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AI(人工知能)に、“コンテンツ”を作ることはできるのか~SNSのタグ付けもAIが提案?[AI最新事例・セミナーレポート]

※ この記事は 2017年07月14日に DX LEADERS に掲載されたものです。

AI(人工知能)に、“コンテンツ”を作ることはできるのか。“産学連携”で研究とビジネスを進めるポイントとは何か。そして、“自動運転技術”のゆく先とは?

人工知能やビッグデータを活用することで、どんなビジネスが生まれるのか。テクノブレーン株式会社主催「人工知能とビジネスとソフトウェア開発 -データの有効活用と具体的事例-」セミナーから、人工知能開発の最前線をレポートする。

【1】人工知能の力で魅力ある“コンテンツ”作りを

魅力のある“コンテンツ”とは、何か。そもそも、“魅力”とは何か。

人間の感性に左右されやすい“魅力”という概念を、人工知能で解析したのは、東京大学大学院 情報理工学系研究科 准教授の山崎俊彦氏。同氏が主宰する東京大学・山崎研究室では深層学習、機械学習、統計処理、グラフ信号処理などを用いて“魅力”の解析を行っている。

東京大学大学院 情報理工学系研究科 准教授 山崎俊彦氏

「私は、匠の技、というのが学生のころから大好きなのです。」と、山崎氏。

「たとえば、このファッションをもっとファッショナブルに、といっても、経験と勘とセンスを持ったファッションコーディネーターでないとできない、と思われますよね。自分でも“あれが好き”、“これが好き”と自分の好き嫌いはわかるけど、それを定量化したり、解析したりとなると“ヒト”でないとできないでしょ、と思うのではないかと。」(山崎氏)

確かに、ファッションコーディネーターの勘やセンスは“匠の技”であり、匠の技は、感性を持つ“ヒト”でないとできないものだと思いがちではないだろか。人の感性の世界は、ビッグデータやIoTの世界とは別のところにあり、それを解析するなどということは不可能なことだと思うのだ。

この一見不可能かと思ってしまう“魅力”の解析に、山崎氏は挑戦している。“魅力”をパターン認識、機械学習、画像認識を使って定量化、予測、解析・理由説明そして強化するという研究だ。

具体的なビジネスへの応用範囲としては、以下のようなテーマが想定されている。

  • 刺さるプレゼンテーション
  • 刺さるCM
  • ドラマの視聴率を上げるには
  • SNSでの人気度予測
  • 人材マッチング
  • 婚活
  • 不動産やファッションの推薦など

今回セミナーでは、TVCMとSNSについて絞っての講演となった。

より認知率が高まるCMの作り方

「CMの広告費用を決める要素であるGRP(Gross Rating Point)と、一般の人がそのCMを覚えているかという「認知率」の相関は、たったの0.31。この数字は、数学的には相関関係がないと言われてしまう数字なのです」(山崎氏)

GRPとは、のべ視聴率(CM視聴率×広告を打つ回数)で計算される。長年CMの広告費用の算出に使われている指標だ。一方で、認知率とは、「CMを見た」「見た気がする」といった、どれだけ覚えられているかという認知の割合である。相関の低さから、たくさんCMを打てば視聴者に覚えてもらえるとは限らないということがわかる。

ここで山崎氏は、CMの1秒ごとのフレームに区切った動画情報と、予めアンケートにて取得してあるCMの認知率をディープラーニングに読み込ませることを行い、フレームごとに認知寄与度を算出する取り組みを行った。

具体例として、車のCMを例に挙げよう。以下の構成でフレームが存在するとする。

  • 停まっている車
  • 道路の映像
  • 運転手と助手席の人が笑顔で会話
  • 車の疾走シーン

この中で、笑顔で会話しているシーンの認知度への寄与率が高いということがわかれば、そういったシーンを使うことで魅力あるCMを作るためのヒントになる、ということである。

この取り組みを行うことで、相関係数が上述のGRPとの相関係数0.31から、0.46へと0.15スコアが高くなる結果となった。少なくともGRPを使うより、ディープラーニングを用いたほうが認知率をより正しく予測できることになる。

さらに、年代や性別などの属性別にCMを憶えている理由を可視化するためのアンケート調査を行うと、商品のターゲットに応じたCM制作が可能になり、認知率の予測精度はさらに高くなる。また、CM制作の際は、ABテストにかなり多くのコストが掛けられているが、ディープラーニングに認知率を算出してもらえばよいので、ABテストのコストも削減できるとのこと。

SNSのタグ付けもAIが提案。魅力あるコンテンツに変わる可能性も

「SNSではタグ付け一つで、コンテンツの人気が大きく変わります。」

山崎氏は、以下の画像をスクリーンに投影した。

外国人がタバコを吸っているモノクロ写真
引用元:Homeless break | Lisbon, Portugal | Pedro Ribeiro Simões | Flickr

「この画像で、2パターンタグ付けのパターンがありますが、みなさんだったらどちらを付けますか? パターン1は、白黒写真を意味する“bw(black and white)”, ポルトガルで撮影された写真なので“Portugal”。パターン2は、“bw(black and white)”と、“”smoking”」

どちらのタグをつけるか、会場での挙手による投票では、ほぼ同数。
「そうですよね、どういうタグをつけたらいいかと判断するのは難しいです。」と山崎氏。
実際にSNSに4日間アップロードしたあとのView数はパターン1のタグの場合が8、パターン2は30という結果だったそうだ。数として4倍近くも違う。タグ付け一つで印象が変わることがよくわかる事例である。

山崎氏の研究では、新しいタグのランキング手法を用いてソーシャルネットワークのタグの重要度の高さを計算し、関連する単語をタグとして推薦することができる。

実際に1000枚の画像を、Flickrにアップロードして実験をしたところ、人間が考えてタグ付けした閲覧数と、人工知能によってタグ付けした閲覧数に2倍ほどの差があったそうだ。タグも画像と関係のないスパム的なタグではなく、画像の内容と適合しているタグを与えての結果となっている。

東京大学大学院 情報理工学系研究科 准教授 山崎俊彦氏

最後に、山崎氏は人工知能がクリエイティブなコンテンツを作れるかどうかについて語った。
「クリエイティブな分野においては、人工知能にとって代わられることはまだないと思います。」
たとえば、人工知能にゴッホ風の絵を覚えこませれば、ゴッホ風の絵は描ける。しかし、誰も見たことがない、かつ人を感動させられるアートを描くことは現時点ではできない。

「人間の主観を再現することはできます。先に述べたように、CMのABテストのようなものは人工知能の得意技です。人間がやらなくてもいいルーチンワークはAIにやってもらって、クリエイティブなところに人間の知恵を使い、人間がやっていてHappyなところだけできるようになるのでは、と考えています。」

そして、人工知能の可能性として、匠の技と呼ばれるスキルやコツ、人間の感情や記憶をパターン認識などで明らかにしていきたいと結んだ。

【2】ブランディング広告におけるユーザの忘却を加味した入札戦略

企業活動をしながら大学などの研究機関とどう連携をするか。最先端の研究成果を、ビジネスの成果につなげるための産学連携の現場から、株式会社サイバーエージェント アドテク本部 AI Studio AI Labの馬場惇氏が理化学研究所との産学連携の取り組みについて最新事例が紹介された。

昨今は、広告マーケティングのデジタルシフトが進んでおり、ブランディングを目的としたWeb広告の需要が高まっている。ただ、人間というのは忘れる生き物だ。馬場氏は、この「忘却」に着目した。

株式会社サイバーエージェント アドテク本部 AI Studio AI Lab 馬場惇氏

「忘却」に備える広告配信

インターネット広告は、ユーザがWebサイトに訪れるとユーザ属性に合わせてリアルタイムに広告のオークションが行われ、一番入札額が高い広告が表示される仕組みになっている。

「広告を見せた後のユーザの忘却を加味して、どう入札戦略に入れるか、というのを研究していました。
従来の広告配信は、見る→クリックする→購入する、というのがゴールでしたが、ブランディング広告は、見る→知る・イメージする→来店する、という指標がゴールです。」

そして、来店までの時間、どれだけの人が覚えているか、というところに着目。
これまでは、ある一定期間まで覚えられると仮定した広告の仕組みを作っていたが、忘却の概念を入れることにより、忘れたころにもう一回見せるというのを繰り返すと、“知る”・“イメージする”の指標が向上できるのではないかという仮説のもと、検証を行っている。

会場からも「忘却を加味した取り組みは、イベント運営において、イベントまでに参加希望の人たちのモチベーションを下げないための仕組みとして応用できそう」という声もあった。インターネット広告以外にも応用ができそうだ。

株式会社サイバーエージェント アドテク本部 AI Studio AI Lab 馬場惇氏

バランスを取るためのコーディネータ的な役割が必要

今回の研究は産学連携ということで、普段のビジネスとは異なるアプローチで進めていたそうだ。

「今回は、今あるデータでやれるところまでやり、まずは論文化するというのを先に持ってきました。トップカンファレンスの論文として採択されれば、それが実用性のファクトとなり、プロダクトの中に入り込めて、今はないデータも並行して作ることがやりやすくなるからです。」(馬場氏)

データを待っていたら論文の採択が遅れるため、どれだけ忘却するかという確かなデータは手に入らなくても忘却確率の分布を仮定する。仮定した分布のパラメータを調整してもうまく問題が解けることを示す、という形で進めていったそうだ。

産学連携での研究とプロダクト開発とのバランスのとり方の工夫として同社では、論文化を優先して行い、並行してプロダクトに新規データを作ってもらうという取り組みを行っていた。アカデミック側の知見やアルゴリズムも欲しい一方で、早くビジネスに活かしたいというプロダクト側の要望をかなえるためにも、可能であれば両者の間に立ち、責任をもって回すコーディネータがいるとやりやすくなる、と加えていた。

【3】自動運転技術を牽引するデンソーの取り組み

今回のセミナーを締めくくったのは、これまでの世界観とはガラリと変わり、自動運転の実現に向けてAI技術を実用化する研究プロジェクトを開始した株式会社デンソー 技術企画部 先端研究部 岩崎 弘利氏だ。

「今までの話は、バーチャル・Webの世界の話でしたけど、リアルな世界の自動車の分野で、AIはどのように取り組んでいるかをご理解いただけたらいいかなと思います。」(岩崎氏)

株式会社デンソー 技術企画部 先端研究部 岩崎 弘利氏

車は維持するものから、シェアするものに

同社は、「世界の命を、技術で守りたい」と提言している通り、AIは安心安全を実現するものと位置付けている。安全にも、「いつもの安全・もしもの安心」の二種類あると定義づけている。

「もしもの安心いうのは、事故の時の被害を軽減するということです。衝突時の乗員保護・自動ブレーキ・エアバッグがそれに相当します。いつもの安全というのは、事故が起こる前のヒヤリハットをなくす。具体的には危険を予知したときに警報を出すとか、ドライバーが疲れていると検知したときに運転を代行するということです。」(岩崎氏)

では、同社はどういった未来を考えているのだろうか。自動運転車が普及した将来、車を取り巻くライフスタイルは大きく変わっており、車は所有するものからシェアして利用するものになっている、と予測している。つまりは、「所有する喜びから、選択できる喜びへ」。

用途に応じて、車を選択することも可能だ。ファミリーでレジャーに行きたいときは、ワンボックスカーで。記念日に、夫婦だけでラグジュアリーに過ごしたいときはスポーツカー…などという選択もできそうだ。車を所有していたころは、車を購入し、維持していくために多くの費用が掛かっていたが、シェアカーを利用すれば、維持費などはかからず、車の利用料を払うだけで済む。

そして、自動運転のシェアカーが普及すれば、行き先でも車を借りることができるため、駐車場の必要がなくなり、観光地は自然あふれるきれいで気持ちの良い場所になっている―。同社は、このような社会になることを構想しながら、自動運転にまつわる技術を開発している。

3年前より遥かに進化しているセンシング技術

自動運転を違和感なく実現するためには、人の能力を超えるセンシング技術が必要になる。人間は、歩行者が交差点で信号待ちをしているのか、渡ろうとしているのかを判断する際は、信号が赤になっているかどうかで判断することができる。また、歩道がない道路でふらついていたり、歩きスマホをしている歩行者がいたりすれば、人間は「この歩行者は危ない」と危機管理ができるものだ。

このような技術を目指して同社は、3年前、自動運転技術が巷で話題になり始めたころにディープラーニングを使った同社のセンシング技術をいち早く発表した。そのとき会場はため息交じりの不思議な雰囲気になり、最後は盛大な拍手に包まれたそうだ。ただ、3年経った今は多くの研究機関が盛んに研究を進めており、関連の技術はさらに進歩している。同社は同種の研究を進め、学習において必要な大量のデータを整備するとともに、スーパーコンピュータを用いて非同期で分散させて学習する技術開発に成功し、数十倍に高速化させたのだという。

IoTを活用して提供する4つの価値

同社は、IoT技術を用いて、協調、視覚化、予測、成長という4つの柱で提供を提供したいと考えてい る。協調とは複数のモビリティーをつないで移動の効率化、安全な運転の支援を実現すること、視覚化とは運行管理状況の見える化により、輸送の効率化、乗員の安全を図ること、予測とは自動車をクラウドにつないでビッグデータからの故障予測などにより効率的なメンテナンスを実現すること、成長とは販売後の自動車の機能を安全にアップデートすることを目指している。

同社は、自動運転技術の将来像を見据えつつ、それを実現するためにAIやIoTの技術を利用しているのだが、車載化の技術や品質保証の技術など足元の基礎的な計算技術にまで工夫を凝らし、より早く・より良い機能・品質の製品、サービスを実現しようとしている。

セミナーの様子

今回のセミナーでは、各セッションの質問タイムでは会場から多くの質問・意見が飛び交い、活気のある場となった。人工知能を活用することで様々なジャンルにおいて人々の生活をより便利にすることは間違いなさそうだ。最新の人工知能技術をより良い方向に活かすのは人間であり、人工知能によってより良い未来を拓くというビジョンをもって、我々は着実に一歩ずつ前進している。

取材・文:池田 優里

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