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【インタビュー】地上150メートルの空域を開拓!楽天ドローンが目指す物流革命(楽天株式会社)

※ この記事は 2018年01月18日に DX LEADERS に掲載されたものです。

空撮の新時代を切り拓いてきたドローン。航空写真をはじめ農地調査や建設現場管理、災害救助活動などに導入され、機能性も著しく向上している。近頃は、空撮以外の商用利用も活発化。なかでも、今後の市場の広がりに期待が寄せられているのが、物流の分野だ。

今回注目したのは、日本発の一般消費者向けドローン配送サービスを開始した「楽天ドローン」。すでにゴルフ場などで宅配利用が進められている。2017年10月31日からはローソンと共同で、福島県南相馬市で商品配送の試験運用をスタート。さらに、12月22日に包括連携協定を締結した、中山間地域にあたる広島県神石高原町とは、農産物などを輸送する構想を明らかにした。

拡大を予感させるドローン物流の現在地、そして近い将来実現するであろう物流の新機軸について、楽天株式会社でドローン事業を統括する向井秀明氏に聞く。

物流専用に改良を重ねたドローン。ミッションは「人間の生活をより便利に」

楽天株式会社 向井 秀明 氏

ドローン配送事業は、革新的なアプローチと位置づけてスタートさせたと話す向井氏。

「ドローンが飛行できる地上150メートル以下の空域は、まだ人類が開拓していないエリアです。より上空には飛行機、地上にはトラックが行き交っていて、大混雑しているにも関わらず、その中間にあたる空域というのは全く使われていない。それであれば、この空域を有効活用して、人間の生活をより便利にしようと考えました。」

物流の新しいかたちを確立させるという大きなミッションのもと、3つの軸にひもづく事業を進めている。

「一つ目は、『新たな利便性の提供』として、2016年5月からゴルフ場で、ゴルファーの方に向けたドローン配送を実施しています。広大なゴルフ場において、欲しいものが空からすぐ手元に届くという新しいショッピング体験になります。二つ目は、『買い物弱者支援』です。現在ローソンとの取り組みを進めており、南相馬市の過疎地で買い物に足を運びにくい高齢者の方に物をお届けしています。三つ目は、『災害時のインフラ』。もし道路が分断されて物資が届かない事態が起きたとき、ドローン配送が活用できるのではないかと考えています。」

機体は、楽天が出資しているドローンメーカー・株式会社自律制御システム研究所のプラットフォーム機を使用。物流向けの機体として、荷物を保持するキャッチャーや自動でリリースする機能など、必要な要素を共同開発しながら進化させた。さらに、正確な地点に配送するため、指定の座標から1メートルから2メートル程度の誤差で着陸する必要があるため、画像認識技術もブラッシュアップしたという。

たとえば、ゴルフ場の場合、クラブハウス近くにある空きスペースから離陸させ、コース内の配送先に設置した「R」マークを読み取り、着地するように設定している。

また、南相馬市におけるローソンとの取り組みでは、店舗から公民館や集落センターを訪れて販売する移動販売車を届け先として飛行することになる。買い物客が、販売車になく店舗にある商品を配送スタッフにリクエストすると、店舗から現場まで商品が約7分の飛行で届く仕組みだ。これまで移動販売車では積み込めなかったホットフーズも届けられるようになった。この取り組みについては、3月末まで毎週1回実施する予定だという。

ドローンのインフラ整備における壁は「規制」と「機体」

機体やサービスの改良も重ねながら、試験運用を進めている楽天ドローンだが、本格的な実用化を目指すうえでは障壁も少なくない。

「一番大きな部分は規制です。『人の頭上で飛ばしてはいけない』ということで、ルートもかなり制限されます。ニーズがあるルートが人の上を避けて飛ばせるかというと難しいので、そこは課題かなと思います。ただ、規制だけの問題だけではありません。ドローンの機体性能も、まだまだアップデートしていかなくてはいけないと考えています。少なくともセスナ機と同レベルでの安全性を証明することができれば、人の上でも自由に飛ばしても安心できると思います。規制そして安全性、この2つは早急に対応するべき項目です。」

政府は成長戦略の一環として、ドローンによる荷物配送を2018年までに山間部で実施し、2020年代には都市部での配送を本格化させる目標を掲げている。しかし、現行の規制では、操縦者の目の届かない範囲の飛行は、国交省の事前承認や、操縦者のほかに補助者による安全確認も必要とされ、かなり厳しく制限されている。

こうした規制を緩和する動きは活発になっており、経済産業省と国土交通省は機体の性能評価基準策定や、民間団体による認証制度の整備も含めた検討会を実施している。

ちなみに、米国では2017年10月25日にドローンの迅速なテスト実施と利用拡大を促す、大統領令が発せられた。これにより、現在米国でも制限されている、人の頭上での飛行や夜間飛行、長距離飛行、荷物を搭載した飛行などに風穴をあけることが予想される。

ドローン物流でビジネスはこう変わる

機体だけではなく、ドローン宅配向けのショッピングアプリも開発。アプリで欲しいものを選ぶと、決められた受取所までドローンが商品を配達することが可能になる。直感的かつ使いやすい仕組みだ。ドローン配送が普及したとき、コンシューマーの購買行動も変化が予想されるという。

「都市部を飛べるようになったらという前提ですが、究極のオンデマンドデリバリーを実現したいと考えています。それはどんな世界観かと言うと、たとえばストックで洗剤を2つ購入している人がいたとして、ドローンに頼めば15分後に絶対届くと分かっていれば、ストックを控える人が増えるはずです。個人消費者の“shopping behavior(買い物行動)”が変わっていくだろうと予想しています。」

また、事業者側の在庫の概念を変えることにつながると想定しているそうだ。

「たとえば、都心の一等地に商店を抱えている事業者がいたとします。そのスペースの半分は在庫を保管する倉庫だったとすれば、もしかしたら店舗のスペースを無駄にしていることも考えられます。そこで、たとえば商品が財布だったとして、近くにある自社倉庫からドローンで配送されるようになれば、店舗は完全に接客スペースとして有効活用していただけるのではないでしょうか。オンデマンド物流ができることで、倉庫立地の概念も変わっていくと思います。いわゆる B to B における在庫の概念も変わってくる、商業的にもすごくインパクトがあると思っています。」

楽天株式会社 向井 秀明 氏

事業者が楽天ドローンを活用する場合、月額利用料を支払えば機体のレンタルと物流インフラの提供を受けることができるといったビジネス展開も視野に入れているという。ちなみに、安全なオペレーションに必要な機能や情報を管理できる専用アプリケーション「ドローンダッシュボード」も開発済みだ。

「スモールビジネスを手掛ける商店主の方に、ドローンをどのように利用いただくかは、これから練っていかなくてはいけないと考えています。ただ、気軽に誰でも使えるフレンドリーなドローンサービスを提供したいという思いは持ち続けているので、操作性と機体の取り扱い方法については、具体的なサービス内容に落とし込んでいく必要があります。」

本格的な運用までクリアにするべき項目は多々あるが、楽天ドローンが物流業界に本格参入することで、従来の配送のあり方が変容することは確かだろう。150メートル上空の“空の道”がこれからどう整備されていくのか、楽天の動向とあわせて注目していきたい。

取材・文:末吉 陽子

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