HoloLens 2 を活用したトヨタ自動車開発アプリがモビリティの現場の未来を変える。FORUM8 RALLY JAPAN 2022 出展レポート
2022 年 11 月 10 日〜13 日の 4 日間、日本マイクロソフトは豊田スタジアムで開催された「FORUM8 RALLY JAPAN 2022」に出展しました。FIA 世界ラリー選手権(FIA World Rally Championship:WRC)は、今年で開催 50 周年を迎える世界最高峰のレース。日本開催は 2010 年以来、12 年振りです。新型コロナウイルスの影響で 2020 年、2021 年の 2 年連続で中止を余儀なくされたものの、今年は愛知・岐阜での開催が叶いました。
日本を代表する自動車メーカーのトヨタ自動車株式会社は、フルモデルチェンジした新型「GR86」を 2021 年 10 月に発売しました。その発売に合わせて、 HoloLens 2 を使い、GR86 の構造を視覚的に解説するアプリを開発。今回、日本マイクロソフトのブースでは、実際にトヨタが開発したアプリを用いながら「GR86」の構造を、HoloLens 2 を通して来場者の方に MR 体験していただきました。
今回、同イベントに出展するに至った経緯について、マイクロソフトコーポレーション 戦略パートナーシップ部門 吉田 正裕は次のように話します。
「元々 2017 年から 3 年間、マイクロソフトは TOYOTA GAZOO Racing WRC 車両のメインパートナーをしていました。その後、コロナ禍となり一度パートナーシップを離れたものの、ようやく日本でラリージャパンが開催される事が決まり、ラリージャパンを盛り上げる一翼を担いたい、という思いがありました。せっかくなら、来場者の方にトヨタ様が開発したアプリと HoloLens 2 を使った新しいテクノロジー体験をしてもらうブースを設置して、トヨタ様とラリージャパンで陰ながら TOYOTA GAZOO Racing を応援しようと決めました」(吉田氏)。
整備士の働き方改革を目指して HoloLens 2 を導入 車の構造解説アプリを自社開発したトヨタ
現在、自動車業界は「100 年に一度の変革期にある」と言われています。その時代の転換を見越しトヨタ自動車では、サービス現場の働き方改革に活用するために、2017 年に初代 HoloLens を導入。10 年後に現場の整備士がよりスマートな働き方ができるようにと、HoloLens 2 を使い車の構造を視覚的に把握できるアプリの開発に着手しました。マイクロソフトはパートナーとして、その取り組みを支援。シアトルやバンクーバーの技術チームが意見交換を行ったり、基礎技術の部分でのサポートを行ったりしています。
現場での活用の実現にはまだまだ課題も多く、現在はトヨタ自動車からのご要望を汲み取りながら、 HoloLens 2 のハードや OS の部分での改善を進めている段階です。
この取り組みが実現すれば、現場の整備士の方がより直感的に作業ができるようになります。重たい本のマニュアルやパソコンの要領書を見ることなく、該当するパーツの位置を把握することができるため、若手のエンジニアでもよりスムーズに作業ができるようになるはずです。
一般の方に HoloLens や MR、そしてトヨタの取り組みを広く知ってもらいたい
マイクロソフト 上田氏は、4 日間のイベントを振り返り、次のように話します。
「予想を大きく上回る反響があり、この 4 日間で 1,200 人ほどの方に体験をしていただきました。これだけ多くの方に HoloLens 2 を体験いただく機会は、おそらく初めてではないでしょうか。実際にトヨタ様が作ったアプリと HoloLens 2 を体験していただき、来場者の方から『すごい』と驚きの声をいただけたのはとても嬉しいです」(上田氏)。
トヨタとのパートナーシップについて、現場の声をフィードバックいただける貴重な存在だと、上田氏は続けます。
「HoloLens 2 は法人のお客様の DX の一環として、実際の現場で使ってもらいたいという思いがあります。トヨタ様は、初代 HoloLens からテクノロジーに魅力を感じていただき、情熱を持ってアプリの開発に取り組まれていました。我々のテクノロジーを使い、アプリを開発していく過程でいただいくフィードバックを元に、製品はどんどん改良されていきます。現場で、『どういう機能が必要か』『どういった改良をすればもっと使ってもらえるか』を製品に反映していけますから、そういう意味においても、トヨタ様のように一緒に取り組んでいただける企業はとても貴重な存在です」(上田氏)。
RALLY JAPAN に出展したことの意義について上田氏は、一般の方に HoloLens 2 を体験してもらうことに大きな価値があったと、次のように話します。
「HoloLens 2 は多くの企業様でご活用いただいていますが、世間一般では、MR や HoloLens 2 の認知度はまだまだ低いと思います。今回は、まず製品や MR のテクノロジーを一般の方にもっと知ってもらいと思ったんです。車が好きな方は、こうしたテクノロジーへの関心が高い方も多く、今回の体験はとても相性も良いと感じます。トヨタ様の取り組みも一緒に世の中の人にもっと知ってもらって、トヨタ様のことを好きになってもらいたいですね」(上田氏)。
トヨタ自動車の最大の強みであるモビリティ領域を、マイクロソフトが支えていきたい思いがある、と吉田氏は語ります。
「おそらく今後、モビリティはモータースポーツのように速く走る車か、完全に移動に徹するようなものに二極化していくと思います。その中で、トヨタ様は究極の『FUN TO DRIVE』を目指すために、ラリーやモータースポーツを実施されているはずです。マイクロソフトもそうしたモビリティの将来に関わりたいという思いで、今回の WRC に参画しました。IT を活用しながら、モビリティの将来をどう進化させていくか。その部分でトヨタ様に大いに期待していますし、そこをマイクロソフトが下支えさせていただきたい、そういうパートナーシップを組んでいきたいです」(吉田氏)。
MR 体験をした方の声「SF の世界が現実に」
マイクロソフトの体験ブースには、年齢性別を問わず多くの方が足を運んでくださいました。
神奈川から訪れたというお子様連れの男性は、「とにかくすごい。実際の視覚の中に映像を重ねて見られることに驚きました。SF の世界のようです。外からパーツの様子や空力を見られるのは車ファンとしてはたまりませんね。今後もっと薄型、例えばサングラスサイズになって、日常的に使えたら面白いなと思いました。未来への期待が膨らみます」とコメントしてくれました。
浜松からイベントに訪れた男性は、「元々 HoloLens を知っていて、実際に体験できる場が貴重だったので立ち寄りました。精度が高く、オプションパーツを付けた状態などを見ることができたのがよかったです。現実世界と組み合わせて使える MR 技術は、やはり便利だなと思いました」と話します。
大阪からいらっしゃった女性は「車の難しい構造を、視覚的にわかりやすく理解できるのではないかと思い、このブースを訪れました。VR ゴーグルは着けたことはあったのですが、HoloLens は閉塞感がなくて安心して装着できるのがとてもいいと思いました。私は医療関係で勤務しているのですが、職場でも導入してもらいたいです」と HoloLens を使った未来にも期待を持っている様子でした。
RALLY JAPAN 2022 へのブース出典は、一般の方に HoloLens や MR に触れていただく機会としてはもちろん、トヨタの取り組みを多くの方に知っていただけた貴重な 4 日間となりました。