷の低い軽快なフィンテックソリューションへのアクセスも求めています。中小企業は、インフラと可能性を真に拡大するために必要なテクノロジとサポートへのアクセスが認められれば、リーチ、コスト効率、顧客満足の各項目をチェックすることができるようになるのです。
そこで、信頼と社会的経済が重要な役割を果たすことになります。テクノロジを導入することと、フィンテックの拡張や信頼できるパートナーとの提携による収益の加速に特化したエコシステムに入ることは別のことです。後者は、新興企業が成功するための空間です。また、厳しいリスク パラメータとガバナンスの義務の範囲内にとどまりながら、ビジネスを行うための新しい方法を実験、調査、および発見することもできます。適切なテクノロジ パートナーを選択することは、適切なスキル セット、投資、市場を見つけることと同じくらい、スタートアップの挑戦の一部になっています。
テクノロジ エコシステム市場を支配する 3 つの巨人があり、Azure クラウド プラットフォームと包括的なサービス スイートを備えた Microsoft は、企業の型から抜け出すことに関して先導してきました。マイクロソフトは最近、その社会的およびコミュニティ支援プログラムを一貫して進化させてきたことが評価され、世界で最も社会的責任のある企業トップ 6 4 の 1 つに挙げられました。ニューヨーク タイムズ5 が最近の記事で指摘したように、同社は長年の成功により、技術における倫理的なリーダーシップに関して王道を歩むことができるようになりました。
マイクロソフトは、大企業に利用されてきたテクノロジを、3 人の社員と夢を持ったフィンテックのスタートアップ企業に転化させながら、この問いに答え続けているのです。データベース管理、企業資源計画 (ERP)、オフィス、電子メールなど、あらゆる分野にまたがるソリューションは、以前より費用対効果が高くなり、この節目をとっくに過ぎたメガエンタープライズと同様に、拡張性のある新興企業のシステムを容易に動かすことができるようになりました。ゲーム業界への大規模な投資と買収、LinkedIn への進出、検索と広告へのスマートな動きにより、マイクロソフトは、規模にかかわらず、あらゆる組織の目的に合ったソリューションとデジタル タッチポイントの提供を支援することができます。そして、マイクロソフトの文化は、社会正義、多様性、インクルージョンにしっかりと焦点を当て続けています。
“PitchBook Emerging Tech Research on Fintech”6 – 四半期ごとの金融サービスのスナップショットは、過去 18 か月間にデジタル化に向けて着実に変容しており、これは急速に成長するフィンテック新興企業のエコシステムに計り知れない利益をもたらしています。また、フィンテックは、競争の激しい市場における破壊的な優位性として、自動化、AI、機械学習の活用に注力していることがわかっています。
フィンテックの分野では、マイクロソフトは、信頼を定着させ、一貫した持続可能な成長を可能にするシステムの構築を支援することで、十分なサービスを受けていない人々を助けようとしている企業との協力に尽力しています。デジタルバンキングの自動化、クレジット機能の提供、ロイヤルティ プログラムの構築、グローバルな決済プロセスの変革などを支援するブティック型プラットフォームを支えているのです。また、マイクロソフトは、自分たちのソリューションで変化をもたらすことに注力しているフィンテック、つまり、人々を制限する境界線を壊し、その代わりに機会を作り出そうとしているフィンテックに細心の注意を払っているのです。
このため、マイクロソフトとウォルマート (英語) はすでに未開拓の地域に焦点を当てたソリューションの構築で提携し、フィンテックが顧客にラストマイルの価値を提供するために活用できる API のエコシステムを構築しています。2018 年、同社の月間顧客数は 2 億人で、そのうち 2,000 万人は現金主義者で非正規雇用者です。以前はフィンテック サービスがなかったような顧客とのこのレベルのつながりは、デジタルの価値と、コミュニティと生活を変えるためにその潜在能力を利用することにあることを強調しました。
ビジネスの未来は、それが大企業であれ中小企業であれ、人の価値を認め、テクノロジを使って地球上のすべての人の生活を変えることの重要性を認識する起業家やリーダーの手に委ねられているのです。
12019 Aflac Corporate Social Responsibility Survey (英語)
2Employee Perspectives on Responsible Leadership During Crisis, Porter Novelli (英語)
3The FinTech Dilemma: When to scale up your business?, Deloitte (英語)
49 Socially Responsible Companies to Applaud, Classy Blog (英語)
5Microsoft Tries a New Role: Moral Leader, New York Times (英語)
6Emerging Tech Research on Fintech, Pitchbook (英語)
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]]>The post データ活用を ESG 戦略に取り込み収益を拡大させるには appeared first on マイクロソフト業界別の記事.
]]>持続可能な投資やグリーンファイナンスへの需要が高まる中、ESG を測定し行動する能力が取締役会の優先事項として浮上しています。
昨年開催された COP26 では、気候変動金融に関するいくつかの重要な発表が行われました。Glasgow Financial Alliance for Net Zero (GFANZ) は、2050 年までに融資や投資による排出量をゼロにすることを約束しました。また、国際財務報告基準財団は、金融市場における一貫した気候変動に関する情報開示基準を確立するための取り組みを開始しました。これらはほんの 1 例です。
化石燃料からクリーンなエネルギー源へと経済をシフトさせるには、膨大な資本の再配分が必要であることは明らかです。COP26 のファイナンス・デーで、英国のリシ・スナック首相はこう指摘しました。
「投資家は、自分の投資による気候変動への影響を、損益という伝統的な財務指標と同じくらい明確にし、確信する必要があります。」
ビジネス リーダーにとって、環境保護への取り組みを強化し、次世代のために地球を守らなければならないというプレッシャーがあるのは明らかです。しかし、別の圧力も感じられます。金融機関を含むあらゆる業界のリーダーたちは、目的と収益性が絡み合っていることにますます気づいています。
消費者は、購入するブランドに環境や社会への配慮を求めるようになり、環境に配慮するためにお金を払うことも厭わなくなっています。企業は、パートナーシップやサプライヤーとの交渉において、ESG (環境・社会・ガバナンス) 基準を前面に押し出しています。その背景には、ステークホルダーや規制当局からの圧力の高まりがあり、EU では企業に ESG 活動に関する定期的な報告を求めています。EU のグリーン ディールでは、今後 10 年間に持続可能性と経済成長を両立させるデジタル イニシアチブを支援するために、1 兆ユーロの投資が行われています。欧州委員会は、COVID-19 救済策の一環として、今年だけで 2,500 億ユーロのグリーン デットの調達を計画しています。
ESG は今や取締役会レベルの優先事項となっており、コミットメントを明確に実行している企業は、競争上の優位性を獲得することができます。バンク・オブ・アメリカの調査によると、ESG 投資戦略は、欧米で 5~10% ポイントのアウトパフォームを記録しています。
投資家は注目しています。ESG 上場投資信託 (ETF) の価値は、2020 年には世界で 2 倍の 1,200 億ドルを超えると予想されています。
BNY Mellon 社のような金融サービス企業は、ESG 要素に合わせて投資ポートフォリオをカスタマイズできるように設計されたデータおよび分析ソリューションを発表しています。同社のデータ・アナリティクス部門のグローバル ヘッドであるチャールズ・テシュナーは次のように述べています。「これらの革新的なクラウド ベースの新製品の発売が非常にエキサイティングなのは、お客様の満たされていないニーズをターゲットにして設計されているからです」。
「ESG は、木を育てるような、はかない、損失を出すような慈善事業ではありません。ほとんどの世代、特に若い世代が、頭と心と財布を使って信じている現実的なものなのです」。- クリス・スキナー (金融技術専門家)
フィンテック、リテール バンク、投資ブローカーなど、金融サービス企業は、資本の配分者として、より持続可能で包括的な未来を形成する上で重要な役割を担っています。金融サービス企業は、金融機関と、ESG 目標の達成に成功した組織との間のゲートキーパーとなります。
しかし、ESG 市場が成熟するにつれ、測定の問題が大きな問題となってきています。
財務パフォーマンスの測定・報告とは異なり、ESG 報告にはセクターを超えた明確な基準がありません。その代わりに、ESG 関連のデータは、自己開示された年次のサステナビリティや、四半期ごとのデータ ベンダーのレポートやランキングから得られることが多くなっています。
これを受けて、世界経済フォーラムや World Business Council (120 人以上の世界の CEO が参加するコミュニティ) などの組織が、ESG 報告のための共通の評価基準を作成するという大義名分を掲げています。最近発表された「持続可能な開発のための世界経済人会議」のマニフェストは、この問題への取り組みの緊急性を強調しています。
「しかし、包括的な排出量データを共有し、サプライ チェーンを通じた脱炭素化を促進するための明確な調達基準を設定するためには、さらなる努力が必要です…」 – World Business Council for Sustainable Development
さらに、金融システム緑化のための中央銀行・監督機関ネットワーク (NGFS) は最近、中央銀行と監督機関が気候変動による経済・金融リスクをよりよく理解するために、シナリオ分析を取り入れることを奨励する報告書を発表しました。
結局のところ、金融サービス企業がヘッジを行えば、私たちが共通して必要としているグリーン変革への投資が減ることになります。また、信頼性の高い発見可能なデータがなければ、金融会社やトレーダーは最も有望な ESG 投資機会を効果的に見つけることができず、経済成長や環境・社会の発展を妨げることになります。
ESG 関連データを記録、報告、実行する能力は、各組織にとっての旅路となります。決まった道筋はありません。企業にとって重要なことは、データをどのように取得し、測定するかということです。これは、社内の ESG 活動を指導するためだけでなく、パートナー、顧客、投資家などの外部のステークホルダーに対する透明性を確保するためにも必要です。「S」と「G」についても考えることが重要です。サステナビリティに関するデータだけでなく、倫理的に行動し、社会的な目標を達成するための組織の取り組みがもたらす総合的な影響についても把握する必要があります。
クラウドへの移行は、構造化・非構造化を問わず、社内外のデータを収集・保存するための基本的なステップです。測定対象となる変数には、直接的および間接的な二酸化炭素排出量、原材料の調達、廃棄物管理、職場の賃金の公平性や多様性などがあります。さらに、AI と機械学習は、データの収集と分析を自動化する上で重要な役割を果たします。英国の銀行である NatWest グループは、ビジネス顧客と協力して AI ツールを導入し、自社のカーボン フットプリントやパートナー ネットワークのフットプリントをより良く理解し、オーダーメイドのアクション プランを作成しているのはそのためです。
NatWest の CEO、アリソン・ローズ氏は次のように述べています。「気候変動への取り組みは、現代の最大の課題の 1 つです。英国のビジネス界をリードする銀行として、私たちには、英国のネット・ゼロ・カーボン・エコノミーへの移行を促し、可能にし、リードするという重大な責任と能力があります。
データを使って自信を持って ESG を報告できるようになると、従業員から投資家まで、あらゆる主要なステークホルダーとの信頼関係が構築されます。また、データ駆動型の組織への移行により、CO2排出量を削減しながら収益を上げるという、まったく新しいビジネス モデルが生まれていることも喜ばしいことだと思います。
オランダの Rabobank は、遠隔地の衛星観測と AI アルゴリズムを利用して、農家がどれだけの CO2 を生産し、どれだけの CO2 を隔離したかを測定できるプラットフォームを開発しました。農場が生産した CO2 よりも多くの CO2 を隔離した場合、その差分を自社の CO2 排出量を相殺する必要のある企業に販売することができます。目標は、100 万以上の農場がこのプラットフォームに参加することです。すでに農家の方々には効果が現れています。このプロジェクトでは、土壌や肥料、排水の管理を改善することで、CO2 の排出量を削減しています。また、このプロジェクトのおかげで、農家は生産物の品質と一貫性を高めることができました。参加農場の生産性は、3 年間で 15〜20% 向上しました。収入も 20% 増加しました。
イタリアのフィンテック企業である Flowe 社は、ミレニアル世代の顧客を対象に、環境に配慮した生活の仕方を指導するモバイル アプリを開発しました。Flowe 社の Cultural Energy Orchestrator である Ivan Mazzoleni 氏は次のように述べています。「Flowe 社では、まったく新しい経済パラダイムを推進しています。個人の向上が、社会や環境の向上という全体的な向上につながるような、”ベター・ビーイング・エコノミー ” と呼んでいます」。
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]]>マイクロソフトは、自社のカーボン コミットメントの中で 2030 年までにカーボン ネガティブを達成するだけでなく、2050 年には創業以来排出してきた二酸化炭素を除去することを表明し、この分野に炭素除去テクノロジ開発、炭素クレジット購入を含む多くの投資を行っています。
しかし同時に、実効性のある炭素クレジットが市場に十分な量が存在しない、という問題も明らかになってきています。本稿では、実効性がありかつ効率的な炭素除去市場を構築するためのブロックチェーンを活用した標準の確立・システム開発に関する取組みをご紹介します。
※本稿は 2021 年 11 月 3 日公開 Developing the systems needed to enable effective carbon markets to achieve net zero (英語) を翻訳し、一部加筆したものです。本文のリンクは注記以外すべて英語で提供されています。
ブログ著者: Marley Gray
Principal PM Architect, Financial Services, Microsoft
Azure Global Commercial Industry & InterWork Alliance (GBBC) Leadership
科学的に見ても、炭素除去なしに 2050 年までにネット・ゼロ (炭素排出量を全体としてゼロにする) を達成する道はありません。IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change: 国連気候変動に関する政府間パネル) の最新の報告書によると、大幅な削減が必要な場合でも、炭素除去によって排出量を相殺する必要があるとされています。そのためには、より大規模な炭素除去市場が必要となります。米国だけでも、2050 年までの年間排出量の 3 分の 1 に相当する量を、毎年除去する必要があるとされています。
炭素除去の研究と技術革新は非常に有望で、多くの投資を集めていますが、機能的なグローバルの炭素除去市場を確立するためには、『Nature』誌に最近発表されたネット・ゼロの意味と測定方法の明確化など、多くの課題が残っています。これらを明確にすることで、投資を質の高いプロジェクト、より多くのデータを収集する新しいシステム、そして財務および炭素会計 (ある事業活動がどれだけ二酸化炭素の排出または削減に寄与したかを算出・集計すること) 取引の透明性を高める能力に集中させることができます。
データの質と量を向上させることは、炭素除去市場にとどまらず、私たちや他の組織がまず削減に取り組む中で、組織や世界のネット・ゼロに向けた進捗状況を把握するためにも必要です。
たとえば、マイクロソフトは、データを活用したサステナビリティの変革に取り組んでおり、Microsoft Cloud for Sustainability によって、組織がネット・ゼロに向けた炭素排出量の記録、報告、削減をより効果的に行うことができます。このソリューションは、炭素排出に関するデータのサイロを解消し、曖昧さを排除することで、企業が正確な炭素会計を実現し、環境への影響をコントロールするためのインサイトを提供します。
このような企業の新しい記録システムに伴い、二酸化炭素の削減と排出量を相殺するための除去クレジットの両方に関する新しい機能を開発するためのイノベーションが必要であることが明らかになりました。現在、炭素クレジットの記録システムは単一ではなく、多くのサイロ化されたシステムが存在しており、これらのシステムを操作することは困難で、市場の発展に支障をきたしています。
さらに、これらのクレジットは元々、除去ではなく、炭素回避活動やオフセットを記録するために作られたものです。つまり、現在、炭素削減クレジットに使用されているデータとプロセスは、この新しいタイプの炭素除去クレジットを識別するためにアップグレードする必要があるということです。これは問題であると同時にチャンスでもあります。
そこで、Azure Global (お客様、パートナー、マイクロソフト社内のチームが Microsoft Azure を使って最も困難な問題を解決できるように支援することを目的としたチーム) は、この分野の調査を始めました。炭素市場の透明性、品質、革新性を高めるために、Azure、パートナー、そしてお客様は何ができるのでしょうか?
これまで、新しい炭素市場を立ち上げても問題は解決しませんでしたが、20 年以上かけて構築された既存の市場基盤を進化させることには大きな価値があります。そのためには、デジタルガバナンスと相互運用性の基準が必要であり、炭素関連プロジェクト間や資産間の品質を比較・評価する必要があります。既存のインフラは現在、統合されていない登録機関の中でサイロ化されており、ナビゲートするのが困難です。市場インフラを進化させるには、レジストリが透明性に基づいた共通のエコシステムの中で運営されることが必要です。
最初のステップは明確でした。問題の範囲を考えると、炭素 (除去) 産業界に合わせる必要があります。私たちの考え方の 4 つの指針は以下の通りです。
私たちは、オープン スタンダードの団体である InterWork Alliance (現在は Global Blockchain Business Council (GBBC) のイニシアチブ) と協力して、共通のプロセスとデータ標準を含むボランタリー エコロジー市場のライフサイクルを定義するタスクフォースを主導することから始めました。そして、これらのプロセスとデータの標準を用いて、お客様やパートナーと協力して、取り組むべき最も重要なシナリオを特定する作業を開始しました。
初期の結果は有望で、以下のように今後の可能なルートを示しています。
それぞれのシナリオの詳細と、要求事項の特定、プロトタイプの構築、パートナーとの連携を支援している参加者については、この記事の後半で触れています。これらの参加者は、科学的に検証可能な主張に基づき、現在入手可能な量をはるかに超える高品質の炭素除去を可能にするエコシステムを構築しています。
1. (質の高いクレジットの) 供給拡大 – 測定・報告・検証 (MRV) プロセスのデジタル化
供給を拡大するということは、炭素除去の主張を行うための科学的根拠に基づく新しいプロトコルを作成し、管理する組織が、それらの組織と独立して検証を行う必要があるということです。そのライフサイクルでは、生態学的プロジェクトが、主張の源となる活動の種類に応じた品質基準に従って生態学的主張を行うことが求められます。
つまり、炭素除去の品質基準に従ったエコロジカル クレームは、炭素除去のクレーム (達成する炭素削減の証明) となりますが、これは、炭素削減や水などの他の種類の品質基準にも一般的に適用できます。エコロジカル クレーム自体は、独立して検証可能なクレームを裏付ける「証拠」として扱われる多くのデータで構成されます。
エビデンス自体は、複数のソースからのものであったり、請求項ごとに全く異なるものであったり、さらには専有データや機密データを含んでいたり、別のデータソースを参照している可能性もあります。
しかし、このエビデンスの収集、保管の過程、およびメタ データは標準化されており、同じインフラを多くのプロジェクトや検証機関で再利用することができます。共通のデータとプロセス基準を用いてインフラを共有し、請求のための交換可能な品質基準を設計することで、市場投入までの時間を短縮し、開発コストを削減し、除去の品質を向上させ、最終的にカーボン請求の価値を高めることができると考えています。
私たちは、Aker Carbon Capture、Carbon Asset Solutions、ClimateCHECK、ESMC、Gold Standard、Ørsted、Patch、Puro.earth、SustainCERT、Verra などの幅広い組織やコロンビア国家 (スペイン語) と協力し、共有の Azure インフラを使用してこれらのプロセスとデータの標準をテストしました。
ボランタリー市場の初期の結果は有望ですが、評価には時間がかかります。副産物として、デジタル測定・報告・検証 (MRV) フレームワークが作成され、今後の開発と標準化のために Interwork Alliance で公開されています。
2. 市場
データとプロセスの基準に従うことで、プロジェクトの種類に関わらず、炭素除去量が共通して表示されるため、買い手は品質、価値、好みを迅速に比較することができます。しかし、これらの除去物を大規模に発見するためには、買い手と売り手をマッチングする市場、そして最終的には取引所が必要となります。
耐久性、付加価値、発生源地域、除去タイプ、幅広いコベネフィットなどの属性に対する買い手の好みに基づいて、どのように除去物を見つけるかを探るには、この需要に応えるように設計された市場が必要です。
私たちは、Climate Impact X (CIX)、European Energy Exchange (EEX)、Nasdaq、Patch (英語) ページへ遷移”>Patch、Puro.earth、Xpansiv と協力して、この炭素クレジットの共有インフラへの市場接続を評価し、テストしました。
これらのパートナーは、自主的な炭素市場の拡大に適した市場や取引所の構築に取り組んでおり、既存の削減クレジットを支援しつつ、除去クレジットへの移行の必要性を認識しています。
3. 取引と決済
このエコシステムを迅速に拡大するためには、炭素除去の生産者がクレジットを迅速に収益化することが必要です。市場や取引所を介して買い手と売り手をマッチングし、炭素除去クレジットの所有権を移転することは、取引の半分に過ぎません。
このようなエコシステムは、何百万もの家庭や企業に購買を拡大し、デビットカードやクレジットカード、企業の決済システムを提供することができなければなりません。このようなエコシステムを共有することで、リアルタイムに近い決済が可能になり、より早く、より少ない摩擦でサプライヤーに現金を渡すことができるようになると考えています。
当社は、CIBC、Itaú、National Australia Bank、NatWest Group の国際的な共同事業である Project Carbon と協力して、買い手のネットワークをこの共有インフラに接続し、取引の移転と現金の両セグメントでエンド・ツー・エンドの取引をシミュレートしました。
プロジェクトカーボンは、デジタル化された決済プラットフォームであり、銀行の信頼性を活かして、カウンターパーティ リスクの低減、顧客の迅速な導入、取引記録の提供を行い、明確で一貫した価格と基準で高品質な炭素クレジットを提供するグローバル プラットフォームを支えています。供給と流通の統合は非常に有望であり、すべての人や企業にとって気候変動対策が手の届くものになることを期待しています。
4. 金融エコシステムの統合
新しいカーボン・クレジット・エコシステムでは、クレジットの所有者がその資産を保持し、再び取引したり、必要に応じて引退させたりして、実効的な排出量を削減できるようにすべきである。また、新しい製品にクレジットをバンドルして、ネット・ゼロの製品を作ることができるようにすべきです。燃料から果物まで、これらのカーボン・クレジットを商品や完成品に添付することで、気候変動に配慮した製品をサプライチェーンに組み込むことができます。
私たちは、BNYメロン社と協力して、カーボン・クレジットが金融エコシステムにどのように適合するかを検討しています。炭素クレジットを伝統的な資産市場とデジタル資産市場の両方に統合することで、機関投資家へのアクセスを増やし、環境と持続可能性の目標を達成できるようになるのではないかと期待しています。
クロージング
シナリオのテストや初期段階のコンセプトの構築に協力していただいているパートナーの皆様に感謝します。私たちは、「意味」「測定」「市場」という 3 つの優先事項の一環として、この「全員参加型」の取り組みを始めたばかりです。詳細をお知りになりたい方は、こちらからお問い合わせください。来年の COP までに、私たちの進捗状況をお知らせできることを楽しみにしています。
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]]>マイクロソフトは、2021 年 11 月 3 日の Microsoft Ignite にて、金融サービス業界向けのクラウドサービスである “Microsoft Cloud for Financial Services” (以下、MC4FS: 日本市場での提供時期は未定) の詳細を発表しました。本稿では、その内容についてお伝えします。
多くの金融機関は、デジタル エクスペリエンスに関する以下 3 つの重要な分野に注力する必要性に迫られています。
MC4FS は、Microsoft Azure、Microsoft Power Platform、Microsoft 365、Dynamics 365 を活用しています。また、金融サービス業界の規制要件や管理のフレームワークに合わせて設計されており、多層のセキュリティ、コンプライアンス機能が組み込まれています。さらには、この基盤の上に、金融サービス業界に合わせたデータ コネクター、アナリティクス、AIを準備しています。
また、主要な独立系ソフトウェア ベンダーやシステム インテグレーターと協力して、MC4FS を連携したソリューションの開発を始めています。それでは、MC4FS の主要機能を詳しくご紹介します。
MC4FS の主要機能の 1 つが「Unified Customer Profile (統合化された顧客プロファイル)」です。この機能では、銀行がレガシー システム間のサイロを解消してデータを統合し、顧客理解の向上、顧客インサイトの獲得・提示、顧客の360度ビューを実現します。具体的には、金融データ、行動データ、デモグラフィック データを統合し、銀行のお客様の 360 度の視点と次の行動の提案により、お客様の体験をカスタマイズします。
リレーションシップ・マネージャーは、世帯データ、ライフイベント、今後のイベントなどをすぐに把握することができ、適切なカスタマー・ジャーニーで顧客と接することが可能となります。また、セグメンテーションにより、銀行は適切な顧客と機会にフォーカスすることができます。
今回導入された統合顧客プロファイルの革新的な機能の 1 つに、顧客離脱モデルがあります。 この機能は、顧客が休眠口座になる可能性や、最悪の場合、顧客が金融機関を辞める可能性について、洞察を得ることができます。
AI を活用したこの離脱モデルは、金融資産 (口座、クレジットライン、ローン、定期預金)、金融商品 (カード、デビット、オーバードラフト)、さらには卒業予定、住宅購入、転居などのライフ イベントに至るまでの一連のデータを活用しています。 そして、簡単なステップ・バイ・ステップのウィザードを使用して、お客様のデータを利用してこれらの予測モデルを構築することができ、予測の精度を示すモデル・パフォーマンス・グレード (A、B、C) も提示されます。
この離脱モデルを活用することで、銀行は顧客の将来動向をより的確に予測し、離脱リスクの高い顧客の維持活動を積極的に行うことができます。 これは、より豊かなインサイトを提供することで、お客様のデジタル トランスフォーメーションを実現するためのイノベーションの 1 例です。
ローンの組成プロセスは、社員同士のコラボレーションを必要とする性質を持っているます。マイクロソフトは Microsoft Teams を活用してローン用のコラボレーション マネージャーを開発し、フロント オフィスとバック オフィスでの自動化とコラボレーションを可能にしました。これにより、銀行と顧客の間でのコミュニケーションが改善され、融資プロセスの迅速化、エラーの最小化、顧客体験の向上を実現します。
コラボレーション マネージャーの主な機能には、ローンの自動化、担当部署間のコラボレーション、およびコミュニケーションがあります。貸出業務の自動化では、貸出業務のプロセスを編成し、自動化を効率化します。これらの機能は、あらかじめ組み込まれたコネクタを使用して既存のシステムからデータを集約し、パートナーや顧客がローコード ツールを使用してプロセスをカスタマイズできるようにします。
クロスチーム コラボレーションでは、チームが共同でローンのボリュームを管理したり、タスクやファイルの管理を一元化して生産性を向上させるためのダッシュボードを提供します。最後に、コミュニケーション機能は、セキュリティとコンプライアンスのニーズを満たしながら、お客様をバーチャルにサポートします。
顧客オンボーディングは、カスタマー エクスペリエンスに不可欠なプロセスの 1 つです。これらの機能は、お客様がローン アプリケーションやセルフサービス ツールに簡単にアクセスできるようにし、ローン プロセスを合理化することで、お客様の体験やロイヤリティを高めるとともに、組織や従業員の生産性を向上させます。
一貫したエクスペリエンスでローンのトラッキングを自動化することで、多くの書類や申請者間で収集した詳細な情報を含むローン申請のモニタリングと検証を効率化することができます。この機能は Power Platform 上に構築されているため、既存のツールと連携してローン申請のトラッキングを拡張したり、ローコード開発ツールを使用してカスタマイズしたりすることで、個別のローン商品に対応させることもできます。
この機能は、金融知識を活用して顧客との対話をパーソナライズし、顧客の希望するチャネルに意味のある形で関与するとともに、チャネル間のジャーニーをインテリジェントに管理して、解約や解決までの時間を短縮することを目的としています。
銀行業務のカスタマーエンゲージメントでは、Dynamics 365 Customer Service with Omnichannel (英語) を活用して、音声やメッセージングなどのチャネル間で一貫したカスタマー エクスペリエンスを提供しています。Dynamics 365 Customer Service with Omnichannel は、音声やメッセージなど、さまざまなチャネルで一貫した顧客体験を提供します。また、Microsoft Teams との連携により、特定のテーマに関する専門人材とも簡単にコミュニケーションが取れます。これにより、カスタマー サービスの担当者は、関連するリソースをすぐに活用できます。
金融機関の中では、顧客データはさまざまなデータ ソースに保存されています。私たちは、業界データ モデルとデータ コネクタの両方に投資して、価値の高いデータに簡単にアクセスできるようにし、金融サービス向けにカスタマイズされたビジネス プロセスを強化しています。金融サービスに特化したセマンティクスを持つ業界データモデルと、業界に特化した事前に構築されたコネクタにより、既存システムとの相互運用性を高め、データの取り込み、統合、エンリッチメントを行い、インサイトやビジネス ワークフローを開発することができます。
MC4FS の優れた点は、お客様の状況に合わせたユースケースのシナリオが用意されていることです。マイクロソフトのデプロイメント オーケストレーターにより、世界中の地域のお客様の環境で、これらのユースケース シナリオを簡単に利用、更新することができます。
私たちの目的は、お客様の特定のニーズに合わせたソリューションを提供することであり、すべての業界がユニークであることを認識しています。私たちは主要な ISV やシステム インテグレーターと協力して、各地域のお客様が独自のビジネス課題に対応するために必要な包括的なソリューションを提供しています。
例えば、Mortgage365は、エンド・ツー・エンドのデジタル・レンディング・プラットフォームで、Microsoft Cloud for Financial Services を活用し、異種の住宅ローン データシステムの接続、コアプロセスの自動化、顧客の全体像の可視化を実現することで、銀行の財務目標達成を支援します。アクセンチュアとアバナードは、「Microsoft Cloud for Financial Services」を活用する金融機関からの要求に対応するため、特定のサービスやソリューションを開発しました。
MC4FS やその他の業界向けクラウド上のパートナー ソリューションを探しやすくするために、AppSource Industry Gallery も新たにリリースしました。
マイクロソフトはこれからも、金融サービス業界の DX 推進に向けて、サービスの開発とパートナー企業のソリューション開発を積極的に行ってまいります。
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]]>※本稿は Banking on green: financial service firms use tech to nurture a more sustainable planet を翻訳し、一部加筆したものです。
※本稿で紹介しているリンク コンテンツは、すべて英語で提供されています。
エドウィン・サパタ氏は、2008 年のことを覚えています。それは、コロンビアのミストラトにある、サパタ氏の家族が 32 年間所有している30,000㎡ (3ha) の小さなコーヒー農園に、450 本のクルミの木を初めて大量に植えたときでした。海抜 1,550m に位置するこの農園は、コロンビアのコーヒー トライアングルと呼ばれるリサラルダ地方でのコーヒー栽培のリスクである、過度の雨と猛暑に常に悩まされてきました。
気候変動に伴い、この 2 つの課題はますます深刻化しています。雨量が増えれば水量も増え、それに伴って畑の浸水や丘陵地での地滑りが発生し、農作物が破壊される可能性が高まります。また、コーヒー豆は太陽に焼かれてしまい、生産には使えません。そのため、木を植えることは、余分な水を吸収することと、コーヒー豆を激しい太陽の光から守るための日陰を作るという 2 つの目的がありました。
13 年後の今日、サパタ氏は今も植樹を続けていますが、その目標はさらに大きくなりました。サパタ氏の農場は、コーヒー以外にも、マンゴー、バナナ、オレンジ、ミカン、レモン、アカシア、アボカドなど、さまざまな果物を栽培しており、生物多様性の 1 例となっています。彼が木を植え続けることで、大地は回復し、鳥たちが戻ってきて、土壌は多種多様な作物に栄養を与え、生産に必要な化学薬品の量は格段に少なくなっています。そして、この農場は、大気中の CO2 を排出するのではなく、吸収しているのです。
これを可能にしているのが、サパタ氏のような農家と大企業を結びつけ、植樹などの持続可能な農業を行うことで CO2 を回収するプロジェクトです。このプロジェクトは、オランダの多国籍銀行・金融サービス企業であるラボバンク (本社: オランダ・ユトレヒト) と、より持続可能なサプライ チェーンの構築を目指す国際的な市民団体 Solidaridad が共同で行っているものです。Solidaridad の「Coffee of the Future」イニシアチブは、コロンビアとペルーの 7,300 人の生産者を支援することで、36,000ha 以上の従来のコーヒーを「気候変動に配慮したコーヒー」に変えることを目指しています。
また、ラボバンクの「Agroforestry Carbon Removal Units for the Organic Restoration of Nature: 自然の有機的回復のためのアグロフォレストリー CO2 除去ユニット」(ACORN) プログラムは、Solidaridad や他のパートナーのプログラムに加えて、サパタのような農家が蓄積した CO2 を補償するために、世界中の農場と協力しています。CO2 排出権の販売は、ラボバンクがマイクロソフトと共同で開発した Azure クラウドベースのマーケットプレース プラットフォームによって可能になりました。ラボバンクとマイクロソフトのパートナーシップの最終目標は、AI と機械学習をベースにしたグローバルでスケーラブルなプラットフォームを構築し、世界中の農家に力を与えると同時に、気候変動の緊急性に対応することです。
サパタ氏は、サンタ・ロサ・デ・カバル大学 (UNISARC) で農学の学位を取得した 4 代目のコーヒー農家で、生態系や持続可能な農業の科学に深く関わっていますが、「私たちが栽培しているものだけで家族を養うことができます」と言います。彼は、ラボバンクや彼のようなコーヒー農家に提供されている持続可能なプログラムの助けを借りて、自分ができたことを誇りに思っています。
今日の金融サービス企業は、3 つの関連する方法でサステナビリティを推進しています。
気候変動の緊急性に鑑み、ラボバンクのような銀行は、現在のポートフォリオのグリーン化に資金を提供しています。また、新しいグリーン ソリューションや企業に資本注入を行っています。そして最後に、顧客からの高い要望により、銀行や証券会社などの金融サービス会社は、持続可能な取り組みを支援する新しい投資商品を提供するようになっています。金融機関の顧客は、一般的に地球環境に貢献している機関との関わりを持ちたいと考えているため、この最後の点は非常に重要です。特に若い世代は、ESG (環境・社会・ガバナンス) に配慮した銀行を意識的に選ぶようになっています。
気候変動の危機の規模と緊急性が無視できなくなる中、解決策を打ち出す上ではテクノロジが非常に重要な役割を果たします。そのテクノロジには、監視、収集、分析すべきデータ、応用された AI や機械学習を用いて構築すべき高度な分析モデル、そして通信インフラの整備などが含まれます。
「ラボバンクの CEO は、マイクロソフトの CEO であるサティア・ナデラ氏と会い、サステナビリティに関する目標についてすぐに一致しました」と、ラボバンクで ACORN イニシアチブの責任者を務めるイェルマー・ヴァン・デ・モーテル氏は言います。
「私たちにとって、衛星データの取り込みや AI モデル、インフラの拡張性など、テクノロジは非常に重要な要素でした。 テクノロジを最も緊急性の高い持続可能性の問題に適用することが鍵となります。」
サパタ氏の経験は、金融サービス業界が可能にしている輝かしい例です。気候変動が世界の農業に与える影響はますます大きくなっています。国連食糧農業機関 (FAO) の新しい調査によると、世界にある 6 億 800 万の農場の 90% は家族経営の農場で、農地の 70〜80% を運営し、世界の食料の約 80% を生産しています。
世界の農場の 6 つに 5 つは、2ha 以下の非常に小さな農場です。これらの農場は全農地の約 12% しか占めていませんが、世界の食料の約 35% を生産しています。
しかし、農業は世界の温室効果ガス排出量の 24% を占めています。中小の可能性を引き出し、気候変動に対処するグローバルな力にすることは、Solidaridad とラボバンクの共同目標となっています。
ラボバンク ACORN の活動はグローバルで、幅広い農産物を対象としていますが、コロンビアの Solidaridad とのパートナーシップでは、特にコーヒー生産者に焦点を当てています。世界で消費されるコーヒーのほとんどは、1,770 万人の小規模コーヒー農家によって生産されていますが、その大半は貧困層に属しています。
農業を対象とした CO2 市場は存在しますが、小規模農家は取引コストが高く、また、自分たちが隔離した CO2 の量を証明できないため、参加することができませんでした。しかし、ラボバンクのプラットフォームを使えば、それが可能になります。農家は、リモート サテライト センシングと AI アルゴリズムの助けを借りて、農場でどれだけの CO2 が発生し、どれだけの CO2 が隔離されたかというバイオマスの違いを測定します。農場が生産した CO2 よりも多くの CO2 を隔離していれば、その差分を自社の CO2 排出量を相殺する必要のある企業に販売することができるというわけです。
モーテル氏は、今後 100 万以上の農場がこのプラットフォームに参加することを目標としていますが、すでにいくつかの農家には効果が現れています。あるプロジェクトでは、土壌、肥料、排水の管理を改善することで、CO2 排出量を削減しています。例えば、コロンビアでは、参加した農場の平均がわずか 3 年でカーボン プラスからカーボン ネガティブになりました。
また、このプロジェクトにより、農家は生産物の品質と一貫性を高めることができました。参加農場の生産性は、3 年間で 15〜20% 上がり、収入も 20% アップしました。アテホートア氏の農場の場合、2020 年 5 月から 2021 年 5 月の間に 24t の CO2 を隔離しました。
Solidaridad とラボバンクは現在、新しい地域を含めてパイロットを拡大しています。また、Solidaridad は、登録、地面の分析、技術サポートで農家を支援しています。ラボバンクは、その取引プラットフォームを通じて、生産者が毎年 CO2 を削減した分の補償を受けられるようにしています。
このプログラムは 3 つの目的を果たしています。「それは、気候変動や土地の劣化を改善・対策すると同時に、食料安全保障を高め、中小の生活を向上させることです」とモーテル氏は言います。「また、お客様が持続可能な社会に移行することを支援することは、中小を銀行化し、新たな投資を行うという当行のビジネス モデルと密接に関係しています。銀行の財務的な持続可能性にとって、これは利益とリスクの両方の観点から役立ちます」とも述べています。
ラボバンクは、先進的な技術を用いて気候変動のリスクを軽減しようとしている唯一の金融サービス企業ではありません。現在、金融業界は、国連の持続可能性目標や欧州のグリーンディールなど、持続可能性に関する重要なイニシアチブの実現に向けて、ますます主導的な役割を果たしています。そして、その鍵を握っているのがテクノロジです。
イタリアの大手銀行 Banca Mediolanum が設立したフィンテック企業 Flowe は、Microsoft Consulting Services と共同で、ミレニアム世代の顧客を対象に、環境に配慮した生活を送るための指導を行うデジタル バンキング アプリを開発しました。
Flowe の CEO (Cultural Energy Orchestrator) であるイヴァン・マゾレニ氏は、このように述べています。
「サステナビリティの考え方なしには、金融の未来はありえません。私たちは今、コンシャスな資本主義という革命を起こしています。私たちは今、コンシャスな資本主義という革命を起こしています。もはや金銭的なリターンだけに注目することはできません。もっと多くのことがかかっているのです。そして、テクノロジは私たちの成功の鍵です。」
同社は、大企業の排出量に対処することは重要ですが、個人も、移動、旅行、製品やサービスの消費といった生活の仕方について、より多くの情報に基づいた選択をする必要があると考えています。
「Flowe では、まったく新しい経済のパラダイムを推進しています。個人の向上が、社会や環境の向上という全体的な向上につながるような、”ベター・ビーイング・エコノミー” と呼んでいます」
他のオンラインバンクと同様に、Flowe は IBAN を持ち、ユーロ圏の ATM での引き出しが無料で、Apple Pay や Google Pay との統合も可能です。しかし、MasterCard が発行するこのカードは、持続可能な森林認証を受けた森林から産出された木材を使用しています。そして、高度に差別化されたバリュー プロポジションを持っています。Flowe は、顧客が自分の財務上の意思決定が環境に与える影響を理解すれば、特に他の人々が同じ道を歩んでいることがわかれば、顧客は変化を起こし始めるだろうと考えています。
Azure の AI と機械学習を駆使したアプリを通じて、Flowe は、クレジットカード取引、CO2 の影響、個人の健康状態、あるいはアプリを通じて提供される教育用ビデオ コンテンツに顧客がどのように関わっているかなど、顧客データのあらゆる側面を素早く確認することができます。このアプリは、Azure Kubernetes Service やマイクロサービスベースのアーキテクチャなどの技術を用いて一から構築されており、革新的なサードパーティのソリューションに簡単にプラグインすることができます。
これらのデータから、お客様の行動を特定し、パーソナライズした形でより持続可能な選択をしてもらえるようにしています。
マッツォレーニ氏は、「マイクロソフトの AI プラットフォームを利用して、人々がより有意義な生活を送れるように、小さくて優しいナッジを与えることがその方法の 1 つです」と述べています。例えば、あるお店で買い物をした場合と別のお店で買い物をした場合とでは、CO2 の排出量がどれくらい違うのかを教えてくれるというものです。
消費者を正しい方向に導くことに加えて、Flowe は CO2 の回収にも取り組んでいます。ZeroCO2 社は、グアテマラのペテン地域に 145,000 本以上の木を植えていますが、Flowe は同社とパートナーシップを結び、アプリから植樹できるだけでなく、自分の木がどこにあるのか、その成長をアプリで確認することもできます。
Flowe のサービスは、”Innovability” と呼ばれるコンセプトに基づいています。これは、イノベーションが単なる組み合わせではなく、サステナビリティと相乗効果を発揮することを意味しています。
「私たちの視点では、気候や環境はサステナビリティの一部にすぎません。私たちの視点では、気候や環境はサステナビリティの一部に過ぎず、環境に加えて、人、市民、社会、技術があります。私たちはこれらすべての側面に取り組んでいます」
コロンビアに戻ったサパタさんは、ラボバンクと Solidaridad のプログラムに参加したことで、自分たちの農場で達成できたことに満足していると言います。
彼の農園では、より高品質のコーヒーが生産され、販売することで、より多くの収入が得られるようになりました。また、新しい植栽がもたらした動物や鳥などの生物多様性を特に楽しんでいます。鳥の数は非常に多く、多様性に富んでいるため、彼の地域の農家では、ここを鳥好きのための観光名所にしようと考えているそうです。
「今日、自分の農場に立つと、何十年も感じていなかったその美しさや自然の素晴らしさを感じることができます。もっと前進して、後世の人々に刺激を与えたいと思っています。」
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]]>The post アジアの金融業界における “責任ある AI” に関する 5 つの学びとは appeared first on マイクロソフト業界別の記事.
]]>※本稿は5 learnings on Asia’s responsible AI journey in financial servicesを翻訳し、一部加筆したものです。
アジアでは、他の地域と同様に、金融サービス業界における人工知能 (AI) の導入が急速に進んでおり、金融サービス機関の 60% 以上が、パンデミックへの対応として、すでにデジタル化のペースを加速させています。
同地域の金融サービス セクターによる AI への支出は、2024 年に 49 億ドルに達すると推定されます。現在、アジア太平洋地域 (日本を除く) の金融サービス支出は、全世界の AI への支出の 15% を占めており、より多くの金融機関が AI ソリューションを開発・導入することで、今後の大きな成長の可能性があることを示しています。
このように AI の導入が進む中で、AI を、いかに責任を持って導入するかについて、お客さまや規制当局、その他のステークホルダーの関心が高まっています。私たちは、お客様や規制当局と直接協力しているほか、シンガポール金融管理局の Veritas コンソーシアムのようなグループを通じても活動しています (英語ページへ遷移)。ここでは、これらの取り組みから得られた 5 つの事柄をご紹介します。
金融機関は、アウトソーシングされたテクノロジーの使用、リスク管理、およびガバナンスに関する強固な要件を持つ、高度に規制された業界で運営されています。AI の利用に関しては、金融機関が規制のないところで活動していないことは明らかです。このため、アジアの規制当局からは、AI に特化した新しい金融サービス規制の導入を検討していないという明確な示唆が得られています。むしろ彼らは、AI が責任を持って導入されるように、データ保護、守秘義務と銀行機密、技術とリスク管理、公正な貸し出しなど、既存の規制フレームワークと関連するガイダンスを構築しようとしています。
アジア各国の規制当局は、拘束力のないガイダンスや原則を発表しており、“責任ある AI” (英: Responsible AI) を導入し優良な事例を実証するために、金融機関とテクノロジー パートナーの協力を促しています。このような原則に基づく技術的に中立的な規制アプローチは、アジアにおいてはシンガポールや香港で最も明確に見られます。それは、英国などの管轄区域で世界的に行われているアプローチと同じです。
特に興味深いのは、規制当局と産業界が緊密に協力して、原則を実際の行動に移すことができるようにする、共創的なアプローチが生まれていることです。シンガポール金融管理局 (MAS) の Veritas コンソーシアムはその好例で、MAS はコンソーシアムの第一段階で公正性評価手法を開発するために業界の参加者と積極的に協力しました。拘束力のないこの方法論は、さまざまな金融サービスのユースケースで提起された公正性の検討を評価することをベースに、独自のアプローチで開発されました。コンソーシアムの作業の現在のフェーズでは、マイクロソフトは、金融サービスにおける責任ある AI の実装に関連する規制上の考慮事項に関する議論を促進しています。MAS が Veritas から受け取ったフィードバックは、将来の新しいガイダンスのための重要な学びとなります。
このような共創的なアプローチは、グローバルでも見られます。米国では、米国の金融サービス、テクノロジー、学術業界の主要組織が、新たに「National Council for Artificial Intelligence (NCAI)」の設立を発表しました。英国では、「Artificial Intelligence Public-Private Forum (人工知能官民フォーラム)」が官民を結集し、AI/ML の利用と影響、導入に伴う潜在的なメリットや制約、関連するリスクなどについて、さらなる建設的な対話を促しています。
また、アジアの金融機関の多くは、地域や世界の複数の市場で事業を展開していることから、他の国・地域との連携が重視されるようになっています。規制の一貫性を高めるために、アジア地域の規制当局が連携することには明らかなメリットがあります。責任を持って、規制当局の期待に沿って AI を導入するには、地域の状況に合わせたアプローチをとることが必要ですが (例えば、機械学習に使用するデータ入力がバイアス リスクの軽減に適切かどうかの評価は、状況によって異なります)、規制当局間や産業界との国境を越えた協力は、視点や学習内容を共有する上で大きな価値があります。
2~3 年前を振り返ると、金融分野における AI の責任ある利用に関する議論は、倫理原則の定義や責任ある AI の必要性の認識を高めることが中心でした。アジアでは、金融機関による AI の導入が進むにつれ、具体的なユースケースに基づいて原則を実践に移すための実践的な検討に取り組みがシフトしてきています。これまでの原則レベルでの議論も重要でしたが、現実のシナリオに適用してこそ、原則を実践に移すことができるのです。規制当局のガイドラインや倫理原則は、ベースラインを設定し、組織が正しい質問をしているかどうかを確認するのに役立ちますが、その後はユースケースに応じたアプローチが必要です。特定の AI ソリューションが導入される状況によって、どのような原則が最も適切であるか、また、提示されたリスクをどのように軽減できるかが決まります。
このユースケース ベースのアプローチの重要性は、マイクロソフトがスタンダードチャータード、ドイツ銀行、VISA、リンクレーターズと共同でシンガポールの AI 倫理原則の適用をテストした際に明らかになりました (英語ページへ遷移)。このプロジェクトでは、過去の支出に基づく旅行パターンの予測、ウェットインク署名の検証の自動化、Know-Your-Customer チェックに関連する規制遵守という、3 つの異なる金融サービスのユースケースに関わる AI の責任ある検討事項を評価するために、共同で作業を行いました。ここで明らかになったのは、特定の原則は文脈によって意味合いが異なり、ある原則はより関連性が高くなったり、低くなったりするということです。
Veritas コンソーシアムでは、同様のユースケース ベースのアプローチを採用しています。金融機関やマイクロソフトなどのテクノロジー企業が作成した具体的なユースケースに基づいて作業を進めることで、責任を持って AI を導入するための取り組みを強化するための重要な知見を得ています。より多くの金融機関がユースケースを共有し、責任ある AI の検討にどのように取り組んだかを示すことで、業界全体が利益を得ることができます。
金融業界以外でも、アジアにおける責任ある AI のユースケースを収集・公開する取り組みを通じて、同様の効果が得られています。これには、オーストラリアの AI 倫理原則のパイロット版 (マイクロソフトは参加した 5 社のうちの 1 社として招待された) や、シンガポールの 2 冊のユースケースが含まれており、その中には金融サービスに関連するものも多く含まれています (英語ページへ遷移)。
アジアでは、金融サービスにおける AI の利用にガバナンス フレームワークとコントロールを適用する上で重要な進展が見られます。国際金融研究所 (Institute of International Finance) が2020 年に実施した調査 (英語) によると、ほとんどの金融機関が既存のモデルリスク管理やその他のリスク管理フレームワークを使用していることが、Veritas コンソーシアムのようなグループで確認されています。また、AI の最も重要なユースケースを特定することで、被害のリスクが高いと思われるセンシティブな用途に焦点を当てた取り組みを行うことも重要視されています。
例えば、ある金融機関は、最近の議論の中で、可能性のあるすべての AI ユースケースを定期的に棚卸しして見直すのではなく、より精査が必要な重要なユースケースを特定することに注力しているという見解を示しました。これにより、リスクの低い AI アプリケーションの展開が滞るのを防ぎつつ、潜在的にリスクの高いアプリケーションにも十分な注意を払うことができます。これは、マイクロソフトで行っているアプローチに似ています (英語ページへ遷移)。AI システムを構築するチームには、基本的な責任ある AI 基準が適用されますが、危害を加えるリスクが高い重要な用途には、より集中的な審査手順が設けられています。
今後の課題としては、マテリアリティを評価するための共通のアプローチを定義するために、業界を超えたコラボレーションが必要ではないかと考えています。Veritas コンソーシアムのようなグループは、このような議論を促進するのに役立ちます。
AI 技術を導入する金融機関と、金融機関がカスタマイズしたり「既製品」として導入したりする AI ソリューションを提供するソフトウェア開発者の相互補完的な役割について、関心が高まっています。社内に開発チームを持つアジアの大規模な金融機関であっても、サードパーティ ベンダーの AI/ML 製品やインターネットからダウンロードした学習済みのモデルの上に AI システムを構築している可能性があります。そのため、モデル開発者が金融機関とどのように協力すれば、透明性を高め、開発中のソフトウェアに一定の説明責任を持たせることができるかという議論が行われています。AI ソリューションを導入する金融機関は、最終的にはその使用事例が責任を持って実施されていることを保証する責任がありますが、AI ソリューションの開発者は、自社モデルの責任ある使用を促進する上で重要な役割を担っていると考えています。
テクノロジー パートナーは、開発中の AI ソフトウェアの能力と限界に関する技術的および非技術的な情報を共有することで、金融機関がそのソフトウェアを、責任を持って導入するための最善の方法を評価するのに役立ちます。例えば、マイクロソフトは、マーケティングと技術文書の間のギャップを埋めるために、透明性ノートを公開し、当社のAIサービスを責任を持って適用するために必要な重要情報をお客様に提供しています (英語ページへ遷移)。
継続的に学んでいるのは、責任ある AI を実現するための取り組みに、多様な視点を取り入れることの重要性です。責任ある利用の原則が適切に適用され、潜在的な懸念事項が早期に発見され対処されるためには、多様なコラボレーションが何よりも重要であり、健全なチャレンジをもたらします。
多様な視点を取り入れるには、さまざまな方法があります。AI を責任を持って導入するためには、政府、規制当局、業界団体、技術開発者、技術導入者、市民社会団体、最終顧客コミュニティの代表者など、さまざまなステークホルダーを巻き込む必要があります。また、AI アプリケーションを開発するチームだけでなく、法務、コンプライアンス、監査、リスク (オペレーショナル・リスク、レピュテーション・リスク、コンダクト・リスクを含む) など、組織自体の中のさまざまな視点からの意見を取り入れることも重要です。さらに、それらのチームは、性別、民族、障害、経済状況などの多様性を適切に表現し、本質的に多様でなければなりません。これは、アジアがいかに多様であるかを考えると、特に当てはまります。
今後は、既存の取り組みをベースに、金融機関が責任ある AI をどのように導入しているかの理解を深めるため、ユースケースの共有を促進し、金融機関がどのような規制上の問題に対処する必要があるかを検討することが重要です。Veritas のようなイニシアチブは、金融機関が規制当局、テクノロジー企業、その他の業界関係者とソリューションを共同開発するための強力なプラットフォームです。これにより、金融サービス業界全体の AI の利用に関する全体的な理解が強化されるとともに、AI が責任を持って利用されるように、これらの問題が考慮されているという信頼感を規制当局や消費者に与えることができます。
関連情報
MAS press release announcing the publication of the FEAT principles (英語)
White paper from Veritas Phase 1 (英語)
2019 Principles to Practice publication (英語)
Microsoft responsible AI principles (英語)
The building blocks of Microsoft’s responsible AI program (英語)
The post アジアの金融業界における “責任ある AI” に関する 5 つの学びとは appeared first on マイクロソフト業界別の記事.
]]>The post その AI はグリーンか? AI にもサステナビリティが求められる時代へ appeared first on マイクロソフト業界別の記事.
]]>2021 年 8 月 21 日、「標高 3,000m 超のグリーンランド山頂で史上初の降雨を観測」というショッキングなニュースが世界を駆け巡りました。通常は気温 0 度を下回ることがない場所において、実に 9 時間にわたって 0 度を上回ったのです。
このように、CO2 などの温室効果ガスの急増による地球温暖化の脅威はすでに現実のものとなっており、すべての企業はその活動において可能な限りのあらゆる対応を求められる時代になりました。消費者、規制当局、投資家は、あらゆる業界の企業の気候変動への影響をますます厳しくチェックするようになっています。
この状況を改善するためには、やはりテクノロジーの活用が欠かせないでしょう。1 つは、AI の活用です。AI は、企業の CO2 排出量削減やコスト削減に貢献するという点で、すでにその価値が認められ、積極的に活用され始めています。
では、AI はどのように企業のサステナビリティ向上に活用されているのでしょうか。企業活動において多量の CO2 が排出される生産活動、例えば製造業において、工場の生産過程における工程数の低減や工程毎の時間短縮に AI が活用されています。
生産した製品を輸送・配送する過程においても、最もエネルギー効率が高い経路の算出や、在庫を配置する拠点の算出などにも AI が多用されています。さらに、デジタルツインと呼ばれる、IoT や AI、AR/MR などの技術を用いて仮想的に物理環境を構築し、シミュレーションを行う手法も採用が広がっています。
さらに、自社のサプライチェーンにおける CO2 排出量のモニタリングにも AI は欠かせません。材料や部品のサプライヤー、輸送業者、さらには自社製品の川下ユーザーなど、バリューチェーンのあらゆる部分からデータを収集し、不足するデータを AI による推論で補いながら排出量の近似値を推定します。
このように、ここ数年で AI は、これまでの効率化によるコスト削減という観点よりも、いかに CO2 排出量を把握し減らすかという用途でも AI が用いられるように変化してきました。
前述のように、CO2 排出量の低減、把握を含む企業活動のあらゆる部分において AI の活用がなされる一方で、「AI を動かす事」自体の必要エネルギー増大もまた、課題となってきています。
AI をベースとするシステムは、大量のデータを処理しなければならないため、多量のプロセッサーを稼働する電力とデータセンターを冷却するための電力に対する依存度が高まります。したがって、企業内で AI を導入すると、企業のエネルギー使用量が増加し、結果的に CO2 排出量が増大することになります。
2019 年にマサチューセッツ大学の研究者は、最先端の自然言語処理アルゴリズムを学習させて人間のようなテキストを作成するのに必要なエネルギーが、アメリカの自動車の生涯排出量の 5 倍に相当する二酸化炭素や、サンフランシスコ・ニューヨーク間の往復航空券 300 回分に相当する二酸化炭素が発生するという成果を発表しました。
出典: CO2 emission benchmarks – UNIVERSITY OF MASSACHUSETTS
実際、極めて優秀な自然言語テキスト生成モデルである「GPT-3」のトレーニング処理において必要とされるコンピューティングリソースの規模はかなり大きくなっています。GPT-3 の研究で用いられたパラメータ数は 1,750 億個となり、これは前身の GPT-2 の 100 倍の規模となっています。
出典: GPT-3: The New Mighty Language Model from OpenAI
GPT-3 の次のバージョンである GPT-4 では、さらに 100 倍以上ものパラメータ数が用いられることになるとも言われています。
AI、特に機械学習とディープラーニングのエネルギー消費の上昇 (とそれに伴う CO2 排出量の上昇) は、環境負荷低減の観点から無視できなくなってきています。ディープラーニングの研究に必要とされる計算量は、数カ月ごとに倍増しているとも言われます。これは、モデルの学習に使用するデータセットのサイズが増大し続けていることに起因しています。
ある限りの膨大な計算能力を用いて精度を向上させようとする AI は、”レッド AI” と呼ばれます。精度向上によって AI 性能の限界が押し上げられることによって、より社会に役立つ製品やサービスが生み出されることは歓迎されるべきことです。しかし一方で、コスト増大によって、特に資金力のある企業や大学の研究機関のみが先端的な研究に着手できるということや、またエネルギー消費の上昇により環境負荷が増大する点は大きな課題です。
ディープラーニングが、エネルギー効率が極めて高い人間の脳の動きに着想を得たことを考えると、これは大変皮肉なことです。AI は社会に欠かせないものであると同時に、AI の発展は地球環境に大きな負荷を与えることにもなるわけですが、この相反する事象をどうにかして解消していかなければなりません。
レッド AI に対して、エネルギー消費量を考慮しながら AI を可能な限り省エネルギーで使うための研究あるいは手法は “グリーン AI” と呼ばれ、さまざまな取組みが行われています。
AI アルゴリズムを改良することにより効率性を高め、処理に必要なリソースを削減しエネルギー消費を改善することができます。より少ない学習量や少ない勾配ステップで、同等かつ必要十分な性能を実現することを目的として改良を行うのです。
さらには、ニューラル・アーキテクチャ・サーチ (NAS) を用いると、人間の手による検索やチューニングでは見つけられない、より効率的なアルゴリズムを見つけることができます。
NAS は計算コストがかかりますが、計算効率や CO2 排出抑制度の高いソリューションが得られ、それが何度も実行されるシステムであれば、長期的な節約効果が短期的なコストを上回る可能性があります。
ディープラーニングの人工ニューラルネットワーク (ANN) ベースのアプリケーション用に特別に設計された半導体 (AI チップと呼ばれる) を用いることで、汎用品である CPU を用いるよりも遥かに優れたエネルギー効率を実現します。AI チップは、汎用 CPU が苦手とする多数の単純かつ並列な演算処理を非常に高速に実行できます。
こうした専用の半導体はアクセラレータチップとも呼ばれ、現在は「AI チップのカンブリア紀爆発」とも呼ばれるほど、実に多種多様な製品がリリースされています。
環境に優しい AI にするという点では、再生可能エネルギーの活用も有効な手段の 1 つです。企業がデータセンターを構築する際、できるだけ再生可能エネルギーの供給を受けやすい地域に設置することを検討すべきでしょう。
もっとも、最近ではディープラーニングなど多量の計算資源を使う処理は、パブリック クラウドで実行することが増えています。パブリック クラウドを提供するベンダーは、専用のハードウェアアクセラレータ (GPU) と高速・大容量のストレージをオンデマンドで利用な可能な環境を提供しており、ユーザーは最小限の投資で機械学習・ディープラーニングを開始することが可能です。
パブリック クラウドのデータセンターは、可能な限り再生可能エネルギーで電力を賄うように改善がなされています。例えば、Azure は 2012 年の時点ですでに 100% カーボンニュートラルを達成していますが、2025 年までには 100% 再生可能エネルギーで稼働する予定です。したがって、AI 処理にパブリッククラウドを活用することは、そのまま CO2 排出量を削減することに繋がります。
そしてまた、パブリック クラウドのデータセンターは世界的に地理的に分散しているため、データセンターの拠点ごとに CO2 排出量が異なります。理論的には、「最も CO2 排出量が少ない地域のデータセンターにて、CO2 排出量が少ない時間帯を選んで処理を実行する」ことが可能です。
マイクロソフトは、Azure GreenAI Carbon-Intensity API という名称で、最も環境に優しいデータセンターを提案する以下の機能を提供しています。
検索で許可されたすべてのデータセンターの中から最も環境に優しい処理の開始時間を提案します。これは、3 つのシフティングタイプの中で最も CO2 削減効果が高い結果を得られます。
CO2 削減が可能な他地域のコンピュートインスタンス用のデータセンターを検索します。
指定されたデータセンターで最も環境に優しい処理の開始時間を提案します。
Azure GreenAI Carbon-Intensity API タイムシフティングの予測結果例
実行する AI のグリーン度を評価するためには、より正確なコスト予測が必要となります。金額的な面で予測することに加えて、CO2 排出の面でより正確に把握することで「AI の性能と効率性のトレードオフ」をより明確に分析することができます。
Machine Learning CO2 Impact Calculator のようなウェブベースのツールや CodeCarbon のようなコードベースのツールを使うことで、クラウドで実行する処理の CO2 排出量を把握することが可能です。CodeCarbon のような SDK 埋込み型のコードベースのツールは、コード実行と CO2 排出量計測をシームレスに行えるため、開発者やシステム管理者にとってはより使いやすいツールかもしれません。
また、クラウド利用による CO2 排出量をより正しく把握するには、スコープ 1・2 だけでなくスコープ 3 の排出量を把握しなければなりません。パブリック クラウド ベンダーもこの問題意識に対応し始めており、Azure に対応する Microsoft Sustainability Calculator を用いることで、それが可能となります。
Microsoft Sustainability Calculator
これらのツールは CO2 排出量を算出してくれますが、現時点では、何かしら排出量の削減につなげるインサイトを提供するまでは至っていません。開発者やシステム管理者がよりこれらのツールを積極的に使うようにするために、よりプロアクティブに働きかけるスマートなツールへ進化する必要があると思われます。
AI に対する社会的な需要は今後も高まり続けることが予想されます。しかし、AI 自身のサステナビリティのためには、AI の成果とエネルギー効率のバランスを取っていくことが重要になってくるでしょう。
そしてまた、AI を活用するあらゆるサービスにおいて「それはグリーンな AI 環境で稼働しているか?」という点をアピールする時代がやってくるかもしれません。
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