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業界

FIT2023 レポート:副操縦士として、金融機関の DX を強力にサポート。日本マイクロソフトの戦略!

※本ブログは、金融総合専門誌「ニッキン」による情報サイト「digital FIT」にて 2023 年 12 月 1 日に公開された[FIT2023レポート]副操縦士として、金融機関のDXを強力にサポート。日本マイクロソフトの戦略!の再掲です。

2023 年 10 月 26 日(木)・27 日(金)に開催された金融国際情報技術展「FIT2023」では、日本マイクロソフトが昨年に引き続きブースを構えた。

(本記事内で紹介する各セミナーは YouTube でご視聴いただけます)

今回のテーマは「Power Your AI Transformation with the Microsoft Cloud」。11 月 1 日より提供が開始された Copilot for Microsoft 365、ChatGPT や GPT-4 をはじめとする多様な生成 AI モデルが利用可能な Azure OpenAI Service、AI がコーディングの支援をする GitHub Copilot などを紹介するブース構成だ。

また、27 日にはパートナー企業とともに、マイクロソフトの金融業界に向けた取り組み、AI を最大限活用するための最新情報、業務効率化ツールや DX ソリューション、多数の金融業界事例の紹介など、最先端のナレッジを凝縮した 8 つのセミナーを開催した。

日本マイクロソフトは、その革新的な技術とソリューションで、金融業界にどのような貢献を果たそうとしているのか――。本稿では、同社の金融業界向けの施策とセミナーの概要を紹介する。

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日本マイクロソフト・金子氏

金融業界特化型クラウドサービス Microsoft Cloud for Financial Services の提供など、金融機関の DX推進に力を注ぐ日本マイクロソフト。金融サービス事業本部 銀行・証券営業本部長の金子暁氏、同じく金融サービス事業本部 保険・地域金融営業本部長の長町浩史氏に、同社の金融業界に向けた取り組みや今回の出展の狙いについて話を聞いた。

日本マイクロソフトが金融機関の DX 支援に向けたソリューションで重視しているのは、「革新的な顧客体験」「業務効率の向上」「金融犯罪への対応(不正防止/リスク・コンプライアンス対応)」――。すなわち、同社はクラウドサービスを通じ、金融サービスにおける優れた顧客体験、従業員のコラボレーション、高度なセキュリティと安全性を提供することを目指している。

「そこに生成 AI という新たなテクノロジーを加えることで、『革新的な顧客体験』『業務効率の向上』『金融犯罪への対応』をさらに加速させるソリューションを提供していく。例えば、生成 AI の得意な領域の 1 つとして、自然言語をシステム言語に書き換えてシステムに指示を出す、つまり人間とシステムの橋渡しがある。生成 AI によって人間とシステムとの会話がスムーズになれば、多種多様なシステムを使用する金融機関では業務効率が格段に向上するのはもちろん、よりよい顧客サービスの提供にもつながると考えている」と金子氏。

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日本マイクロソフト・長町氏

そのうえで、今回の出展の目的は大きく 2 つあるとした。「1 つは、生成 AI という新たなテクノロジーを搭載した当社のソリューションに触れていただきたいということ。もう 1 つは、今回の展示やセミナーを通し、当社とパートナー企業との連携やエコシステムについても認知していただきたいということだ」と金子氏。

今回、日本マイクロソフトが金融業界向けに提供する主要な生成 AI ソリューションは、Microsoft 365 Copilot、Azure OpenAI Service、Sales Copilot の 3 つ。

Microsoft 365 Copilot は、Word や Excel、PowerPoint、Outlook、Teams など従来の Microsoft 365 に生成 AI が組み込まれた新時代のソリューションである。例えば、Copilot in Word は、自然言語で簡単な指示を与えるだけで、必要に応じて組織内の情報を盛り込みながら文章の下書きを作成する。文章の要約や推敲のサポートなども可能だ。Copilot in Excel はデータの分析と探索を支援する機能を有し、これによりユーザーは掘り下げた分析が可能となる。また、Copilot in PowerPoint は、既存の文書をプレゼン資料に変換したり、簡単な指示でプレゼンテーションを新規作成したりできる。Microsoft 365 Copilot の活用により、圧倒的な業務効率化を実現することができるだろう。

Azure OpenAI Service は、ChatGPT や GPT-4 をはじめとする多様な生成AIモデルを Microsoft Azureのクラウドプラットフォーム上で利用できるサービスだ。Azure OpenAI Service を使うことで、AI の専門知識がなくてもアプリケーションやサービスを容易に構築することができる。また、高度なセキュリティを実現する Microsoft Azure のクラウドプラットフォーム上で提供されるため、データ保護の観点でも優れていることから、企業や自治体などの大きな注目を集めている。

そして、Sales Copilot は営業チームの日常業務の生産性向上と効率化を支援する AI アシスタントである。CRM システムへの顧客情報の登録や取得の自動化、メールコンテンツの作成、メールや会議の内容の要約などが可能だ。また、取引先企業に関する最新ニュースなどを読むことができるチャットインターフェイスも備わっている。

「これら生成 AI を組み込んだソリューションの導入により、業務で利用するデジタルツールをより簡単に、かつ最大限使いこなしていただけるようになるだろう」と金子氏。また、長町氏はほぼすべての地方銀行が生成 AI に関心を寄せており、同社への問い合わせも増えているとしたうえで、「生成 AI をめぐる社会動向や金融機関における検討状況などを勘案すると、生成 AI 導入は当社製品で言えば Microsoft Windows 導入に匹敵するほどのインパクトと業務改善を促すのではないか」と示唆する。

最後に、金融業界に向けた今後の施策や目標を両氏に聞いた。「当社が目指すのは、顧客体験の向上や業務効率の改善、金融犯罪への対応など、金融機関が抱える課題を一緒に解決していくこと。そのために、今後も生成 AI などさまざまな先端技術を取り入れながらソリューションを進化させていきたい」と金子氏。長町氏は「Pilot(操縦士)は金融機関の皆様であり、われわれが提供するソリューションやサービスは操縦士を陰で支える Copilot(副操縦士)。これからも副操縦士として、金融機関の DX を強力にサポートしていきたい」と結んだ。

「FIT2023」2 日目の 27 日には、両氏が語ってくれた日本マイクロソフトの取り組みや施策が具体的に分かる 5 つのセミナーを開催。いずれのセミナーにも多くの来場者がつめかけ、熱気に満ちたセッションとなった。以下に、各セミナーの概要を紹介する。

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セミナー 01:生成 AI 活用の現在地とMicrosoft AI と金融業における今後の取り組み

本セミナーでは、クラウド&AI ソリューション事業本部 データプラットフォーム統括本部 Data&AI 営業第三本部 シニアスペシャリストである田中研一氏が登壇し、生成 AI の登場から早 1 年が経過する中、現時点での生成 AI の活用状況を共有するとともに、マイクロソフトが今後金融業界に向けて AI をどのように活用し貢献していくかについて紹介した。

田中氏は冒頭、2023 年 1 月から一般公開している Azure OpenAI Service の利用状況に触れ、世界では約 1 万 1,000 社、日本においては 560 社を超える顧客が利用していると述べた。また、業界別では金融機関が 1 位であり、その後に商社や製造メーカーが続くと言及。「Microsoft Azure の AI 分野において、560 社超まで急激に利用者数が拡大したソリューションはこれまでなかった。それだけAzure OpenAI Service に対する市場のニーズや期待は大きいと考えられる」と分析した。

次に、金融機関での活用事例として、アメリカの格付け企業であるムーディーズを紹介。同社はマイクロソフトと戦略的なパートナーシップを結んで Moody’s Copilot を開発し、1 万 4,000 人の従業員に展開している。例えば、顧客との面談の中で、顧客が知りたいことがあった場合、あるいは顧客への説明過程で数値的なエビデンスがほしい場合などに、従業員が Moody’s Copilot に質問すると、Copilot は同社が有している多種多様なデータから情報を集約して瞬時に提供。従業員は顧客からの質問や要望などにその場で答えることができるため、業務効率化や顧客満足度の向上が実現する。

田中氏は、顧客体験強化や不正検出、リスク管理など利用シーンは多岐にわたるが、調査結果では金融機関の経営者の 75% が生成 AI の活用に期待していると述べたうえで、「日本においても Moody’s Copilot のようなアプリケーション開発が多くの金融機関で進んでおり、近いうちにニュースリリースができるのではないかと考えている」と言及した。

同時に、生成 AI の実用に向けた検証を行っている企業も多数にのぼり、マイクロソフトではそうした企業に対しさまざまな支援を行っていると田中氏。「その一環として、企業からの要請を受け、当社が生成 AI ソリューション開発に伴走する Microsoft AI Co-Innovation Lab を神戸市に開設した。現在、問い合わせや申し込みが多数寄せられている。興味があれば、ぜひこうしたサービスの活用も検討していただきたい」と述べた。

次に、田中氏は今後の展望について話を進めた。「当社は『すべての人に Copilot を――創造性の拡大』『AI を使いこなす――自在なアプリ開発』『安全で信頼性の高いクラウドプラットフォーム――責任ある AI』という 3 つのコンセプトに基づき製品開発を行っていく。また、当社は Microsoft Copilot に対して Copilot Copyright Commitment を発表。これは、Microsoft Copilot をお客様が製品に組み込まれたガードレールとコンテンツフィルターを使用しているという条件の下で利用いただく限りにおいては、仮に著作権等の問題で訴訟を起こされた場合でも当社がお客様の弁護を行い、万が一訴訟の結果生じた不利な判決または和解により課された金額を支払うというもの。したがって、Microsoft Copilot を使っていただく限りにおいて、お客様は著作権の心配の一部が軽減されます」と田中氏。

また、FDUA(一般社団法人金融データ活用推進協会)では生成 AI ワーキンググループを立ち上げており、同社も事務局の一員として参加し、金融機関が生成 AI を安全・安心に利用するためのガイドラインの策定に取り組んでいるところであると紹介。「Microsoft Copilot を使っていただく限りは当社がお客様をお守りするが、アプリケーションに生成 AI を組み込む場合はこうしたガイドラインを利用し、生成 AI を安全に活用していただければと考えている」と呼びかけた。

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「生成 AI 活用の現在地と Microsoft AI と金融業における今後の取り組み」

セミナー 02:5 日後に登場! Copilot for Microsoft 365(このときの呼称はMicrosoft 365 Copilot)で変わる働き方

本セミナーでは、モダンワークビジネス本部 Sr. GTM マネージャー 春日井良隆氏が登壇し、FIT2023の 5 日後となる 11 月 1 日より法人向けの提供がスタートした Copilot for Microsoft 365 の概要とこれによって働き方がどのように変わるのかについて詳しく紹介した。

前述のように、Copilot for Microsoft 365 とは、Word や Excel、PowerPoint、Outlook、Teams などMicrosoft 365 アプリで生成 AI が利用できるソリューションだ。春日井氏はまず Copilot in Word を取り上げ、Copilot を使ってイベントの企画書を作成するデモを実施。「例えば、『11 月 1 日に開催するイベントの企画書を作成してください』と指示すると、Copilot がタイトルやイベントの概要、スケジュールなど基本的なことを押さえながら下書きをつくってくれる。そこに例えば役割分担表を入れたい場合は『役割分担も入れてください』と指示をすると、単に行が足されるのではなく、サンプルの表組みを加えて、改めて企画書の下書きをつくってくれる。これが Copilot の 1 つ目の特徴だ」と春日井氏。

また、文章の言い回しや他によい表現はないか迷った場合などは、Copilot in Word に質問すると Copilot が提案してくれる。「ChatGPT の利点としてアイデアの壁打ちができるということがよく言われるが、それが Word や Excel などのアプリケーションの中でできることが Copilot の 2 つ目の特徴だ」と春日井氏は述べる。

春日井氏は続いて、Copilot in PowerPoint を使用して、既存の Word ドキュメントからプレゼンテーションを作成する流れを紹介。Copilot in PowerPoint にさきほど Word で作成したイベントの企画書へのリンクを指定すると、Copilot が Word 文書の章立てや意図を解釈したうえで、スライドの生成、レイアウトの適用、テーマの選択を行い、プレゼンテーションをつくる。また、イメージ写真を追加したいと思った場合は、例えば「人と人が笑い合っている写真を追加してください」と Copilot in PowerPoint に指示をすると、Microsoft365 のストック画像の中からイメージ画像を選んでプレゼンテーションに貼り付け、さらにレイアウトも調整してくれる。

「Word でのイベントの企画書づくりにしても、PowerPoint でのプレゼンテーション作成にしても、ある程度の形にするまでにかなりの手間と時間を要する。しかし、本当に大切なのは、企画の内容であり、またそれを人に伝えることだ。人の手間や時間はそうした本質的なところに注力をし、そうでない作業は生成 AI に任せる。これがマイクロソフトの考えであり、Copilot for Microsoft 365 で変えられる仕事のやり方の 1 つだ」と春日井氏は言う。さらに、春日井氏は Copilot in Word の文章要約機能や Copilot in Teams の会議の要約機能について触れるなど、Copilot for Microsoft 365 の多彩な機能やメリットについて解説した。

最後に、春日井氏は Microsoft 365 Chat というチャットサービスについて言及。Microsoft 365 Chat は Web 上の情報検索はもちろん、チャットやメール、ファイルなど Microsoft 365 の中で行き交うデータにアクセスし検索することが可能だ。「例えば、新入社員で出張申請の仕方が分からないといった場合、従来は上司や先輩に聞いていたが、Microsoft365 Chat に質問すると Copilot が社内の SharePoint を検索し、自然言語で返答を返すとともに、データソースも表示してくれる。一方、例えば社内情報だからといって同僚の給料を Microsoft 365 Chat に尋ねても、そうした個人的なことは回答できないと返答するなど、法人でも安心して利用できるサービスとなっている」

春日井氏は「MBA や医師免許を取得しており、法律に詳しく、さまざまな言語に対応可能で、文章が書けて要約もでき、社内事情にも精通していて、しかも呼び出せばいつでも来てくれる。そんな強力で頼れるアシスタント、それが Copilot だと思っていただきたい」と呼びかけ、本セミナーを締めくくった。

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5 日後に登場!Microsoft 365 Copilot で変わる働き方

セミナー 03:最新 AI で実現する革新的な顧客体験と業務変革 ―― Dynamics 365 & Power Platform

同社は、ERP・CRM の Dynamics 365 と、ローコード・ノーコードプラットフォームの Power Platform に、AI 機能である Copilot を搭載した。本セミナーでは、クラウド&AI ソリューション事業本部 ビジネスアプリケーション統括本部 Dynamics365 セールススペシャリストである三谷亜子氏と、デジタルセールスエンタープライズ事業部 デジタルスペシャリストである稲冨広樹氏が登壇し、この Power Platform および Dynamics 365 の Copilot が有するさまざまな機能についてデモを交えながら紹介した。

まずローコード・ノーコードプラットフォームである Power Platform の一部となる Power Apps と Power Automate について解説。Power Apps の特徴は、プログラミングなしで簡単に業務アプリケーションを作成できることだ。ユーザーは PowerPoint で図形などを追加していくようなイメージで業務アプリケーションを開発できる。また、Copilot の搭載により自然言語で指示するだけで業務アプリケーションの作成が可能だ。「当社の CRM も実はこの PowerApps をベースに開発している。簡単なものから CRM のような複雑なものまで、市民開発からプロ開発まで開発できるのが Power Apps のメリット」と稲冨氏。デモでは、実際の操作画面を示しながら簡単なアプリケーションを作成し、その優れた操作性を披露した。

一方、Power Automate は複雑なプログラミングなしでさまざまな業務を自動化できるアプリケーションで、複数のアプリケーションやシステムを連携させれば生産性向上、業務の自動化に大きく寄与することが期待できる。Power Apps と同様、Copilot の搭載により自然言語で指示するだけで業務を自動化することが可能だ。自動返信メールや添付ファイルの自動保存、会議招集の自動化、承認フローの自動化など、さまざまな業務に利用できる。デモでは、Outlook で受信したファイルをSharePoint でチームメンバー全員が共有できるようにし、その操作が完了したら Teams でメンバー全員に通知するという、一連の業務を Power Automate で自動化する方法を紹介した。

続いて、ERP・CRM の Dynamics 365 について解説。稲冨氏は「あるアンケート調査によると、営業担当者は業務時間の 28% しか顧客への営業に使えていない。もちろん見込み客の調査や見積もりの作成、社内会議などもあるが、実は CRM や SFA システムへのデータ入力にも多くの時間がとられている。当社は Microsoft Copilot for Sales の活用により、28% という顧客への営業時間割合を最大化することを提案している」と言及した。

実機を用いたデモでは、Outlook や Teams から Dynamics 365 へのアクセスを可能とすることで、CRM の Dynamics 365 を立ち上げなくとも、顧客情報や営業履歴、現在進捗している案件などさまざまな情報が把握できる機能を紹介。また、Microsoft Copilot for Sales は、Outlook や Teams での顧客とのやりとりと CRM の情報の両方を加味したうえで、顧客に送るメールの文案を提案するとともに、文案の文言や数値のデータソースも示すことを実際の画面を使いながら解説した。

Power Platform および Dynamics 365 が、業務効率向上や新しい顧客体験の創出に大きく貢献することが分かりやすく示された本セミナー。会場では実機を用いたデモの様子を見ながら、製品の特徴や機能の詳細に熱心に耳を傾ける来場者の姿が多く見られた。

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最新 AI で実現する革新的な顧客体験と業務変革

セミナー 04:金融業界における Azure HPC ソリューションの活用と効果

本セミナーでは、グローバルブラックベルト HPC テクニカルスペシャリストである倉石英明氏が登壇し、クラウドプラットフォーム Microsoft Azure が有するハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)ソリューションとその活用方法について解説した。

倉石氏はまず「金融業界においては、リスク分析やポートフォリオマネジメントで使用される金融工学分野で非常に多くの計算パワーが必要とされる。特に最近では新規制対応やシミュレーションの複雑化、AI の活用などにより計算ニーズが爆発的に増加し、それに伴い解析処理基盤の高速化や処理効率化が喫緊の課題となっている」と指摘。

そうした中で、自社サーバーのみでは繁忙期の処理に対応できない、逆に閑散期には未使用のサーバー料が負担となるなどの課題がある。一方、ニーズに応じて計算パワーを調達できるクラウドコンピューティングは、繁忙期の膨大な計算ニーズにも迅速に対応でき、また閑散期には計算パワーの調達を抑えることでコスト最適化を実現できる。「市場の変化が激しい金融業界において、クラウドコンピューティングの活用は安定的かつ継続的な計算処理を行うための有効な選択肢と言える」と倉石氏。

そのうえで、マイクロソフトが提供する Microsoft Azure で実現するコンピューティングソリューションの特徴を解説。「Microsoft Azure のコンピューティングソリューションは IaaS、PaaS、SaaS のおおよそ 3 層でサービスを提供しており、いずれの形でもユーザーの好みのスタイルにカスタマイズして使うことができる。また、Microsoft Azure はセキュリティ面でも優れており、世界最高レベルの安全性を保っている」と述べた。

次に、実際の活用事例として海外の投資銀行と保険サービス会社 2 社の活用事例を紹介。海外投資銀行の例では、オンプレミスのサーバーを Microsoft Azure に徐々にマイグレーションし、現在では大規模な計算環境を Microsoft Azure 上に展開することで約 40% の費用削減を実現した。一方、保険サービス会社の例では、気候変動の影響とリスクを分析する計算モデルを実行するために、Azure SQL、Azure Machine Learning、Azure Cosmos DB を併用した Azure HPC ソリューションを採用してクラウドでの計算基盤を強化するとともに、業務プロセス全体の効率化を図った。また、日本国内においても金融・保険業界で Microsoft Azure を活用して計算処理を行う企業が増えてきていると倉石氏は言う。

実際に Azure HPC ソリューションを活用するにあたっては、「スモールスタートがお勧め」と倉石氏。「性能や操作性を見ながら、どのような業務をクラウドに移行したら効果が出るかを検証するのが第一歩。以降、クラウドに順次マイグレーションしていくことで、最終的には大規模な計算パワーを Microsoft Azure に展開するとともに、業務効率化を実現することが可能だ」と締めくくった。

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金融業界における Azure HPC ソリューションの活用と効果

セミナー 05:セキュリティ・ガバナンス共通基盤構築のススメ~Azure で安全にデータを取り扱うために~

本セミナーでは、カスタマーサクセス事業本部 プリンシパルクラウドソリューションアーキテクトである赤間信幸氏が登壇し、Azure 上で安全にデータを取り扱うために必要な考え方やポイントについて紹介した。

昨今、生成系 AI が起爆剤となってクラウドを活用したデジタルトランスフォーメーションの機運が高まっている。しかしその一方で、運用やガバナンスを考えずにクラウド利活用を進めると、必ず「壁」にぶつかり、結果として PoC から先へ進まない、CCoE や DX 部が主導する案件しか成功しない、セキュリティ上の懸念を払拭できないといった問題に突き当たる。こうした課題に対し、マイクロソフトはどのようなアプローチをとっているのか。

「マイクロソフトは AI 導入を推進しているベンダーであると同時に、セキュリティに非常に力を注いでいるベンダーでもある。そうしたセキュリティベンダーであるマイクロソフトがつくったクラウドサービス――、それが Microsoft Azure だ。そのため、Microsoft Azure にはセキュリティやガバナンスに関する標準機能が一通り揃っており、それらを正しく使うことで高いセキュリティやガバナンスを実現できる」と赤間氏。

「しかし、それを実際に行うための方法について悩んでいる企業が多いのも事実。そうした問題を解決するため、当社ではクラウドの適切な使い方や設計に関し、ガイドラインや具体的なリファレンスアーキテクチャを提供している。具体的には Azure Architecture Center、Azure Cloud Adoption Framework、Azure Well-Architected Framework という3種類のガイドラインだ」と赤間氏は言う。

簡単に言えば、Architecture Center はつくり方ガイドであり、Well-Architected Framework(WAF)はクラウドならではの留意点を整理したものである。「そして、当社がもっとも注力しているガイドラインが Cloud Adoption Framework(CAF)だ。一言で言えば、“転ばぬ先の杖ガイド”というイメージだろうか。先駆者たちの失敗などをすべて情報として収集し、その膨大な情報を基にクラウドプロジェクトの円滑な進め方、失敗を回避する方法などをまとめたものが CAF であり、当社はこの CAF をネット上で公開している」と赤間氏。

クラウドプロジェクトの推進にあたっては、戦略や計画をしっかり立案したうえで共通基盤をつくり、実際にシステム構築を行っていかなければならない。CAF が優れているのは、共通基盤はどのような機能を有していなければならないかということを明確に定義している点だ。しかし、CAF を読み解くのは難しく、さらに CAF は欧米で開発されたため日本の事情には適していない部分がある。例えば、ネットワークの閉域化について言及されていないなど、金融機関が利用するにはハードルが高い。

「そこで、われわれは当社のクラウドソリューションアーキテクトのメンバーとともに、そのギャップを解消するためのコンテンツをつくった。それが日本版 Azure 共通基盤 設計・構築ガイドだ。 Azure の共通基盤を早く安くつくりたいという多くのお客様の要望に応えるため、現在、この日本版 Azure 共通基盤 設計・構築ガイドを GitHub 上で無償公開している。具体的には、戦略立案ガイド、構築スクリプトを含んだ設計構築ガイド、そして共通基盤構築のデモビデオの 3 つを提供している。ベンダーは構築スクリプトをカット&ペーストしカスタマイズして利用することで、優れた共通基盤を迅速につくり上げることが可能だ」と赤間氏。

金融機関における共通基盤 設計・構築ガイドの有効な使い方について、赤間氏は次のように述べる。「最初にデモビデオをベンダーと一緒に閲覧し、共通基盤とはこういうものだという認識を互いに共有することが重要。そのうえで金融機関の皆様は戦略立案ガイドを参考に計画立案を行い、ベンダーの皆様は設計構築ガイドを見ながら実際に作業を進めていくという使い方をお勧めしたい。金融機関の皆様は、ぜひベンダーの皆様を巻き込む形で共通基盤 設計・構築ガイドを活用し、共通基盤を早く安くうまく整備していただきたい」と訴え、本セミナーを結んだ。

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セキュリティ・ガバナンス共通基盤構築のススメ ~Azure で安全にデータを取り扱うために~

パートナー企業 3 社も、多彩なテーマによるセミナーを開催

27 日には、パートナー企業であるヴイエムウェア、PHONE APPLI、SAS Institute Japan もそれぞれセミナーを開催した。以下に、その概要を紹介する。

ヴイエムウェア

同社は「海外金融機関の事例から学ぶ成功する DX プラットフォームとは」と題したセミナーを開催。海外の金融機関などの事例を紹介しながら、金融機関が競争力を維持し、さらなる成長を達成するために必要な DX プラットフォームとそれを支える技術やプラットフォームエンジニアリングチームづくりについて紹介した。

PHONE APPLI

同社は「人と人が繋がることによって生まれるこれからの組織 ~人の力と AI の力で紡ぐ新しい働き方~」というテーマでセミナーを行った。セミナーでは、Azure OpenAI Service を活用しながら「人となり」を知ることにより心理的安全性を高め、組織をよりよく変化させた事例を紹介。金融機関において、従業員のウェルビーイングと組織のエンゲージメントの向上を実現できる働き方を提案した。

SAS Institute Japan

同社のセミナーのテーマは「地方銀行マーケティングDXの成功事例と提案 ~データ活用の約半世紀の現場経験を提供する “SAS Cloud”」。地方銀行をはじめとする国内金融機関における OMO(オンラインとオフラインの融合)や対面営業強化の成功事例を紹介するとともに、AI や CDP、MA などのテクノロジーをその効果的活用のナレッジと合わせてクラウド上で提供する SAS Cloud について解説した。

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日本マイクロソフトおよびパートナー企業のセミナーは、来場者の関心が非常に高く、満員御礼が相次いだ。また、ブースでは Microsoft 365 Copilot のデモンストレーションに感嘆の声を上げる来場者の姿が見られるなど、同社の出展は大盛況のうちに幕を閉じた。

■ご紹介セミナー一覧
※以下リンクからも各セミナーの動画をご視聴いただけます。

開催時間セミナー名
10:00-10:30海外金融機関の事例から学ぶ成功する DX プラットフォームとは(ヴイエムウェア株式会社)
10:50-11:20人と人が繋がることで生まれるこれからの組織~人の力と AI の力で紡ぐ新しい働き方~(株式会社 PHONE APPLI)
11:40-12:10地方銀行マーケティング DX の成功例~データ活用の半世紀の経験を提供する SAS Cloud(SAS Institute Japan 株式会社)
12:30-13:00金融業界における Azure HPC ソリューションの活用と効果(日本マイクロソフト株式会社)
13:30-14:10生成 AI 活用の現在地と Microsoft AI と金融業における今後の取り組み(日本マイクロソフト株式会社)
14:30-15:10最新 AI で実現する革新的な顧客体験と業務変革 – Microsoft CRM&ローコード(日本マイクロソフト株式会社)
15:30-16:105日後に登場!Microsoft 365 Copilot で変わる働き方
(日本マイクロソフト株式会社)
16:30-17:10セキュリティ・ガバナンス共通基盤構築のススメ~Azure で安全にデータを取り扱うために~(日本マイクロソフト株式会社)