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【インタビュー】AR(拡張現実)とAIを融合したFintechで新たな金融サービスを(リコノミカル株式会社)

※ この記事は 2017年06月29日に DX LEADERS に掲載されたものです。

スマートフォンを日本経済新聞の証券欄にかざすと、新聞上に株価情報がグラフ化されて浮かび上がる。企業のロゴマークにスマートフォンをかざすと、その企業の株価のチャートや会社情報などが空間に浮かび上がる。そんなSF映画のようなことが、ついに現実になった。

金融×AR(拡張現実)×AI (人工知能)融合フィンテック・サービスを提供するリコノミカル株式会社は、2017年6月6日、金融・経済とAR、AIを融合したサービスのプロトタイプ『Economy in Life』サービスを発表。同月7日から3日間、幕張メッセにて開催された「Interop Tokyo」では、プロトタイプの公開が行われた。“「人にやさしい」インタフェースで日常生活と経済を繋げる”を理念に、ARとAIによる金融情報の可視化に挑む同社代表の鴨林広軌氏に、サービス開発の経緯と未来への展望を伺った。

https://youtube.com/watch?v=ORlVT4C2ceE

「かざす」だけで気になった企業の情報がリアルタイムで分かる

リコノミカル株式会社 代表の鴨林広軌氏は、MUFGでファンドマネージャー・クオンツ、GREEでBIやゲームのエンジニアを経て、現在は同社にて『Economy in Life』の開発を進めている。

『Economy in Life』は、スマートフォンやHoloLensなどのヘッドマウント型端末のカメラに写った被写体(ロゴや企業名など)をAIで画像解析し、空間上にその企業の株価情報、財務情報などを表示する。

「MUFGでファンドマネージャーをしていたとき、街で会社のロゴや企業名などメモをしながら歩き、企業の調査を行っていたためなかなか大変でした。ファンドマネージャーではない、一般投資家の皆さんにとって、調査をするのはもっと大変だと思いました。ここで、会社の情報などが一覧で見ることができたら、投資へのハードルが下がるのではないかと考えました。」(鴨林氏)

システムを開発するにあたり、投資家はどれだけいるのか?ユーザー数は多いのか?という懸念事項にぶつかったが、財務状況だけではなく、製品情報や求人情報などの経済情報を扱い、情報量を増やせば、投資家以外の人たちにも役立ち、ターゲットが増えるのではないかと気づいた。

「投資家だけではなく、企業情報を調べたい就職活動をしている人たちや、中高生の職業調査、アルバイトを探すときにも使えるような形にできればと思っています。」(鴨林氏)

リコノミカル株式会社 代表の鴨林広軌氏
リコノミカル株式会社 代表 鴨林広軌氏

電化製品・雑誌・ゲーム・日常消耗品などの一般消費者は、どこの会社が製造しているものかをすべて把握しているだろうか。製品名やブランド名、どこのお店で買ったかは知っていても、どの会社が製造したものかまでは把握していないものも多いだろう。商品を作っている会社のことや、製品に対する思いや製造工程などを知りたいと考えたとしても、その会社を調べるまでの道筋が遠い…ということもあるかもしれない。ここで、『Economy in Life』のARの機能を使うと、次のようなことが実現できる。

「調べたい企業や商品のロゴにかざすだけで、どこの会社が作っているのか、というのが分かるようになります。就職活動中の学生であれば、求人情報も一覧化されているので、この会社ではこんな人たちが求められている、というのが分かる。たとえば、街を歩いていて、気になったお店があった。そのお店のことを調べたいと思ったその時に、お店のロゴをスマホでかざすとお店の情報を見ることができます。」(鴨林氏)

リアルタイムで、気になったときに情報を仕入れることができる。街を歩いていて、気になったお店があり、家で調べようと思っても、忘れてしまうことが多いのではないだろうか。こういった機会の損失も防ぐことができる可能性がある。

Google検索は、検索する知識がないと難しい

Google検索は、主体的に探す必要がある。検索ワードのチョイスを一つ変えたり加えたりするだけで検索結果は大きく変わってしまう。検索ワードの選び方も、ある程度の知識がないと期待する結果は出てこない可能性があり、検索結果も信頼が置けるものかどうか、個人で判断できる能力が必要なのだ。

たとえば、就職情報を探すときにGoogle検索をする人は少ないだろう。多くの人は求人サイトで探す。これは、求人サイトには就職に関する情報だけがまとめられており、就職したい人にとって見やすいUIになっているからだ。ただし、就職サイトは、会社名や業種、職種で絞ることが多いため、製造している製品名では調べることはできない。また、求人サイトは家など落ち着いた場所でパソコンを利用して検索することが多い。検索カテゴリもしっかりと分類されているため、つい似通った業種や職種を眺めてしまい、発想が狭められてしまう可能性もあるのではないだろうか。

『Economy in Life』は、企業のロゴだけではなく、製品のロゴや製品そのものを会社情報と繋げて認識することができるため、実際に街に出て、どんな商品やサービスがあるのか、といった視点での就職活動も可能となりそうだ。たとえば、家電量販店に行って、製品に触れ、製品へ興味を持ったところで『Economy in Life』をかざす。そこで、製品を作っている会社の情報や採用情報を見ることもできるだろう。

リコノミカル株式会社 代表の鴨林広軌氏

「リコノミカルはあくまでインタフェースに特化している企業です。この世の中には、わかりづらい経済情報があるので、それを視覚化するということをやっています。」(鴨林氏)

もちろん、投資家に向けたサービスも展開予定だ。冒頭で紹介した、日本経済新聞の証券欄の視覚化である。証券欄は数字だけ見てもわかりづらいため、グラフでの可視化を図った。また、投資家の方はディスプレイを複数使用して株価情報を確認するが、マイクロソフトのHoloLensを使用すれば、空中で自分の好きな位置に画面を配置することも可能である。また、ディスプレイがなくても情報を確認することができる。

同社と共同で開発を行っている株式会社アストロテックは、AR/MR/VRのビジネスを行っており、医療系のMRの開発を行っていた。そのような知見と、鴨林氏のファンドマネージャー時代の経験、GREEでのゲームでの経験をベースにし、このようなサービスを作り上げた。

未来の就職活動は、スマホの代わりに、スマートグラスが必須になるかもしれない

HoloLensなどのスマートグラスが一般化し、低価格化が進めばこんな未来も予想できる。

「たとえば、就職フェア。新卒の学生たちがスマートグラス越しに企業のロゴを見れば、その企業の詳細の情報を見ることができる。
有価証券報告書に記載されている年収や売上高なども一覧化されるのはもちろん、企業によって見てほしい情報も異なると思うので、企業がアピールしたい情報をスマートグラスで閲覧できるようにするのもよいですね。
また、学生たちが、簡単な意思表示をするツールとしても使える可能性もあります。“興味がある”、“応募したい”など、意思表示ができれば企業としてもデータが集められると思います。」(鴨林氏)

これまでは企業のHPからIR情報→有価証券報告書でPDFを閲覧する必要があり、しかもPDFのページ数も多く、慣れていないと読み解くのも一苦労である。今まで企業研究にかけていた時間が少なくなる可能性もありそうだ。

就職活動以外にも、こんな使い方もできる。

「商品やロゴを見ただけで付加情報がわかると嬉しいと思う。たとえば、スーパーで並ぶ食品にかざすと、トレーサビリティ情報が動画で見ることができたら面白い。」(鴨林氏)

経済情報と同じく、商品(特に食品)に存在している付加情報を真剣に調べる時間を確保するのは難しい。ただ、食品なので安心して食べたい、というニーズはあるはずなので、調べやすい、見やすい状態にしておくのが重要となりそうだ。

“金融”に対するポジティブなイメージを確立したい

また、金融でARという事例はあまり聞いたことがないので、その背景についても聞いてみた。

「金融の現場はビジネスの特徴から、安定した技術を選択するケースが多いかと思います。一方でARは枯れたお堅い技術ではない。また、金融とAR両方に興味がある人材が少なく、サービスが確立しづらいのではないでしょうか。」(鴨林氏)

事実、金融の方に同社の技術を話すと珍しいと言われることも多いそうだ。
金融はすべての人に関わるジャンルであるにも関わらず、日本においては娯楽要素が少ない。たとえば、金融をテーマにしたゲーム、特に投資が絡むようなゲームはあまり見られない。ドラマや漫画なども金融をテーマにしたものはあるが、取り立て屋、借金といったテーマが多く、金融をポジティブに捉えた物語はあまり多くはないのではないだろうか。実は、金融は身近なようで、日常の中にあまり入ってこないのだ。そういった文化的な側面も強いのではないか。ARはエンターテインメント性が高いイメージもあることから、金融との組み合わせは意外性を感じるのかもしれない。

ARのイメージ

そして、ARを使用するからこその課題もある。

「ARはかざすのが面倒…ということです。ただ、ポケモンGOは世界中の多くの人がプレイをして大ヒットした。継続的にアプリを開くきっかけを作ることを考えています。」(鴨林氏)

金融の“お堅い”というイメージから脱却し、ある程度カジュアルに続けたいと思えるようなコンテンツを作ることで、かざす手間を少しでも低減できるようにしていきたいと語っていた。

同社は、プレスリリースの中でこう述べている。

「日本は、長期に渡るデフレ経済を経験し、日銀のマイナス金利政策も継続される中、若年層や中高年層の中で、IT・情報リテラシーと金融リテラシーのギャップ(格差)が加速度的に広がっています。これは将来的に、格差の固定化と、貧困の拡大をもたらすリスクがあります」

経済情報は身近なようで身近ではない。これは投資の専門家として多くの企業情報に携わってきた鴨林氏だからこその気づきであり、一見相性が良いとは思えない金融とARを掛け合わせるという新たなチャレンジで経済情報を可視化し、身近なものに感じられるサービスを開発している。専門的な投資家のみならず、金融には無縁だった一般ユーザーも、IT・情報、金融リテラシーのギャップに支配されず、経済情報を直感的に読みこなし投資に参加できるような、新しい金融の未来を大きく手繰り寄せたといえるのではないだろうか。

取材・文:池田 優里

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