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業界

生成 AI × 医療画像の可能性 

医療分野において、生成 AI(Generative AI)の活用が急速に進んでおり、特に医療画像の領域でその重要性が増しています。データを基に新たな画像やデータを生成する技術である生成 AI の導入により、診断精度の向上、医療従事者の負担軽減、患者ケアの質の向上、治療計画、医療教育など期待されており、医療全体の革新に大きく寄与しています。ここでは、生成 AI が医療画像分野で必要とされる理由やその重要性について、さらに今後の可能性について解説し、デモとしてMicrosoft Azure Open AI Service(生成 AI )の実際の活用例を紹介します。 


1. 生成 AI の概要 

生成 AI は、深層学習の進展によって大きく発展してきた技術であり、学習した膨大なデータから新たな画像やテキスト、音声を生成することができます。生成AIが医療画像に基づいてサポートやシミュレーション、補完画像を生成する役割を果たしています。 


2. 医療画像診断の現状と課題 

(1) 医療画像診断の課題 

医療画像は、MRI(磁気共鳴画像)、CT(コンピュータ断層撮影)、X線など多様な画像技術が利用され、病気の診断や治療計画において欠かせない情報源となっています。 

しかし、医療画像の診断には高度な専門知識が求められ、特に、病気の早期発見や診断精度の向上が求められ、多くの時間と労力がかかることが課題です。 

また、診断結果の正確性は医師の経験や知識に依存するため、個人差が生じやすく、診断精度のばらつきも問題となっています。さらに、近年の医療ニーズの高まりにより、放射線科医や画像診断の専門医が不足しており、診断業務の負担が増加しています。 

(2) データ不足の問題 

医療分野では、患者データのプライバシーや希少疾患に関するデータが不足していることも課題です。十分なデータがない場合、診断や治療法の検証が不十分になりがちで、治療効果が十分に実証されていないことも少なくありません。 
生成 AI は、限られたデータから詳細にパターンを洞察し、データ不足の問題を克服する能力が期待されています。 


3. 生成 AI の医療画像分野での必要性 

(1) 医療画像の拡充とデータの質の向上 

医療分野では、患者データの機密性から、特定の症例に関する画像データが不足していることが多いです。生成 AI は少数のデータから追加の画像を生成することができ、データセットを拡充するための手段として有用です。例えば、希少疾患の患者データが限られている場合、生成 AI によってシミュレーション画像を生成し、診断や研究に利用できるため、医療研究の発展にも貢献します。 

(2) 診断支援による効率化と精度の向上 

生成 AI による医療画像の活用は、医師の診断業務の効率化にも寄与します。生成 AI が生成した画像を AI 診断システムに投入することで、特定の疾患の予測や診断を支援でき、診断精度を向上させることが可能です。また、生成 AI は医療画像のノイズ除去や解像度向上にも活用され、より高精度な画像を提供することで、医師が細部まで診断を行えるようサポートします。 

(3) 治療計画の最適化と個別化医療への貢献 

生成 AI は、個々の患者に合わせた治療計画の最適化にも役立ちます。例えば、腫瘍のサイズや形状、位置に応じてシミュレーション画像を生成することで、より精密な手術計画や放射線治療の計画が立てられます。また、患者の特性に応じた治療の効果をシミュレーションし、最適な治療法を選択する支援も可能です。生成 AI の応用により、患者一人ひとりにカスタマイズされた個別化医療が実現しやすくなり、治療効果や患者満足度の向上につながります。 

(4) 医療アクセスの向上と公平性の促進 

生成 AI により、専門医の数が限られている地域でも質の高い診断が可能となります。生成 AI が作成する高精度な診断画像や診断支援の技術により、遠隔医療が可能となり、医療へのアクセスが改善されます。これにより、医療格差が縮小し、より多くの患者が公平に質の高い医療サービスを受けられるようになります。 

(5) 医療従事者の負担軽減とリソースの効率化 

医療現場では、専門知識が必要とされる業務が多いため、医療従事者の負担は大きくなりがちです。生成 AI を活用することで、診断支援や画像分析の効率化が進み、医療従事者の業務負荷が軽減されます。これにより、医師はより複雑な診断や治療に専念することが可能となり、医療リソースの効率化が図られます。 

(6) 医療の質と患者アウトカムの向上 

生成 AI がもたらす精度の高い診断や治療計画は、患者のアウトカム(治療結果)に直接的な影響を与えます。例えば、診断の早期化や治療の精密化によって、早期発見や治療の成功率が向上することが期待されます。生成 AI が提供する情報を基にした医療の意思決定は、患者の安全性や治療の質を高め、より良い健康状態の実現を可能にします。 


4. 生成AIによる医療画像活用のデモ 

ここでは、生成 AI を活用した医療画像の具体的なデモ2つを通して、その応用例を紹介します。 

【デモ1】生成AIによる腹部腸閉塞レントゲン診断支援のケース 

1つ目は腹部レントゲン画像の診断を生成 AI がサポートするシナリオをご紹介します。 
下の画像は腹部レントゲン画像(下記左下)と、レントゲン画像の対象範囲(下記右下)になります。 

(デモで使用する腹部レントゲン画像)         (レントゲン画像の対象範囲) 

こちらの腹部レントゲン画像を用いて、医師の予想する所見を生成 AI が出力します。 
「この画像から医師が診断すると予想する所見を教えて下さい。」というプロンプト(下記左上)と腹部レントゲン画像(下記左下)を生成 AI に入力すると、医師が診断すると予想される所見を下記右のように腸管の拡張、階段状の気液面、閉塞の位置の推測が診られ、腸閉塞の可能性を生成 AI が示します。 

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  (腹部レントゲン画像にAIが出力した所見を表示)                        (AIが出力した所見)

【デモ2】生成AIによる胸部(胸水)レントゲン診断支援のケース 
2 つ目は胸部レントゲン画像の診断を生成 AI がサポートするシナリオをご紹介します。

下の画像は胸部レントゲン画像(下記左下)と、レントゲン画像の対象範囲(下記右下)になります。  

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  (デモで使用する胸部レントゲン画像)          (レントゲン画像の対象範囲) 

こちらの胸部レントゲン画像を用いて、医師の予想する所見を生成 AI が出力します。 
「この画像から医師が診断すると予想する所見を教えて下さい。」というプロンプト(下記左上)と胸部レントゲン画像(下記左下)を生成 AI に入力すると、医師が診断すると予想される所見を下記右のように肺の異常、気胸、肋骨骨折や外傷の可能性が診られ、胸水の疑いを生成 AI が示します。

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(胸部レントゲン画像にAIが予想した所見を表示)             (AIが出力した所見) 

 デモ 1, 2 のように生成 AI が出力した所見を医師が最終確認することで、診断精度の向上が期待され、迅速な治療計画の立案が可能になり、かつ、見落とし防止等、医師の負担軽減と診断の精度向上に寄与し、患者ケアの質が高まると思われます。 
このように、生成 AI を活用することで病変や異常の検出を支援するだけでなく、医師にとって重要な診断サポートの役割を果たしていくと考えられます。 


5. 生成 AI 導入における課題と今後の展望 

生成 AI 技術の進化により、医療画像分野での活用が進むことで、診断精度や治療効果の向上が期待されます。これにより医療の質や患者ケアが革新され、医療全体に大きな影響をもたらすでしょう。生成 AI は、医療現場の課題解決に貢献する重要な技術であり、今後の技術進展とともにその役割はさらに拡大し、医療の未来に新たな可能性を切り開くと予想されます。 

具体的には、昨今エージェント機能が注目され始めております。エージェント機能とは、従来の人が生成 AI に問合せをして回答を返すだけではなく、生成AIをハブとして様々なアプリケーションと連携することや、自律的に動作する機能を指します。医療分野に置き換えると、単に医療画像を分析して回答を生成するだけではなく、それに付随して、周辺システムと連携してデータを格納する、通知を発出する、次の検査の予約をする等のユースケースが想定されます。より業務内容に落とし込んだ形での利用が可能になると考えます。 

しかし、生成 AI の医療分野での応用には多くの利点がある一方で、課題も存在します。データのプライバシー保護や AI の透明性、生成されたデータの信頼性の確保が重要なテーマです。また、生成 AI が医療現場に浸透するためには、医療従事者や患者への教育や倫理的な議論も必要です。 

今後、生成 AI に関しては、様々な制度設計がされていくことが予想されます。クラウド事業者として、責任ある AI をお届けできるよう、そして、医療者の皆さんが安心、安全にご利用いただけるよう、セキュリティ、倫理、運用といった多方面でのご支援を継続していきたいと考えています。