Yoshiko Fujimaki, Author at マイクロソフト業界別の記事 http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog Tue, 25 Jul 2023 16:42:48 +0000 en-US hourly 1 テクノロジーが支える未来の人とモノの移動と働き方 ~旅客・運輸業界~ http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/manufacturing/2023/06/28/technology-future-transportation-work/ Wed, 28 Jun 2023 04:18:32 +0000 2030 年には、日本の人口は 1 億 1600 万人あまりに減少し、人口の 30%以上が高齢者になると言われています。労働人口の減少や経済成長の停滞が懸念される中、2030 年までにキャッシュレス決済を 80%にしていくなど、高齢者に対するデジタルデバイドをなくしながら、デジタルを活用してより効率的で、快適なストレスの少ない暮らしや生活を実現していくことが期待されています。
私たちの生活では、ワンクリックで注文した商品が即日自宅や指定場所に届いたり、自分の嗜好に沿った商品提案や情報を無意識に入手したりすることは既に当たり前となっていますが、今後はより高い水準の顧客体験への期待が高まるでしょう。

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2030 年には、日本の人口は 1 億 1600 万人あまりに減少し、人口の 30%以上が高齢者になると言われています。労働人口の減少や経済成長の停滞が懸念される中、2030 年までにキャッシュレス決済を 80%にしていくなど、高齢者に対するデジタルデバイドをなくしながら、デジタルを活用してより効率的で、快適なストレスの少ない暮らしや生活を実現していくことが期待されています。

私たちの生活では、ワンクリックで注文した商品が即日自宅や指定場所に届いたり、自分の嗜好に沿った商品提案や情報を無意識に入手したりすることは既に当たり前となっていますが、今後はより高い水準の顧客体験への期待が高まるでしょう。
また仕事では、これまでは手書きまたは都度パソコンやシステムに打ち込んでいた文章入力が不要になり、音声入力が可能になったり、どこからでも機械を遠隔操作できるようになったり、従業員体験も変化することが予想されます。

一方で、世界規模の課題となっている CO2 排出量の削減、限りある資源の再利用、災害や地政学リスクへの対応、そして日本が直面している少子高齢化と労働力の減少などの社会課題を解決しながら豊かさを実現していくには、AI などの先端テクノロジーを積極的に活用していく必要があります。私たちマイクロソフトは、2030 年に向けて、デジタルとテクノロジーの両方を駆使して、より豊かで快適でストレスフリーな暮らしを実現することを目指しています。

本ブログでは、2030 年の「人とモノの移動と働き方」の中心となる旅客・運輸業界(鉄道・交通・物流・航空・旅行・海運)に焦点を当て、これから起こり得る働き方の変化とテクノロジー活用の可能性を、マイクロソフトの部門横断バーチャルチーム(V-Team)で考察していきます。

2030 年の人やモノの移動や働き方はどうなるか

2030 年、今から 10 年足らずでやってくる未来の生活はどのようなものになるでしょうか。Bing AI チャットに「2030 年の人やモノの移動や働き方」はどうなっているか問いかけてみると、以下のような回答が返ってきました。

Bing AI チャットの画面
(*1)シンギュラリティ:AIが人類の知能を上回る「技術的特異点(転換点)」やその際に起きる人類の生活の大きな変化のことを指す

AI の回答にも表れているように、2030 年、「人やモノの移動」に関しては、移動を支える乗り物自体の進化や交通手段の多様化が実現していると予測されています。超高速輸送システム(ハイパーループ)により、これまで何時間もかかっていた場所へたった数十分で到着できたり、自動運転車で眠りながら夜に移動できたり、ドライバー不足補完のために自動運転トラックが荷物を運ぶことで、2024 年問題解決の糸口が見えてくると考えられます。

また、「働き方」に関しては、マシンラーニングやディープラーニング、ビックデータ解析を含む AI などのテクノロジーや AI ロボットが、働き方を大きく変えることが予測されています。他にもデジタルツイン、メタバース、量子コンピューターなど、さまざまなテクノロジーを組み合わせることで、少子高齢化と人口減少が進む日本の働き方が変化することが考えられます。

このように、さまざまなテクノロジーが未来の人とモノの移動と働き方を、持続可能な形で変えていくことが予想されますが、私たちマイクロソフトが描く未来像では、大きく 5 つの変化とともに、旅客・運輸業界が変革していくと考察しています。

テクノロジーが旅客・運輸業界に巻き起こす 5 つの変化

テクノロジーが旅客・運輸業界に巻き起こす5つの変化の説明図

1. AI が導く安心・安全・コスト低減

AI の介入は、これまで完全には防げなかったヒューマンエラーの防止に役立ちます。たとえば、鉄道保線に AI を利用した予防保全を取り入れることで、保全費用を最適化しながら安全性を高めることが可能です。加えて、人々がこれまで担っていた「調べる・計算する・まとめる」というような定型業務が自動化されることで、人間はクリエイティブな仕事に専念できるよう働き方を変えることが可能です。

さらには、AI ロボットが登場し、コールセンター、駅、空港、旅行代理店などでお客さま対応の前線に立ち、お客さまの感情や声に応じて最適な応対をすることで、人件費やオペレーションコストなどのコスト低減のみならず、現場従業員のストレス軽減、さらにはお客さま満足度の向上にも寄与することが期待されています。

2. バーチャル活用が導く働き方の変化

日本企業に浸透している三現主義(現地・現物・現実)も、これからはデジタル空間(バーチャル)を取り入れる方向になるでしょう。従業員は働く空間を選択できるようになり、いつでもどこからでも働けるようになります。

また遠隔コントール技術により、鉄道、トラック、バス、船などの乗り物に乗らなくても遠隔で操作・運転できる時代が到来します。都市部に住んでいない人々や高齢者も都市部の乗り物を操作できるようになるので、地方創生や極度な過疎化防止につながり、ギグワーカーの登用にもつながるでしょう。

さらには、デジタル上にある仮想空間だからこそ、実際に現地でモノを動かすのではなく AI を活用してデジタル上に現場と同じ環境を再現してシミュレーションを行ったり、不具合が起きた際は設備やしくみを壊さずに原因究明を行ったりすることが可能になります。

そして、デジタルコミュニケーションだからこそ実現可能な、同時翻訳や通訳の機能が追加されることで、言語の壁もなくなります。デジタル空間(バーチャル)は、外国人の車掌やドライバーなどを含め、多様な人材による多様な働き方を実現する基盤になると考えます。

3. 匠の技とイノベーションを融合

高水準と言われる日本のものづくり・サービスですが多くの熟練スタッフによって支えられているのが現状です。旅客・運輸業界も例外ではなく、物流・鉄道車両やインフラの保守・整備、鉄道のダイヤ改正、空や海の航路策定、営業トークまで、熟練社員の匠の技や研ぎ澄まされた感覚に依存した業務が数多く存在しています。

今後は、これまで人の頭のなかだけにあった暗黙知が、テクノロジーを活用して形式知化されることで、後世への継承が容易になるでしょう。
たとえば、物流・鉄道車両整備の熟練工やパイロット、船長たちの視線や航路をデータにして分析することで、最適な作業ステップや、運行中の状況に応じた判断をモデル化することも可能です。この技術は、新しい人材を即戦力に変えていくオン・ボーディングの過程にも活用することができます。

このような暗黙知や匠の技とイノベーションとの融合には、高水準の日本のサービスとクラフトマンシップを守り、さらに高めていくことが期待されています 。

4. 持続可能な移動と輸送

2030 年、私たちは今よりもさらに環境への配慮を求められることが予想されます。移動は鉄道・トラック・空・海を組み合わせたマルチモーダルにシフトし、環境負荷の低い輸送が始まっているでしょう。
また、輸送の効率化が進み、ラストワンマイル配送、貨客混載、配送マッチングサービスなどの浸透や、特定区域での自動運転などを通じて、人にも環境にも優しい仕組みが構築されていることが予想されます。 さらには、リアルタイムデータとマシンラーニングを活用して、その時々に応じた最適な輸送価格を算出し(ダイナミックプライシング)、温暖化ガス排出量やコストを考慮した輸送経路の最適化を行うことで、渋滞緩和や CO2 削減に貢献しているはずです。

5. お客さまの移動体験を再定義

これまでの移動を「Have to move (移動しなければいけない)」と表現したとすると、2030 年の移動は「Want to move(移動したい)」へ変化していくことが考えられます。
すなわち、「お客さまのわがままに応える世の中」の到来です。これまでは、目的地での行動を目的に移動をしていましたが、今後は移動自体の意味が変わっていくことが予想され、お客さまの移動体験を再定義することが必要になります。

たとえば、移動中に電車や飛行機内で完結するゲームやエンターテイメントを提供することで、移動自体を目的化して移動需要を喚起したり 、お客さまの行動・嗜好・属性データなどを活用して、移動した先でお客さまごとにパーソナライズされた新たな目的を創出・提案するサービスの創出などが考えられます。

旅客・運輸業界にとっては移動をとりまく全てのジャーニー(移動前・中・後)が新たなビジネスチャンスとなり、これまでにない、新たな「移動ジャーニー」のあり方を提案することで、従来にないビジネスモデルの創出機会が生まれると考えます。

マイクロソフトはお客さまと未来像を描きながら伴走

ここまで見てきたとおり、今後、旅客・運輸業界は大きな変化が到来することが予想され、テクノロジーとビジネスの融合がひとつのテーマとなります。このテーマを前に進めるためには、外部・内部環境の変化や課題への対応のみならず、未来像を描き、バックキャストの考え方で新たな世界を実現していくことが必要です。

マイクロソフトはさまざまなチームおよびパートナーが一丸となって、お客さまのデジタル変革を支援します。具体的には、マイクロソフトはお客さまのデジタル変革を未来像策定から定着化まで End to End で支援するチーム(Digital Transformation推進) 、デザイン思考や人間中心設計を通じてデジタル変革やイノベーションを促進するチーム(Customer Innovation)、変革を実現する実行チーム (Industry Solutions) 、そして、お客さまの業界と個社別の状況・課題・未来像をひも解きながら最適なソリューションをご提案するチーム(Account Technology Unit)を有しています。
これらのチームがそれぞれの特性を生かしながら協働することで、マイクロソフトは今後も多角的な視点で、お客さまの未来像の策定からソリューションの実装、展開・定着化まで、ビジネス変革の成功を支えるパートナーとして伴走してまいります。

※記事内に掲載されているチーム名称は 2023 年 6 月時点のものであり、記事掲載以降、変更される可能性があります。


ⅰ国立社会保障・人口問題研究所推計 (日本の将来推計人口 (令和 5 年推計) )

ⅱ経済産業省「キャッシュレス将来像の検討会」( 2023 年 3 月)

ⅲ デジタルデバイド:インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差 (経済産業省)

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物流業界におけるデータファーストアプローチとサプライチェーン変革 http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/manufacturing/2023/06/20/dx-supply-chain/ Tue, 20 Jun 2023 06:45:39 +0000 近年、我が国のロジスティクス/物流業界は、社会情勢や人々のライフスタイルの変化に伴う顧客ニーズの多様化や高度化、資材・輸送コストの上昇、環境対応といったさまざまな課題に直面しています。さらに 2024 年 4 月 1 日からはトラックドライバーの時間外労働時間を制限する働き方改革関連法が施行されることから、業界全体への大きな影響が予想されています (2024 年問題)。こうした激しい変化のただなかにあるロジスティクス/物流業界に対して、マイクロソフトは「スマート・ロジスティクス」を提唱し、クラウドを基盤とするデータ活用によって、業界全体のビジネスモデル変革を導く DX を支援しています。

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近年、我が国のロジスティクス/物流業界は、社会情勢や人々のライフスタイルの変化に伴う顧客ニーズの多様化や高度化、資材・輸送コストの上昇、環境対応といったさまざまな課題に直面しています。さらに 2024 年 4 月 1 日からはトラックドライバーの時間外労働時間を制限する働き方改革関連法が施行されることから、業界全体への大きな影響が予想されています (2024 年問題)。

こうした激しい変化のただなかにあるロジスティクス/物流業界に対して、マイクロソフトは「スマート・ロジスティクス」を提唱し、クラウドを基盤とするデータ活用によって、業界全体のビジネスモデル変革を導く DX を支援しています。(参考:日本マイクロソフト 産業別ブログ:ロジスティクス/物流業界の未来を変革するマイクロソフトの先進テクノロジー)

本稿では、ロジスティックス/物流業界の DX を推進し、サプライチェーン変革を実現するための「データファーストアプローチ」の重要性とマイクロソフトの取り組みについて、国内外の事例を交えながらご紹介いたします。

ロジスティクス/物流業界を取り巻く 4 つの潮流とスマート・ロジスティクス

コロナ禍における生活様式の変容を経て、日本国内の EC 市場は年々成長しており (2021 年 21 兆円)、宅配便取り扱い個数は 2019 年 (43 億個) から 2022 年 (50 億個) にかけて 16% 伸長しています。一方で、小口配送の需要が高まったことでサプライチェーンがより広範になり、物流機能の全体もしくは一部を、第三の企業に委託する 3 PL (3rd Party Logistics) の登用も増加し、配送形態も多様化しています。さらには、消費者の意識や行動の変化に伴って、車両データや配送データを活用した顧客ニーズに対する付加価値向上や新サービス開発への取り組みも加速しています。

私たちは、ロジスティクス/物流業界が DX を推進していくにあたり、マイクロソフトとして大きく 4 つの潮流があると考えています。まずは 4 つの潮流を、1 つずつ見ていきましょう。

1、予測可能な強靭なサプライチェーン

現在のロジスティクス/物流業界では、運ぶモノや商材によって少しずつプレイヤーが異なっており、多くのプレイヤーが連携することでサプライチェーンが成り立っています。つまり企業ごと、部門ごとの縦割りやタコツボ化に伴う連携不足は、在庫不足や配送の遅延といった問題につながります。サプライチェーン全体を可視化することで生じるリスクや問題を予測し、プレイヤー間のスムーズな連携とより迅速な対応を生み出す仕組みづくりが求められています。

2、新たな価値創出に向けた柔軟な仕組み

顧客ニーズの多様化や高度化が目覚ましいロジスティクス/物流業界においては、最終消費者である顧客との接点強化や異業種との協業による新たな付加価値の創出により、ビジネスポートフォリオを拡大する動きが注目されています。関連企業には、SNS を活用した配送時間の指定システムや介護事業と連携した高齢者見守りサービスの提供など、慣習や業界の垣根を超えてこれまでになかったサービスやソリューションを生み出す柔軟な姿勢が求められています。

3、現場力向上と業務の効率化

倉庫や集荷センター、営業所といった拠点においては、業務の属人化が進みやすい傾向が見られます。迅速性や効率が求められるこれからのロジスティクス/物流業界では、作業のフロー化や自動化の推進、拠点間でのデータ共有など、現場業務の効率化を進める必要があります。そのためには旧来の経験頼りの業務フローやレガシーなシステムを改め、アジャイル的な思考や開発手法を基にした仕組みを導入する必要があります。

4、持続可能性の追求 (サステナビリティ)

ロジスティクス/物流業界に限らず、持続可能性の追求は全地球的な課題となっています。商品の開発、生産、販売、利用、廃棄といったライフサイクル全体で、部品点数の削減や材料の変更、リサイクル可能な仕組みづくりといった循環型経済の考え方が広まるなかで、ロジスティクス/物流業界においても事業活動から排出される CO2 の削減や在庫の最適化に向けたアクションが求められています。

こうした 4 つの大きな潮流それぞれに対応していくには、バリューチェーン全体を捉えたデータの利活用やデジタル化、最新テクノロジーの採用が必要不可欠であり、データを中心としたアプローチが重要となります。

スマート・ロジスティクスを実現する「データファーストアプローチ」の考え方

前章で触れたように、ひと口にロジスティクス/物流業界と言っても、輸送前、輸送中、輸送後とそれぞれのプロセスで幅広いバリューチェーンを持っており、数多くのプレイヤーが連携してサプライチェーンを構成しています。

個々のバリューチェーンのフェーズごとにデジタルソリューションを利用して業務を改善・最適化していくことも重要ですが、地政学的リスクの高まりや災害などで不確実性が高まる昨今、バリューチェーンを一気通貫して捉えることが必要不可欠になってきています。
たとえば、これまでは縦割りの組織や独自のオペレーションを束ねながらサプライチェーンの維持・管理が行われてきましたが、その状態ではプロセスが分断され属人化されていることも多く、アクシデントが発生してから受動的な事後対応が多くなってしまいます。
これからのロジスティクス/物流業界には、多くのプレイヤー間の連携をより効率的に行いながらオペレーションを最適化しつつ、予測不可能な事態にも対応していくことが求められます。

そのために必要なのが、DX の焦点をインフラストラクチャ中心の変革からデータ中心の価値創出へとシフトする「データファーストアプローチ」の考え方です。

「データファーストアプローチ」を採用することにより、分断されていた情報を連携させてプロセスを結合し、データやファクトから得られた洞察を元に問題発生の予想を行い、先手を打った判断が可能になります。
「データファーストアプローチ」を元にサプライチェーンを循環させていくことで、不要な在庫の積み増し防止や緊急オーダーの回避によるコスト削減など、各フェーズの最適化を実現できます。また、これから起こりうる事象を予測することで、迅速かつ正しい経営判断につなげることも可能です。

「データファーストアプローチ」を実現するためには、データの存在場所を明らかにして、適切なデータ管理を行い、常にクリティカルなデータを活用できる環境を整えることが重要です。

そこでポイントとなるのが、クラウドサービスの活用です。マイクロソフトでは、2022 年 11 月に「Microsoft Supply Chain Platform」構想を発表しました。
これは、マイクロソフトが持つ AI やマシンラーニング、ローコード・ノーコード開発の仕組み、セキュリティテクノロジーや Microsoft Teams をはじめとするコミュニケーションツールといったさまざまなソリューションを、パートナー企業が持つソリューションと組み合わせることで、ロジスティクス/物流業界の顧客の課題を解決するクラウドプラットフォームです。

Microsoft Supply Chain Platform のコアをなるのが「Microsoft Supply Chain Center」と名付けられた SaaS ソリューションです。このソリューションを活用すれば、サプライチェーン全体を可視化し、連携させることが可能です。2023 年 6 月現在では米国プレビュー版が公開されており、今後他国への展開を強化していく予定です。(Microsoft Supply Chain Platform | Microsoft

データファーストアプローチを取り入れた企業事例

マイクロソフトでは、データファーストアプローチの観点をもってロジスティクス/物流業界のリーディング企業との協業を進めています。いくつかの事例をご紹介します。

C.H.Robinson 社は海上輸送を含むサプライチェーンの可視化を進めており、Microsoft Surface などのマイクロソフト製品も、同社のソリューションで配送管理が行われています。また DHL 社と Blue Yonder 社とは物流倉庫におけるロボティクスプラットフォームの構築で協業し、既存システムと基幹システムを統合する際のプログラミングにかかる時間の 60% 削減を実現しました。FedEx 社とは蓄積された顧客データを元にした満足度向上のための FedEx Surround Platform の構築を支援しています。

国内においても多くの企業と協業しており、ヤマト運輸社とは EC 向けの新配送商品「EAZY」の構築で協業。EC 利用者、EC 事業者、配送事業者のすべてをリアルタイムなデジタル情報でつなぎ、利便性、安全性、効率性の高い新たな顧客体験を実現しています。

参考:日本マイクロソフト お客様事例: Microsoft Customer Story-EC 向けの新配送商品「EAZY」で新たなエコシステムを実現、その基盤となるコア システムを Azure に構築

また郵船ロジスティクス社は、倉庫管理システム「Manhattan SCALE」を皮切りとして Microsoft Azure によるグローバルでの全社システムの統合/標準化を進めており、懸案であった倉庫管理システムの標準化と TCO 削減を達成しつつあります。また IT コストの可視化や基盤の柔軟性が増すことで、グループ全体の IT施策の立案/管理/監督の高度化においても、大きな効果を上げています。

参考:日本マイクロソフト お客様事例:IT の“ライトアセット化”に向け、Azure 活用の成功事例をグローバル規模に展開、IT 基盤の標準化を実現

これらの事例をはじめ、マイクロソフトはデータファーストアプローチの考え方を軸にしたロジスティクス/物流業界のスマート・ロジスティクス推進を支援しています。これからも皆さまのテクノロジーパートナーとして、サプライチェーン全体を俯瞰しながら、各企業にとって最適なアプローチやソリューションをご提案・ご支援してまいります。

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物流業界における Sustainability Transformation〜ビジネスモデルの変革を支える DX とは〜Volume.2 (全 3 回) http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/sustainability/2023/04/26/manufacturing_sustainability_2/ Wed, 26 Apr 2023 06:14:36 +0000 今回の Volume.2 では、欧州系戦略コンサルティングファームのローランド・ベルガーでパートナーを務めており、物流業界の第一人者である小野塚征志氏にビジネスモデルの変革を支える DX と物流業界に関連する具体的な新規ビジネス事例やテクノロジー活用について、CO2  削減の観点も交えてお話を伺います。

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Volume.1 では物流業界における CO2 削減に向けた環境認識、業界課題、アプローチについて考察し、必要なデータの「見える化」をすることで「削減」を実現していくステップが重要であることを紹介しました。また、「見える化」と「削減」のステップと並行して、サステナビリティを実現するためのマインドセットやビジネスモデルの変革(削減をコストとして捉えるのではなく、新たな収入源として捉えた柔軟な発想・変革)が重要である点について触れました。

物流業界における Sustainability Transformation〜CO2 削減に向けて〜Volume.1 (全 3 回) – マイクロソフト業界別の記事 (microsoft.com)

今回の Volume.2 では、欧州系戦略コンサルティングファームのローランド・ベルガーでパートナーを務めており、物流業界の第一人者である小野塚征志氏にビジネスモデルの変革を支える DX と物流業界に関連する具体的な新規ビジネス事例やテクノロジー活用について、CO2  削減の観点も交えてお話を伺います。

株式会社ローランド・ベルガー パートナー 小野塚 征志氏
株式会社ローランド・ベルガー パートナー 小野塚 征志

DX がもたらすビジネスモデルの変革。デジタル化はそのための手段

昨今、DX (Digital Transformation) という言葉が広く浸透し、多くの企業では経営戦略に組み込まれるだけでなく、DX を推進するための組織や役職が新設されるなど、組織形態をも変える動きが出ています。DX について、「IT の導入による業務の効率化」や「事務の電子化による生産性の向上」などが例として取り上げられることがありますが、それらは単なるデジタル化にすぎません。

真の DX とは、「デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新」です。経済産業省は 2018年 12 月に発表した『DX 推進ガイドライン』において、DX を「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義づけました。

つまり、DX の本質的な目的は「変革による競争優位の確立」であり、「デジタル化」はそのための手段と捉えるべきです。そして、デジタル技術の活用を通じて、新たなビジネスモデルを確立し、今までとは異なる誰かに、今までとは違う方法で、今までにはない価値を提供する。その非連続な成長によりパラダイムシフトを成し遂げることによって新たなビジネスを創造することが DX の神髄なのです。

デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新の図説

DX には 4 つの進化形態が存在

真の DX とは、「デジタル技術を活用したビジネスモデルの革新」であると述べましたが、DX には DX 1.0 から DX 4.0まで 4 つの進化形態があります。

DX 1.0 は「デジタイゼーション」です。デジタル技術を活用することで、ビジネスプロセスをデジタル化し、業務効率化や生産性を向上して収益力を強化する、いわゆる「デジタル化」の一歩となります。
DX 2.0 は「デジタライゼーション」によるビジネスモデル変革で、収益を得るための方法や差別的優位性の源泉などを変えることで競争力を高める段階に入ります。モノ売りからコト売りへの転換、プラットフォームの構築などが該当します。
DX 3.0 は「コーポレートトランスフォーメーション」を指し、本来の DX の意味合いが濃くなります。DX を通じて「誰に、どのような価値を、どうやって提供する企業を目指すのか」を再考することで、企業としてのアイデンティティを進化させることが重要になります。

そして、DX の最終段階である DX 4.0 は「インダストリアルトランスフォーメーション」です。DX 3.0 の「コーポレートトランスフォーメーション」を実現した企業が社会生活や経済活動に革新をもたらし、業界全体のメカニズムを再編成することで、より豊かで快適な社会・経済を創出することが期待されます。

DXの 4 つの進化形態の図説

大切なのは、DX にはこの 4 つの段階があることに留意して戦略を描くことです。目先のデジタイゼーションやデジタライゼーションだけをターゲットにビジネスの革新を進めると、将来使わないデジタル技術に投資をしてしまう可能性があります。DX 3.0 や DX 4.0 を成し遂げた後の目指す姿を具体化した上で、その実現に向けた「DX 戦略」を策定することが重要になります。

DX はサステナビリティの実現を加速させる

DX はサステナビリティを実現する上で最も有効な手段であるといっても過言ではありません。Volume.1 では、物流業界における CO2 削減に向けた最初のアプローチとして、「見える化」が重要であると述べられていました。「見える化」は、DX 1.0 のデジタイゼーションに相当しますが、情報やデータを「見える化」して現状を把握することで初めて CO2 削減に向けたアクションアイテムを検討・判断することができます。CO2 開示義務などの法規に対応する必要があることを考えても、欠かすことのできないステップといえます。

そして、「見える化」することで「削減」への筋道が立ち、DX 2.0 のデジタライゼーションでビジネスモデルを変革し、CO2 を削減したり、環境に優しいビジネスモデルを構築したりすることができます。例えば、サプライチェーン全体を捉えて物流を管理するようなプラットフォームの構築や、配送ルートを最適化するサービス、あるいはモノやサービスを売りたい人と買いたい人をマッチングする新たなビジネスの創出などです。

同時に、さまざまなプロセスが効率化されることで、不要な作業が減少したり、配送距離が短縮されたりして、間接的に CO2 削減につながるビジネスモデルも広がりつつあります。

ここでいくつか具体的な例を挙げてみましょう。

例えば、生花の生産者と花屋の直接取引を可能とする CAVIN が挙げられます。CAVIN はこれまでの伝統的な生花流通構造を効率化し、アプリを介して生産者と花屋をマッチングすることで流通マージンを削減しました。
それに加えて、中間流通業者を介さずに済むので、店頭に届くまでの期間を大幅に短縮できます。より新鮮な生花を消費者に販売できるだけではなく、流通過程での廃棄ロスを低減することでサステナビリティを高めることに成功したわけです。

CAVIN の取引の仕組みの図説

Amazon は処方箋薬の宅配を起点に新たなヘルスケアビジネスを展開しています。利用者である患者は薬局まで薬を取りに行く手間を省けるだけではありません。朝・昼・夜といった服用のタイミングごとに飲むべき複数の薬が 1 つの袋に封入されて届くため、飲み忘れや飲み間違いを防げます。過去の処方箋情報や購買履歴などを基に、おすすめのサプリメントや保険商品も提案してくれます。
さらに Amazon は 2021 年から、オンラインでの遠隔診療と対面診療を組み合わせたハイブリッド診療サービスの提供を開始しました。ヘルスケアに関するモノやサービスをワンストップで利用できるようになったわけです。

物流の観点からすると、患者の処方箋情報や購買履歴などを基に出荷量を見通すことで、サプライチェーンの効率性を高めることが可能となります。製薬会社にデータを還元すれば、生産量や在庫量をより的確にコントロールできるはずです。薬以外の商品と一緒に運ぶことで、輸送効率の更なる向上も見込めます。社会が便利になるだけではなく、CO2 削減にもつながるビジネスモデルといってよいでしょう。

Amazon のヘルスケアビジネスの図説

サステナビリティの実現に向けてこれから必要とされる視点とテクノロジーへの期待

これまでお話してきたように、サステナビリティの実現と DX の関係は密接であり、相互に作用し合う関係にあります。
サステナビリティに対する様々なアクションを起こすためにも、IoT や AI などのテクノロジーを駆使しながら、どのようなデータをどこで蓄積・活用するのかを考えることが肝要です。そのためには、DX を段階的に捉え、サステナビリティを含めた企業としての目指す姿を描くこと、その実現に向けたロードマップを策定することが大切です。

例えば、輸送にかかるコストと CO2 を見える化し、常に最適な輸送手段・ルートを選べるようにしたい、あるいは、最適な輸送手段・ルートをレコメンデーションするサービスを提供したいといったとき、データの一元管理やインタオペラビリティを意識した仕組みを構築すべきです。
Scope3 を対象に CO2 排出量のデータを取得するには、自社以外の企業や団体との連携も欠かせません。データを自社のサーバー以外に蓄積すること、すなわちクラウドの活用拡大を図ること、それと並行してセキュリティを強化することも必要となります。

そして、ビジネスモデルの変革に向けた思考のトランスフォーメーションも枢要です。今後、モノ売りからコト売りへのシフトが進み、人を中心としたビジネス、環境に優しいサービスを軸に変革が進むと予想されますが、その実現には、これまでとは異なる開発手法を用いることも求められます。
システム開発を例に挙げると、従来は手戻りを最小化しやすいウォーターフォール型での推進が主流でしたが、これからはトライ & エラーを繰り返して質を上げていくアジャイル型の開発も増えるはずです。IT エンジニアだけが開発機能を担う時代は終わり、IT を専門としない事業部門サイドの社員も自由にアプリケーションやサービスを開発する、「市民開発」の時代に突入したといってよいでしょう。

DX はデジタル技術を起点に検討するのではなく、目指す姿を描き、その実現に向けて有用なテクノロジーを駆使すること、種々のデジタルリソースを適材適所に用いることが大事です。DX 1.0 から DX 4.0 のように、個別の事業のみならず、業界や社会へのインパクト、サステナビリティも含めた社会課題の解決までも捉えて目指す姿を描くこと、その実現に向けた DX 戦略を策定し、アジャイルに推進していくこと、そういった取り組みが日本の様々な企業に広がっていくことを期待したいです。

以上の通り、Volume.2 ではローランド・ベルガーの小野塚様にお話を伺いました。DX について更に詳しく知りたい方は、小野塚様の著書「DX ビジネスモデル」(DX ビジネスモデル 80 事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略 | BOOKS | ローランド・ベルガー 東京オフィス|Roland Berger Japan)をご覧ください。

Volume.3 では物流業界含むサステナビリティ実現に向けた弊社お客様事例をご紹介していきます。


<編集後記 日本マイクロソフト モビリティサービス事業本部>
昨今注目を浴びている Bing AI チャットに「これからサステナビリティに必要とされる視点とテクノロジーへの期待」についても聞いてみました。

—引用—

  • テクノロジーはサステナビリティ目標を達成するために不可欠であり、企業はデジタル変革とサステナブル変革を同時に推進する必要がある。
  • テクノロジーは人口減少や高齢化などの社会課題に対応し、ウェルビーイングが高い暮らしや安心・安全な社会を実現するために活用できる。
  • サステナビリティ・ネイティブとは、サステナブルな価値観を持ち、環境や社会への影響を考えて行動する人々のことであり、彼らは企業や商品・サービスの役割を再定義する可能性がある。

これからサステナビリティに必要とされる視点としては、自分や組織だけでなく、地球や社会全体の利益を考えることが重要だと思います。また、テクノロジーへの期待としては、環境負荷を低減し、人々の幸福度を向上させることが求められていると感じます。
—引用終わり—

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物流業界における Sustainability Transformation〜CO2 削減に向けて〜Volume.1 (全 3 回) http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/manufacturing/2023/01/11/manufacturing_sustainability_1/ Wed, 11 Jan 2023 05:57:54 +0000 国連は、サステナビリティを「地球の自然界にある資源を長期間維持し、環境破壊することなく、次世代につないでいく行動や配慮」と定義しています。また 2015 年の国連サミットにおいて、持続可能な開発目標、いわゆる SDGs (Sustainable Development Goals) が採択されたことにより、サステナビリティは、私たちの社会・企業活動の中でますます重要で喫緊のテーマとなってきています。

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国連は、サステナビリティを「地球の自然界にある資源を長期間維持し、環境破壊することなく、次世代につないでいく行動や配慮」と定義しています。また 2015 年の国連サミットにおいて、持続可能な開発目標、いわゆる SDGs (Sustainable Development Goals) が採択されたことにより、サステナビリティは、私たちの社会・企業活動の中でますます重要で喫緊のテーマとなってきています。
さらに、2007 年に IPCC、気候変動に対する政府間パネルが公表した第 4 次評価報告書において、多くの自然資源や人間も含めた生態系に甚大な影響を及ぼす地球温暖化は人類の活動が関与していることが示され、その主要因である CO2 の影響が大きく注目されることとなりました。
最新の報告書によると影響はさらに深刻となり、産業革命以前からの気温上昇を 1.5℃ に抑える必要性にも言及されています。その一方で、今後の対策によっては取り返しのつかない事態を避けられる可能性も挙げられており、そのなかでも、CO2 をはじめとする温室効果ガスの削減が最も重要な社会課題となっています。

我が国における CO2 排出量のうち、物流・交通を含む運輸部門は全体の約 17%、そのなかでも物流領域は約 45% を占めており (環境省、国立環境研究所「2020 年度温室効果ガス排出量(速報値)概要」)、物流業界における CO2 削減への対応も強く求められています。一方で物流は、経済活動において製品やサービスを運ぶ血管のような役割を果たし、非常に重要であると同時に、広範で、かつステークホルダーが多い複雑な業態でもあります。
そのような物流業界において、CO2 を削減し、なかにはカーボンニュートラルを目指すような動きがあるものの、各ステークホルダーにおける目標値の設定や責任の帰属が不明瞭で、削減活動に対する投資判断を難しいものにしていることなどが課題となっています。
これらの物流業界が抱える課題を解決し、Sustainability Transformation (SX/持続可能性を重視した経営への転換) を実現するためにデジタル技術はどのような貢献ができるのか、全 3 回にわたって考察していきます。Volume.1 では課題の整理とその解決に向けたステップについてご説明します。

日本マイクロソフト

モビリティサービス事業本部
インダストリー・アドバイザー
上野 貴文

モビリティサービス事業本部
インダストリー・アドバイザー
藤巻 好子

物流のトレンド変化に伴う既存オペレーションの課題とは

まずは物流業界の現状を数値で見ていきましょう。我が国の運輸業界の CO2 排出量のうち、自家用車が約 30%、バスやタクシーといった旅客自動車が約 20%、貨物トラックが約 40%。旅客鉄道・船舶・航空が約 8%、貨物鉄道・船舶・航空が約 4%という割合になっています。排出量のほとんどを自動車が占めており、年間約 3 億 5000 万トンもの CO2 を排出しています。

続いて国内のトンベースの貨物輸送量を見ていくと、90 年代以降は漸減しつつ、ここ 10 年ほどはほぼ横ばいとなっています。この背景としては、製造業をはじめとする生産拠点の海外移転や、物流網の発達や最適化による産地と消費地との距離短縮、インターネットの普及やデジタル化に伴う新聞や書籍といった印刷物の減少などが影響していると予想されます。

日本のCO2排出量のカテゴリー別説明図
貨物輸送量のグラフ

一方で小口配送の件数は増えており、配送されるモノの種類に変化が見て取れます。特に EC (Electronic Commerce=電子商取引) の市場規模は右肩上がりで成長しており、それに伴って国内貨物輸送における宅配便の取り扱い実績は年々増加しています。2020 年以降の新型コロナウィルスによるパンデミックは、EC 市場をさらに急伸させ、消費者の新たな商習慣として定着したため、今後も高い水準を維持するものと予想されます。
そのような国内貨物輸送においては、100 km 以下の小口配送が全体の 4 分の 3 を占めており、そのほとんどが自動車によって担われています。

輸送手段のグラフ

こうした変化に伴い、物流業界の既存オペレーションにおけるさまざまな課題が浮き彫りとなっています。
小口配送量の拡大に伴って、大手物流事業者によるサードパーティ・ロジスティクス (3 PL/物流業務の第三者委託) の活用が増加し、また、EC などによる消費者に対する宅配便の増加によって受け取り時間の指定や返品対応といったオペレーションの多様化が進んだことで、配送オペレーションが複雑化しています。また近年では、いわゆるフリマサービスの流行により、消費者から発送される、従来とは逆方向の物流が増えてきていることも、複雑化の要因になっていると考えられます。
このようななかで、今後さらに強く要求される CO2 削減を実現しながら、車両、配送ルート、集配拠点のオペレーションなどを、いかに効率的に管理していくかが大きな課題と言えるでしょう。また、委託先の CO2 管理や、慢性的なドライバー不足を解決することも、大手物流会社にとってはサステナビリティに関わる課題と言えます。

配送オペレーションの図解

物流業界の CO2 削減を実現する 3 つのステップ

物流業界における CO2 の削減に向けては、3 つのステップが考えられます。

CO2 削減に向けての3つのステップの説明図

まずは「CO2 排出量の見える化」です。各スコープにおける CO2 排出量を、できるだけ 1 次データとして定量的にモニタリングすることは非常に重要です。多くの企業においては、年に一度のサステナビリティレポートによって実態を把握し、その後の計画や目標に反映させているケースが見られますが、それではタイムリーな対応が難しくなってしまいます。一方で、データの精度や頻度を闇雲に上げたり、そもそも取得困難なデータをとるために資源を費やしたりしても、コストがかかるばかりではなく、逆に正確な情報が取れなくなる可能性もあります。まずは、事業環境に即した適切なデータのプロファイルを定義し、それらを効率的に収集・分析して、CO2 削減に向けた PDCA を回す必要があると考えます。
そのためには、従来のエクセルだけではなく、BI ツールや IoT などの技術を活用して出来るだけ簡便で正確にデータを集約し、実測が困難な場合は AI 等を用いた推定することによって、全体を可視化していくことも効果的であると考えられます。
このようなデータが蓄積してくれば、将来データの予測も精度が上がりますので、より効果的な施策を打つことも可能になるでしょう。

CO2 排出量の見える化と考え方の説明図

2 つ目のステップは「CO2 の削減」です。見える化により CO2 排出の実態を定量的、且つ適切なタイミングで把握できるようになることで、効率的な削減に繋げることが可能となります。削減に対する目標値の設定や活動の進捗管理などがより実効的になるだけでなく、より効果的な重点領域に対する投資判断につなげることも可能となるでしょう。さらに、ステークホルダーや投資家などへの活動報告も重要です。データに基づいて、より正確な報告を行うことが、ひいては企業としての信頼につながるはずです。

具体的な削減方法としては、電気自動車や燃料電池車などの低炭素輸送手段への切り替えや、車両運用管理の最適化による CO2 排出量削減に注目が集まっています。また、従来から推進されている手法ではありますが、鉄道輸送や内航海運へのモーダルシフトも地域や条件によっては有効な手段です。さらに、IoT や AI などの技術を用いたオペレーションや配送ルートなどの最適化により、輸送量・距離を減らすことも重要な取り組みです。いずれにしても、データに基づいて、それぞれの状況に応じた最適な手段を選択していくことで、より効率的な削減につながります。

CO2 削減の2ステップ目の説明図

最後のステップは「CO2 排出量の相殺 (オフセット) 」です。見える化によって定量化された排出量や削減量のデータに基づき、排出権取引によって相殺したり、植林や DAC (Direct Air Capture) などに自ら投資したりすることで、削減だけでは届かなかった目標値とのギャップを埋めることになります。ただし一般的には、削減手法よりもより多くの投資やリソースを必要としたり、地理的な制約もあるため、まずはできるだけ排出量を削減した上で、カーボンオフセットは最後の手段と捉えるべきでしょう。

CO2 の削減は、サステナビリティの観点から重要な課題であると認識されている一方で、企業活動としてはコストとして捉えられがちです。ところが、例えば世界の政府機関等は 2028 年までにエネルギー効率化分野に約 7 兆円を投資する予定であり、カーボンオフセット市場は 2050 年までに 25 兆円規模に成長すると言われています。コストではなくビジネスを成長させるチャンスとして捉えることも重要ではないでしょうか。

少し視点を変えてみると、物流業界のバリューチェーンにおいて、低炭素化や低炭素輸送への転換に対するコストを最終的に誰が負担するのかを考えると、その原資はサービスに対する対価を支払うエンドユーザーということになります。世界的な環境意識の高まりにより、SX に取り組む企業への注目はますます高まっています。低炭素物流をビジネスの特徴として捉え、価値化し、マネタイズしていく意識は、今後さらに重要になってくるでしょう。

可視化に基づいた構造変革を消費者の意識改革につなげる

これから必要な視点として、ステークホルダーが多い物流業界においては、誰がイニシアチブを取って CO2 を削減していくか、その役割分担の明確化と業界内の連携が大切です。そのうえで、業界全体でどれだけ改善の余地があるか、またそれぞれのプロセスにおける成果はどれくらいか、その努力しろを可視化することも重要です。
また、CO2 削減のためにお客さまの利便性を下げるのか、あるいはそれに必要なリソースを単純に価格に転嫁するのか、もしくは新たなビジネスチャンスと捉えてサービスの質を向上させるのかなど、サステナビリティを実現するためのビジネスモデルの変革も必要になってくるでしょう。さらに、こうした、一見、社会的コストと捉えられがちなものは助成金頼りになることが多いのですが、そこに頼らずにビジネスとして利益を生む構造をつくっていくことも必要です。
さらに、低炭素物流の社会的価値に対して、正当な対価を支払うという消費者の意識改革も重要な視点です。

見える化と削減についてのオーナーシップの説明図

最後に、物流業界の SX において活用が期待されるテクノロジーにはどのようなものがあるでしょうか。より効率的なオペレーションを実現するために、AI や機械学習はすでに多くの場面で活用が始まっています。また、それらのシミュレーションに使われるデジタルツインや、その UI として期待されているメタバースの技術も非常に期待が高まってきています。さらに今後は、量子アニーリングなどの複雑系の最適化に特化した最新技術の適用の可能性も見えてきています。また IoT は、データをベースとしてビジネスや活動を推進していくために必須になってきます。
日本マイクロソフトは、これらのデジタル技術を取り入れることで、効率的な CO2 削減を推進・実現できると考えています。

次回 Volume.2 では外部有識者の方を交え、CO2 削減に向けた各国の潮流や規制対応状況に加え、具体的なアプローチやテクロジー活用について考察していきます。

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ロジスティクス/物流業界の未来を変革するマイクロソフトの先進テクノロジー http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/retail/2022/11/02/logistics/ Wed, 02 Nov 2022 06:50:00 +0000 ロジスティクス/物流市場の規模は年々拡大を続けており、特に電子商取引 (EC) 分野の市場規模は急速に拡大しています。
2020 年は新型コロナウィルスの世界的な流行に伴い停滞したものの、2021 年の日本国内の BtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、20.7 兆円(前年 19.3 兆円、前々年 19.4 兆円、前年比 7.35% 増)に拡大しています。また、2020 年の日本国内の BtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は372.7 兆円(前年 334.9 兆年、前々年 353.0 兆円、前年比 11.3% 増)に増加しました。

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ロジスティクス/物流市場の規模は年々拡大を続けており、特に電子商取引 (EC) 分野の市場規模は急速に拡大しています。
2020 年は新型コロナウィルスの世界的な流行に伴い停滞したものの、2021 年の日本国内の BtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、20.7 兆円(前年 19.3 兆円、前々年 19.4 兆円、前年比 7.35% 増)に拡大しています。また、2020 年の日本国内の BtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は 372.7 兆円(前年 334.9 兆年、前々年 353.0 兆円、前年比 11.3% 増)に増加しました。

一方で、ロジスティクス/物流業界には人手不足やコスト上昇、労働環境などさまざまな課題が生じています。また、消費者の意識や行動が変化するスピードも早く、感染症の流行や国際的な紛争など将来の予測が困難な時代に対応するためにサプライチェーンは広範かつ多様化しており、ロジスティクス/物流業界にはその変化に対応する変革が求められています。

経済産業省「令和 3 年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」


ロジスティクス/物流業界はこれまでも、市場の変化や課題に対応するために DX が進められてきました。しかし近年の市場の活況に伴って、小口荷物や厳格な管理を必要とする荷物の増加など顧客ニーズの多様化・複雑化が進み、ロジスティクス/物流業界で以前から指摘されてきた人手不足や再配達対応などの課題がより一層深刻化しています。それらの課題を解決するためには、レジリエンスを高め、データ分析から自動化、プラットフォームソリューションまで、最新テクノロジーの理解と活用が必須となるはずです。

大きな変革期を迎えているロジスティクス/物流ビジネスで勝ち残るためのカギは、受発注/在庫管理/運送車両/交通情報などすべてのデータを連携して物流インフラを最適化する「スマート・ロジスティクス」にあります。マイクロソフトは、スマート・ロジスティクスを実現するためのさまざまなソリューションを提供しています。


ロジスティクス/物流業界と親和性の高いマイクロソフトのソリューション

マイクロソフトのソリューションはロジスティクス/物流業界と親和性が高いと言えます。

まず、マイクロソフトは配送ルートや交通量の最適化などで期待される量子コンピューターの活用をはじめ、IoT やデジタルツイン、データ分析基盤などの広範な技術とノウハウを保有しており、「Azure Maps」のような地図ソリューションも持っています。これらの強みを生かして、世界中で物流事業者の課題解決を支援しています。

また、マイクロソフト自身は物流事業者ではありませんが、創業以来 PC や周辺機器のメーカーとして築き上げてきた独自のグローバルサプライチェーンを持っています。自分たち自身で物流を使いこなしてきた経験から、物流の実態と難しさを理解したうえで課題解決を支援できるのです。物流事業者ではないマイクロソフトはお客さまと競合する立場ではありませんから、協業しやすいことも強みとなっています。

マイクロソフトでは、個別企業の DX 支援だけでなく、視野をロジスティクス/物流業界全体に広げ、さらなる効率化のために新たなコンセプトを立ち上げました。それが「スマート・ロジスティクス」です。スマート・ロジスティクスとは、特定の企業だけでなく、ロジスティクス/物流業界全体の課題を解決していくための取り組みであり、マイクロソフトでは、データ収集や受発注管理、倉庫管理、車両管理、サプライチェーンマネジメントを含む 10 の基本分野にフォーカスし、クラウドを基盤とするデータ活用によってロジスティクス/物流業界全体の DX を推進しています。


国内のスマート・ロジスティクスを推進する日本マイクロソフトの取り組み

スマート・ロジスティクスを日本でも具体的に進めるため、日本マイクロソフトは 2020 年 7 月に組織横断型のバーチャルチームを立ち上げました。営業、マーケティング、IoT 、複合現実(MR)、パートナー事業部などに加え、金融、物流、運輸、製造、小売、自動車ほか、物流に関わるさまざまな業界の担当者がメンバーとして活動しています。
メンバーが自分の顧客企業から物流に関する相談を受けた場合にはいったんチームとして引き受け、すでに他業界で成功した事例がないか、具体的な問題解決につながる技術を持つパートナー企業はないかなど、メンバーの知識とノウハウを横断的に組み合わせて、さまざまな角度から最適な施策を検討していきます。
こうして広い視野から多くの顧客企業の課題解決を図ってきたバーチャルチームは、 2022 年 7 月からは、脱炭素や規制対応が求められ複雑化しているロジスティクス/物流業界に特化した課題やシナリオをサポートすべく、物流を取り巻く自動車・鉄道・運輸等のモビリティ業界やサステナビリティの担当者を中心に活動をしています。

具体的な取り組みとして「Azure Synapse データベース テンプレート」を活用した支援があります。Azure Synapse データベース テンプレートは、特定の業界のニーズを満たすために事前に設計された、ビジネス上のおよび技術的な一連のデータ定義で、業界のベストプラクティス、政府の規制、複雑なデータと分析のニーズから派生した共通の要素を提供するブループリントとして機能します。このテンプレートのなかには貨物運送およびロジスティクスのサービスを提供する企業向けのものも存在しており、ロジスティクス/物流業界の多くの企業で DX の指針として役立てられています。
さらに、Azure Synapse データベース テンプレートは企業の社会貢献にも配慮しており、二酸化炭素の管理コンポーネントはすべての使用可能なデータベース テンプレートに含められています。 これらのコンポーネントは、温室効果ガスの直接および間接的な排出を追跡して報告する必要がある企業に、便利に活用いただけるはずです。


スマート・ロジスティクス のトップランナーに学ぶ

ここからは、マイクロソフトの支援によってスマート・ロジスティクスを推進する企業の事例をご紹介します。

【データ収集蓄積・分析事例】ヤマトホールディングス

2021 年夏に日本で開催され、数多くのドラマと感動を生み出した国際的なスポーツ大会。その膨大な物流を支えたのが、ヤマトホールディングス株式会社です。そのために同社は物流計画やリソース配置、実績などを可視化できるダッシュボードを構築しました。
その基盤として活用されているのが Microsoft Power Platform です。採用理由は、アジャイル開発が可能なこと、すでに大会組織委員会で利用されていた Microsoft Excel との連携が容易なこと、そして十分なセキュリティが担保できることでした。これによって約 11,000 台の車両と約 7,700 名の総力を結集、日々変化する物流要件に迅速かつ安全に対応しながら、効率的で確実な物流を実現したのです。またダッシュボードによる情報の可視化は、大会組織委員会とヤマトHD との間に共通認識を醸成するうえでも、大きな貢献を果たしました。

日本マイクロソフト お客様事例:
 Microsoft Customer Story-Microsoft Power Platform で構築したダッシュボードを活用し、史上最大となる国際的な大規模スポーツ大会の物流を実現

【倉庫管理(WMS)事例】thyssenkrupp

thyssenkrupp では、データサイエンスの専門知識が不足していたことや、社内でのデータ形式や保存に課題があり、豊富なデータが未使用のままになっていました。データを分析、可視化し、最終的にそこからアルゴリズムを構築してさまざまなシナリオにデプロイ可能にする関連ツールがなかったのです。
そこでマイクロソフトの Azure を利用し、年間 200 万件以上の注文をより効率的に処理し分析するプラットフォーム「alfred」を構築。データの可用性を高めることに成功しました。Alfred は Microsoft Azure Machine Learning に基づく自己学習アルゴリズムを使用して、関連するすべての情報を分析し、重要な調査結果を生成、適切な推奨事項を従業員に提供します。
alfred が顧客ごとの利益率や機械のメンテナンス予測、状況に合わせた出荷予測などを指示することで、在庫レベルやサプライネットワークの最適化も実現、満足度も向上しました。さらに従業員が自分でアクセスできるデータが大幅に増加しデータの可用性と透明性が向上し、DWH 担当者の工数を削減できました。

Microsoft Features:
Thyssenkrupp Materials Services ‘keeps calm and carries on’ – with its new Alfred AI solution to optimize its logistics network

【輪配送管理(TMS)事例】Merck&Co.,Inc

医薬品の有効性を持続させるためには、保存、取扱、および出荷作業の全体を通して適切な温度を維持する必要があります。 Merck&Co.,Inc では、有効性が低下した医薬品の破棄が課題となっていました。ビックデータの分析により温度変化の要因を調査し、低温管理が必要な医薬品の輸送成功率を向上させる必要があったのです。
そこで Microsoft R Server (現: Machine Learning Server) を利用してコールドチェーンに影響を与える様々な要因(出発地、目的地、出荷ルート、屋外の天候、物流業者など)を分析し、温度変化の原因を特定。過去 14 年分のセンサーデータ(コンテナ輸送中の温度を測定したデータ)を活用し、医薬品の輸送後の温度上昇率を事前に測定できる予測モデルを開発しました。
輸送時の温度変動を事前に予測することで、医薬品の鮮度を損なわない最適な温度の管理が可能になり、在庫の廃棄コストを削減できるように。さらに Microsoft R Server は内蔵の Hadoop サポートに加えて R の並列処理が可能なため、大量のデータを高速に分析できます。

【車両管理/ドライバー支援事例】SCANIA

SCANIA では、中核となるビジネスプロセスがアナログで、紙やホワイトボードなどにかなり依存していたため、マネージャーが活動を調整するための、簡単で一元化された方法がありませんでした。そこで、欧州事業の各拠点を最適化することで運用の混乱を最小化することを目指しました。
Project Online を Microsoft SharePoint Online と Microsoft Power BI で補完した、新しい社内プロジェクト計画ソリューションを構築することで、Azure で膨大なデータから情報を探り出して分析し、全体の輸送の流れを測定および監視できるようになりました。
さらに SCANIA 社全体の状況についてリアルタイムで洞察を得ることにより、データに基づく迅速な意思決定が可能になり管理プロセスも合理化。結果として経営が向上、設備の損傷、検査、および安全に関連した遅れから生じる運用の混乱が最小に抑えられるようになりました。

Microsoft Customer Stories:
Automotive giant Scania boosts European project management efficiency

【現場支援事例】トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車では、紙の作業手順書・修理書を見ながら行う作業に多くの時間がかかっており、内部構造や勘やコツなどの表現にも限界がありました。ベテラン技術者へのスキル依存度が高く整備士の作業技術レベルの標準化や作業品質の維持確保が課題となっていたのです。
そこで HoloLens 2 を導入し、トヨタ販売のサービスエンジニア(整備士)を対象にした 3D の作業手順書・修理書を Mixed Reality テクノロジーによって作成。段階的な作業手順を 3D で表示する Dynamics 365 Guides の活用および Azure AI を活用した、作業ミスや作業漏れを検出する機能の開発および検証を実現しました。
その結果、作業の習熟度が上がることで未経験や経験の浅い整備士でも短期間で質の高い作業ができるように。点検作業にかかる時間を 70% から 80% カットでき、今後の作業技術レベルの標準化と作業品質の維持が期待されています。

日本マイクロソフト株式会社 公式 YouTube チャンネル:
〔HoloLens〕トヨタ自動車事例 Microsoft HoloLens を活用した整備士の働き方改革

【サードパーティロジスティクス(3PL)事例】SNCF

27 万人の従業員と国際的なサービス提供地域を持つ SNCF では、業務効率化に向けて “Digital for All” と呼ばれるソリューション開発プロジェクトを発足。Power Platform を採用し、従業員へのトレーニングを積極的に実施、各従業員が自分の日常の業務を改善する方法を革新することになりました。
フランス語以外の話者のコミュニケーションを容易にするために Power Apps と Microsoft Translator を用いた音声認識アプリを 1 日で開発しドライバーに提供、サプライチェーン注文管理、検査アプリ、リクルーティング アプリなど、Power Apps や Microsoft Flow、Power BI などをあらゆるマイクロソフトソリューションを活用して、アプの迅速な構築およびカスタマイズを行いました。
その結果、直感的な UI でコミュニケーションが図れるデジタル言語アプリが国際的なドライバー間の緊張を緩和し、仕事に集中できるようになりました。さらに数万人の従業員が 150 を超えるアプリを使用してタスクの簡素化と合理化を進め、Power BI のリアルタイム分析を使用してエラーを減らし、信頼性を高め、生産プロセスを改善できました。

Microsoft Customer Stories:
SNCF: Power platform customer success story

【利用者サービス事例】United Parcel Service(UPS)

220 を超える国と地域で毎日 1,900 万を超える荷物を配達する UPS は、膨大な顧客追跡リクエストに対する顧客体験の向上と IT スタッフの業務効率化を目指しまして革新的なデジタル施策を進めています。
UPS は複数のバージョンがある UPS Mobile アプリの開発に Xamarin 用の Visual Studio Tools を採用し、コードを統合して複雑さを軽減、Microsoft ボットフレームワークと Azure で実行されるチャットボットを使用してサービスレベルを向上しました。
UPS Mobile の新しいバージョンによって顧客体験を改善し、コストを抑えながら開発スピードを大幅に短縮し開発者の生産性を向上。顧客はボットを利用することで、テキストベースおよび音声ベースの会話で簡単に貨物、料金、UPS の場所に関する必要な情報を得られるようになりました。

Microsoft Customer Stories:
UPS paves the way for better service with faster development and artificial intelligence

【サプライチェーンマネジメント事例】KOTAHI

ニュージーランドからの輸出品の多くは日持ちしないため、出荷のタイミングを最適化し、需要を正確に予測することが重要です。ところが KOTAHI では、積載効率向上と全体的な輸送コスト削減のための需要予測が主導のプロセスに依存しており、工数と属人化が課題になっていました。
そこで需要予測プロセスの自動化を目指して Azure Machine Learning を利用した新しい需要予測アプリケーションを構築しました。このアプリケーションでは Azure Data Factory を使用して、Microsoft Dynamics AX、Azure SQL Database、Kotahi のトランスポート管理システムからの履歴需要データを読み取るプロセスを自動化して予測を生成することができます。
結果として、需要予測を 4 日から 30 分に短縮。BI を活用して意思決定を迅速化しながら顧客へのサービスを改善する方法について、より多くの洞察を得られるようになりました。さらに予測の精度を 80% から 90% 以上に向上し、コンテナ容量の最適化とサプライチェーンの効率化を実現。サプライチェーンの年間コストを 100 万米ドル以上節約できる見込みです。


日本のロジスティクス/物流業界のサービス品質は、世界的に見ても極めて高いといわれています。しかしその半面、業務効率の改善が進んでおらず、いまだに紙によるデータのやりとりが行われ、電話や FAX が主な連絡手段という場合も少なくありません。
日本マイクロソフトは個別企業と業界全体の両方を見据えながら、クラウドを基盤とする新たなデータ活用によってロジスティクス/物流業界全体の DX を支援してまいります。

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