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戦略的データマネジメントがAI・IoT時代の顧客起点の新しいビジネスを創出する【インタビュー】

※ この記事は 2017年05月18日に DX LEADERS に掲載されたものです。

2017年3月、目黒雅叙園にて一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム(Japan Data Management Consortium:以下JDMC)主催のデータマネジメントに関するカンファレンス「データマネジメント2017~データが繋ぐ共創社会」が開催された。過去最高となる1,600名が申込登録し、データマネジメントへの関心が高まっていることがを感じた年であった。

JDMCとは、データマネジメントの重要性の普及展開と、実践的なデータマネジメント手法の確立を通じ、日本企業・組織の国際競争力強化に寄与することを目的に2011年に設立された団体である。会員企業は、製造・小売/流通・金融・通信・サービス・メディアなど各業種から200社を超える日本の代表的企業が参加している。

今回は、データマネジメントのトータルサービスを手掛ける株式会社リアライズ代表取締役社長であり、JDMCの発起人/理事兼事務局長でもある大西浩史氏に話を伺った。

企業のきっかけ~データ活用のキモは足元のデータ品質にあった~

大西氏は、NTTデータ通信株式会社に1994年に新卒入社。資材・購買部門での業務を行っていた。当時、大西氏はシステムを利用するスタッフとして、情報システム部門に対し、購買実績のデータを分析するために「こういうデータ項目を追加してほしい」などの要望を出す立場であった。しかし、いざ運用となると通常の契約交渉業務が忙しくて時間が取れず、「活用可能な状態でデータを維持することが難しい」という現実を痛感したそうだ。

「例えば、”文房具一式で100万円”という取引履歴データがあったとします。データが適切に揃っていなくても、購入する側と受注する側の当事者同士がその明細が何かをわかっていて、買った商品の代金が間違いなく支払われていれば取引はできてしまいます。しかし、あとでそのデータを分析しようとするときに、“文房具一式”の明細がペンなのか、はさみなのか、ノートなのか…どんな商品をどんな単価でどういうサプライヤーから購入しているか、皆目分からなくなってしまいます。データは日々たまっているのに定量的・科学的な考証ができない。しかし、データベースの知識やSQLの技術が少ないエンドユーザーがデータのクオリティをチェックしたり、名寄せなどをするのはなかなか難しい、ということを自らが実体験しました。であれば、データを活用するための下準備をするような事業会社を始めれば世の中の役に立てるかもしれない、一念発起して、1997年社内ベンチャー制度に応募し、プロジェクトとして始動しました。」(大西氏)

株式会社リアライズ代表取締役社長、JDMC発起人/理事兼事務局長 大西浩史氏

「JDMCに参加される方は、どうやったら自社のデータをビジネスに活用していけるかのヒントを得たい、という方が多いように思えます。自社のデータを持っているが使えていない企業様、オープンデータなどの外部データを活用していきたい、という企業様もいらっしゃいます。また、自社の商品の魅力を高め、差異化するためにデータマネジメントを取り込みたいという企業様もいます。」(大西氏)

例えば、建設機械メーカーが自社の車両の傷み具合や稼働状態をチェックするセンサーやGPS装置を取り付け、各車両のデータを自動的に収集・集積している。そのデータを活用して他社よりも自社の機械が長持ちしたり、メンテナンスコスト負担を削減できるなどのビジネス上の効果により、自社の商品の魅力を競い合っているのが顕著な例であろう。

特に最近では、各組織でバラバラになっている顧客接点を統合し、様々なタッチポイント(Web/EC サイトのアクセス時、店頭への来店時、営業担当の個別訪問時、資料請求時、アフターサポート時、など)でお客様の“動き”をデータで定量的に把握し、次のアクションに活かしたい、といったニーズが確実に増えてきている。

データは個別部門の持ち物ではなく、組織横断的に活用するものである

「たとえば、これまでメーカーさんにとっては、販売代理店や量販店経由で接していたユーザーの情報は非常に手に入りにくかったのですが、ITがこれだけビジネスや生活の中に浸透すると、スマホやWebサイトなどの自社メディアから比較的容易に顧客接点がもてるようになってきました。」(大西氏)

場合によっては、店舗の棚から一度手に取ったが、また棚に返す(ECでいえば一度カートに入れたが、カートから削除する)というような顧客のリアルな動きまで見ることができるようになっている。しかし一方で、今後ビジネスへの活用が大いに期待されるデータであっても、「これまでは“紙でやっていた個別部門の業務処理を電子化する”ためにシステムが構築され、導入されてきた歴史があるため、データが個別部門ごとに分散していてデータ運用組織も異なっているため、同じ顧客のデータでもどれが原本か、最新かもわからないようなケースが多くあります。個別部門ごとのシステムが“壁”となって“サイロ”のようにデータを抱え込んでしまっているのです。」(大西氏)

データをビジネスへ活用し、新たな価値を創出するためには、データの品質を維持するとともに、個別部門の内部だけではなく組織横断的にデータを共有し、“顧客視点”で統合することが重要なポイントである。

「EC系のシステムと店舗系のシステムは通常別々に構築されていますが、これらの顧客データが繋がっていないと、ネットをよく使ってくださっているお客様が店舗に来ても“このお客様は当社にとって上顧客だ”、ということが判別できません。本来であればネットの大口顧客が店舗に来店してくださった時にはほかの一般のお客様より特別な対応をしたいですよね。そうすることで、店舗でもリアルでもそのお客様のロイヤルティがさらに上がる可能性があります。」(大西氏)

ECサイト、スマホサイト、店舗、紙のカタログ販売など、すべてのチャネルを横断して連携させ、個の顧客と自社の様々なタッチポイントでの快適な買い物体験価値を提供するのが“オムニチャネル”の考え方であるが、データがしっかりとつながっていなければ、接点(店舗・ネット)を増やすだけのマルチチャネルにすぎない。

AI、IoT時代だからこそ重要性が増しているデータマネジメント

「近年ではAIやIoTが注目を浴び、生産性の抜本的な改革やビジネスモデルの転換などの“攻めのIT”を標榜する経営者の方々が増えてきていますが、“ネットでもリアルでも同じ顧客や同じ部品を同一と選別できる正しいデータ”がなければ、それは実現しません。“誤ったデータ”を“正解データ”として与えたら、コンピュータは「正確に間違った答えを返す」のは自明の利ですからAIやIoTの時代でも正解データをコンピュータに与えてあげる仕事は結局ヒトがやるものです。」(大西氏)

たとえば、IoTデータは設置されたセンサー等から勝手に出てくるように見えても“そのセンサーが搭載された部品はいつ製造されたか”、“その部品を分解すると、どのサプライヤーからいくらで供給された、どんな部材から構成されているか”などといったマスタ情報が分析軸として重要になるが、これらはコンピュータが自動的に与えてくれるものではない。冒頭で紹介したJDMCのカンファレンスの盛り上がりを見ても、“いよいよ本腰を入れてデータマネジメントに取り組まなければならない”という意識をもった企業がそれだけ増えていることの証左であろう。

データ統合の困難さを軽減し、データ活用を促進するために

「データをつなぐことの大切さは理解できても、システム機能改善だけでは決して解決しない地道な努力が必要な取り組みであることは明白な事実です。また、データ統合を実行するためには、各関係組織の意見調整や目的に関する合意、推進体制の構築や運用ルールづくりなど、相応の予算も期間も必要になります。実際に、なかなか実行に着手できない企業様も多く存在するため、そのハードルを少しでも下げるための一つの解決策として新しいAIデータマッチングサービスを開始しました。」(大西氏)

たとえば、自社内のデータの現状を思い起こしてみたらわかりやすい。イベントに出展して営業が集めた名刺リスト、Webから資料請求ダウンロードしてくださった申込者リスト、メルマガ会員リスト、ダイレクトメール用リスト、SFA等の商談管理リストなど、用途ごと、組織ごと、場合によっては担当者ごとにエクセル等で管理されているのが実態ではないだろうか。

「加えて、企業名には、”株式会社”、“(株)”、“㈱[環境依存文字]”などの表記ゆれ、“アルファベット”、“カタカナ”、“略称”、“愛称”、その複合的な表記ゆれ、“全角”、“半角”の表記ゆれ、“旧社名”と“新社名”の混在、営業担当者が自分の担当企業を整理するための区分の混入(“【a1】株式会社リアライズ”など)、または、OCRツールのスキャンによる「エ(カタカナの“エ”)」と「工(漢字の“工”)」の読み取りミスなど、機械的には処理できないデータが多数存在します。膨大なデータを一つひとつ目で見て手で修正していく労力と手間が負えず、自社顧客データの統合に着手できない企業様向けのサービスも提供しています」(大西氏)

株式会社リアライズ代表取締役社長、JDMC発起人/理事兼事務局長 大西浩史氏

データがビジネスとITをつないで、つむいでいく

インタビューのまとめとして、大西氏はこう語った。

「ともすると、日本のトップマネジメントは“○○システム刷新プロジェクト”が無事にリリースされるかには興味を持つが、そのシステムがビジネスにどう活かされているのか、つまり、データが活用され、ビジネスの価値を継続的に創出しているかについては無頓着なことが多いのでは。」と課題提起する。システムは刷新されている段階では何らのビジネス価値をもたらすものではない。せっかく多額の予算をかけてシステムを刷新したとしても、データマネジメントが行き届かず、目的に沿ったデータが登録・流通・蓄積・活用されなければ意味がない以上に、ビジネスや業務を制約する“金食い虫”にもなりかねないのだ。

「これからの時代、GE(ジェネラル・エレクトロニック)の事例を紐解くまでもないように、ITを使って新しいビジネスを行うこと、つまり新しいビジネスにデータを活用することが求められます。ビジネスやITのリーダーの皆さん、延いては経営者の皆さんにおかれては、自社のデータは代替えの効かない貴重な資源であり、それが自社のお客様の視点に立って全社横断的につながっているか、AIやIoTの時代にビジネス価値を創出できる状態になっているかについて、もっとコンシャスであった方が良いと思います。データマネジメントの巧拙が企業・組織の競争力を左右する時代が到来している、といっても過言ではありません。」(大西氏)

ITはもはや、個別組織の業務処理効率化のためのだけのツールではない。システムの刷新後が真の本番だ。これからのIT導入の目的は顧客を起点として既存の組織を超えてビジネスを創出していくための位置づけとなる。そのためのカギとなるのが、社内に蓄積されているデータである。データは社内の重要かつ代替のきかない資産であることを認識しなければならない。データを整え、常に活用可能なデータ状態を維持・向上させるといった運用面の取り組みが重要なのだ。

取材・文:池田 優里

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