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イノベーションに向けて頑張れば、頑張るだけイノベーション創出から遠ざかってしまう~有識者による誌上講義 – 第 2 回 楠木 建教授

第 2 回 楠木 建教授

デジタル技術を活用した「イノベーション」の創出が、企業が生き残っていく上で不可欠なテーマになりつつある。しかし、イノベーションを誤解すると、違う方向に舵を切ってしまうことになるため注意が必要だ。イノベーションの本質は、価値次元そのものの転換にあり、既存の価値次元上での「進歩」とは元来別個の現象である。

企業はそうしたイノベーションの本質を踏まえた上で、進歩の促進とは異なる施策を検討することが肝要だ。

プロフィール
1987 年一橋大学商学部卒業。1992 年一橋大学大学院商学研究科博士課程単位修得退学。一橋大学商学部専任講師、同大学大学院国際企業戦略研究科助教授を経て 2010 年より現職。

専門は競争戦略。2010 年 に出版した『ストーリーとしての競争戦略: 優れた戦略の条件』は本格的経営書としてベストセラーになり、実務家にも大きな影響を与えた。

■世の中に蔓延する「イノベーション」をめぐる誤解

さまざまなメディアで、デジタル トランスフォーメーションによる新たなビジネス価値追求の必要性が叫ばれています。いわく、デジタル技術を活用したイノベーションこそが、企業の価値創出のカギであると。しかし、そもそも「イノベーション(Innovation)」とは何なのでしょうか。その定義に立ち返って検討してみる必要がありそうです。というのも、そうした論調で語られているイノベーションの多くは誤解をはらんでいるからです。

その誤解とは何でしょうか。要するに、ほとんどのケースでイノベーションを「進歩(Progress)」と取り違えているのです。

スマートフォンを例に考えてみましょう。今日では各製品が、どんどん薄く、軽く、そして動作も速くなっています。またカメラ機能も向上し、ずいぶんときれいな写真が撮れるようになりました。こうしたことを「イノベーション」と捉える人も少なくありません。しかし、これは決して「イノベーション」ではなく、あくまでも「進歩」。というのも、このような軽量化や性能・機能の向上は、もともとスマートフォンにおいて実現されていた価値を高めたにすぎず、価値の次元においては連続しているわけです。

イノベーションの本質は非連続性にあります。つまり、価値の次元そのものが変わるということです。つまり初代の iPhone の登場はイノベーションですが、その後市場に投入された iPhone の後続機種は進歩を実現するものでした。また写真を撮るという行為そのものの意味を変えたデジタルカメラの登場はイノベーションですが、それ以降に、各メーカー間で繰り広げられてきた高画素数化、高機能化をめぐる争いは進歩の競争なのです。

進歩の競争は最終的に飽和します。ある段階でデジカメの性能や使いやすさが、ユーザーのニーズを満たして余りあるものとなり、ユーザーがデジカメを頻繁に買い替えることも少なくなりました。その結果、デジカメの主要な価値追求の対象が価格に移りつつあります。要するにコモディティ化したわけです。

このように、同じ価値次元における進歩には、いずれ閉塞状況(要するに消費者の慣れ)が訪れる。そうした行き詰まりから脱却するには、価値の次元そのものを転換すること、すなわち言葉の本来の意味でのイノベーションが必要になります。

ビジネス上の競争戦略の根源が差別化にあるという考えからすれば、価値の次元そのものを転換するイノベーションの創出が、有効であることは言うまでもありません。その意味で企業にとってイノベーションが重要なテーマの 1 つであること自体は正しいといえます。ただ、世の中で語られるイノベーションがほとんどの場合、進歩の話になってしまっているということについては、しっかりと認識しておく必要があるでしょう。

なぜ企業が、イノベーションと称して進歩を追求するのか。そこには明確な理由があります。市場や顧客が明示的に求める価値は通常、現状の価値次元を逸脱することがないからです。顧客は現在の延長上でしかニーズを語らず、株主は見える次元の数字しか見ようとしない。そして、経営層は意思決定の組織的正当性を確保しようとするため、「何がよいか」が変わってしまうイノベーションには反対する。その結果、「イノベーション」の名の下に進歩が追及される。その方向で頑張るほど、ますますコモディティ化にのみ込まれる皮肉な成り行きです。

もちろん、進歩自体を否定しているわけではありません。何か新しいイノベーションが起きたのちに、素早くそれに追随し、進歩の世界で競争優位性を勝ち取る企業もあるからです。その代表例がトヨタ自動車でしょう。進歩は組織的な総合力が重要です。その点、同社では、事業部間、あるいは企業間での分業を行い、KPI を明確に設定し、きちんとモニタリングされ、ハイブリッド エンジンの燃費を向上させ、自動車をより安全・快適なものにしている。つまり、イノベーションではなく進歩であっても、自社の強みやマーケット ニーズがあれば、その取り組み自体が間違っているわけではないのです。企業は、その進化が本当に求められているのかどうか、投資価値に見合うのかどうか、その見極めを常に行うべきでしょう。

■イノベーション創出に向けて頑張ってはいけない

その一方で、イノベーションの創出となると、組織的に頑張ったからといって結果が出るものではありません。イノベーションは組織が KPI を定めて推進していくような取り組みでは決してなく、「思いつくかつかないか」が問題であって、たまたま思いついた個人によって成し遂げられるものです。「イノベーションの創出に向けて頑張ろう」というかけ声は明らかに語義矛盾であり、また多くの企業において設置が進められている「イノベーション推進本部」といった組織も、あえて言わせてもらえればナンセンスということになります。

それでは、企業がそうしたイノベーションの創出を目指して、どのような取り組みを行うべきなのでしょうか。これについて、私が以前から提案しているのが、社内の“センスがいい”と思われる人をアサインして、いろんな現場部門を回らせ、とにかくイノベーションのネタを持っていそうな人を探して来るように命じるというアプローチです。

というのも、イノベーション創出につながる“思いつき”を持っているような人材は、得てして組織の中に埋もれていて、通常の進歩を目指した業務の中で表面化していないということが多いのです。なので、イノベーションのネタを募集するというよりは、「何か面白いことを考えている人はいないか」と尋ねて回るといった方法がより効果的なのではないかと考えています。もちろん、こうした取り組みの実施に向けては、経営者の強固なリーダーシップが必要です。

■イノベーション創出のプロセスを短期化する方法とは

最後にイノベーションの創出に向けた、デジタル技術の効用についても触れておきたいと思います。何度も述べている通り、イノベーションは個人の“思いつき”を発端とするものですが、それを市場に変革をもたらすものにしていくには、実際にビジネス化していくためのプロセスが必要です。市場化、商業化がなされなければ、それはイノベーションとはいえません。そして、イノベーションへの取り組みというのは、いわば多産多死が原則。そうした意味では、何度もトライアルを行って成功を目指すことになります。

そうした市場化に向けたトライアルをより少ない投資で俊敏に行っていく上での有効な手段となり得るのが、まさにデジタル技術の活用です。アナログの世界では膨大な手間と時間を要するトライアルの取り組みを、デジタル技術を使えば何度も繰り返していくことができる。その結果、市場化のプロセスが大きく短期化されることになるわけです。

ただし、注意も必要です。企業の経営者の中には、とにかくさまざまなデジタル技術を自社に導入していけば、ビジネス上の新しい世界が拓かれるものと考える方も多いようです。例えば AI や IoT といった技術を、いわば“魔法の杖”として捉え、導入すればすぐにイノベーションの創出につながるという考えです。これが大きな誤解であることは、言うまでもありません。デジタル技術の導入は、イノベーション創出のプロセスをサポートしますが、導入するだけで価値を生み出すものではないからです。安直な誤解をしないことが肝要でしょう。

今回の講義のまとめ

  • 「イノベーション」と「進歩」を取り違えてはいけない
  • 組織的な頑張りによってイノベーションは創出されない
  • デジタル技術はイノベーション創出のプロセスをサポートするが、導入自体が価値を生むわけではない

関連リンク

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