先行する製造現場の DX に素早く追随、最適な筋書きを浮き上がらせる 5 つのメニュー
特集: 加速する製造業の変貌 ~ポスト・パンデミックのDX 実践アプローチ~第 3 回
製造業にかかわる企業にとって、効率的かつ合理的に DX (デジタル・トランスフォーメーション) を進めることは、目下の最大の課題です。それを解決するための有力なソリューションとして、マイクロソフトは「リファレンスアーキテクチャ」を活用することを提案しています。世界の動向に合わせてアップデートを続けながら進化する「リファレンスアーキテクチャ」は、ものづくりの仕組み全体を網羅したうえで、今後の展開も視野にいれた、効果的かつ効率的な DX のアプローチを提供するために編み出されたものです。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって大きな打撃を受けた製造業の現場では、かねてから懸念されていた数々の本質的な課題を DX で解決する動きが加速しています。新型コロナウイルスの影響が沈静化した後のニューノーマルの時代に向けて、ものづくりの仕組み全体の革新が不可避だからです。こうした状況に直面している製造業に向けた有力なソリューションとマイクロソフトが位置付けているのが「リファレンスアーキテクチャ」です。
「リファレンスアーキテクチャ」とは、IT の一般的な用途に合わせた標準的な仕組みや方法を示す言葉ですが、マイクロソフトが掲げる「リファレンスアーキテクチャ」は、それだけではなく、製造業の現場における課題抽出から、DX 推進のシナリオ作り、システム構築、実装まで一連の DX の取り組みを、製造業の現場が主体的に進めるための情報が盛り込まれています。いわば、製造業 DX の「ガイドブック」です。その内容を簡潔にまとまたドキュメントは、マイクロソフトのホームページから入手できます。
マイクロソフトは、製造業に関連する 5 つの領域におけるイノベーションに向けた「リファレンスアーキテクチャ」を用意しています。具体的には、「未来の工場/オペレーション」「インテリジェントサプライチェーン」「コネクテッド製品/製品イノベーション」「コネクテッドフィールドサービス」「コネクテッド販売およびサービス」です。「未来の工場/オペレーション」は、いわゆるスマートファクトリーを実現するためのリファレンスアーキテクチャ。「インテリジェントサプライチェーン」は、ICT を活用した次世代サプライチェーンの構築のためのリファレンスアーキテクチャ。「コネクテッド製品/製品イノベーション」は、“コトづくり”の時代に向けた製品開発環境を実現するためのリファレンスアーキテクチャ。「コネクテッドフィールドサービス」「コネクテッド販売およびサービス」は製造業を巡る新しいサービスやビジネスモデルの構築を支援するレファレンスアーキテクチャです。
段階を追って最適な具体策を浮き彫りに
さらに、それぞれのリファレンスアーキテクチャごとに、大きく 5 つのメニューがあります。すなわち、「ユースケース」「ソリューションシナリオ・サブシナリオ」「ファンクションマップ」「全体構成イメージ」「リファレンスアーキテクチャ (狭義)」です。これらを順番に参照しながら、自社の現場の状況の分析や、そこで明らかになった課題を解決するシステムの検討を進めることができるようになっています。特に注目すべき特徴は、一連のメニューに盛り込まれた情報が、ものづくりの現場で使われている言葉で表現されていることです。このため、これまで ICT 業界の言葉との接点が少なかった現場でも分かりやすい内容になっています。
以下では、「未来の工場/オペレーション」を例に、それぞれのメニューの役割を紹介します。
最初のメニューの「ユースケース」に掲載されているのは、ものづくりのプロセス全体で情報共有するための、情報システムの仕組みです。一般的なものづくりのフローに合わせて、情報基盤の機能や情報の流れが描かれています。これによって、情報基盤の全体像を俯瞰しながら、情報共有に関するシステムの全体像や問題点を把握できるでしょう。
ユースケース
「ソリューションシナリオ・サブシナリオ一覧」では、ものづくりの現場で、必要とされている典型的な DX のテーマ (シナリオ)が列挙されており、それぞれのテーマごとに期待できる業務改善のサブシナリオが記載されています。ここから選ぶ形で、自社の現場に必要な取り組みを明らかにすることが可能です。このサブシナリオの内容には、マイクロソフトが様々な製造業の企業と課題解決に取り組んだ経験が生かされています。つまり、現時点で多くの企業が取り組むべき典型的なテーマが、実績に基づいてピックアップされて列挙されているわけです。こうした情報を活用することで、的確なテーマを素早く設定できます。
続く、「ファンクションマップ」は、一段と粒度を下げた形で自社に適したシナリオを検討するためのメニューです。サブシナリオで実現できることを、現場の課題に当てはめる形で整理した分かりやすいチャート (ファンクションマップ)が用意されてます。ここでいうファンクションは、情報システムの機能 (ファンクション) ではなく、あくまで現場に実装されている機能 (ファンクション) です。個々の機能を一段ブレークダウンした詳細版も用意されているので、現場の実情に合わせてきめ細かく DX の目的を設定できるでしょう。
ファンクションシナリオ (詳細版)
その後に使うのが、「全体システム構成イメージ」。冒頭のユースケースをベースに、もっとも合理的な情報システムのブロック図が描かれています。これをテンプレートにして、必要な情報システム構成を検討すれば、将来に向けた拡張性を備えたシステムを構築できるわけです。
全体システム構成イメージ
最後の「リファレンスアーキテクチャ (狭義)」では、マイクロソフトが提供している様々なツールを組み合わせてシナリオを実践する方法が記載されています。つまり、これまで検討してきた、シナリオを形にして、速やかに実装することができます。
現場の主体的な活動を活発に
現場の目線で、しかも現場の言葉を使って表現されているリファレンスアーキテクチャは、ICT 業界の目線で作成されたドキュメントに比べて、現場との親和性が格段に向上しているはずです。特に注目すべきは、「リファレンスアークテクチャ」を活用することで、製造業の現場にとって新しい領域である DX の取り組みが、現場が主体となって進められることです。これによって、現場のニーズに密着した DX が実現できるだけでなく、新しい仕組みが速やかに現場に定着することが期待できます。
マイクロソフトでは、技術の進化を取り込みながら、リファレンスアーキテクチャを定期的に更新する方針です。つまり、継続して活用することで、最新状況を反映しながら DX を進めることができるようになっています。
(監修: 日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
スマートファクトリーとリファレンスアーキテクチャ (オンデマンドウェブセミナー)
未来の工場 (スマートファクトリー) の考え方と、この分野のリファレンスアーキテクチャについてのオンデマンドのウェブセミナーをご覧ください。シリーズ第 2 回でダウンロードした資料の使い方も解説しています。
「Smart Factory」 の現在と将来 ~製造現場の IoT 活用実践編
この投稿はシリーズです。
第 1 回 「コロナ禍で加速する製造業DX、的確かつ迅速な「現場」の変革が不可避に」
第 2 回 「現場が“腹落ち”する製造業DX、手戻り最小限で速やかな変革」
第 4 回「 「DX は成長戦略の大きなチカラ」、大胆な取り組みを着々と展開」
第 5 回「製造業 DX は確実に加速、柔軟な姿勢で多様なエコシステムを構築」
第 6 回「現場で鍛えた ICT を活用する局面へ「先人の知恵」を生かして製造業 DX を加速」
第 7 回「ビジネス変革を見据えた製造業 DX、データモデル「CDM」の強化で基礎を整備」