コロナ禍で加速する製造業 DX、的確かつ迅速な「現場」の変革が不可避に
特集: 加速する製造業の変貌 ~ポスト・パンデミックのDX実践アプローチ~ 第 1 回
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、製造業においてデジタル・トランスフォーメーション (DX) を加速する機運が世界全体で高まってきました。収束後の「ニューノーマル」を見据えた的確な DX 戦略を進めることは、今や、製造業の経営層にとって最大の課題と言えるでしょう。しかも、世界の動きに取り残されないように、取り組みのスピードアップも求められます。こうした状況に直面しているものづくり企業の経営層や現場に向けて、マイクロソフトが積極的に展開しているソリューションが「リファレンスアーキテクチャ」です。
世界的に猛威を振るった新型コロナウイルスは、短期間で人々の暮らしや産業界の様子を一変させました。製造業においても、サプライチェーンの分断や生産停止など多大な被害が世界中で発生しています。こうした新型コロナウイルスとの戦いは長期化する見通しです。しかも、コロナ禍が沈静化しても、もはや従来の通りに戻ることはないとの見方が一般的になりました。これとともに、新型コロナウイルスがもたらした様々な変化を前提にした、新しい製造業の姿を模索する動きが活発化しています。
こうした中、今後の方向としていち早く見えてきたのが、製造業における DX が加速する動きです。ここ数年、DX は製造業の大きなトレンドになっています。そのキッカケになったのは、社会の変化を受けて製造業において様々な構造的な課題が見えてきたことでした。新型コロナウイルス感染拡大がもたらした非常事態において、こうした課題が現実の問題として一段と鮮明に浮き上がってきました。具体的には、ものづくりにおけるオペレーションの最適化。モノからコトに消費の観点が変化したことを前提にした製品開発。顧客との企業の新しいつながり方などです。つまり、コロナ禍を契機に新しい将来像を目指すのではなく、すでに見えていた課題を、いち早く乗り越えることこそが、アフターコロナの時代の新しい製造業を実現することになるとの見方が広がってきたわけです。
世界の動きを見据えた戦略が必須
これまで進めてきた DX を加速する、あるいはコロナ禍を契機に DX に本腰を入れようとしている企業が、まず目を向けるべきは世界の動向です。DX 推進の一環として先進的な ICT を活用した新しい仕組みをものづくりの現場に実装する取り組みは、すでに世界各地で進んでいます。今後の DX 戦略を策定するうえで、この世界の動きに追随できているか否かは、業界における競争力を維持できる否かを判断する重要なポイントと言えるでしょう。
ところが、ここで見逃せないデータあります。日経BP 総合研究所 イノベーション ICT ラボが国内企業を対象に実施した調査で、「DX を推進している」と回答した企業は全体の 36.5% にとどまっています。さらに製造業の企業だけに目を向けると「DX を推進している」と回答した企業の割合は、わずかに増えますが 37.5% です。つまり、半数以上が「全く推進していない」と回答しているのです。製造業 DX を加速する機運が世界全体で高まっている中、DX の取り組みのスピードアップを図ることは、日本の製造業全体の大きな課題といえそうです。
DX の推進状況
「DX を推進していますか」に対する回答結果 (n=895)
(出所: 日経BP 総研 イノベーション ICT ラボ『DXサーベイ』)
先進企業の取り組みを凝縮して提供
こうした日本の製造業に向けて、いまマイクロソフトが展開しているソリューションが「リファレンスアーキテクチャ」です。リファレンスアーキテクチャは、それぞれの現場に応じた的確な DX を効率よく推進するために役立つ情報を集約した、いわば「ガイドブック」です。
「未来の工場/オペレーション (スマートファクトリー)」「インテリジェント・サプライチェーン」「コネクテッド製品/製品イノベーション (モノからコトのプロセスづくり)」「コネクテッド・フィールドサービス (リモート保守)」「コネクテッド販売およびサービス (保守以外のサービス)」といった大きく 5 つのイノベーションのシナリオを用意。 それぞれについて、現場で課題を明確にし、それを解決するソリューションを構築。さらに実装するまでの 5 つのステップと、それをサポートする情報が掲載されています。実際にマイクロソフトが DX に取り組むものづくりの現場に踏み込んだ経験を生かし、現場の言葉を使いながら、実情に即した形で情報が整理されているのが特徴です。
マイクロソフトは、これまで製造業において取り組んできた様々な課題の中から典型的な事例をピックアップして、その解決プロセスから抽出した重要なエッセンスを「リファレンスアーキテクチャ」に盛り込んでいます。このため、「レファレンス アーキテクチャ」を活用することで、これから DX に取り組む企業は、先行する企業が獲得した経験やノウハウを踏まえた取り組みを最初から進めることができることになります。しかも、先進企業の実績に基づく情報を活用することで、より的確な取り組みを進めることができます。つまり、“手戻り” を最小限に抑えることができるわけです。
マイクロソフトでは、「リファレンスアーキテクチャ」を軸に、製造業 DX を推進する企業を様々な方向からサポートする考えです。DX を推進する現場はもとより、将来を見据えた戦略を策定する経営層の支援も視野にいれています。コロナウイルス感染拡大を契機に製造業革新を巡る取り組みは、一段とスピードを求められるようになりました。マイクロソフトの「リファレンスアーキテクチャ」は、こうした動きを先取りしたソリューションといえるでしょう。
(監修: 日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
この投稿はシリーズです。
第 2 回 「現場が“腹落ち”する製造業 DX、手戻り最小限で速やかな変革」
第 3 回「先行する製造現場の DX に素早く追随、最適な筋書きを浮き上がらせる 5 つのメニュー」
第 4 回「 「DX は成長戦略の大きなチカラ」、大胆な取り組みを着々と展開」
第 5 回「製造業 DX は確実に加速、柔軟な姿勢で多様なエコシステムを構築」
第 6 回「現場で鍛えた ICT を活用する局面へ「先人の知恵」を生かして製造業 DX を加速」
第 7 回「ビジネス変革を見据えた製造業 DX、データモデル「CDM」の強化で基礎を整備」