
マイクロソフトの金融 DX 戦略
大変革の時代を迎えている金融業界と変革の方向性
長引く低金利下、また少子化・高齢化が進む日本において、金融機関の収益性は厳しくなってきている中で、金融機関はコストを削減し、それを原資としてデジタルトランスフォーメーションに投資を行い、収益性を改善しようと取り組んでいます。
そうした動きを促進するドライバーとして間違いなくテクノロジーの存在があり、「テクノロジーを成功裏に使いこなす金融機関において増加する収益は40% にのぼる」「テクノロジーと人々をうまく結びつけることで業務を再設計することの必要性に同意する金融機関のエグゼクティブは 79%」といった事も明らかとなっています。
多くの消費者は身の周りのサービスと同レベルの使いやすさを金融にも求めていますし、非金融業が金融に参入し、高度な UX を備え始めている中、金融機関においても、カスタマーセントリックと呼ばれる顧客体験の向上に多くの努力が支払われるようになってきています。
このデジタル時代の金融サービス変革の方向性を少し業界別に見てみますと、さまざまなトピックが生まれており、これまでの金融業界の枠を超えた取り組みも目立ちます。つまり、DX とはこれまでの事業の延長にあるものではなく、「テクノロジーによって可能となること」を起点として取り組むべき新たな収益源の追求といった要素を多分に含むものと捉えることができるでしょう。
もう少し、抽象化した形でデジタル時代の金融サービス変革の方向性を 4 つのトピックでお示しします。オープンバンキング・オープンインシュアランスは、単に金融機関が外部企業に金融機能を API などで提供するというだけでなく、異業種とのコラボレーションを促進するという点で、今後の金融サービスの在り方を変えていく可能性もあると考えています。
超パーソナライズ (Hyper Personalization) は、お客様 1 人ひとり、1 社 1 社に個別最適なサービスを提供することでロイヤリティを向上させるでしょう。そのためにもデータをセントラライズさせていく必要がありますし、少しコンセプチュアルな話ですが、究極的には、個人のお金を自律的に運用する、企業の財務を自律的に改善するようなサービスへと進化していく方向性が考えられます。
金融機関がビッグテックを活用する「戦略的パートナーシップ」
マイクロソフトは、こうしたトレンドをしっかりと見たうえで、トレンドに先んじて金融機関の DX を支援するパートナーとなることを目指しています。
その 1 つの形として、マイクロソフトは顧客企業と「戦略的パートナーシップ」を締結し、数年単位で全面的にDXを支援する取り組みを全世界で進めています。
2 社の事例をご説明します。1 社は Allianz 様との戦略的パートナーシップです。Allianz Business System という保険プラットフォームを Azure 化し、またオープンソース化と外部提供も支援するというのが主な内容です。
もう 1 社は Standard Chartered 様です。同社では、勘定系や次世代決済システムなど多くのシステムをクラウド化しアジャイル開発を行っていく予定ですが、Azure を優先クラウドとして選択し、M365 なども活用して変革を加速する計画を進めています。
上記の事例以外にも、カナダの TD Bank やオーストラリアの NAB など、大手金融機関との戦略的パートナーシップ締結が進んでいます。
昨今、テック企業が金融領域における競合となりつつあるため、Time to Market の短縮は金融機関にとって大きなメリットであると捉えられています。金融機関はクラウドやアジャイル開発など、マイクロソフトの先進テクノロジー・知見を活用することで、コストを抑えながら競合優位性のあるサービスを早期にリリースできるというメリットがあります。
マイクロソフトは、達成すべき目標を顧客企業と共有しながら、コンサルティングサービス部隊によるテクニカル支援や開発中の新サービスの早期提供など相応の投資を行い、より確実な目標達成を目指します。
日本市場においても今後、金融機関様との戦略的パートナーシップを実現していきたいと考えています。
マイクロソフトによる金融機関 DX 支援の新たな取り組み
① フィンテック/インシュアテック企業との協働プログラム
2021 年 1 月より、マイクロソフトが提供している Azure や Teams Platform、Dynamics 365 などのクラウドテクノロジーと、フィンテック/インシュアテック企業の先進的なソリューションやビジネスアイデアと組み合わせることで、モード 2 (新たな収益源を求める攻めの戦略) プロジェクトの協働提案を行うプログラム “Microsoft Enterprise Accelerator – Fintech/Insurtech” を開始しました。
本プログラムは、日本の金融機関がモード 2 領域への投資を拡大しつつある動きに呼応するものです。2021 年 3 月現在、本プログラムには 17 社のパートナー企業が参加していますが、今後、30 社程度まで拡大する予定です。
② DX を実現するリファレンスアーキテクチャーの公開
DX の取り組みには、大きく 4 つの柱があるとマイクロソフトは考えていまして、「お客様とつながる」「業務の最適化」「製品やサービスの変革」「社員にパワーを」です。
4 つの柱のそれぞれに、日々の改善・進化を支えるプロセスを埋め込む必要があります。そのプロセスを、私たちは「デジタルフィードバックループ」と呼んでいます。
金融サービスにおいてもデジタルフィードバックループは非常に重要な概念です。金融業は物理的な物ではなくデータを取り扱う業態であることからデジタルフィードバックループの導入が行いやすく、この考えに基づくことが、金融サービスにおけるアジャイルな開発と改善を行っていく重要な前提事項となります。
そこで、金融機関様をはじめとするさまざまな企業がマルチクラウド基盤でデジタルフィードバックループを実現するためのリファレンスアーキテクチャー “Financial-grade Cloud Fundamentals (FgCF) for DX” の提供を開始します。
FgCF for DX は、各種のリファレンス アーキテクチャーとフレームワークをテクニカル ガイドとしてまとめてご提供するものです。無償でパートナー企業様や金融機関にお使いいただけるよう、GitHub などのサイトにて広く公開を予定しています。
③ 金融業界向けクラウドの提供
2021 年 2 月に、マイクロソフトはイノベーションの出発点として機能する金融業界向けクラウド “Microsoft Cloud for Financial Services” を発表しました。
Microsoft Cloud for Financial Services は、マイクロソフトのソリューション、独自のテンプレート、API、業界特有の標準機能と、多層型のセキュリティとコンプライアンス機能とを組み合わせて実装されています。
当初時点では、まずリテールバンキング向けの各種機能が提供される予定です。たとえば、新機能 Loan Manager により、融資担当者は、オートメーションとコラボレーションによってワークフローの合理化と透明性の向上を実現することで契約締結を迅速化できます。これは、あらゆるものがリモート化する今日、きわめて重要な機能です。
Microsoft Cloud for Financial Services のパブリックプレビューは 2021 年 3 月末から開始される予定であり、ABN AMRO や Manulife などのお客様が既に一部機能の利用を開始しています (なお現時点では日本市場における提供開始時期は未定)。
世界の複雑性は日々増加しています。そして、あらゆる企業が俊敏性と回復性を獲得しようと努力する中、2020 年における教訓も明らかになってきました。これらの企業は、マイクロソフトと協力し、これらの複雑性の課題を解決し、より迅速に動き、適切なイノベーションを行い、成功につなげようとしています。
マイクロソフトは金融機関のお客様と課題を共有し、テクノロジーだけでなくグローバルで得られた業界の知見を活用しながら、お客様のパートナーとして変革の支援を行っていきます。