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【インタビュー】みずほフィナンシャルグループが見据えるフィンテック時代の戦略と日本社会の未来とは?

※ この記事は 2018年03月23日に DX LEADERS に掲載されたものです。

株式会社Blue Lab CTO 大久保光伸氏

2018年に施行が予定されている改正銀行法。銀行にオープンAPIの努力義務が課され、これによりフィンテック企業と金融機関のコラボレーションがより促進することが期待されている。

そんな中、日本のメガバンクグループの一つ、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)でもオープンAPIをはじめ、フィンテック分野への参入を加速させている。その先に描く青写真を含め、今回はみずほFGのフィンテック企業・株式会社Blue LabでCTOを務める大久保光伸氏(以下、大久保氏)にお話をうかがった。

メガバンク初の更新系API公開!フィンテック推進に注力するみずほFG

みずほFGは、銀行業務のデジタル化、そしてフィンテックで先進的な取り組みを行なっている。その成果が認められ、企業情報化協会より平成29年度の総合賞を受賞した。このデジタル化の推進には、大久保氏が大きな役割を果たしている。

「私のミッションの一つに、みずほFGのプレゼンス向上があります。金融業界の専門誌に最新のフィンテックのビジネスモデルなどについて寄稿したり、昨年はCIOが参加されるようなIT関連のイベントで情報発信を数多く行なってきました。そうすることで、金融業界とその他の業界のクロスインダストリーが実現します。また、みずほFGが力を入れているオープンAPIの市場開拓も進めています」

みずほFGが特に力を入れているオープンAPI。「メガバンクでは初」(大久保氏)となる“更新系API”を2017年10月にリリースした。株式会社ネストエッグがサービス展開中の自動貯金アプリ「finbee」との連携も実現している。finbeeでは、貯金の目的や目標金額、貯金の積み立てルールを設定することで、ユーザーのライフスタイルに合わせて貯蓄をサポートするサービスとなっている。このfinbeeとみずほ銀行の口座がシームレスにつなげる上で、更新系APIが必要不可欠だ。

APIには参照系と更新系の2種類があるが、システムに保存されているデータの書き換えを行う更新系APIの公開には、セキュリティリスクなどを踏まえて慎重な動きが目立つ。その中で、みずほFGが更新系APIをリリースしたのはどのような理由があるのだろうか。

迫り来る「GAFA」の脅威と金融業務のアンバンドリング化への危機感

みずほFGが抱える危機感。そこには、金融業界に革新を起こすかもしれないテック系企業の存在がある。
Google、Amazon、Facebook、Apple。これらの頭文字をとった「GAFA」が、さまざまな業界に大きな変革を起こしつつある。そして、この変革の波は金融業界にも迫りつつある。また、中国ではアリババ(Alibaba)などが顧客ニーズにマッチした金融サービスをピンポイントで提供している。

「このようなIT企業の進出によって、従来の金融業務はどんどんアンバンドリング化が進むでしょう。また、参入する企業はIT企業だけではないかもしれません。実店舗でATMサービスを提供しているコンビニ業界などが一気に市場を獲りにくる可能性もあります」
大久保氏は、金融機関が持つ危機感に対してこのように言及する。銀行の収入源の一つであった決済業務などは、このアンバンドリング化が進行することで、IT企業など他の企業に取って替わる可能性もある。

「金融機関は自らが積極的にITテクノロジーを活用して新たな金融サービスを創出して、金融業務のリバンドリング化を進める必要があるのではないでしょうか。金融機関として危機感を持って、グループ全体で課題解決に取り組んでいます」と大久保氏は語る。

その取り組みの一つとして、みずほFGでは、WiL LLC.と共同でフィンテックを推進する担い手として株式会社Blue Labを設立。新たな技術の活用を進めることで、革新的なサービスの展開を見据えている。

AIレンディング、API連携、liquid決済、みずほFGエコシステムで育まれるFinTechサービス

それでは、みずほFG内ではどのようなサービスが創出されているのだろうか。
まず、代表的なサービスとして、昨年ソフトバンクと合弁で立ち上げた「J.Score」がある。ネット上で提示された質問に任意で回答して情報提供することで、それをもとにAIがスコアを算出し、スコアに基づいて融資をするというAI・スコアレンディングのサービスだ。
「質問に多く答えていただくと、スコアが良くなるようなインセンティブを設けている」(大久保氏)というこのサービスは、駅構内などで宣伝されていたため、印象に残っている人も多いのではないだろうか。

「ソフトバンクさんには携帯電話の契約情報を用いて、金融ビジネスできないかというニーズがあったものの、口座情報などとの連携に課題を抱えていました。そこで、みずほFGがこの部分を埋めるべく、両社でサービスをローンチすることになりました。これにより、オープンイノベーションの一例として、リファレンスモデルができました」(大久保氏)

また、他サービスとの連携も着々と進めている。メッセンジャーアプリ・LINEで残高照会をできるようにしたり、クラウド会計サービスを提供しているマネーフォワードのアプリと連携して、給与口座への振り込みをワンクリックで可能にするなどサービスの利便性向上を実現している。
しかし、APIの活用はまだまだこれからのようだ。
「APIの活用が進めば、街中にある自動販売機などで引き出しや振り込みなどができる『スマートATM』が実現するかもしれません」
大久保氏が語る展望は非常に大きい。
さらに、みずほFGは注力しているIoTを活用した新たな決済サービスの拡充にも着手している。それが、指紋認証により決済を実現する「Liquid Pay」だ。「お財布やスマートフォンを持ち運ぶことなく、いつでも決済が可能になる」(大久保氏)というこのサービスは、今後私たちの生活により浸透する可能性がある。

みずほFGだから見抜ける「サーキュラー・エコノミー」の実現性

IoTを活用した決済サービスの先にあるもの。
その一つとして「サーキュラー・エコノミー」の実現を大久保氏が挙げている。「こういうことを一番やりたい」と大久保氏が語るサーキュラー・エコノミーは、どのようなエコシステムなのだろうか。

「あらゆるモノやサービスを最大限に活用して、その価値を目減りさせることなく、永続的に再生・再利用できるビジネスモデルのことをいいます。シェアエコノミーで代表的な民泊やカーシェアリングなどはこのサーキュラー・エコノミーに含まれます」

みずほFGは、ビープラッツ株式会社と共同で、サーキュラー・エコノミーで利用される決済プラットホームの研究開発を行うことを発表している。みずほFGが持つIoT決済のノウハウと、ビープラッツが持つサブスクリプションサービスのノウハウを融合させることで、強固なセキュリティを備えた従量課金モデルの構築を目指している。先ほど例に挙げたLiquid Pay などの技術がこのような場面で用いられるかもしれない。

このサーキュラー・エコノミーに目をつけられたのは、みずほFGの技術力だけでなく、高いリサーチ力を持つみずほの産業調査部の存在も大きいという。
「産業調査部は、各業界の現状や今後のトレンドなどを詳細に調査・分析しています。一個人でサーキュラー・エコノミーのような大きな枠組みに対して、社会的ニーズがあるかどうか調査するのは容易ではありません。産業調査部のようなリサーチ&コンサルティングができる組織を持つみずほFGだから挑戦できることだと思います」

みずほFGのフィンテック戦略は、金融だけにとどまらず、社会全体を巻き込んで変革を起こそうとしているようだ。

フィンテックが広まった先にある日本の未来とは

これまでお伝えしてきた取り組み以外にも、みずほFGではフィンテックに関する戦略を積極的に推進している。
その一翼を担うBlue Labは、みずほFGのフィンテック戦略を牽引する役割として大きな期待が寄せられている。革新的なサービスを生み出すべく、オープンイノベーションへの取り組みが行われ、東京・港区の愛宕ヒルズ40階にあるオフィスフロアには、提携企業が訪れやすいようオープンスペースも設けられている。
また、フロア内にあるBlue Labのオフィスは、IT企業のように明るくオープンなスペースになっている。従来の枠組みにとらわれず、イノベーションの発信地として、日本のフィンテックのみならず社会も大きく変えていくかもしれない。

オープンスペースの広がるオフィス

オープンスペースの広がるオフィス

最後に、大久保氏に革新的な金融サービスが展開された先にある未来についてうかがった。「あくまで個人的な見解」と前置きした上で、大久保氏は以下のように語った。
「金融サービスの民主化や利便性向上などにより、個人で実現できることが広がることでしょう。これにより、今まで以上に『個』が活躍する時代が到来するのではないでしょうか。日本の技術力によって、世界中すべての人たちがもっと輝ける未来になればと願っています。そんな時代になることをイメージしながら、いろんなサービスを生み出していきます」

取材・文:山田 雄一朗

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