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デジタル トランスフォーメーションの衝撃 第 10 回

デジタル トランスフォーメーションは、企業規模や業態を越えた大きな潮流へ

革新的なアイデアを創出し、短期間で事業モデル化、先行者利益を得る――。これを体現するような事例が、すでに企業規模や業種・業態を飛び越えて、欧米、アジア、そして日本でも、生まれつつあります。デジタル トランスフォーメーションは一部の企業にとってのテーマではなく、すべての企業にとって経営の根幹を問うテーマとなっているのです。今回は一見するとデジタル化が難しい領域において変革に挑む組織の事例を 2 つ取り上げつつ、今後日本企業や組織が目指すべき方向性について、総括します。

デジタル トランスフォーメーションに規模や業種は関係ない

これまで本コラムでは様々な観点からデジタル トランスフォーメーションの重要性を読み解いてきました。こうした潮流は、何も大企業だけに関する事ではありません。中堅・中小企業を始め、教育機関といった公共の分野でも、様々な取り組みが始まっています。

例えば、新潟県に本社を置く小柳建設 は、Windows 10 を搭載した世界初の自己完結型ホログラフィック コンピューター「HoloLens」を活用して、業務生産性とトレーサビリティの向上を目指すプロジェクト「Holostruction (ホロストラクション)」をマイクロソフト エンタープライスサービスの支援 により、2017 年 4 月に発表しています。

建設業界は現在、2020 年の東京オリンピック・パラリンピックによる需要の高まりで労働者不足が深刻な問題となっています。そこで同社は、労働生産性を大きく向上させるために、HoloLens で実現できる MR (複合現実) 技術に注目。Holostruction では、「業務トレーサビリティ (追跡可能性) の向上」「BIM (Building Information Modeling)/CIM (Construction Information Modeling) データの活用試行」「新しいコミュニケーション アイデアの試行」という 3 つの取り組みを実践・検証します。

1 つ目の「業務トレーサビリティの向上」では、計画から工事、検査、アフター メンテナンスまでの全工程におけるデジタル データを管理するツールとして HoloLens を活用。オーディオのボリュームつまみを動かすイメージで、時間軸に沿って情報を表示できるので、工事完了後もコンクリートに隠れた部分の構造を確認することが可能です。

2 つ目の取り組みに含まれる BIM/CIM とは、設計や工事、メンテナンスまでの建造物に関わる 3D データなど全ての情報を活用する仕組みのこと。設計図を 3D で可視化しつつ、検査に必要なデータや文書も一緒に格納し、必要な時にすぐ表示できる仕組みを開発しています。デバイスの画面制限なく、HoloLens を装着している担当者の周囲 360° に設計図や必要情報を表示でき、効果的な作業を実現できます。

3 つ目の「新しいコミュニケーション アイデアの試行」では、3D グラフィックで HoloLens に映し出される図面や現場視界を共有する機能、実物大の 1/1 スケールで実際にその場にいるかのような体験、建設重機や作業員の配置を計画段階からシミュレーションする機能も開発しています。複数の人が同時に HoloLens の同じホログラム画像を共有することもできます。また、Skype を通して、遠隔地の作業者が見ている状況を、管理部門のスタッフや現場の責任者が連携することも可能となります。

大学教育の全面的なデジタル化に挑む

静岡大学も、大学教育の領域でデジタル トランスフォーメーションに取り組んでいます。その 1 つが「クラウド反転授業支援システム」です。これは、大学の教員から学生への「知識の伝授」をデジタル化するシステムです。

反転授業とは、学生が授業の前に動画で予習を行い、授業中は議論に集中するなど、基礎的な学習を教室以外の場所で繰り返す教育法のこと。クラウド反転授業支援システムは、教員が講義する動画の教材をはじめとして全ての情報をデジタル化した上で、マイクロソフトのクラウド「Microsoft Azure」を基盤とするする仕組みです。静岡大学では 2017 年 4 月から、全学での本格的な運用を開始しています。これにより、学生はいつでもどこでもデジタル教材の動画を閲覧することが可能になりました。
 
さらに約 1 万人の学生は「Office 365 Education」の活用をさらに加速、電子ノートブック「OneNote Class Notebook」の運用も積極的に行っています。教科書、参考書に加え、ノートの電子化によって、授業の全面的なデジタル化に挑んでいるのです。

今後、静岡大学とマイクロソフトは、全国の大学に対して反転授業に関する支援を共同で展開して行きます。

デジタル トランスフォーメーションを成功へ導く鍵とは

ここで紹介した 2 つ組織の事例が象徴しているように、デジタル トランスフォーメーションは既存のプロセスの省力化・自動化ではなく、新たな付加価値を生み出す新しいプロセスを創出することにほかなりません。これまでは、新しいプロセスをサポートするシステムを構築するには膨大な投資が必要でしたが、初期投資が不要で従量料金で利用できるクラウド サービスの登場によって、このハードルは一気に下がりました。

さらに、現在はシステム基盤だけでなく、AI (人工知能) やビッグ データ分析など、最新テクノロジーを駆使したアプリケーションもクラウド サービスとして提供されるようになりました。革新的なアイデアさえ創出できれば、すぐに事業化することが可能なのです。

その際に重要なことは、規模は小さくてもよいので、できるだけ早く事業を立ち上げることです。小さな規模で始めて、お客様や市場の反応を見て修正していき、うまくいったら大きく育てる。ダメなら撤退する――こうした姿勢がデジタル トランスフォーメーションを成功へ導く鍵となります。クラウド サービスを利用すれば、システム規模の拡大や縮小は可能ですし、うまくいかなければサービスの利用を止めればよいのです。

マイクロソフトは 4 つの側面でお客様を支援

ただし、「最新のテクノロジーで経営改革に着手するといっても、具体的にどこから手をつけたらよいのか見当もつかない」というお客様も少なくないのが現状です。デジタル トランスフォーメーションに取り組むには、AI やデータ分析などの最新テクノロジーと、それを活用したシステムの開発手法に関する知見が必要になります。実は、こうしたスキルを持つ人材の不足が世界的に大きな課題となっています。

社内に人材がいないのであれば、外部の力を借りることも検討するべきでしょう。社内で人材が育つのを待っていたのでは、競合他社に後れをとってしまう可能性が高いからです。こうしたニーズに応えるために、日本マイクロソフトでは、お客様のデジタル トランスフォーメーションを支援する「デジタルアドバイザリーサービス 」を提供しています。このサービスでは、専門的な知識と経験を持ったデジタル アドバイザーが、お客様とともにデジタル トランスフォーメーションに向けたビジョンと計画を策定し、具現化までをサポートしています。

本コラムでも何回か取り上げてきているように、マイクロソフトでは大きく 4 つの側面でお客様のデジタル トランスフォーメーションを支援できると考えています。具体的には以下の 4 つです。

●お客様とつながる――様々なチャネルから収集したデジタル データを通して、自社のお客様との新たな関係をつくる仕組みを構築する

●社員にパワーを――社内外のコラボレーションの活性化によって、新たなアイデアを創出するとともに、それをすぐにビジネスに結びつける

●業務を最適化――既存の業務におけるオペレーティング モデルや現場業務の効率化によって業務プロセスを最適化する

●製品を変革――収集したデジタル データの分析結果に基づいて、革新的な製品・サービスや新たなビジネス モデルを創出する

お客様とつながる - Engage your customers、社員にパワーを - Empower your emplyees、業務を最適化 - Optimize your operations、製品を変革 - Transform your produtcs

お客様が自らの力でデジタル トランスフォーメーションを推進する際にも、この 4 つの側面を意識すれば、ビジョンや計画を策定しやすくなるでしょう。

サイバー攻撃の脅威に備えることも重要な課題

デジタル トランスフォーメーションに取り組む際には、もう 1 つ忘れてはならない重要な課題があります。それは、セキュリティ対策です。業務プロセスや製品・サービスのデジタル化が進むことは、サイバー攻撃の標的対象が増えることを意味します。

サイバー攻撃の被害に遭ったことが、お客様に知れわたってしまうとビジネスに大きな影響を与えることになります。お客様は信頼できないテクノロジーやサービスを購入してはくれないからです。

これまでのセキュリティ対策は、マルウェア (不正プログラム) が内部に侵入することを防御する「出入り口対策」が一般的でした。しかし、攻撃の手口が高度化している現在は、侵入された後の対策を講じることが必要です。つまり、攻撃者に侵入されることを前提とした新たなアプローチが必要なのです。

マイクロソフトでは、サイバー攻撃に対して、 (1) センサーやデータセンター、機密情報が含まれるファイルや SaaS アプリケーションに至るまで、すべてのエンドポイントを「保護」する、 (2) サイバー攻撃を受けた際には、それを迅速に「検知」する、 (3) サイバー攻撃を検知した際には、迅速に「対処」する――というアプローチが必要だと考えています。

こうした認識の下で、マイクロソフトはセキュリティに関する取り組みを推進しています。私たちの取り組みを象徴しているのが、「インテリジェント セキュリティ グラフ」です。これは、10 億台を超える Windows デバイスや 2 兆 5,000 億のインデックス化された URL、6 億件のオンライン評価、毎日発生する 100 万件の不審なファイルなどから得られる情報を対象に、機械学習と行動解析によって、異常の検出と脅威の認識を行うものです。ここで得られた洞察や分析結果は、Windows 10 に搭載されたセキュリティ対策機能を通して、利用者にフィードバックされています。

サイバー攻撃が大きな脅威であることは事実ですが、だからといって、業務プロセスや製品・サービスのデジタル化の手を緩めてはいけません。自社が描いたビジョンを競合他社が先に実現してしまうと、大きな機会損失を招く恐れがあるからです。デジタル トランスフォーメーションで創出できる新たなビジネス モデルやサービスは大きな先行者利益が期待できます。自社のビジョンの実現に向けて、まずは「手を動かす」ことが大切なのです。

参考

オンラインの安全を守るために求められる協調的なアクション:先週のサイバー攻撃からの学び 新しいウィンドウで開きます (Japan Corporate Blog 2017 年 5 月 16 日)

※本情報の内容(添付文書、リンク先などを含む)は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。

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