流通・消費財 Archives - マイクロソフト業界別の記事 http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/retail/ Tue, 30 Jul 2024 11:06:30 +0000 en-US hourly 1 Retail Open Lab「AI 時代の流通業会のプラクティスと新たな展望」開催レポート  http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/retail/2024/07/30/retail-open-lab-2024/ Tue, 30 Jul 2024 11:06:26 +0000 流通業界のお客さまやパートナー企業さまと伴走し、流通業の皆さまとともに DX  の推進を加速するために企画された 「Microsoft Retail Open Lab」。過去二回にわたって生成  AI  についてのさまざまな情報をお届けし、議論を深めてきましたが、6 月 21 日(金)の第三回でいよいよ最終回を迎えました。 

過去二回のテーマはそれぞれ「知る」「行う」。今回は「伝える」をテーマとして、生成 AI の活用実例や成功に導くための取り組みの紹介に焦点をあてて開催。業界向けパートナーソリューションや Microsoft技術の最新動向についてのセッションも組み込まれ、盛りだくさんの内容となりました。本稿ではその模様をレポートします。

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流通業界のお客さまやパートナー企業さまと伴走し、流通業の皆さまとともに DX  の推進を加速するために企画された 「Microsoft Retail Open Lab」。過去二回にわたって生成  AI  についてのさまざまな情報をお届けし、議論を深めてきましたが、6 月 21 日(金)の第三回でいよいよ最終回を迎えました。 

過去二回のテーマはそれぞれ「知る」「行う」。今回は「伝える」をテーマとして、生成 AI の活用実例や成功に導くための取り組みの紹介に焦点をあてて開催。業界向けパートナーソリューションや Microsoft技術の最新動向についてのセッションも組み込まれ、盛りだくさんの内容となりました。本稿ではその模様をレポートします。 


基調講演 

「生成 AI と流通・小売業の未来」 

a man speaking into a microphone

株式会社セブン & アイ ・ ホールディングス 
グループ DX 本部 デジタル イノベーション部 シニア オフィサー 
伏見 一茂 氏 

a person speaking into a microphone

日本マイクロソフト株式会社 
執行役員 常務エンタープライズ サービス事業本部長 
三上 智子 

基調講演は、セブン & アイ ・ ホールディングス伏見氏による講演と、伏見氏と日本マイクロソフト三上とのパネル ディスカッションという形式で展開されました。 

伏見氏は講演の冒頭で、同社が掲げる「生成 AI ファースト」というテーマについて説明。これは、既存および新規のすべての業務において、「まず生成 AI を使ってみたらどうなるかを考える」という方針です。 

これまでの DX 推進においては、基本的にシステム担当部署など専門家の力を借りる必要があり、それが障壁となる場合も多かったと伏見氏。生成 AI の登場によって「誰もが独力で DX を進められる時代になった」と、その可能性に大きな期待を寄せていると語ります。 

同社では生成 AI の活用に向けて「人財の育成」「環境の整備」「知見の集積・コミュニティ化」の 3 つの柱を設定しています。なかでも、一般的な資格取得などと比べて習得が早く有効性が高いことから、グループを挙げた生成AI人財育成の取り組みを進めているそうです。 

同社の人材育成施策では、マイクロソフトのエバンジェリスト西脇による生成 AI概論研修と、社内で実施する生成 AI プロンプト研修を組み合わせた独自のプログラムを展開。伏見氏によると、これらの研修によって社内の雰囲気は大きく変わり、受講者の 98 % が「生成 AI の理解が深まった」と回答し、なんと 100 %の 受講者が「自分の業務に生成 AI を活用したい」と答えたといいます。 

また、生成 AI の活用を一過性のブームで終わらせないため、定例会やMicrosoft Teams  のチャットグループ、SharePoint の社内ポータル サイトなどを通してコミュニティ形成と知見の共有にも力を入れています。「取り組みを始めてまだ 1 年も経っていませんが、加速度的に生成 AI の活用が広まっています」と伏見氏。引き続き行われた三上とのパネル ディスカッションにてその具体的な事例が紹介されました。 

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パネル ディスカッションでは、まず三上から経営陣のコミットメントとカルチャーづくりについて質問が投げかけられました。伏見氏は、「小さな事例づくりから始めて、その成果を経営陣にアピールすることで理解を深めていった」と明かします。その背景には、以前からデジタル部門以外でもデジタルを使えるようにするという全社的な方針があったそうです。 

その具体的な例として「DX アンバサダー制度」を挙げる伏見氏。これは各部門から選抜された社員が DX を学び、知識を部門に持ち帰る仕組みです。伏見氏によると、こういった土壌があったからこそ、生成 AI の導入もスムーズに進んだとのことです。 

続いての話題は、マーケティング部門での生成 AI 活用事例について。伏見氏によると、ポップアップ広告のテキストを生成 AI で作成したところ、予想に反してクリック率が下がってしまったものの、「生成 AI ファースト」の方針によって諦めずに改善を重ねた結果、「人間が考えた文言プラス生成 AI が生成した文言」のハイブリッドで最も効果が上がることがわかったそうです。 

三上はこの事例について、生成 AI ファーストの成果であり、かつ「全部を AIがやるのではなく、使いこなすのは人間であって、それをサポートするのが AI」というMicrosoftの「Copilot」の考え方と一致すると評価。ふたりは、人間と AI の協調が重要であるという点で意見を一致させていました。 

続いての話題は人財教育について。三上は、今後は業務における要件定義力や生成 AI との会話力が必要になってくるとし、社内に生成 AI を学ぶ機運を広める重要性を指摘します。伏見氏は、ナレッジの蓄積、モチベーションの維持という観点で、同社では生成 AI コミュニティが重要な働きを示していると返答しました。 

そして伏見氏は、自分が所属する部門における業務課題を理解し、生成 AI の活用の可能性を見出すエバンジェリストの重要性を強調。「生成 AI を使うとこういうことができるんじゃないかという、ある一定の翻訳をしてくれる」人財の育成が、全社的な活用推進に不可欠だと説明しました。 

最後に伏見氏は、楽しみながら生成 AI を活用することの重要性を強調。三上も「生成 AI 活用の持続可能性を高めるためのキーポイントは楽しむこと」と同意して、パネルディスカッションは終了となりました。 

伏見氏は、同社の取り組みはまだ始まったばかりであると述べつつ、「業界を挙げて事例の共有ができれば」と、業界全体での取り組みを推進することへの期待を表明して、基調講演を終了しました。 


業界別 AI 取組紹介 

1. サービス業

「従業員の問題解決をサポートする AI 実現に向けて」 

a man speaking into a microphone

イオンディライト株式会社  
執行役員 IT 責任者 
秋田 圭太 氏 

イオンディライトの秋田氏からは、若手社員のアイデアから生まれた「AI マネージャー」の開発経緯とその意義についての解説が行われました。 

AI マネージャー開発のきっかけとなったのは、Microsoft 365 の導入だったと秋田氏。サイロ化したシステムやセキュリティ対策、ファイル サーバーの一本化など、今後の DX を見据えた大刷新だったと語ります。 

この動きと並行して社内では、若手社員がさまざまなアイデアを創出するプロジェクトも進められていました。そこで発表されたのが、誰もが即時に不明点を解消するための生成 AI の活用企画でした。 

秋田氏によると、「社内の誰に聞けばよいのか分からない」「社内システムのどこに欲しい情報があるかわからない」といった問題を解決するため、「いつでも即座に質問できる環境の整備が必要」という提起があったそうです。 

実はこのとき、日本マイクロソフトのエバンジェリスト西脇による啓蒙に触れた同社 IT 部門のなかで、生成 AI 活用の機運が高まっていたとのこと。秋田氏は「AI マネージャーのアイデアが提案されたタイミングとうまくつながって、スピード感を持った開発を展開できました」と明かします。 

開発は、「現場に 1 日でも早く使ってもらうこと」を最優先事項として、アジャイル型の開発で 3 つのステップに分けて進められました。 

まずステップ 1 では、社内規定や業務マニュアルに基づいた回答をする機能を、着手から 2.5 ヶ 月でリリース。ステップ 2 では業務システムのデータからも回答を導き出せるように機能を拡充し、ステップ 1 で課題となっていた、表形式の資料の回答精度が悪かった点の解決に取り組みました。そしてステップ 3 では、参照データにインターネット上の情報を加えることで利便性の向上を図り、スマートフォンへの最適化も行いました。 

秋田氏によると、AI マネージャーには引用資料が表示される機能があるため情報の正誤を確認可能で、最下部に質問欄が設けることで自然言語による検索方法に馴染むUIが採用されています。さらに、質問数に応じて画面に配された樹木が成長するギミックを搭載。誰にとっても使いやすく、継続的に活用したくなる工夫が施されています。 

導入効果としては、ステップ 1 から 3 にかけて月間の質問回数は 2.3 倍に向上しており、疑問解消にかかる時間は 617 時間の削減が想定されているとのこと。今後は「データが業務を支援してくれる未来」を目指したいと秋田氏。最後に「回答精度を高めていくためにもまずは、生成 AI に気軽に触れられる環境を整備する重要性」を強調してセッションを終了しました。 


2.流通・小売業

「花王のチャレンジ〜生成AIをビジネスに活かすための人財教育と仕組みづくり〜」  

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花王株式会社 
DX戦略部門 DX戦略デザインセンター センター長 
桑原 裕史 氏 

花王は、中期経営計画達成のためのエンジンは「人」であるとして、DX 人財への投資を進めています。その取り組みの一環として同社では、2024 年度から全社向けの DX 教育「DX アドベンチャープログラム」を開始しました。 

このプログラムは 3 つの階層と 5 つのレベルに分かれており、社員のスキルレベルに応じた教育を提供しています。 

「DX 理解者レベル」では、外部のオンライン学習システムを活用して個人のスキル診断に基づく学習プランを提供。その上の「部門 DX 推進者レベル」では、各部門の特性に応じたプログラムを提供しています。そして「全社 DX リーダーレベル」では、プロジェクトベースの学習やOJTなど、より実践的な教育を通じた高度な DX スキルの習得を目指しています。 

また、部門 DX 推進者レベルが対象となる「Kao AI Academy」は、生成 AI 時代に対応する人財育成を目的としています。 

全社員を対象とする「フレンドコース」では、生成AIの基礎知識と ChatGPT の使い方を学び、より高度なマスターコースでは、日本マイクロソフトのサポートのもとでプロンプトエンジニアリングやMicrosoft Copilot の活用方法を学びます。 

特筆すべきは、社長自らがビデオメッセージを通じて AI 技術の重要性と潜在的リスクについて語りかけるなど、トップダウンでの推進を行っている点です。桑原氏は「トップからの巻き込み方がないとなかなかうまくいかない」と、経営層の関与の重要性を強調しました。 

続いて桑原氏は、生成AI活用に向けてデータの整備が必要不可欠になるとの見解を示し、それを使いこなす人財の重要性を改めて強調。現在同社では、データを活用して現場の課題を自ら解決できる「シチズンディベロッパー」の育成に注力しています。 

シチズンディベロッパーは、Microsoft PowerBI や Microsoft PowerApps などのローコードツールを活用して、情報システムの専門家が手をつけにくい、現場の課題に即した解決策を開発する役割を期待されています。彼らが開発した業務アプリは共有サイトを介して社内に展開され、年に 2 回開催される「シチズンディベロッパー EXPO」では優れた事例への表彰も行われているそうです。 

また同社では、2018 年からデータレイクの構築を進め、社内データの統合と活用を推進。「今後は生成 AI を活用することで、さらにさまざまな活用方法を模索できる」と期待を語ります。 

最後に桑原氏は改めて「DX は人」であると強調。社内に DX 人財を増やしてともに DX を進めていくことで中期経営計画の目標を達成したいと語り、セッションを終了しました。 


「ソフトバンクによる生成 AI の取組と導入事例紹介」 

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ソフトバンク株式会社 
法人プロダクト&事業戦略本部 
クラウド技術企画統括部 クラウド技術企画2部 部長 
森 五月 氏 

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アルフレッサ株式会社 
コーポレート本部 経営管理部経営管理グループ
寺野 準也 氏 

本セッションでは、日本マイクロソフトのパートナーであるソフトバンクの生成 AI 関連ソリューションと、同社ソリューションの導入企業であるアルフレッサの取り組みについて語られました。 

まず登壇した森氏は、ソフトバンクでは流通小売業のバリュー チェーンのそれぞれの場面で提供可能なソリューションを展開していることを提示。同社が展開する生成 AI 関連サービスは「人材開発」「データ構造化」「プラットフォーム」の 3 つに分けられ、「ソフトバンクのソリューションの強みは、これらのサービスを統合的に提供できる点にあります」と、包括的なサポート体制を強調しました。 

さらに森氏は実践的な活用例も紹介。日本マイクロソフトと協力して自社のコール センターに最新の生成 AI を導入、対応の質と生産性の向上を図っていることを説明しました。また、アイリス オーヤマでの活用例として、POS データの分析や標準化に生成 AI を活用する取り組みを支援していることを明らかにしました。 

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ここからアルフレッサの寺野氏が登壇。同社における生成 AI 導入の取り組みと、ソフトバンクとのパートナーシップについて解説しました。 

医薬品卸業を展開するアルフレッサは、業務改革プロジェクト(BPR)の一環として生成 AI の導入を決定し、独自の AI アシスタント「Owl-One」を開発しました。 

寺野氏によると、BPR プロジェクトを進める過程で、社内の問い合わせ対応に多大な時間が費やされていることが判明。従来のチャットボットでは回答用データの制限やシナリオ作成の煩雑さなどの課題があり、導入に踏み切れていなかったといいます。 

「ですが、ChatGPT の登場によって潮目が変わりました」と寺野氏。生成 AIを用いた社内問い合わせツールの導入に道が開けたことを示唆します。 

ツールの開発にあたっては「進化のスピードが凄まじい生成 AI の激流に飛び込むよりは、強力なパートナーに伴走してもらったほうがいい」という判断から、ソフトバンクが選定されました。選定理由として寺野氏は、「クローズドでセキュアな環境」「既存グループ ウェアである Microsoft 365 との親和性」「精度向上などの長期的な課題に対する伴走体制」を挙げ、決め手となったのは「ソフトバンクの凄まじい熱量」だったことを明かしました。 

こうして開発された「Owl-One」は、社内情報と一般的な質問の両方に対応可能な AI アシスタントです。導入からの 1ヶ 月間で約 1700 名が利用しており、約 7 割が期待以上の評価をしているとのこと。現在は、回答可能な社内データの範囲拡大や精度の向上を目指して、Azure AI Document Intelligence や ChatGPT-4o の導入などを推進しているそうです。 

寺野氏は、今後は生成 AI の浸透によって企業間の差別化がより困難になるため、人への依存度が高まるはずという予測を示し、「生成 AI によって付加価値を生める人材の育成や企業となり、持続的な成長を目指していきたい」と語って話を締めくくりました。 

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セッションの最後に、数ある生成 AI の活用シーンのなかから、社内問い合わせへの対応に最初に着手した理由を森氏から問われた寺野氏は、「生成 AI を使って何かしなければ、というよりは、課題に対応できるツールとして生成 AI を選んだ」と回答。生成 AI ありきではなく、課題に対してどんなツールを使うかを考えることが重要であることを示唆して、セッションは終了となりました。 


「生成AI時代の流通業DX促進に向けたご支援策」 

a man speaking into a microphone
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マイクロソフトコーポレーション 
リテール&コンシューマグッズ 日本担当 インダストリー アドバイザ 
藤井 創一 

まず藤井は、シンガポールで開催された「NRF 2024 ASIA PACIFIC」の振り返りを行いました。この国際的な流通業界の展示会は、アジアで初めて開催されたという点で大きな注目を集め、日本からも多くの流通業者が参加していたそうです。 

NRF 2024 ASIA PACIFIC はカンファレンスとエキスポで構成されており、エキスポ セクションで印象的だったのはイオンのブースだったとのこと。イオンは「同社が考える2030年の小売業の姿を踏まえて、消費者や従業員の体験を向上するためのテクノロジーを磨いていく」というアプローチを示しており、そこには「アジア地域でビジネスを展開していくにあたっての同社のビジョン」が見られた、と藤井は感想を述べました。 

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またカンファレンスセッションから受けた印象として、多様なアジアの市場を背景に「顧客中心主義」という共通のテーマがあり、そのためのデータ活用、さらには AIの有用性認識、という流れが見られた、と藤井。これはニューヨークで行われた NRF 2024 とも共通するテーマだったと総括し、世界の流通業界におけるデータと AI への注目度の高さを強調しました。 

そして藤井は、マイクロソフトは「Retail Unlocked」をキーメッセージに掲げ、信頼できるデジタル基盤と価値の提供を通して流通業を支えていくという姿勢をアピール。その取り組みの成果として、Walmartとの生成AIでの協力関係、顧客体験向上アプリと従業員の業務効率化アプリを紹介、さらにアジアにおける生成 AI 活用事例として Lazada と Myntra の生成 AI によるカンバセーショナルなオンライン顧客体験革新事例を紹介しました。 

藤井は各国市場特性によって多少の違いは見られるものの、社内 DX 以外のコア事業領域で、生成 AIが活用され始めていると分析。昨年の第 4 四半期から今年の第 1 四半期で、アジア圏流通業での生成AI採用企業は 60 % を超えており、ユース ケース検討数も200%増加し、過去にないすスピードで採用や検討が加速しているというデータを示しました。

続いて藤井は、Microsoft の一部の最新技術動向を紹介しました。5月に開催されたMicrosoft Build 2024 において、マイクロソフトは「Microsoft Copilot」「Copilot+PC」「Copilot stack」という 3 つの柱を発表しています。藤井は、マイクロソフトは、単一のAIモデルを推奨するのではなく、利用者の環境や目的に応じて、SLM(Small Language Model)やNTT データの日本語LLMなど多彩なAIモデルを最適に選択できるようにすることを説明し、さらにChatGPTなどの先進モデルなどではマルチ モーダル AI へ の進化の流れの中で新たなオンライン消費体験を創造可能となっていることも事例を通じて示しました。

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藤井はここで NRF2024 では生成 AIのトレンドは理解したが、実際にどのようにの取り組んでいくのか悩む企業からの相談が多かったことを明かし、DX を通じた事業成果達成に不可欠な顧客や現場で働く従業員、経営者を巻き込み、、新たなステップに進めるのではないか、という見解を示しました。

一方で、DX の取り組みスピードと、AIの急速な進化にギャップが発生する可能性を、基盤テクノロジー提供サイドとして危惧していることを明かし、 今まで以上に流通企業と IT 企業が密連携することが必要であること、マイロソフトは「異次元な伴走支援」を提供することを強調。「AI 時代の DX をともに推進させていただきたい」と訴えかけてセッションを終了しました。


パネル ディスカッション 

「AI 時代のマーケティングの今、そしてこれから」 

a person speaking into a microphone

Wisdom Evolution Company 
代表取締役 
Strategy Partners 
代表取締役 
西口 一希 氏 

a person holding a microphone

日本マイクロソフト株式会社 
業務執行役員 エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括 本部長 
河上 久子 

日本マイクロソフト株式会社 
 岡田 義史 

日本マイクロソフト株式会社 
流通サービス営業統括 インダストリー テック ストラテジスト 
岡田 義史 

最後のセッションは、さまざまな業界でマーケティングや経営に携わり、数多くの成功例を間近で見てきた Wisdom Evolution Company、Strategy Partners 西口氏をゲストに招き、日本マイクロソフト河上がファシリテーター、岡田がパネリストとして登壇。流通小売業界におけるデータと AI 活用についての議論が展開されました。

河上から「いまのマーケティングのあり方や流通小売業界の動きに対する問題提起や課題感」について見解を求められた西口氏は、「内部を知っているわけではないのであくまで全体を見ながら」という前提で、2000 年代初頭に P & G に在籍していたときと印象は変わっていない、と回答しました。

同氏によると、当時から Walmart などの先進企業ではデータに基づくマーケティングが行われていたものの、日本ではデータを有効に活動できている企業はあまり見られなかったそうです。その後日本でもデータ活用の動きは進んでいるものの、まだデータの付き合わせなどは遅れている印象、という見解を示しました。

この見解に対して、河上はデータを組み合わせることでどのように顧客にリーチできるかを質問。西口氏は、「結局、お客さんを理解するしかない」と述べ、目先の売上などの数値だけを見るのではなく、「自分たちのサービスと顧客ニーズとの間に価値を生み出そうとする姿勢」が重要であることを示唆しました。 データの重要性を踏まえて、生成 AI 分野における Microsoft の取り組みについて問われた岡田は、伊藤忠商事の事例を紹介。同社の「FOODATA」は、Microsoft Fabric、Azure AI Studio、Azure OpenAI Service を活用してさまざまなデータを蓄積・可視化し、市場分析やコンセプト策定などの検証を行うことができます。岡田はこの事例のように「AI の進化によってこれまで不可能だったことが少しずつできるようになっている」という見解を示しました。

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続いて河上は、日本の現場重視のカルチャーのなかで、生成 AI などの新しい取り組みをどう進めるべきか、西口氏に意見を求めました。

西口氏は「経営者として常に自分が心がけていること」として、短期的な売上と長期的な利益のバランスを取ることの重要性を強調しました。そして同氏は、自身が感じている AI のポテンシャルとして「なんでもかんでも、ぶちこんだものにロジックを見出すことができる」点を挙げ、3 年間程度の累計売り上げや ID ベースの POS があるのであれば、それを AI で分析して顧客のロイヤリティや購買傾向を分析することを提案しました。

さらに西口氏は、機会損失率という KPI の設定を提案。品切れは大いなる機会損失であるとし、時間単位の売上データと在庫データを組み合わせて AI で分析し、品切れ問題に対処する方法を示しました。西口氏は「自分がもしまた小売を担当したら、これはやりたいと思っています」と、これらの分析を通じてロイヤル カスタマーの維持と新規顧客獲得のバランスを取ることが重要であることを示唆しました。

最後に河上は、西口氏の提言を受けての Microsoft としての意気込みを岡田に促しました。岡田は「まずはお客さまとお話しをしたいと思います。一歩ずつ、一緒にやっていきましょう」と参加者に語りかけ、Microsoft の持つアセットを活用しながら流通小売業界に適した KPI や進め方をともに見出していく意向を表明しました。 これを受けて河上も「皆さまと一緒に何ができるかを真剣に考えていきたいと思います」と会場参加者と配信視聴者に語りかけ、パネル ディスカッションを終了しました。

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全三回にわたって展開された Microsoft Retail Open Lab はこれにて一旦終了となりますが、第三回を終えてみて、急速な進化を続ける生成 AI 技術とそれに対する期待、そして課題に対応するためにも、継続的に情報共有の機会を設ける必要性を強く感じました。日本マイクロソフトはこれからも、さまざまな場面で流通小売業界の皆さまを支援し続けてまいります。 

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その熱狂が、世界を変える。Microsoft AI Tour 産業別セッションレポート【流通・消費財】〜リテールと AI との組み合わせで DX のポテンシャルを解放する〜 http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/retail/2024/04/15/ai-tour-2024-retail/ Mon, 15 Apr 2024 00:30:20 +0000 Microsoft ではこの動きをさらに加速すべく、「ビジネスの変革」をテーマとして世界11都市で Microsoft AI Tour を開催。各地で意思決定者及び開発者向けの多彩なプログラムが展開され、大きな盛り上がりを見せています。

2023 年 9 月 13 日の米国ニューヨークを皮切りとして世界中を巡回するこのMicrosoft AI Tour は、2024 年 2 月 20 日に日本に上陸しました。会場となった東京ビッグサイトには開催を待ちかねた大勢の方々が押し寄せ、まさに熱狂の 1 日となりました。
Microsoft AI Tour では、インダストリごとに特化したセッションとブースが展開され、それぞれの業界からの参加者が熱心に耳を傾けていました。本稿では、Microsoft AI Tour の 基調講演と、リテールにおけるセッションやブースについてご紹介します。

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AI 元年とも呼べる 2023 年から AI ソリューションの進化は止まることを知らず、全世界をうねりに巻き込んでいます。もはや AI が、インターネットやスマートフォンと同じく、世界を変革する新たなインフラになることは間違いないでしょう。

Microsoft ではこの動きをさらに加速すべく、「ビジネスの変革」をテーマとして世界 11 都市で Microsoft AI Tour を開催。各地で意思決定者及び開発者向けの多彩なプログラムが展開され、大きな盛り上がりを見せています。

2023 年 9 月 13 日の米国ニューヨークを皮切りとして世界中を巡回するこの Microsoft AI Tour は、2024 年 2 月 20 日に日本に上陸しました。会場となった東京ビッグサイトには開催を待ちかねた大勢の方々が押し寄せ、まさに熱狂の 1 日となりました。

本ブログ記事では、基調講演、及び、その後行われた流通・消費財に関するセッションについてご紹介します。動画視聴リンクもございますのでぜひご覧ください。 

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基調講演
「AI トランスフォーメーションと変革を推進する Microsoft Cloud」

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基調講演には、3000 名を超える来場者のほとんどが参加し、会場は熱気に包まれました。冒頭、日本マイクロソフト代表取締役社長の津坂美樹は、このイベントの目的を「AI の力でビジネスの成長を加速し、新たなソリューションやノウハウの交換を促進すること」であると語り、「Copilot は、Microsoft のミッションである “地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする” をまさに体現するプロダクト。今日から “AI 筋力” をつけるために Copilot を使い続けてほしい」と挨拶しました。

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続いて登壇した Microsoft エグゼクティブ バイス プレジデント兼チーフマーケティングオフィサーの沼本健氏は、AI を「グラフィカル ユーザー インターフェース、モバイル、クラウドといったプラットフォーム シフトの中で、最も大きな規模の変革をもたらすもの」と捉えているとし、Microsoft の製品の開発や提供における方向性や戦略の解説を展開しました。

さらに先進 AI ユーザー企業である本田技研工業社とサイバーエージェント社からのゲストスピーカーと語らいながら、AI によるビジネス変換は未来の話ではなく、すでに現在進行形で行われているものであり、AI の徹底活用こそが、今後の競走優位性のカギとなることを会場に示しました。

最後に沼本は、AI トランスフォーメーションを実現するための Microsoft の取り組みについて総括。AI 活用の鍵は技術だけでなく事業戦略、組織、文化の課題であり、Microsoft はそれらを解決するための知見を持っていることを強調。「少子化、高齢化の進む我が国にとって国民一人ひとりの労働生産性を上げることは至上命題。そこに AI が貢献する機会は大きい」と、ここに集った日本の企業が AI 活用をリードする未来への期待を述べて、セッションを終了しました。

基調講演の視聴はこちら
「AI トランスフォーメーションと変革を推進する Microsoft Cloud」


[リテール] ブレイクアウト セッション
「AI が放つ、小売業の未来とその可能性」

Microsoft AI Tour では、インダストリごとに特化したセッションが展開され、それぞれの業界からの参加者が熱心に耳を傾けていました。

リテール業界向けのブレイクアウト セッションでは、『AI が放つ、小売業の未来とその可能性』と題して、日本マイクロソフト代表取締役社長の津坂と、アジア リージョンのリテール & 消費財部門リード Irving Lee による講演が行われました。

まず登壇した津坂は、AI 一色だった「NRF(National Retail Federation)2024」を振り返りながら、国内外のユースケースを紹介していきます。そして最近は、AI の投資対効果(ROI)についての質問を非常によく受けることを明かし、リテール業界では 1 ドルの投資で 3.45 倍のリターンがあること、さらに先行投資をしていた企業は 8 倍ものリターンを得たことを示します。

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続いてマイクロソフトがリテール業界向けに注力している 4 つの領域を紹介。一つ目は「データによる新たな価値創出」。二つ目は「顧客エンゲージメントの向上」。三つ目は「リアルタイムなサプライチェーン」。そして「従業員の業務効率化 働き方改革」。津坂は具体的な取り組みとして、Copilot のテンプレートを活用した新たな購買体験の提供や店舗業務の支援、そして Microsoft Fabric を活用した新たなデータベース統合ソリューションを挙げてみせます。

最後に津坂は、AI の活用には技術だけでなく、企業文化や働き方の変革も重要であると指摘。「トップがどうカルチャーを固めていくか。下の声やまんなかの声をどのように聞くか。この合わせ技で会社は変わっていく」と参加者に語りかけました。

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続いて Irving が登壇。まず最初に、日本では生成 AI の認知度は非常に高く、先進企業では積極的な導入を進めているものの、実際の導入率は米国やオーストラリアなどと比較すると大きく見劣りしているというデータを示します。

Irving はこの原因について、「日本企業が自ら AI 実装に高い障壁を設けて慎重になってしまっている点にある」と指摘し、日本における生成 AI の先進的なユースケースを紹介。

WEMEX 社が開発した薬剤師のための業務支援アプリでは、薬剤師と患者の服薬指導時の会話を、生成 AI がわずかな時間で薬歴記録の特定フォーマットに変換。これによって薬剤師は事務作業を大幅に省け、患者の満足度向上にもつなげることができます。また日清製粉グループが導入した独自の対話型 AI「NISSIN-GPT」は、2023 年 4 月に同グループの従業員に向けて公開され、さまざまな局面で業務効率化に役立てられているそうです。

Irving によると、バリューチェーンにおける生成 AI の活用は、一般的にはまず財務や HR、法務、企業知識といったコーポレート機能が対象となります。また、バリューチェーンの各フェーズにおいても生成 AI を活用可能なシチュエーションが存在しており、幅広い業務に効果をもたらすことができる」と Irving 。

津坂からは「マイクロソフトでは、特にカスタマーサービスやディベロッパー支援において活発に生成 AI が活用されています。すべてを同時にやるのは大変なので、一番効果がありそうなところから AI を使っているのが現状だと思います」と、実体験に基づいたコメントが追加されました。

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Irving は、生成 AI の業務ごとの適用と成果について議題を進め、アジアのトップ小売企業が達成した成果の例を提示。ウォルマート社がマイクロソフトと協働した生成 AI への取り組みを発表したことにも触れ、すでにグローバルでは多くの AI 運用実績が存在していることを示します。

そして最後に、「鍵となるのは経営層によるコミットメント」であることを強調。生成 AI は数十年に一度の顧客の期待や行動を急速に変化させる重要な技術であり、その進化はとても急速です。Irvingは「経営層がバリューチェーン全体で生成 AI を検討し、主要なビジネス機能および顧客体験のどこに高いインパクトを与えられるかというビジョンを持つことが重要」と語って、セッションを終了しました。

[リテール] シアター セッション
「Retail unlocked AI で解放するリテールのポテンシャル」

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シアター セッションでは、マイクロソフトコーポレーション藤井が、流通業界における課題と、それらを解決するためのマイクロソフトの取り組みについて紹介しました。

はじめに、藤井は 2024 年 1 月にニューヨークで開催された NRF’24(全米小売業協会主催イベント)の様子について紹介。全世界から 4 万人が集まった同イベントで掲げられた今年のテーマは、「Make It Matter」。新事業「リテールメディア」、顧客体験の向上、サプライチェーン強化、従業員支援など、流通業界のテーマ・課題に対して、不断の努力の中で「成果につなげていく必要がある」とされるなか、「今後の流通業の変革を促進するうえで、AI の活用に大きな可能性があることが共通認識された大会だった」と藤井。さらに、さまざまな調査機関やメディアでも、流通業界における AI によるインパクトの大きさが取り上げられていることに触れ、「全世界の流通業が、自身のバリューチェーン全領域で、生成 AI 活用可能性の検討を開始している状況」と話します。

こういった背景を踏まえて、藤井は、マイクロソフトの流通業向けの新たなコンセプトを紹介しました。「これまで、厳しい状況の中で回復性(レジリエンス)を念頭に、データ・顧客・サプライチェーン・従業員の4つを論点として、お客様のデジタルトランスフォーメーションプロジェクトを支えることを活動の方向性にしてきました。今年の我々の新しい方向性が『Retail unlocked』。AI を活用して 同様の 4 つの論点で、流通業のポテンシャルを解放していこうという考え方です」と藤井。

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マイクロソフトはこれまで、流通業界向けの DX 基盤として「Microsoft Cloud for Retail」を提供してきましたが、今後、最新の AI と Microsoft Cloud for Retail に融合させることによって、これをさらに進化させていきます。一例として、本年 1 月にプレビュー版としてリリースした新たなサービス、顧客の買い物や従業員の業務をアシストする生成 AI 機能を迅速に実装するための「Copilot テンプレート」を紹介。これによって CES2024 でウォルマートが発表した、同社顧客・従業員向け AI アプリケーションと同様の機能実装を迅速に実現できるようになると述べました。また、日本国内の流通事業者が生成 AI を理解し活用していくためのオープンコミュニティ「Microsoft Retail Open Lab」や、共同で生成 AI プロジェクトを推進するための「Microsoft AI Co-Innovation Lab」の設置など、AI を知ることから、活用領域・シナリオの検討、実際に実装するところまで、マイクロソフトは伴走型でサポートしていくことを述べました。

最後に藤井は、「生成 AI 時代の信頼できるデジタル基盤と価値を提供し、パートナーと共に流通業の皆様をご支援していきます。マイクロソフトの Retail Unlocked の取り組みに、ぜひご期待ください」とセッションを締めくくりました。

リテールブースでは、顧客・従業員・マーケターごとの AI 活用シナリオを紹介

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リテールブースでは、お客さま、従業員、マーケター向けにシナリオごとの生成 AI 活用シーンを紹介しました。

お客さま向けの AI 活用では、顧客体験の向上が期待できます。例えば、EC サイトを訪れたお客様がこれから初めてキャンプをする方で、どの商品を選べば良いかわからないようなケースでは、自然言語で質問をするだけで、自分にフィットする商品を AI が提案してくれます。

従業員向けのシナリオでは、Power Platform と Teams を組み合わせることで、端末を用いたタスクの登録が可能に。「店内で障害を見つけた」「ストック不足が発生している」などのトラブルに対して迅速に対応できます。また、新入社員など接客に不慣れな従業員でも、端末上で自然言語を使って返品方法の問合せや対応などができるようになります。管理職は、従業員からの問い合わせの件数や内容を可視化し、データ分析をすることも可能です。それにより、従業員が回答に対して満足したかどうか知ることができます。

また Dynamics 365 Customer Insights の、Copilot を活用したマーケター向けのシナリオも紹介されました。例えば、自然言語でキャンペーン用の画像を生成したり、どちらのキャンペーンが数字を取れそうかといった相談を会話形式でしたりすることも可能です。

顧客にとってはより便利なショッピング体験を、従業員、マーケターにとっては大幅に生産性を高めることができる Copilot の機能を肌で感じることができる展示でした。

基調講演の視聴はこちら
「AI トランスフォーメーションと変革を推進する Microsoft Cloud」




関連ページ:Microsoft AI Tour〜ビジョンをアクションに移す

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激動の 1 年を振り返り、生成 AI が起こした大きな波を肌で感じる貴重な機会。Microsoft Retail Open Lab 第二回セミナー「流通業における生成 AI 実装・半歩先の課題を解決する」現場レポート http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/retail/2024/02/20/retail-open-lab_seminar2_1205/ Tue, 20 Feb 2024 00:47:50 +0000 日本マイクロソフトは 2023 年に「Microsoft Retail Open Lab」を発足しました。Microsoft Retail Open Lab では、セミナーやワークショップなどの実行支援策を流通企業に提供することで、参加流通企業間及び IT ベンダー(パートナー)間のオープンなコミュニケーションを通じて共創を誘発し、より多くの企業が生成 AI 活用を通じて成果を得られるように、施策を順次展開しています。

第一回の好評を受けて、2023 年 12 月 5 日には第二回セミナーが開催されました。「流通業における生成 AI 実装・半歩先の課題を解決する」と題された本セミナーでは、この半年でさらに進化を遂げた生成 AI に関する情報共有と、先進企業の事例紹介を中心としたプログラム構成で、生成 AI が世界を席巻した激動の1年間において、真摯に生成 AI と向き合ってきた現場の生の声を聞ける貴重な機会となりました。本稿ではその模様をレポートします。

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生成 AI は「人」の能力を高度に補完し、企業のさまざまな変革推進に寄与する可能性があると期待されています。
マイクロソフトは OpenAI 社とのパートナーシップなどを通じて、現在この生成 AI の潮流をリードしています。そしてこの数年[Microsoft Cloud for Retail]といった施策を推進し、国内外流通(小売/消費財製造業)企業の DX プロジェクトに伴走しており、流通企業 DX のさらなる推進に向けて、生成 AI 活用の取り組みを支援しています。

そんななか、日本マイクロソフトは 2023 年に「Microsoft Retail Open Lab」を発足しました。Microsoft Retail Open Lab では、セミナーやワークショップなどの実行支援策を流通企業に提供することで、参加流通企業間及び IT ベンダー(パートナー)間のオープンなコミュニケーションを通じて共創を誘発し、より多くの企業が生成 AI 活用を通じて成果を得られるように、施策を順次展開しています。

Microsoft Retail Open Lab では、2023 年 6 月 30 日に記念すべき第一回目のセミナーを「知る」をテーマとして開催。オンラインを含む約 500 名の参加者は企業の垣根を超えて議論を交わし、生成 AI の現在地に対する理解を深めました。

第一回の好評を受けて、2023 年 12 月 5 日には第二回セミナーが開催されました。「流通業における生成 AI 実装・半歩先の課題を解決する」と題された本セミナーでは、この半年でさらに進化を遂げた生成 AI に関する情報共有と、先進企業の事例紹介を中心としたプログラム構成で、生成 AI が世界を席巻した激動の1年間において、真摯に生成 AI と向き合ってきた現場の生の声を聞ける貴重な機会となりました。本稿ではその模様をレポートします。

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エコシステム全体をフォローするマイクロソフトの AI 活用ソリューション

セミナーの前半は、日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括 本部長の河上 久子の開会挨拶に続いて、日本マイクロソフトによるふたつのセッションが展開されました。

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日本マイクロソフトセッション 1
「AI 時代のインテリジェントアプリへのパラダイムシフト」

日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員 クラウド & ソリューションズ事業本部 インテリジェントクラウド統括本部統括 本部長
大谷 健

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大谷はまず、マイクロソフトがここ数年間でリリースしてきた対話型のアプリケーション「インテリジェントアプリ」を紹介しながら、「AI はあくまでCopilot(副操縦士)であり、人間の支援をするもの」であると、マイクロソフトの AI に対するスタンスを示します。

そして Bing Chat を例に取り、「“ ググる ”という言葉はもう古い言葉になるかもしれません」と語り、「これからは、 “ リサーチする ” という考え方から情報を生成するために“ 問いかける ” という方向に考え方を変えなければ、インテリジェントアプリは使いこなせません」と、AI との向き合い方を示唆します。

セッション後半では、流通小売業のグローバル活用事例の紹介が行われました。大谷は AIを活用して新しいユーザー体験の提供や業務生産性の向上といった成果を挙げている企業の事例を示し、共通する特徴として「見たことも聞いたこともないということをやっているというよりは、生成 AI に単純作業を任せて、空いた時間を人間しかできない仕事に振り向けている」ことを挙げます。

最後に大谷は「インテリジェントアプリをゼロからつくるのは時間がかかりますから、それをサポートするテクノロジーをぜひ活用してください」と、マイクロソフトが 11 月に開催したイベント「Microsoft Ignite 2023」で発表された数々の生成 AI ソリューションを紹介。あらゆる局面から生成 AI の活用を支援するマイクロソフトをアピールしてセッションを終了しました。

日本マイクロソフトセッション 2
「Microsoft AI CO-Innovation Lab Japan(Kobe)のご紹介」

Microsoft AI CO-Innovation Lab Kobe
所長
平井 健裕

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次のセッションでは、神戸に開設された「AI Co-Innovation Lab KOBE」について、所長の平井 健裕が紹介を行いました。

世界で 6 拠点目となる同施設では、AI や IoT を活用したイノベーションの創出と産業振興を目指しており、AI を活用して企業の DX 課題の解決をサポートします。これまでに全世界で 800 を超えるエンゲージメントを支援しており、マイクロソフトは One-to-One のスプリントスタイルで顧客企業に伴走します。

平井は、原則無償でラボのスペースやソリューションを利用でき、常駐するエンジニアのサポートを受けられる点、自社開発したシステムの POC も行え、なにより最終的な成果物は企業側に 100% 帰属する点など、非常に使い勝手のよい施設であることをアピール。「ぜひご利用いただきたい」と参加者に呼びかけました。

多くの学びが得られた先進企業の生成 AI 活用事例

後半のセッションでは、住友商事株式会社、日清食品ホールディングス株式会社、株式会社メルカリの 3 社による生成 AI 活用事例についての講演が行われました。各社の取り組みは非常に先駆的なものであり、参加者にとって多くの学びが得られる貴重な時間となりました。

先進事例セッション 1
「住友商事における生成 AI の活用について」

住友商事株式会社
IT 企画推進部
伊庭 甫 氏
浅田 和明 氏

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伊庭氏によると同社では、2023 年 4 月に CDO と CIO 直下に組織横断型の生成 AI 活用ワーキンググループを立ち上げて、生成 AI の実装による既存事業の高度化および経営のデジタル化、開発した事業の社外への横展開によるサービスモデル化およびインテグレータ事業の設立を目指しています。
このワーキンググループでは SC-Ai Hub(スカイハブ)と呼ばれる COE 組織を設置。この組織には同社の子会社で DX 技術専門会社であるInsight Edge社も参画しており、要件定義や開発におけるスピーディーな取り組みに大きな役割を果たしていると伊庭氏は語ります。

SC-Ai Hub では、Microsoft Teams 内にコミュニティを立ち上げてセミナー情報やガイドラインの発信や、システム構築相談への対応などを行なっています。本セミナー開催時で 800 名ほどの参加があり、38 件のアプリ相談案件が寄せられているそうです。

伊庭氏曰く、COE としての SC-Ai Hub が存在することで、新規事業の開発から POE までまとめて対応できるだけでなく、類似案件については既存のパッケージ化されたシステムを横展開できる利点があるとのこと。また、SC-Ai Hub ではマイクロソフトの「ユニファイドサポート」を導入しており、最新情報の提供や実装に関する相談対応といったサポートを受けられる体制を整えているそうです。

続いて、スカイハブが構築した「社内ルール検索チャットボット」「業務特化型生成 AI ソリューション」「意思決定支援ソリューション」の 3 つのアプリケーション事例について、浅田氏から紹介が行われました。

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業務特化型生成 AI ソリューションのひとつとして紹介されたのは、「世界情勢の分析レポート生成アプリケーション」。グローバルでビジネスを行う同社では、世界中のさまざまな地域における社会・政治・経済情勢がビジネスに大きな影響を与えるため、世界のどこかで異常値が発生した場合には速やかにレポートをまとめてマネジメント層に報告する必要があります。「このアプリケーションには、レポート作成報告業務の効率化・高度化を担うことが期待されています」と浅田氏。

また「社内外の注目度が高い」(浅田氏)という「意思決定高度化ソリューション」は、総合商社として投融資の是非を判断する際に、同社が持つ過去20年の投融資データをもとに生成 AI にさまざまな観点からの判断材料を提供させて、投融資の判断を高度化しようとする取り組みです。
浅田氏によるとこのソリューションでは、地域や投融資の形態などのフラグを付帯させることで回答精度を向上させる技術が用いられているそうです。浅田氏は、「今後は人間の判断をサポートするレベルまで精度を向上させたい」と語ります。
さらに同社では、今後は共通のクラウド基盤を構築したうえで、SC-Ai Hub の取り組みを海外拠点に横展開させ、高度化の加速を図っていく構想を抱いているそうです。

最後に伊庭氏は「自社開発にこだわるのではなく、SaaS をできるだけ使い倒していく」ことが生成 AI 活用のポイントであり、精度を必要とされるソリューションに関しては自社開発も視野に入れた開発を行いつつ、Microsoft 365 などの SaaS サービスの Copilot 機能をフル活用することで身近な業務を効率化していくことも大切、と語ってセッションを終えました。

先進事例セッション 2
「日清食品に見る現場に根ざした生成 AI 活用の推進」

日清食品ホールディングス株式会社
執行役員 CIO グループ情報責任者
成田 敏博 氏

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セッション冒頭で成田氏は、「日清食品をご紹介する上でひとつの象徴的な言葉をお伝えします」と述べて「カップヌードルシンドローム」という言葉を紹介します。同社では、国民の誰もが知るブランドにあぐらをかいて大企業病に陥ってしまいかねない危機感をこの言葉に込めており、経営トップから常に発信し続けているのだそうです。

そんな社風を持つ日清食品は近年、デジタルを駆使して自社を改革していく方針を会社として打ち出しており、今から数年のうちに生成 AI を駆使したルーチンワークの 50% 削減や工場の完全無人ラインの開発を目指しています。
そして同社では現在、Azure Open AI Service をエンジンとして、ユーザーインターフェイスを Power Platform で構築した、「自社版 Chat GPT」とでも言うべき「NISSIN AI-chat powered by GPT-4 Turbo」を開発し、検証を行なっているそうです。

成田氏によると、その発端は入社式で同社 CEO の安藤 宏基 氏が新入社員に投げかけた激励メッセージにありました。そのメッセージは Chat GPT を使って生成されたものであり、「このようなテクノロジーを賢く駆使することで多くの学びを得てほしい」という CEO の思いが込められていました。

このメッセージは、新入社員への激励に留まるものではなく全社員に向けたものとして社内に広まり、成田氏は「IT を担当している自分たちができる限り早く生成 AI を活用した業務の検証ができる環境を整えなければならない」と、部門に戻るやいなやプロジェクトチームを結成、取り組みを開始したそうです。

プロジェクトチームでは、まずはセキュリティとコンプライアンスというテーマでリスクへの対応策を議論し、社内向けガイドラインを策定。Azure Open AI Service での専用環境構築に 2 週間を費やし、関係各部門との調整を経て、4 月 3 日の入社式から 3 週間足らずで NISSIN AI-chat powered by GPT-4 Turbo をリリースするに至りました。

さらにリリース後は周知啓蒙に努め、ユーザー説明会の開催や社内報での連載記事掲載、社内ポータルやデジタルサイネージでの告知を展開。また、仕組みをつくって終わりではなく、全社を巻き込んだ取り組みとしてドライブさせるために、まずは対象部門を絞って集中的なスキル向上と効果検証を行い、それを成功事例として社内の横展開に繋げる流れで普及と活用促進を図っているそうです。

そして 2023 年末現在、12 の部門で NISSIN AI-chat powered by GPT-4 Turbo が活用できそうな業務の洗い出しと、効果的かつ汎用的なプロンプトの検討が行われており、2024 年初からはグループ企業への展開も予定されていると成田氏。
同氏は、「生成 AI には、人間が今まで考えていたことを少しずつ肩代わりしていける余地があると思っています」と語り、NISSIN AI-chat powered by GPT-4 Turbo のリリース経験から、AI 活用のポイントとして「社内情報を把握している AI をつくり、各業務システムと連携させる」「AI 利用を前提とした業務プロセスを確立する」の 2 点を挙げます。

最後に成田氏は、上司からかけられた「やってみなければできるかどうかもわからないのだから、失敗してもいいからどんどんやりなさい」という言葉とともに、「今私たちは非常に面白いタイミングを経験していると思います」という未来志向のメッセージで、セッションを締めくくりました。

先進事例セッション 3
「メルカリ生成 AI/LLM 専任チームの取り組み」

株式会社メルカリ
執行役員 VP of Generative AI/LLM
石川 佑樹 氏

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石川氏によると、同社では以前から AI の導入を推進しており、マシンラーニングのエンジニアも多数在籍しているとのこと。しかし、ここ 1 年の生成 AI の変化は想定以上に大きなものであると判断。改めて「AI Driven」という方針を掲げて、機動的に動ける生成 AI/LLM 専任チームを組織し、「生成AI /LLM技術を用いた、新たなお客様体験創出と事業インパクトの最大化」と「前者の生産性の劇的な向上」をミッションとするプロジェクトを開始したそうです。

この専任チームでは「Enabling=全従業員が生成 AI を利用可能な環境づくり」と「Building=実際のプロダクト構築による価値提供」のふたつのテーマに取り組んでいると石川氏。まず Enabling の具体的な施策として「ガイドラインの策定」と「勉強会・ハッカソンの実施」を挙げます。

同社では一般のソフトウェアエンジニアもプロダクトを実装できるようなガイドラインを策定し、また生成 AI に興味はあるものの日々の業務に追われて学ぶ機会を得られない従業員を対象としたハッカソンの場を設けました。その結果、想定以上に理解が促進されることがわかったそうです。

一方、Building の具体的な事例としては、社員専用の Chat GPT「Mercari Chat GPT プラグイン」の構築が挙げられました。この社員専用 Chat GPT は 2023 年春頃にいち早く全従業員が活用できる環境が整えられ、現在は本家の Chat GPT への実装に倣って、書面の読み込みや画像の生成といった機能を使えるようにバージョンアップを行っているそうです。

石川氏は、現在は専任チームが主導して実装を進めるパターンと、各ファンクションチームが主導して専任チームが伴走するパターンがあり、足元は前者が多かったものの、ここ数ヶ月は後者が増えてきたとし、「今後はファンクションチームが率先して生成 AI の実装を進められる環境を目指したい」と語ります。

ここから話題は、より具体的な生成 AI の実装についてのアドバイスに移ります。石川氏いわく、生成 AI のモデルを実装するときには、マイクロソフトを含む各社が提供する API を活用する場合と、オープンソースモデルをファインチューンする場合、そして基盤モデルからすべて自分たちで構築する場合の 3 つのパターンが存在し、同社ではこれらを組み合わせて実装を進めているそうです。

続いて石川氏は、すでにリリースされた施策の代表事例を紹介。SEO の改善施策、自分の欲しい商品を Chat GPT に相談しながら探せるプラグインサービスなどを挙げ、広告クリエイティブへの活用事例においては「採用のクリエイティブなどなるべくお客様に迷惑をかけないところから進めて、徐々にお客様から見える場面に出していきました。最終的には渋谷のスクランブル交差点に設置されたサイネージに AI が作った PR 動画を流すことができたことで、ひとつの道をつくれたとのではないかと考えています」と胸を張ります。

最後に、出品商品の紹介文に対して過去のデータから改善提案を行うメルカリ版 Copilot 機能を紹介する石川氏。この機能では改善提案だけでなく AB テスト的なデータ取得を行い、アルゴリズム改善まで自動で行われていることを示します。石川氏は改めて「生成 AI を使ってさまざまなところに新しい価値をつくることを引き続きやっていきたい」と意気込みを語り、セッションを終了しました。

規定時間に収まらないほど白熱した Q&A。意見交換は延長戦へ

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セミナーセッションの後には、登壇者と参加者との Q&A セッションが行われました。オンライン参加者からのものも含めて引も切らずに質問が寄せられ、各社それぞれの立場から真摯なアドバイスが送られていました。

「AI 活用の推進メンバーでは何名くらいのチームを組んでいますか?」という質問に対して、日清食品の成田氏からは「推進チームは 12 名ですが、専任ではなく希望者を募る形です。ちなみに当社には AI エンジニアはひとりもいません」と驚きの発言が。
成田氏によると、日本マイクロソフトのアドバイスを受けながら開発を進めていること、ローコードツールの Microsoft Power Apps を活用していることがプロジェクト継続のポイントとのこと。ゼロから構築するのではなく、すでにあるサービスを活用することで開発力は補えるとし、「体制に関する懸念はそこまで必要ないのでは?」とアドバイスが送られました。

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一方メルカリの石川氏は、フルコミットの AI エンジニアによる10名ほどの体制を敷いているとし、AI に重点的に投資を行っている同社の姿勢が示された形に。この特化型チームと広告や企画など他のチームのメンバーが一緒に取り組むことで相乗効果を生み出せること、プロジェクトにさまざまな人材を巻き込んでいくことが成功につながることが示唆されました。

住友商事に対しては SC-Ai Hub の運営についての質問が寄せられました。伊庭氏からは「開発リソースを子会社に委託できているところがスピーディな動きにつながっていること、またスカウティングによって優れた AI エンジニアを確保できていることがスムーズな開発の理由だと思います」と回答が行われました。

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続いては「予算を取るためにどのような働きかけをしたのか」という現実的な質問が。メルカリの石川氏は、当初は人件費と環境づくりのためという名目で低い金額から始めて、確実性の高い施策から実施し、ROI が得られた段階で増額を求めるという手法を取ったと言います。
一方日清食品では、利用する予定のマイクロソフトのサービス料金を元にざっくりとした予算組みを行い、その範囲でプロジェクトを進めているとのこと。各社の回答から、まずは事業インパクトの獲得が大きな意味を持つことが伺えます。

「それでもやっぱり使わない」と言う人にはどうすれば?という質問に対しては、日清食品の成田氏は「ほとんどの人間は触ってみて終わり。ごく一部が使い始める」ことを基本に置いて、トップダウンでの働きかけと、ボトムアップでスモールサクセスを積み重ねていく両面作戦を行なっているとのこと。「社内での活用事例を少しずつ増やすことと、手軽に使えるテンプレートをつくることがポイント」という具体的なアドバイスに質問者も納得の様子を示していました。

メルカリの石川氏からは、「次の半年くらいで普段使っているツールに生成 AI が搭載されるはず。そうすれば自ずと利用率は上がる。そこまで焦る必要はないのでは」とのアドバイスが送られました。

一方住友商事の浅田氏は、普段の業務のなかで生成 AI を活用する意識づけを行うことが大事であり、つくったパッケージの利用促進は同社においてもこれからの課題だと語ります。また伊庭氏からは、業務の棚卸しをして使える部分をイメージさせることが重要なのではないか、との意見が述べられました。

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司会者の手元にはまだまだたくさんの質問が寄せられていましたが、時間内に収まらず、ここでセミナーは終了となりました。セミナー終了後に場所を移して開催された懇親会はまさに延長戦の様相で、企業の垣根を超えた活発な意見交換が行われていました。

本セミナーを通して得られた知識や体験は、参加した流通事業各社にとって大いに刺激になったはずです。各社とも貴重な AI イノベーションの種子を持ち帰ることができたのではないでしょうか。


オンデマンド配信一覧

Part 1 ・日本マイクロソフトセッション 1
 「AI 時代のインテリジェントアプリへのパラダイムシフト」
・日本マイクロソフトセッション 2
 「Microsoft AI CO-Innovation Lab Japan(Kobe)のご紹介」
Part 2・先進事例セッション 1
 「住友商事における生成 AI の活用について」
・先進事例セッション 2
 「日清食品に見る現場に根ざした生成 AI 活用の推進」
・先進事例セッション 3
 「メルカリ生成 AI/LLM 専任チームの取り組み」
Part 3・事例登壇企業様によるトーキングセッション

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これからの AI 時代において、消費流通業界が秘める大きな可能性 http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/retail/2023/12/04/potential-in-retail-with-ai_1204/ Mon, 04 Dec 2023 01:04:40 +0000 未曾有のパンデミックを経て、オンラインからリアル店舗へと顧客が回帰しようとしている今、消費流通業界においては、ここ数年で変化した顧客のニーズに対応し、新たな顧客体験を提供するために、DX の加速とデータ活用の推進が求められています。

一方で、そのほとんどが小規模事業者である我が国の消費流通業界においては、専門人材の雇用やデジタル ツールの導入・活用が難しい場合も多く、業界全体の DX が遅滞する大きな要因のひとつとなっています。

そこで注目されるのが AI の活用です。生成系 AI の普及が進み、専門人材でなくても AI を活用できるこれからの時代、消費流通業界は目覚ましい変革を進められる可能性を秘めているのです。

本稿では、我が国の消費流通業界の DX を牽引している今村修一郎氏に、今の消費流通業界が抱える課題とその解決策、そしてこれからの消費流通業界が目指すべき DX の形をお聞きしました。

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未曾有のパンデミックを経て、オンラインからリアル店舗へと顧客が回帰しようとしている今、消費流通業界においては、ここ数年で変化した顧客のニーズに対応し、新たな顧客体験を提供するために、DX の加速とデータ活用の推進が求められています。

一方で、そのほとんどが小規模事業者である我が国の消費流通業界においては、専門人材の雇用やデジタル ツールの導入・活用が難しい場合も多く、業界全体の DX が遅滞する大きな要因のひとつとなっています。

そこで注目されるのが AI の活用です。生成系 AI の普及が進み、専門人材でなくても AI を活用できるこれからの時代、消費流通業界は目覚ましい変革を進められる可能性を秘めているのです。

本稿では、我が国の消費流通業界の DX を牽引している今村修一郎氏に、今の消費流通業界が抱える課題とその解決策、そしてこれからの消費流通業界が目指すべき DX の形をお聞きしました。

今村修一郎氏

一般社団法人 リテール AI 研究会 テクニカル アドバイザー

今村商事代表取締役

マイクロソフト認定システムエンジニアの資格を日本最年少で取得。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、P&G ジャパンにてビッグデータ分析や機械学習関連の開発に従事し、分析チームでは日本人初の管理職に昇進。2017 年に一般社団法人リテール AI 研究会に参加し、テクニカル アドバイザーとして、IT 技術を駆使した流通小売業の改革に取り組む。2021 年より今村商事の代表取締役に就任。消費流通業界全体のデジタル化の推進を支援している。

DX 推進を妨げてきた、我が国ならではの課題とは

――消費流通業界には、現在どのような課題があるのでしょうか?

今村 まずひとつ日本独自の課題として挙げられるのが、人口あたりの小売店の多さですね。我が国では米国と比べて 4 倍ほどの小売店が存在しています。例えば化粧品メーカーだけでも登録されている企業だけで 7000 社ほど。ドラッグストアの店頭を思い浮かべていただければわかると思いますが、ヘアケア商品だけで 700 もの商品が陳列されています。なかには半年に 1 点しか売れないというようなものも含まれているんですよ。

――消費者にとっては選択肢が増えていいことのように思えますが、どこに課題が潜んでいるのですか?

今村 たくさんの小売店が存在する背景には、卸問屋の存在があります。我が国ではメーカーと小売店が直接取引をすることは稀で、卸問屋がその間に入ることで商品のスムーズな流通を実現しています。卸問屋があるからこそ、メーカー側は仕分けや集金の手間を省け、小売側は物流の確保や入金管理をしなくても済む。この日本独自の商慣習によって、小規模な小売業者も淘汰されずに生き残れるわけです。

ですが、この環境を効率化やデジタル化という視点で見ると多くの課題が浮かんできます。たとえば一部の企業が需要予測や自動発注といった施策を進めよう呼び掛けようとしても、声をかけなければいけない事業者が限りなくあるため、頓挫してしまうのです。

――たしかに、大手の SM チェーンならまだしも、地方の小さな小売店やメーカーにとっては DX と言われてもピンとこないかもしれませんね。

今村 とはいえ、労働人口の減少が進む我が国の消費流通業界においては、DX は欠かせません。これまでも多くの小売業者が企業の垣根を超えて改革を進めてきました。例えば、これまでは商品情報のフォーマットが決まっていなかったことでメーカー、卸売業者、小売業者がそれぞれ商品情報を登録する必要があったために無駄な作業が膨大に発生していましたが、私も所属する一般社団法人リテール AI 研究会が主管となって商品情報を統一する仕組みづくりに取り組んでいます。

これからの消費流通業界の変革では AI が大きな可能性を持つ

――そのような業界内の取り組みにおいて、デジタル技術はどのように貢献できるのでしょうか?

今村 商品情報に関して言えば、現状ふたつのデジタル化施策を進めています。ひとつは各社ごとに異なるフォーマットを AI の力を借りて自動生成したり修正したりする仕組みづくり。もうひとつは登録作業自体を人力ではなく RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション) によって自動化する仕組みづくりです。これらのデジタル化施策によって、省力化や登録ミスの削減が可能となります。

実は、商品情報の統一化は私たちの真の目的ではないんです。現状小売業の現場では、余計な作業に手間を取られてデータの分析に充てる時間がありません。デジタル化によって効率化、省力化することで、データを分析、活用して仕入れや売り場改善につなげるという新たなチャレンジに挑む時間を創出するのが、真の目的なのです。

――その目的を達成するために、AI が持つ可能性については、どのようにお考えでしょうか?

今村 小売業界でも社内 Q & A で活用できるチャットボットの導入など、AI の活用は進んでいると聞いています。ただ私はそういった活用方法ではなく、業務プロセスにおいて人間が困っている部分を AI によって解決することに興味を持って取り組んでいます。 例えば部門ごとの過去の売上データを分析して活用しようとしても、2 〜 30 ある部門の、さらに枝分かれした売り場のどこに注目するかといった分析は、人力だけでは難しいものがあります。

そこで、生成 AI に過去データを読み込ませると、どの部門に改善機会がありそうかを答えてくれる。そんな使い方に大きな可能性を見出しています。実際に私たちも、そういった仕組みをつくって検証を進めているところです。

生成 AI の活用で売上 50% アップを実現

――具体的な事例もあるのですか?

今村 はい。ある地方で数店舗規模のほぼ家族経営のような SM チェーンで「納豆と一緒によく購入されているアイテム」を検証したことがあります。

納豆は多くの家庭で日常的に購入される商品なので他商品との相関を見出すのはかなり困難なのですが、生成 AI を通してデータを分析したところ、「岩のり」がよく一緒に購入されているという結果が出たんです。そこで岩のりを納豆売り場のすぐ近くに置いて「納豆と一緒に食べると美味しいですよ」といった POP をつけて販売したところ、岩のりの売り上げが約 10 倍になりました。

この事例は、これまでは現場の勘と経験と度胸で仕入れや売り場づくりをしてきた部分を AI によって代替し、さらに精度を高められたという点で、消費流通業界に大きなインパクトを与えられると考えています。

――それはすごいですね。納豆を買った本人も、おそらく意識して一緒に岩のりを購入している人はあまりいないでしょうし、つまり潜在的な消費行動も露わにできたということですよね?

今村 まさにその通りですね。私たちは、この検証のポイントは地方の小さな小売業者でも実践できたという点にあると考えています。私たちのつくった仕組みはマイクロソフトの Azure Databricks を活用しており、ネット環境とブラウザさえあれば動作して従量課金で使用できるので、小規模事業者でも導入しやすいものになっています。この岩のりの事例は、データ分析の専門人材を雇う経営体力がない事業者が、生成 AI のおかげで専門人材を雇ったのと同じような効果を得られた好例と言えると思います。

生成 AI はいわば自動運転。新たな世界観を築くコラボレーションに期待

――生成 AI の発達は、今村様の取り組みを前進させるのに大いに役立っているとお考えでしょうか。

今村 そうですね。ChatGPT のリリース前後では、全く状況が変わったと感じています。自動車に例えると自動運転に近づいたイメージというか。これまではデータ分析という「車」はあったものの、乗りこなすためには運転の仕方を学ぶ必要がありました。でも今は生成 AI という自動運転機能ができた。これによって、データ活用の敷居はかなり下がったと感じています。

大きな企業であっても、Azure Databricks や Power BI といったデータ分析ツールを使える人材は限られていますが、生成 AI は現場でレジ打ちをしているパート従業員でも扱うことができる。これはとても大きな違いだと思います。

――Azure Databricks や Power BI といったワードが出てきましたが、日本マイクロソフトとの協業についてはどのように評価されていますか?

今村 私の経営する今村商事は日本マイクロソフトのパートナー企業ですので、マイクロソフト製品を活用する事例を創出することはひとつの協業の形だと思っています。それとは別に、小売事業者のほぼ 100% がマイクロソフト製品を活用しているという点は、私たちにとって大きなメリットだと思っています。POS レジなどの基幹系システムの OS はほぼ Windows ですし、そこから取得したデータを分析するための OpenAI 系のサービスとも相性がいいですからね。

――今後の消費流通業界における DX の展望についてお聞かせください。

今村 実は、消費流通業界はデジタルととても相性がいいんです。というのも、多くの事業者が POS レジを通して会計処理を行っており、そこには非常に純度の高いデータが揃っている。例えば広告業界を考えると、ユーザーの ID がサイトごとで雑多に存在したり、商品コードもサイトによってバラバラだったりします。つまりデータを分析しようとする際にはクレンジングに多大な手間がかかるんです。

一方小売業界では JAN コードという共通のコードがあって、これが同じであればどこで購入しても同じ商品だということがわかります。データがとても綺麗なんですね。どんなに強力なアルゴリズムを持つ AI をつくったところで、取り込んだデータが不十分だったり不正確だったりすればその価値は大きく下がってしまいますから、データ・ドリブンなこれからの時代においては、POS レジに蓄積されたデータは大きな財産になると思います。

また、例えばゲーム業界のデータはほぼ無課金ユーザーと言われていますが、消費流通業界はほぼ 100% が課金ユーザーですから、その行動分析は売上に直結する。つまりデータ分析からマネタイズしやすい業界だと言えます。

――日本マイクロソフトにはどのようなことを期待されますか?

今村 ChatGPT が登場したことで、今後は分析の対象がぐんとひろがりますし、消費流通業界にはもともと純度の高いデータが膨大にそろっています。つまりこの業界では、今後さまざまな AI の活用方法や事例が生み出されていくはずです。 マイクロソフトさんにはそれを支援する製品やサービスが揃っていると思いますが、それら自体のアピールよりも、それらを活用することでこの世界がどのように変わっていくのかを示す役割を担ってほしいですね。私たちも、その後ろ盾となる事例づくりを通して、より一層密接に協業していきたいと思っています。

――ありがとうございました。

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Microsoft Retail Open Lab : 流通小売業界が AI 時代を生き抜くためのアドバイス http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/retail/2023/10/04/microsoft-retail-open-lab_ai-advice_1004/ Wed, 04 Oct 2023 09:16:06 +0000 生成 AI の進化がもたらす変化は大きく、その波は流通小売業界にも押し寄せています。 

流通小売業界において、本部と店舗などの現場も協働して 生成 AI の強みを生かし、個人として、さらには組織としてその効果を最大化するにはどうすればよいのでしょうか。

日本マイクロソフトのお客さまを見渡すと、すでに多くの小売業や消費財メーカー業の皆さまが、「トップダウンでの戦略立案」「各個人でまず触ってみる」「全社で利用しノウハウを蓄積する」「一部、業務システムと結合してみる」など、システムやユーザーによる生成 AI の仮説検証の場を戦略的に創出し、日々の業務生産性や品質向上のための挑戦を始めています。 

本稿では、それらのお客さまの事例から得られる洞察や、今後の流通小売業界におけるAI活用のヒントをお伝えしていきます。

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生成 AI の進化がもたらす変化は大きく、その波は流通小売業界にも押し寄せています。 

流通小売業界において、本部と店舗などの現場も協働して 生成 AI の強みを生かし、個人として、さらには組織としてその効果を最大化するにはどうすればよいのでしょうか。

日本マイクロソフトのお客さまを見渡すと、すでに多くの小売業や消費財メーカー業の皆さまが、「トップダウンでの戦略立案」「各個人でまず触ってみる」「全社で利用しノウハウを蓄積する」「一部、業務システムと結合してみる」など、システムやユーザーによる生成 AI の仮説検証の場を戦略的に創出し、日々の業務生産性や品質向上のための挑戦を始めています。 

本稿では、それらのお客さまの事例から得られる洞察や、今後の流通小売業界における AI 活用のヒントをお伝えしていきます。

流通業界で高まる生成 AI へのビジネスプロセスの変革の期待

生成 AI は、その活用によってビジネスを変革し、現代における業界のニーズへの対応に必要な効率化とイノベーションを実現できると注目されています。生成 AI を活用できる場面としては、下記の大きな4つのテーマが挙げられます。

1. 顧客の期待進化 

この数年間、流通小売業者は、変化と不確実性に対応する術を学び、顧客の期待進化に対応するために、さまざまな施策を展開してきました。

顧客がデジタル体験の利便性を知ることで、モバイルペイメント、BOPIS (Buy Online, Pick Up in Store: オンラインで購入して実店舗で受け取る仕組み)、アプリから簡単に申請できる返品、アプリ上での LTV(顧客生涯価値)の可視化、デリバリーやネットスーパー、ライブストリーミングによるショッピング、パーソナライズされたチャットボットなどの利便性が顧客ロイヤルティを形成すると同時に新しい基準となっています。

多くの小売業者は、デジタルを手段として位置づけつつも、改めて戦略を再考しなければならないケースが多く発生しています。 

 2. パーソナライズされたエンゲージメント 

外出先でも利用できる購入体験を求める傾向が強まるにつれ、オムニチャネルは流通小売業者にとって、いっそう欠くことのできないものになっています。

特に従来のマーケティングの考え方から、デジタルアプリや SNS、オンラインとともにリアル店舗も包括する顧客体験が重視されるようになったことから、データの取得、有効化、収益化、デジタルを活用したビジネス成長に注力するニーズが生まれています。すべては、顧客の期待を理解し、あらゆるチャネル上でのカスタマージャーニーを最適化することが目的となっています。

 各サービスに紐づく既存 ID や顧客基盤など各種マスタの統合により、あらゆる事業領域が繋がることで、その個人の状況やニーズに応じて広告を含むサービスの最適化やデータ価値の最大化による体験を高め、収益の拡大が期待されています。それらのサービスに対しても生成 AI の活躍事例が生まれつつあります。

3. 人材とスキル育成 

流通小売業界は、これまでに設計されたオペレーションやプロセスに対して、「繰り返し作業の自動化」という課題に取り組んでいます。デジタル化の加速によりさまざまなデジタルデバイスやネットワークと常時接続された機器を店舗内に設置し、マーケティングや防犯のためのエッジ AI を導入するなど、電流やインターネット機器との常時接続でなければ稼働しないデバイスがさらにただでさえ忙しい現場の負荷は高まりつつあります。

たとえば、リテールメディアなどを代表し、店舗内に設置されたモバイルペイメント機器、スマートカート、AI ビーコンや AI カメラ、電子棚札、リモート接客などです。これらの機器が故障した際にもお客様の体験に直結するため、そのための新しい対応プロセスが店舗の中に組み込まれ、従来とは違う働き方やスキリング、お客様への接客スタイルや説明マニュアルも更新されています。

そういった現場を維持するために、従業員には、新しいテクノロジに適応し、より高度なスキルを習得することが求められます。また従業員にキャリア成長の機会を促すためにも、AI やデジタルに関連するアップスキリングおよびリスキリングなどの会社全体施策を展開する企業も増えています。

デジタル人材の不足が叫ばれるなか、PowerApps などを使った市民開発コミュニティと情シス IT 部門などが行うプロ開発が協力し合うことで、これまで費用対効果の薄い業務システムやサービスインターフェース、店舗において現場の社員や巡回するエリアマネージャーのためのアプリケーション開発が盛んになり、デジタルの民主化が進みつつあります。

4. コンプライアンスと信頼 

「このカメラによる取得されたデータはサービス改善や防犯、マーケティングなどに利用しています」そのような個人情報保護に関連する張り紙などが店舗内にデジタルが浸透することにより、見かけるようになりました。透明性、倫理的慣行、個人情報などに関連するデータ保護に対する顧客の要望はますます高まっています。

すなわち流通小売業者は、顧客からの信頼を醸成するために、規制基準を遵守し、より堅牢なプライバシーとセキュリティ対策の構築を求められています。また今後、生成 AI に影響を受ける市場においても、レスポンシブル AI(責任ある AI)に基づく信頼性を高めるための施策により、労働法、知財保護、製品安全規制、公正な商慣行に関するコンプライアンスを維持することも不可欠となっています。 

このような潮流が加速していくなかで、流通小売業界においては、AI によるシームレスな顧客体験の向上と同時に、確かな情報に基づいた意思決定を促し、オペレーションを合理化する方法が求められるのではないでしょうか。

そこで今回は、「Microsoft Retail Open Lab」の活動を通じて、マイクロソフトが流通小売業のお客さまたちをどのように支援しているのか、その一部をご紹介するとともに、AI 施策を始められる皆さまが事前に理解すべき「プロンプトエンジニアリング」とはなにかをご紹介します。 

参考:「AI 新時代における流通業界の共創に向けた第一歩。Microsoft Retail Open Lab 第一回セミナー「生成 AI の可能性とビジネスへの実装に向けて」現場レポート」

プロンプトエンジニアリングは「AI への指示命令書」 

プロンプトエンジニアリングとは、AI に対して効果的な指示を出すための技術のことです。AI は、人間が使う言葉(自然言語)や音声・画像を解析し、それに応じてコンテンツを生成することができますが、その際には、どのようなコンテンツを生成したいのか、どのような形式や品質で生成したいのかなど、具体的かつ明確な指示が必要です。指示の仕方が悪いと、望む結果を得られません。プロンプトエンジニアリングは、そのような指示を作成・改善するスキルです。 

それはいわば、店員に対して商品の陳列や販売方法を指示することに似ています。店員は、過去に蓄積した経験とともに購買実績や在庫情報などのデータを確認しながら、商品の特徴や需要を理解し、それに応じた売り場を構成するためのタスクを生成します。 

その際には、どのような商品を陳列したいのか、どのようなレイアウトやディスプレイで陳列したいのかなど、だれが、どのようなスケジュールでそのタスクを完了するのか、具体的かつ明確な指示が必要です。 指示の仕方が悪いと、望む売上や顧客満足度は得られません。

プロンプトエンジニアリングは、そのような指示を作成・改善するスキルと言えるでしょう。

下記の図にプロンプトの例を挙げてみましょう。皆さまも実際に、Microsoft Bing Chat や ChatGPT を使って、いくつかのプロンプトの例を入力し、出力結果を確認してみてください。  

リンク:Microsoft Bing Chat

<弊社クラウドソリューションアーキテクトの資料を掲載> 

さて、皆さまのプロンプトの出力結果はいかがでしたでしょうか?上記の入力の例などを参考にして出力結果を眺めてください。 AI とのプロンプトのやり取りは基本的には対話形式で行います。そのため、一般的な検索エンジンのように「店舗 陳列 指示」といった検索キーワードを 1 度入力して終わり、ではなく何度か対話をして出力したい結果に近づけるように、目で見て、読んで、判断をしていきます。

これは、生成 AI の技術の世界では「インコンテキストラーニング (あるいはインコンテクストプロンプティング)」と呼ばれています。AI のモデルの中身(パラメータなど)を更新することなく、プロンプトの説明文や入出力例を見るなかで学習することです。 

たとえば 生成 AI はユーザーとのプロンプトを通じた対話のなかで、ユーザーはなにを聞きたいのか、どんな返答が適切なのか、どんな言い回しが自然なのかを学習しています。これにより、さまざまな話題や質問に対応できるようになるのです。

インコンテキストラーニングは、生成 AI モデルが柔軟にタスクを理解し、適応する能力を高める技術です。なお「学習」という言葉が使われていますが、 AI モデルそのものの更新を行っているわけではありません。そのため、この対話および学習は一時的なものであり、ブラウザなどの画面を閉じてしまえば、これまでの対話情報などを 生成 AI モデル は覚えていません。生成 AI モデルにもシステムである以上、覚える情報量の限度などがあるのです。

流通小売業の中で、具体的にどう使えそうか?

それでは、AI がどのようなケースに使えるのか、例を挙げてご説明します。

例えば、人事部門が教育のためのドキュメントを整備中、ABC 分析に関して説明する文をリード文や目次として使いたい場合に、即座に要約してくれます。  また営業部門から問い合わせを受けた管理部門やシステム部門が、下記のようなクエリ(データベースから必要な情報を抽出するために、SQL というコードを生成する)を書くことで、そのクエリコードを即座に入手し、検証することができます。

他の例も見てみましょう。

例えば、店舗でのお客さまからの問い合わせやクレームなどが日々数千件届く部署があり、それらを分類する業務なども行われているとします。 

それらの仕分け作業も下記のようなプロンプトで 生成 AI に分類(どのカテゴリに属しそうか)を指示することができます。

こういった内容を吟味し、どのカテゴリーに属するかを表形式のソフトやアプリケーションを使いながら人の手作業や部分的なマニュアル作業を行い、社内で各部署や関係者と調整を行うことに時間が多く費やされている企業も多いのではないでしょうか。

生成AI を取り込んだシステムによってそのような反復作業などを自動化し、同僚や取引先との対話やコミュニケーション、施策などの検討や実行に費やす時間を創り出すことにより、顧客のための業務改善につなげることが肝要です。 

<お客様からの問い合わせ内容をカテゴリで分類する例> 

良いプロンプトと悪いプロンプトとは? 

業務を実行する従業員に対して、指示が的確で丁寧な方が本部の方や現場責任者の方は大勢いらっしゃると思います。

その指示による仕事の成果が期待されるものと近いかどうか、それは指示(プロンプト)に対して、良いものと悪いもの、あるいは、コンテクスト(そのタスク背景や経緯、いつまでに誰が何をいくつ、やるのか、どういった結果が望ましいのか、例を添えるなど)を包含した指示(プロンプト)が重要になってきます。具体的なプロンプトの例を挙げてまいります。

「お客様が」という一言だけの入力(プロンプト)をすると、社内に対するメール文書を書いていきたいという意図などが含まれていないため、生成 AI は一般的な回答を生成します。

そこで、「次の文に続く文章を完成させてください。」という意図を入れた指示を追記してみます。すると、”お客様が” に続きそうな文章を生成してくれました。プロンプトを利用する際に、指示をしっかり記述することの重要性がわかります。 

最後に、より具体化してみましょう。

「あなたはフレンドリーで有名な店長である」という役割を与えた後に、「お客様からいただいたお褒めの言葉に関する社内メールを書きたい」という指示を与えてみます。すると、メール形式であることが伝わり、件名など文書も “お客様が” に続く、それらしい文章を生成してくれました。

プロンプトを入力する際は、このように人間が人間に丁寧に指示をするような視点や感覚を持つことが重要です。基礎的な話ではありますが、このスキルを身につけることにより、 生成 AI をより便利に使いこなせるようになるのです。 

プロンプトデザインワークショップを通じて実践する 

基礎的ではありますが、プロンプトの重要性をご理解いただいたところで、続いては AI の出力結果をうまくビジネスや業務効率化につなげていくにはどうすればよいのか?という論点をよりクリアにしていくために、「Microsoft Retail Open Lab」がお客さまと取り組んでいる事例のひとつをご紹介します。

我々はそれを「プロンプトデザインワークショップ」と名づけました。プロンプトデザインワークショップでは、業界やお客さまにマイクロソフトのクラウド製品や技術理解を深めていただくとともに、生成 AI を使いこなすシーンやプロセス、顧客への期待に対する対応や従業員の日々の業務の効率化、生産性向上などについてチームを組んで議論し、AI リテラシーを高めるとともに実際にプロンプトを行っていきます。 参加者は自分たちでプロンプト記述して、その出力結果をもとにまた議論を社員間で重ねていきます。「お客さまはなにを喜ばれるのか?」「課題を解決するためにどのようなアイデアがあればよいか?」といったクリエイティブとコミュニケーション、そしてコラボレーションに費やす時間をたくさん持つ体験を通して、参加者の皆さまは AI 時代における働き方やスキルの醸成についての理解を深められるはずです。

AI を副操縦士として組織や人の対話を活性化するスノーピーク社の事例

スノーピーク社の事例をご紹介します。

この画像は同社のプロンプトデザインワークショップの様子です。本社のサービス開発者からデジタル部門まで、会社横断形式で集まり、日本マイクロソフトの専門家たちとともに生成 AI や Azure Open AI services を検討できるアイデアなどを、現在の経営課題や日々の業務課題、あるいは現状に市場やお客様に対して提供している製品やサービスの価値を高めるためのアイディエーションを行い、議論していきます。

このブログの冒頭でも書いたとおり、すでに多くの小売業や消費財メーカー業の皆さまが、「まず触ってみる」「全社で使ってみる」「一部、業務システムと結合してみる」など、システムやユーザーによる AI との対話や仮説検証の場を戦略的に創出し、日々の業務生産性や品質向上のための挑戦を始めています。

営業や商品企画、物流、サービス開発などの事業部門やデジタル部門、既存の社内システム部門と横断的に対話を活性化させ、企業全体の取り組みの方向性や取り組み優先度の再考などを通して、進むべき道を修正し続ける。データ戦略などの環境変化に対する組織マネジメントとしての人材育成や、システム環境のモダナイゼーションに取り組んでいく。

不確実性の高い時代であるからこそ、生成 AI の誕生による業界のインパクトを追い風に変えているスノーピーク社のような事例を、マイクロソフトリテールオープンラボなどの場を通じて、今後も皆様にお伝えしてまいりたいと思います。

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AI 新時代における流通業界の共創に向けた第一歩。Microsoft Retail Open Lab 第一回セミナー「生成 AI の可能性とビジネスへの実装に向けて」現場レポート http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/retail/2023/08/29/retail-open-lab_seminar1_0630/ Tue, 29 Aug 2023 06:56:34 +0000 この数か月、Chat GPT をはじめとする生成 AI の話題は尽きることがない状態が続いています。IT専門メディアだけでなく一般メディアでも連日取り上げられ、サラリーマンが宴席で話題にするほど、人々が興味関心を注ぐこの話題は、言うまでもなく流通業の経営者から従業員、関連する取引先にとっても注目の的となっています。

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この数か月、Chat GPT をはじめとする生成 AI の話題は尽きることがない状態が続いています。IT 専門メディアだけでなく一般メディアでも連日取り上げられ、サラリーマンが宴席で話題にするほど、人々が興味関心を注ぐこの話題は、言うまでもなく流通業の経営者から従業員、関連する取引先にとっても注目の的となっています。

継続的な DX の取り組みに立ちはだかる壁

コスト削減や生産性向上を通じて利益を確保しつつ、さまざまな顧客接点を通じて支持を獲得し、持続的な成長を果たすために、激しく速い変化を特徴的な背景として有する流通企業は、この数年、DX への取組を続けてきました。
各社は、モバイルや IoT センサーなどのデバイスや、クラウドテクノロジーのレベルアップを背景に、デジタル活用による[顧客体験向上][従業員生産性向上][サプライチェーン高度化][データによる新たな価値創造][ブランド価値の向上][取引先との協働][革新的な製品やサービスの開発]などのビジネス変革に取り組んでいます。

この過程において、この変革に向けた取り組みは継続的なものである必要があり、DX においては、IT 部門のみならず経営や事業に携わるすべての「人」がデジタルやデータを活用し、迅速に変化対応していく新たなスキル獲得と文化醸成などが必要であるという気づきも得られました。
しかし、世界情勢からくるコスト高や少子高齢化による人口動態の変化も重なり、有効な労働力の確保やそのレベルアップなどは生易しいものではないことも分かってきています。

人の能力を補完し、競争力を高める生成 AI の可能性

そのような中、生成 AI は「人」の能力を高度に補完し、前述のような変革推進に寄与する可能性があると期待されています。
マイクロソフトは OpenAI 社とのパートナーシップなどを通じて、現在この生成 AI の潮流をリードしています。そしてこの数年[Microsoft Cloud for Retail]といった施策を推進し、国内外流通(小売/消費財製造業)企業の DX プロジェクトに伴走しており、多くの海外先進流通企業が DX のさらなる推進に向けて、マイクロソフトと共同で生成 AI 活用の取り組みを開始している状況です。

例えば、小売業はオンラインでの顧客体験を向上させ、コンバージョンを上げるために、大量のユーザーレビューを要約し、あたかも接客担当者と対話しているかのようなパーソナライズコミュニケーションを実装するオンラインチャットボットや、店舗内状況に応じて店舗授業員の優先タスクを振り分けるための業務支援アシスタントの実装の試行に入っています。

また消費財製造業は、工場の稼働率向上や安全性確保のため、さまざまなデータソースを組み合わせたレポート生成に活用したり、コールセンターやカスタマービスセンターでのサービス向上のための実装を試行したりしている状況です。

日本の流通企業でも、こういった試行を加速的に推進できれば、変革を通じて競争力を一気に高められるのではないかと期待されています。
しかし前述の通り、世の中に生成 AI に関する情報があふれているとは言うものの、正確な情報を入手、理解し、また、流通業の DX にとって、そして自身の業務にとって、生成 AI がどういったインパクトをもたらす可能性があるのかについては、一部の先行企業や人を除くと、全体的にはまだ充分な理解が進んでいない状況があると考えられます。

生成 AI を理解し、成果につなげるための「Microsoft Retail Open Lab」

過去に類を見ないほど、この生成 AI というテクノロジーの進化スピードは凄まじいものがあります。情報を正しく理解し、まず触ってみる→ユースケースを仮説し、PoC を実行する→メリットや課題を特定し、本番実装に向けて企画する、といった一連の流れを素早く回してしていくことが重要です。

このたび日本マイクロソフトは、「Microsoft Retail Open Lab」を発足し、セミナーと、ワークショップなどの実行支援策を流通企業に提供することを決定しました。また参加流通企業間及び IT ベンダー(パートナー)間のオープンなコミュニケーションを通じて共創を誘発し、より多くの企業が生成 AI 活用を通じて成果を得ることできるように、施策を順次展開していく予定です。

第一回セミナーは「知る」をテーマとして 2023 年 6 月 30 日に開催。オンラインを含む約 500 名の流通業関係者が参加し、大いに好評を得ることができました。以下に、運営事務局がまとめたレポートを掲載します。
なお、「共有する」をテーマに今年の秋に開催を予定している第二回セミナーでは、各流通企業が取り組んでいる PoC や、IT ベンダーによる新たな開発プロジェクトから、知見や考察の共有を企画する予定です。
ぜひ Microsoft Retail Open Lab にご期待いただき、積極的にこの機会を活用いただきたいと考えております。

<第一回 Microsoft Retail Open Lab 開催レポート>

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基調講演

『生成 AI の可能性とビジネスへの実装に向けて』

東京大学 大学院工学系研究科 人工物工学研究センター技術経営戦略学専攻 教授
松尾 豊 氏

日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 NTO
田丸 健三郎

基調講演では、人工知能と Web 工学の第一人者であり、政府の AI 戦略会議の座長を務める東京大学 大学院工学系研究科 人工物工学研究センター技術経営戦略学専攻 教授の松尾 豊氏と、日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 NTO の田丸 健三郎による、AI の現状についての講演と対談が行われました。

松尾氏は、「ChatGPT は機械学習の常識を覆す社会現象」であると、そのインパクトの大きさを語ります。「ChatGPT は世界中で競うように活用方法を発見されており、世界中の人がこの技術が世の中を変えることに強い確信を持っている」と松尾氏。

中長期的に見ると「検索」という行動はなくなる可能性があり、Microsoft のOffice シリーズは GPT が搭載された AI ツール「Copilot」によって大きく進化し、さらに人々の仕事の方法も影響を受けることが予想されるといいます。

そんな状況のなかで我が国の反応はこれまでにないほど早く、AI 戦略会議ではすでに暫定的な論点整理がなされていると松尾氏。「リスク対応」「AI の利活用」そして「AI の開発」という 3 つの観点で対応が協議されており、特に計算資源の確保を課題としてスピード感を持って取り組んでいるそうです。

とはいえ我が国の企業、自治体においてはまだ ChatGPT を「使ってみている」段階であり、組織内での活用や業務改革への活用といったフェーズには至っていないと松尾氏。「私たちは新しい時代に入っています。ぜひいろいろな形で活用してほしい」と呼びかけて講演を終えました。

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続いて田丸は、AI 活用と切っても切り離せないデータという観点から講演を行いました。田丸によると、これまでは知見を得られた後には使い捨てられていたデータは、「深層学習、特に ChatGPT の出現によって、学習に用いられ新たな価値を生み出すものとして、その価値が大きく変わってきた」といいます。

一方で、データを知的財産という観点から見ると、各国で考え方が大きく異なると田丸。我が国は規制が最も少ない国のひとつであり、協議が進められている段階だとし、企業側の対策が必要なことを示唆します。

続いて田丸は、マイクロソフトでは何層ものレイヤーの仕組みを設けて、セキュリティを確保していることを示します。そして「Microsoft Azure OpenAI」や「Microsoft Security Copilot」といった AI 活用サービスを、データのファインチューニングからプロンプトエンジニアリングに至るすべてのフェーズをクローズド環境で実施できるソリューションとして紹介しました。

最後に田丸は、マイクロソフトは「これまで手間をかけていた作業をいかに単純化して、本来フォーカスすべき業務に集中できるか」にフォーカスしてさまざまな取り組みを行っていることをアピールして講演を終了しました。

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基調講演の後半は、松尾氏と田丸による対談が行われました。「ChatGPT に対する政府の取り組みのなかで注目すべきポイントは」という田丸の質問に対して、松尾氏は「これまでになく対応が迅速な点」であるとし、その理由として「言語モデルなので意思決定層に多い年配の方にも理解しやすいこと」と「DX を進めなければいけないという危機感の高まりにフィットしたこと」が挙げられました。

続いての質問は「組織内のデータをうまく活用するうえで考えるべきこと」。松尾氏は「組織内の情報をうまく活用すれば、さまざまな業務が効率化する」とし、組織内の文書の検索しやすさ、プロンプトの管理、データへのアクセス権などを整理することが大切であると回答します。

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それを受けて「アセットマネジメントが有効ということですね?」と問いかける田丸に対して「使っていい情報とそうではない情報があることを考えると、クラシフィケーションという概念が変わる可能性がある」と松尾氏。
本来組織外に出せない情報を外部に提供する必要が生じたときに、これまでは人間同士で断片的な情報や雰囲気でお互い察していた部分を、AI がどのように補うことができるかが大事と、AI のヒューマンパリティの獲得への期待を語ります。

最後に田丸は「AI 時代のデータ管理」について質問。松尾氏は「ChatGPT のような LLM がやっていることは情報変換であり、企業内データの結合やサプライチェーンにおけるデータ連携などをより上手に行ってくれる可能性がある」とし、データの活用は業務効率化や迅速化にとってますます重要になってくることを示唆。それに対して田丸が、マイクロソフトのソリューションはデータの整備や活用に大きく貢献できることをアピールして、対談は終了となりました。

ソリューション紹介

『小売業の DX を加速:マイクロソフトの生成 AI と Copilot を活用したビジネスソリューション』

日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員クラウド & ソリューションズ事業本部 インテリジェントクラウド統括本部統括 本部長
大谷 健

本セッションでは、日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員クラウド & ソリューションズ事業本部 インテリジェントクラウド統括本部統括 本部長の大谷 健より、マイクロソフトのソリューションを使った生成 AI の活用法に焦点を当てた講演が展開されました。

大谷はまず、全世界でユーザーが 1 億人を突破するのに要した期間がたったの 3 ヶ月だったというデータを見せて ChatGPT の規格外の影響力を示し、「我々がやりたくない仕事をやってくれたり、やってほしいことをやってくれる便利屋」という言葉を使って表現。そして ChatGPT を使いこなすためには、プロンプトエンジニアリングの技術とデータの整備が必要であることを強調します。

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続いて大谷は、いくつかの事例を紹介。米国のカーマックス社では、ChatGPTを活用して、人力で 11 年かかる規模の中古車情報の Web ページ制作を数 ヶ 月で完了したといいます。日本でも多くの企業が業務に ChatGPT を活用し始めており、そこに共通する現象として、部署レベルではなく全社レベルで取り組んでいることが挙げられる、と大谷。

そして、これらの企業にマイクロソフトの Azure OpenAI Service が選ばれている理由として大谷が強調したのが、「顧客のデータを学習に使わないこと」そして「閉域網でサービスを利用できること」。さらに長年の OpenAI 社との協業実績から、ほぼリアルタイムで最新の OpenAI 社のサービスを使えることをメリットとして挙げます。

マイクロソフトは現在、提供するほぼすべてのクラウドサービスに AI を盛り込もうとしており、社内に閉じた形で、しかも社内の非公開データだけでなくプラグインによってオープンデータも活用できる環境を提供可能です。
すでにさまざまなオンラインサービス提供社とプラグインのエコシステムが構築されており、「これを活用すれば世界中の高品質なデータから欲しい答えを得られる世界が実現できる」と大谷。
その世界観を示すひとつの例として、日本マイクロソフト株式会社 インダストリーテクノロジーストラテジストの岡田 義史による、マイクロソフトの Azure OpenAI Service を利用して開発したレシピアプリのデモンストレーションが行われました。

このアプリでは、食べたい料理や食べさせたい人、食べる目的などを入力することで、レシピの候補だけでなく、栄養学の専門家からのアドバイスやおすすめの組み合わせ、足りない食材などが回答として示され、近所のスーパーマーケットの提案やデリバリーサービスの紹介も行われる、というものでした。

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岡田によると、このアプリは最近発表された Azure OpenAI Service のリファレンスアーキテクチャを参照することで、約 2 週間という短い期間で完成できたとのこと。逆に苦労した点としては、データの整備を挙げる岡田。家族のプロフィールやレシート情報をどのようにデータベースに組み込むかが大きな壁だったと語ります。

これを受けて大谷は「結局のところ、AI をうまく活用するためにはよいデータを持っているかどうか」が大切であると語り、現在データアナリティクス領域にはさまざまなサービス群が乱立しており、どれが最適なツールなのか選びにくい状況であるという課題を挙げます。

そして大谷は、マイクロソフトの新たな取り組みとして分析プラットフォーム「Microsoft Fabric」を紹介。ワンレイクというコンセプトを掲げて、散財するデータを 1 ヶ所に集め、分析し、可視化するところまで一気通貫で対応できるソリューションである Microsoft Fabric は、SQLServer 以来の進化であると胸を張ります。

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最後に大谷は、マイクロソフトが掲げる「責任ある AI」の 6 つの原則を紹介。なかでも「お客さまのデータは常にお客さまのデータである」という点をハイライトし、さらにフィルタリング機能の充実などを例に挙げて、安心して Azure OpenAI Service や ChatGPT を使える点をアピールします。

以上を踏まえて「ぜひ Copilot を活用してほしい」と大谷。今後マイクロソフトの製品に取り込まれる Copilot の利用を促すと同時に、マイクロソフト自体が、まさに顧客企業、パートナー企業の副操縦士として寄り添う姿勢を強調し、「一緒に歩みを進めていきましょう」と呼びかけてセッションを終了しました。

パネルディスカッション

『生成 AI による流通業のビジネスインパクトについて』

株式会社ビックカメラ
執行役員デジタル戦略部長 株式会社ビックデジタルファーム 代表取締役社長
野原 昌崇 氏

資生堂ジャパン株式会社
エグゼクティブオフィサー CDO 兼 EC事業部長 資生堂インタラクティブビューティー株式会社 取締役 DX 本部長
笹間 靖彦 氏

株式会社 ELYZA
取締役 CMO
野口 竜司 氏

日本マイクロソフト株式会社
エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括本部 流通業施策 担当部長
藤井 創一

最後のセッションでは、日本マイクロソフト株式会社 エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括本部 流通業施策 担当部長の藤井 創一がファシリテートを務めるパネルディスカッションが行われました。

パネラーは、株式会社ビックカメラの執行役員デジタル戦略部長 兼 株式会社ビックデジタルファーム 代表取締役社長の野原 昌崇氏と、資生堂ジャパン株式会社 エグゼクティブオフィサー CDO 兼 EC 事業部長 資生堂インタラクティブビューティー株式会社 取締役 DX 本部長の笹間 靖彦氏、そして AI の専門家である株式会社 ELYZA 取締役 CMOの野口 竜司氏。
今まさに DX の最前線で生成 AI のインパクトを感じているパネラーの言葉を、参加者の皆さんは前のめりになって聞き入っていました。

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パネルディスカッションを始めるにあたり、生成 AI の可能性について野口氏が見解を披露。野口氏によると、生成 AI の出現は「知的生産革命」と言ってもいいレベルのインパクトとのこと。
しかもクリエイティブ、情報検索、データ分析、教育といったあらゆる分野で同時多発的に革命が起きている状況であり、小売業界においても顧客の商品選択の変化、マーケット分析などの接客変革が起きていると野口氏。生成 AI がキードライバーとなって業務 DX および顧客サービスの DX が一気に進むのではないか、と予想します。

笹間氏によると、資生堂では生成 AI を業務効率化に活用できるソリューションとして捉え、現在ソーシャルメディアに投稿する素材の多様化やeコマース上でのリコメンデーションの差別化といったプロジェクトを推進しているとのこと。
笹間氏は、業務効率化から一歩進めて接客シーンへの活用を期待しているとし、「AI 美容部員」構想を披露。時間の制約がなく人との会話のような気づかいも必要がないことから、気軽で率直なリクエストが可能になるはず、と展望を語ります。

一方で野原氏は、生成 AI については「ネガティブではないけれどポジティブでもない」立場であるとし、生成 AI を使っていい接客と使ってはいけない接客がある、と語ります。
例えば「電気ストーブの使い方」といった、間違った情報によって事故が起きかねない場面では生成 AI に接客を任せるのは難しく、「自分に向いている商品を検索する」といった場合には非常に役に立つといった具合に、使い方を考える必要があることを指摘します。

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そういった懸念がありつつも、ビッグカメラのような小売店では顧客理解と商品理解において生成 AI が活用できると考えている、と野原氏。生成 AI を使えば、顧客のデータから「パソコンが好き」といった属性だけではなく「コストパフォーマンス商品が好き」「タイムパフォーマンス商品が好き」といった属性のパターンも意味づけられ、商品に関しても、スペックだけではなく「どんな動機で買われている商品なのか」を理解できるようになるとし、「こういった生成 AI の適正を生かせれば、商品の品揃えが豊富な小売店が顧客にリーチしやすくなるはず」と期待を語ります。

続いて話題は生成 AI の実装について。笹間氏は、生成 AI を実装するにあたっては「ID やデータベースをどれだけ使いやすく、アジリティを持って構築できるか」がポイントであるとし、ビジネス側のリクエストを IT 側がすべて聞いた結果、システムがサイロ化してしまったという自身の苦い経験から、IT 担当部門やベンダーが専門家としての知見を生かしてリードすべき、と注意点を語ります。

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野口氏と野原氏もこの意見に深く同意した様子で、野口氏は「今後、インフラとしての生成 AI 基盤が非常に重要になる」とし、IT 部門がリーダーシップを発揮できる企業とそうでない企業では大きな差がつくだろうと予測。
一方野原氏は、IT 側もビジネス側に近づいていく必要性を指摘し、「ビジネス側にはデジタルトランスレイターが、IT 側にはビジネストランスファ−がいなければならない」と人材の大切さを語りました。

ここでディスカッションのまとめとして、野口氏から会場の参加者に向けて、「全社員向けに ChatGPT を安全に使える環境を整備する“横戦略”に加えて、重要な業務やサービスに生成 AI を組み込んで業務フローやサービスフローそのものを変革する“縦戦略”を進めること」、そしてなにより「とにかく生成 AI を使うべき」というアドバイスが送られました。
「生成 AI を使って、どこまで、なにができるのか。一緒に住むくらいの覚悟で使っていただくと、変化を生み出せるはず」と野口氏。内部人材の育成を並行して進めることも大切、と言葉をまとめました。

最後に藤井から、このセミナーの総括として「マイクロソフトとしては、私たちの施策に関するご案内をしていくことはもちろんですが、皆さまが共創できる“つながり”をつくっていきたいと考えています」と述べ、この Microsoft Retail Open Lab を「セミナー」ではなく「ラボ」と名付けた意図を改めて強調。
ゆくゆくはそれぞれが生成 AI を活用した結果を共有し合い、ともに成長できる場にしていきたいと構想を語り、マイクロソフトによる技術的なサポートを約束してセッションを終了しました。

クロージング

日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員 エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括 本部長
河上 久子

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全セッション終了後に、日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 エンタープライズ事業本部 流通サービス営業統括 本部長の河上 久子が登壇。
自身が参加した会合のなかで、グローバル企業の AI 活用のスピード感に驚き、また自分たちでもできると感じたと、AI 活用の可能性に改めて言及。さらに「失敗パターンを共有することが資産になる」という示唆を受けたことを明かし、「数年後すら見通すのが難しい世の中で、失敗確率をいかに減らすかを考えたときに、業界内で情報を共有することによって新たな共創が生まれるのではないか。このラボがそういう場になれば」と述べてセミナーを閉会しました。

セミナー終了後は、参加者、登壇者が参加する懇親会が行われました。参加者の皆さまが会場のあちこちで交わしていた議論の熱量はとても高く、きっとこの先、この Microsoft Retail Open Lab が流通・小売業界の DX を推進するハブとなり、新たな共創が生まれるであろうことを予感させる、第一回セミナーとなりました。

関連コンテンツのご紹介:

Microsoft Retail Open Lab 第二回セミナー「生成 AI の可能性とビジネスへの実装に向けて」現場レポート

Azure OpenAI Serviceリファレンスアーキテクチャの公開発表のお知らせ | Microsoft Base

Resilient Retail ~小売業 DX の取組と事例のご紹介~ (microsoft.com)

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きっかけは一通の手紙だった。新たな顧客体験と企業 DX を同時に実現する「e 食住なび」開発ストーリー http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/retail/2023/05/25/enavi-for-dx/ Thu, 25 May 2023 06:50:21 +0000 eBASE 株式会社は、食品表示情報を提供する「e 食なび」と家電や住宅設備の情報を管理する「e 住なび」を含むあらゆる商品カテゴリを統合したライフスタイルアプリ「e 食住なび」を、2023 年 1 月にリリースしました。
e 食住なびは Microsoft Azure をプラットフォームとしており、約 400 万点の商品を検索可能で、商品の詳細情報や取り扱いのある店舗などを閲覧できるアプリケーションです。
本稿では、同社代表取締役社長の岩田 貴夫 氏へのインタビューを通して、膨大なデータを活用して消費者に新たな CX(購買体験)を、企業に効果的な DX(デジタル・トランスフォーメーション)施策を提供する同社のソリューションについてご紹介します。この画期的なアプリ開発を後押ししたのは、ある小児科医の強い思いでした。

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eBASE 株式会社は、食品表示情報を提供する「e 食なび」と家電や住宅設備の情報を管理する「e 住なび」を含むあらゆる商品カテゴリを統合したライフスタイルアプリ「e 食住なび」を、2023 年 1 月にリリースしました。
e 食住なびは Microsoft Azure をプラットフォームとしており、約 400 万点の商品を検索可能で、商品の詳細情報や取り扱いのある店舗などを閲覧できるアプリケーションです。
本稿では、同社代表取締役社長の岩田 貴夫 氏へのインタビューを通して、膨大なデータを活用して消費者に新たな CX ( 購買体験 ) を、企業に効果的な DX ( デジタル・トランスフォーメーション) 施策を提供する同社のソリューションについてご紹介します。この画期的なアプリ開発を後押ししたのは、ある小児科医の強い思いでした。

参考:「e 食なび」「e 住なび」を含め、あらゆる商品カテゴリを統合した消費者向けライフスタイルアプリ「e 食住なび」を開発リリース 

eBASE 株式会社
代表取締役社長
岩田 貴夫 氏

「衣食住遊」の商品情報や活用方法を簡単に検索できるライフスタイルアプリ

ーーeBASE 社の事業についてお聞かせください。

岩田 当社は 2001 年に大阪で創業した企業で、商品情報管理システムの開発・販売を行う eBASE 事業と、IT 開発のアウトソーシングを請け負う eBASE-PLUS 事業を展開しています。
当社では創業以来、企業の DX には商品データベースが欠かせないという認識のもと、業界ごとに商品データベースの情報交換ができるプラットフォームの構築とパッケージソフトの販売を通して、各業界のデータ共通化を推進してきました。

この事業の中核を担うのが、業界ごとにメーカーと小売事業者の橋渡しをする B to B に特化したデータプールクラウドサービス「商材えびす」とパッケージソフトの「eBASE」です。当社ではこのたび、商材えびすに蓄積されたデータを活用して、消費者の CX と事業者の DX を同時に実現可能なサービスを企画・開発しました。それがライフスタイルアプリ「e 食住なび」です。
e 食住なびは、食品表示情報を提供する「e 食なび」と家電や住宅設備の情報を管理する「e 住なび」を含む、あらゆる商品カテゴリを統合したアプリで、「衣食住遊」の商品情報や活用方法を調べることが可能です。多言語対応や特定の小売事業者・メーカーを対象とした有償版の DX 推進ツール「e 食住なび for DX」も同時にリリースしています。

参考:「日々の暮らしを便利にするライフスタイルアプリ e 食住なび」

ーーe 食住なびを開発された背景には、どのような課題があったのでしょうか?

岩田 当社が創業した頃は、企業間の商品情報交換方法といえばメーカーが自社商品の情報を記入した紙を小売事業者がレジシステムなどに入力し直して販売業務を行うという、とても非効率なものでした。そこで当社は、まずフォーマットを統一したツールを制作してそれを提供し、各企業に「データ交換における手作業をなくしましょう」と提案するところから事業を開始しました。
その後、スーパーマーケットやドラッグストアなどで販売されている商品については「JAN コード」と呼ばれる商品識別コードを利用して、複数のメーカーと小売業が商品情報を共有できるデータプールサービス「商材えびす」を開発しました。

住宅業界などはいまだに共通の識別コードがない場合も多いのですが、当社のソリューションはそういった商品にも対応できるのが大きな特徴です。その価値は多くのお客さまに感じていただけており、「eBASE」は 2023 年 4 月 3 日現在で 19 万 4588 ものユーザーにご利用いただいています。

消費者、小売業者双方にメリットを提供する e 食住なび

ーーe 食住なびは、どのようなアプリなのでしょうか。

岩田 e 食住なびは、「ユーザーが求める商品情報をいつでもどこでも閲覧できるように」というコンセプトで当社が開発したアプリです。e 食住なびを使えば、商品カテゴリや名称、商品特徴などから、商品詳細データを検索することができます。
例えばスーパーの紙チラシや電子チラシなどに載っている商品には、金額は書かれていますが、それ以外の情報はほとんど記載されていません。店頭のプライスカードも同様です。
食品であれば、栄養素やアレルゲンの有無、その商品を使ったレシピなどを知りたい場合は、消費者自身が店員に聞いたりインターネットで検索したりして調べる必要があります。その作業は、アレルギーのあるお子さんの保護者の方や、宗教や習慣上の理由で食べられない食材がある方などにとっては、大きな負担となります。一方で、小売業者が単独で大量かつタイムリーに商品情報を集めるのは現実的ではありません。
e 食住なびを使って、当社の商材えびすに蓄積されている商品情報を小売業者のチラシ・自社アプリ・EC サイト・店頭のプライスカードなどに紐づけることにより、消費者はその場で豊富な商品情報を得られ、小売業者はサービス内容を向上させることができます。さらに、紙チラシの削減や店員の顧客対応の省力化など、企業 DX につながる効果も提供できると考えています。

開発の後押しとなったのは、とある医師からの手紙

ーーe 食住なびの開発に至った経緯についてお聞かせください。

岩田 当社が蓄積してきた商品データを消費者にも開示することで、サプライチェーンの上流から下流まですべての範囲で商品情報交換できる環境をつくろうという企画は、3 年ほど前から進めていました。他に類を見ない膨大な商品データの蓄積に加えて、既存のデータベースや検索システム、パッケージソフトといった資産を自社で保有しているため安価でサービスを提供できる点、また特許も取得しており先行メリットも得られる点から、他の EC サイトやアプリと差別化できる自信もありました。

まずは食品を対象とした商品情報開示アプリ「e 食なび」のリリースを目指したのですが、実は今の形での開発を進める大きなきっかけとなったのは、ある医師の方から届いた手紙でした。

その先生は小児科とアレルギー科を専門とされていて、スーパーマーケットとタイアップして卵や乳などのアレルゲンを含まない食品をリストアップし、まとめた資料を患者さんであるお子さんの保護者の方に配布する活動に取り組まれていました。そしてあるとき当社のサービスを知り、「データプールにアレルギー情報が入っているのであれば、ぜひ活用してほしい」という意見を寄せてくださったんです。
そこで当社ではその先生を含む 2 名の医師に協力を仰いで、もともとあったアプリの構想にアレルギー情報の開示というコンセプトを加えた形で開発を進めることにしました。自分たちのアプリが社会課題の解決に貢献する役割を得られたことは、開発に向けて大きなモチベーションになりました。

ーー開発に際して、苦労されたことはありましたか?

岩田 開発よりも営業フェーズでの苦労が大きかったですね。もともと私たちの製品を担当いただいていたのは、品質管理部門や情報システム部門といった CX、DX とは直接関係ない部門でしたので、e 食住なびに対するアドアイスや意見をいただくことはできましたが、採用にはつながりませんでした。
また販売促進部門に紹介していただいても、開発当時の小売業界はコロナ禍の影響を強く受けていましたので、どの企業も新規の販売促進施策を検討する余裕がない状況でした。ですから、ここ数ヶ月でようやく具体的なプロジェクトが進みつつあるところです。

ユーザー数に応じて柔軟に拡張できる Azure をプラットフォームに採用

ーー日本マイクロソフトとのコラボレーションについてお聞かせください。

岩田 当社のデータプールサービスでは、創業当初から Microsoft SQL server を使っていました。また e 食住なびのプラットフォームに関しては、Azure を採用しています。e 食住なびの開発にあたり、当社が主体となってサーバを立ち上げる必要があったことと、ユーザーの増加に合わせて柔軟に拡張できるプラットフォームという条件に当てはまるのは Azure しかないという判断でした。
それに加えて、技術支援や営業販促支援も大きな魅力でした。技術支援に際しては Azure の利用方法や Q&A 対応、資金的なアドバイスもしていただけましたし、今後は技術者の育成にも協力していただく話が進んでいます。また、日本マイクロソフトのパートナー企業への橋渡しをしていただけるのもありがたく感じています。実際に、ご紹介いただいた LINE 社とは顧客開拓における協業プロジェクトが進んでいます。

実は開発を始めた当初は、このアプリはきっとすぐに爆発的な需要があるだろうと予想していたんです。だからこそ膨大なユーザーからのアクセスにも対応できる Azure をプラットフォームに選んだ側面もありますので、ようやくこれから本領を発揮してもらえると期待しているところです (笑) 。

あらゆる業界、業態に対応可能な e 食住なびサービスをさらに拡充していきたい

ーー現状の展開と、今後の展望についてお聞かせください。

岩田 数社から引き合いがあるうち、すでに導入いただいているのが積水ハウス社です。e 住なびを利用して、住宅を購入されたお客さま向けの取扱説明書一括閲覧システムを開発しました。
以前は、家電や住宅設備の操作説明書やメンテナンスマニュアルを手作業でバインダーに挟んでお客さまにお渡ししていたそうなのですが、バインディング作業が非効率的なうえに、お客さまもほとんど見ることなくしまい込んでしまうという課題がありました。e 住なびを活用することで、紙ベースだったマニュアルをデータ化し、スマートフォンひとつで確認できるようになりました。
ほかにも小売業界でいくつか導入プロジェクトが進んでおり、近々リリースできる予定です。まさに開発のきっかけとなったアレルギー情報を含めた商品情報開示アプリの開発プロジェクトもあり、リリースされるのがとても楽しみです。

今後は、ドラッグストアやホームセンター、アパレル、カー用品など、さまざまな業態での展開を進めたいと考えています。外食業でも商品情報開示の取り組みが進んでいますので、お手伝いできる部分はあると考えています。B to B 分野で活用いただける e 食住なび for DX も用意していますから、メーカーの自社製品情報の開示ツールなどにも展開していきたいですね。

新たな機能としては、レシートや EC サイトの購買履歴と連携した商品情報開示機能の実装を計画しています。また、将来的にユーザーが増えれば、e 食住なびに貯まったビッグデータを活用したサービスの展開も考えられると思っています。社会的にも健康志向が高まっていますから、e 食住なびのニーズは今後ますます高まっていくと期待しています。

日本マイクロソフトにも引き続き、Azure の活用事例の紹介や機能面のアドバイスなどの技術的なご支援と、さらなる協業のご支援をお願いできれば幸いです。 参考:「日々の暮らしを便利にするライフスタイルアプリ e 食住なび」

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【オンデマンド配信】スマーター・リテイリング・フォーラム 2023〜流通業デジタルトランスフォーメーションの潮流〜 http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/retail/2023/03/27/smarter-retailing-forum-2023-report/ Mon, 27 Mar 2023 02:00:00 +0000 日本マイクロソフトは流通・小売業の DX のために、インテリジェントなクラウド・エッジテクノロジーによる「Enabling Intelligent Retail」を推進してきました。しかし流通・小売業界を取り巻く環境はディスラプター(破壊的企業)の出現からコロナ禍を経て大きく変化しており、直近ではウクライナ危機に端を発するコスト上昇圧力や歴史的なインフレなどの発生と同時に、気候変動やエネルギー問題など、危機が複合的同時多発的に発生する「ポリクライシス」とも呼ばれる混沌とした状況に陥っています。現代は極めて厳しく、不確実な時代と言えるでしょう。

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日本マイクロソフトは流通・小売業の DX のために、インテリジェントなクラウド・エッジテクノロジーによる「Enabling Intelligent Retail」を推進してきました。しかし流通・小売業界を取り巻く環境はディスラプター(破壊的企業)の出現からコロナ禍を経て大きく変化しており、直近ではウクライナ危機に端を発するコスト上昇圧力や歴史的なインフレなどの発生と同時に、気候変動やエネルギー問題など、危機が複合的同時多発的に発生する「ポリクライシス」とも呼ばれる混沌とした状況に陥っています。現代は極めて厳しく、不確実な時代と言えるでしょう。

これからの流通・小売業に求められるのは、ステイクホルダーとの関係の本質や変革方針を見つめなおすこと。そして不確実な社会環境に柔軟に対応し、価値を生み出す力「レジリエンス」です。

こうした背景を鑑み、デジタルの力で各業界・各企業を支援してきたマイクロソフトでは、新たに「Resilient Retail」をスローガンとして掲げ、流通・小売業者が今後取り組むべき DX の姿を提案していく方針を定めました。

スマーター・リテイリング・フォーラムは、流通業におけるユーザー企業と IT ベンダー企業の協業による IT 技術の標準化推進を活動目的として、2004   年に設立されたオープン フォーラムです。(スマーター・リテイリング・フォーラムについて

2023 年 3 月 3 日(金)に「リテールテック JAPAN 2023」のなかで開催された「スマーター・リテイリング・フォーラム 2023 〜流通業デジタルトランスフォーメーションの潮流〜」(以下SRF)では、マイクロソフトが提供する価値、そしてマイクロソフトが掲げるテーマ「Resilient Retail」を体現する企業・ソリューションの事例紹介を通して、流通・小売業界の最新動向と今後の展望が示されました。その模様はオンデマンド配信にてご覧いただくことができます。

本稿では日本マイクロソフト 流通サービス営業統括本部  藤井 創一によるセッション「Resilient Retail~小売業 DX の取組と事例のご紹介~」の内容を中心に、SRF の見どころを紹介します。興味をお持ちの方は、ぜひオンデマンド配信をご視聴ください。

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「Resilient Retail~小売業 DX の取組と事例のご紹介~」
日本マイクロソフト 流通サービス営業統括本部
藤井 創一

オンデマンド配信はこちら

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流通・小売業界から感じるデジタル技術への期待

本セッションは、マイクロソフトが取り組む流通・小売業 DX の事例とマイクロソフトの取り組みの紹介を中心として構成されています。まず藤井は、2023 年 1 月にニューヨークで開催された全米小売業協会主催の「NRF2023」から感じた、流通・小売業界の課題感とデジタル技術への期待について語ります。

藤井は、NRF 2023 のキーメッセージだった「Break Through」を実現するために米国各企業が取り組みを進めるポイントとして、「顧客/消費者」「社員/従業員」「サプライチェーン」「店舗」「新たなトレンド」を挙げたうえで、「こういった論点で Break Through を進めていくには、デジタルをうまく使っていくということも(NRF における」共通の認識だった」と分析します。

「一方で、テクノロジーが主語となるような発表はあまりなかったという感想も聞かれました」と藤井。その理由について、これまでのように AI や IoT、ドローンといった技術に関する話題が中心となるのではなく、それらの技術を流通・小売業の課題解決のために活用して成果を出すことが目的であり、そういった事例やソリューションの展示が多かったからではないかと推測します。

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その一例として、藤井は Kroger 社のセッションを紹介。同社のデジタルツインを用いた店舗改革への取り組みは、最先端のテクノロジーの導入経緯ではなく、いかに店頭での顧客体験価値や労働生産性の向上を果たしていくのかという文脈で語られていました。さらに藤井は「Kroger 社単独ではなく、IT ベンダー、テクノロジーベンダーと意識を共有して進めた結果ないしはその過程のお話をされていた」と、さらに一歩踏み込んだ流通・小売業とパートナーとの協業がカギとなっていた点をポイントとして付け加えました。

企業のレジリエンスを支えるデジタル技術

続いて藤井は、マイクロソフトが実施したグローバルの流通・小売企業の CEOへのリサーチ結果を紹介。「不確実性の高い時代のなかで、どのような方針を優先させていくのか」という問いかけに対して、実に約 85% もの CEO が「レジリエンス(変化に柔軟かつ迅速に対応していく能力)の獲得」を挙げたといいます。

藤井は「過去になく厳しい事業環境と、この結果を踏まえて、私たちマイクロソフトは、信頼できるデジタル基盤と価値の提供を通して、流通・小売業の皆さまにレジリエンスを持ったリテイラーになっていただくための支援をすることを方針として進めていきたい」と宣言。「Resilient Retail」という言葉を示し、「データによる新たな価値創出」「顧客エンゲージメントの向上」「リアルタイムでサステナブルなサプライチェーンの構築」「従業員の業務効率化と働き方改革」の 4 つを具体的な施策として掲げます。

藤井がこれらのうち「顧客エンゲージメントの向上」の一例として挙げたのが、店頭顧客体験の向上を目指す、欧州で自立型のインテリジェントストア「ナノストア」を展開するコンビニエンスストアチェーン Zabka 社の取り組みです。

Amazon GO の出現以来、こうした無人のインテリジェントストアでは複数の先端センシング技術の導入といった積極的な挑戦が続けられた一方で、本格的な展開をするうえでは、運用、コスト対策といったさまざまな問題をクリアする必要がありました。

Zabka では、AiFi やマイクロソフトのようなテクノロジー企業が伴走することで、シンプルな画像識別のみでのセンシングや、顧客の決済サービス選択を容易にする、API による柔軟なサービスインテグレーション、また Microsoft Cloud for Retail によって提供される、小商圏での MD 最適化プロセスを迅速に実行するための店舗分析サービスの実装など、チェーンストアへの展開も見込めるソリューションを実現しています。

技術ではなく成果を見据えて伴走するマイクロソフト

後半のトピックはマイクロソフトが提供する流通・小売業の DX 支援施策について。藤井はまず「マイクロソフトはデジタル基盤を提供する企業ですが、それに加えて、より流通・小売業に最適な基盤の開発と提供、マイクロソフト自身が持つ DX ナレッジの共有、パートナーエコシステムの提供、そして人材育成支援を付加価値として、流通・小売業をサポートしています」と、その立ち位置を示します。

マイクロソフトでは流通・小売業界向けに「Microsoft Cloud for Retail」を展開しています。藤井はそのなかで新たに提供が開始された流通・小売業界特化のコンポーネントとして、「Smart Store Analytics」と「Store Operations Assist」を紹介。前者はデータに基づいた店舗オペレーション支援ソリューションであり、Zabka の事例でも用いられています。

さらに藤井は、「非常に問い合わせが多い」内容として、OpenAI を紹介。マイクロソフトではすでに、OpenAI が提供する ChatGPT を Microsoft Bing に取り込んでリリースしていることに言及。実際に ChatGPT 操作のデモンストレーションを披露したうえで、流通・小売での典型的な活用方法の一例として「EC サイトに ChatGPT を組み込むことで、これまでと違う顧客体験の提供ができるのではないか」とその可能性を示唆します。また、ChatGPT 利用の先行事例として CARMAX 社が取り組む生産性向上のための EC 上の製品レビュー自動要約と商品説明コンテンツの自動生成事例を紹介しました。

一方で、「こういったテクノロジーを使っていくにあたり、その可能性を前向きに捉えながらも、流通・小売業のビジネスのなかでどんな成果、課題解決を目指すのかを前提に(顧客と)伴走していきたい」と、テクノロジーそのものではなく、それを活用してどんな成果を目指すかを考えることが大事、という本セッションのメインテーマに回帰。Web3.0、メタバースの時代と言われる今、パートナーや顧客企業と伴走しながら「Resilient Retail」の推進に取り組んでいくことを改めて宣言して、セッションを終了しました。

オンデマンド配信:Resilient Retail ~小売業 DX の取組と事例のご紹介~

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フォーラムを盛り上げる多様なセッション

「自然と人、人と人をつなぎ、人間性を回復する」スノーピークが実践するデジタル戦略の歩み」

オンデマンド配信:「自然と人、人と人をつなぎ、人間性を回復する」スノーピークが実践するデジタル戦略の歩み

本セッションでは株式会社スノーピーク 専務取締役兼株式会社スノーピークビジネスソリューションズ 代表取締役 村瀬 亮 氏と、スノーピークビジネスソリューションズとともにスノーピーク社の DX を推進してきたネクストリード株式会社 代表取締役 小国 幸司 氏によって、「人と人との信頼関係こそが DX 推進における最も重要なプロセスである」という主旨に沿った対談が展開されました。

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同社では「Datadam」と名付けられた、社内のあらゆるデータを蓄積し、データ・ドリブンな企業経営に活用することを目的としたプラットフォームを構築、DX を推進しています。村瀬氏は冒頭で「エンジニアをキャンパーに」というキーワードを提示。日本を代表するアウトドアメーカーであるスノーピーク社で DX を推進するにあたり、まずはエンジニアを各セクションに派遣して、対話のなかから課題を抽出すると同時に、コミュニケーションを深めることが重要だったと語ります。

社内のデジタルリテラシーに濃淡があるのは当然であり、外部やIT担当部署の論理で DX 施策を進めてしまうと反発を招きかねません。良好な人間関係の構築により、チームになることが DX の一歩であるということ、デジタルはあくまで道具であり、それを使うのは人間であることに改めて気づかされるセッションとなりました。

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登壇者
株式会社スノーピーク 専務取締役
株式会社スノーピークビジネスソリューションズ 代表取締役 村瀬 亮 氏
ネクストリード株式会社 代表取締役 小国 幸司 氏

パネルディスカッション
「“ K ” の本質~日本の小売業界を真剣に考えると、本質的な潮流が見えてくる~“Team-K”」

オンデマンド配信:”K” の本質 ~日本の小売業界を真剣に考えると、本質的な潮流が見えてくる~

Team-K は、所属も肩書きもさまざまでありながら、企業の垣根を超えて「競争・競合」を「強調・協創」に変革し、流通・小売業界を変えていきたいという志を持った 6 名のメンバーにより構成されています。

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まず紹介されたのは業界の商品情報共通化プロジェクトについて。これまでも課題とされていた業界内での商品情報の統一、ひいてはサプライチェーンや小売現場の生産性向上につながることが期待されています。プロジェクトそのものの画期性はもちろん、業界トップ 2 社のキーパーソンであるイオングループのユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス副社長兼カスミ社長の山本慎一郎氏と、セブン & アイ・ホールディングス執行役員の齋藤正記氏が肩を並べて議論するという常識はずれの展開に、参加者から驚きの声が上がっていました。

次に紹介されたのは、イオン九州が中心となって開催されている九州物流研究会について。イオン九州株式会社代表取締役社長の柴田祐司氏から、「原価は競争、物流は協創」との考えのもと、同じ地域に展開するライバルであるイオン九州とトライアル社が手を組んで実施された共同物流プロジェクトの事例が紹介されました。イオンの店舗にトライアルの配送車両が横付けされたインパクト十分の写真に、会場からどよめきが起こりました。

最後に会場の参加者に Team-K の取り組みへの参画が呼びかけられ、待ったなしの業界変革に向けた小売事業者の共創時代の始まりを予感させるセッションとなりました。

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登壇者
イオン株式会社 SM (スーパーマーケット)担当付チームリーダー 北村 智宏 氏
株式会社 NTT データ ソートリーダーシップマネージャー 田邉 裕喜 氏
グランドデザイン株式会社 代表取締役社長・北海道大学客員教授 小川 和也 氏
ソフトバンク株式会社 シニアプロダクトマネージャー 神成 昭宏 氏
パナソニックコネクト株式会社 エグゼクティブ インダストリースペシャリスト 大島 誠(マック大島)氏
日本マイクロソフト株式会社 インダストリーテクノロジーストラテジスト 岡田 義史 氏

ゲスト
イオン九州株式会社 代表取締役社長 柴田 祐司 氏
株式会社カスミ 代表取締役社長 山本 慎一郎 氏

株式会社セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 齋藤 正記 氏
[企業名 五十音順表記]

「POS とデータ活用を促進する協議会標準化活動アップデート」

オンデマンド配信:POS とデータ活用を促進する協議会標準化活動アップデート

本セッションでは、SRF を構成する OPOS  技術協議会および .NET 流通システム協議会からの活動報告が行われました。

最初に登壇したのは OPOS  技術協議会 技術部会長 NEC プラットフォームズ株式会社の五十嵐 満博 氏。OPOS  技術協議会では、POS アプリケーションと周辺端末インターフェイスの標準仕様策定と普及を行なっており、70 社 280 製品(2023 年 2 月末現在)が準拠製品として登録されています。

2022 年度に更新された第 1.16 版では、POS レジや店頭システムと連動するヒューマノイド型ロボットなどのデバイスを想定した「リテールコミュニケーションサービスデバイス(RCSD)」の仕様が新たに追加されました。仕様の標準化により、共通のインターフェイスを用いたアプリケーション構築が可能になります。またセッション後半では、ビデオキャプチャやジェスチャーコントロールを実装する際の仕様についての説明と、RCSD のユースケースの紹介が行われました。また最後に、国内のPOSスタンダードとして普及済のOPOS仕様の、次世代店舗やPOSのサービス化に対応した革新・バージョンアップに向け、「UPOS2.0」仕様策定活動を推進していくことが報告されました。

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続いて.NET 流通システム協議会 技術部会長 東芝テック株式会社 高橋 伸幸 氏が登壇。.NET 流通システム協議会では店舗システムを中心とした XML スキーマとデータモデルの標準仕様策定と普及を行っており、135 社が参画、3 つの分科会(2023 年 2 月末現在)で構成されています。

2022 年度の活動内容として、次世代 POS 分科会の UPOS2.0 との調整とWS-POS の実装推進と、電子レシート分科会における国際標準化に向けた OMG への提案に際しての Open API 提案資料の作成業務が報告されました。

両協議会とも、2023 年度以降の予定としてこれらの活動をさらに深化・推進することを報告して、セッションは終了となりました。

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登壇者
OPOS 技術協議会 技術部会長 NEC プラットフォームズ株式会社 五十嵐 満博 氏
.NET 流通システム協議会 技術部会長 東芝テック株式会社 高橋 伸幸 氏

「ニトリにおける業務部署でのデジタル活用推進の取り組みと今後」

オンデマンド配信ニトリにおける業務部署でのデジタル活用推進の取り組みと今後

株式会社ニトリホールディングスは、「自前主義」を掲げて販売・製造・物流・貿易・商社機能に至るまで一気通貫で取り組んでおり、社内システムも IT 部門によって内製されています。

セッションでは同社のデジタル推進に向けたさまざまな取り組みが紹介されましたが、なかでも BPA 推進チームによる業務部門の社内 IT ツール利活用促進に向けたアプローチは非常に示唆深い内容でした。

株式会社ニトリホールディングス 情報システム改革室 BPA 推進チーム マネージャーの玉山 久義 氏によると、BPA 推進チームは「知ってもらう」「学んでもらう」「使ってみようと思ってもらう」というステップごとにさまざまな仕掛けを施すことで、非システム部門が自発的に IT ツールを駆使して業務変革を推進できる環境を実現したそうです。その取り組みからは、IT ツールを導入するだけでは不十分であること、活用方法を示しながら丁寧にフォローアップすることの大切さがよく伝わってきます。

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セッションの後半では、同社の業務部門が Microsoft PowerPlatform を活用してシステムを開発したふたつの事例が紹介されました。社内の問い合わせ対応や店舗間の情報共有など、直接売上に関わらないためにシステム開発の優先順位を高く取れないような機能やアプリを業務部門が内製することで、迅速な課題解決を実現したうえで新たな展開につながるというプロセスは、DXを推進したい企業にとって大いに参考になるのではないでしょうか。

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株式会社ニトリホールディングス 情報システム改革室 BPA 推進チーム マネージャー 玉山 久義 氏
株式会社ニトリホールディングス 情報システム改革室 BPA 推進チーム 石川 文月 氏

以上で紹介したセッションは、下記オンデマンド配信にてご覧いただくことができます。

各セッションのオンデマンド配信一覧

1Resilient Retail ~小売業 DX の取組と事例のご紹介~
2「自然と人、人と人をつなぎ、人間性を回復する」スノーピークが実践するデジタル戦略の歩み
3“K” の本質 ~日本の小売業界を真剣に考えると、本質的な潮流が見えてくる~
4POS とデータ活用を促進する協議会標準化活動アップデート
5ニトリにおける業務部署でのデジタル活用推進の取り組みと今後

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【第 39 回流通情報システム総合展】「リテールテック JAPAN 2023」出展のご報告 http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/retail/2023/03/14/retail-tech-japan-2023-thankyou/ Tue, 14 Mar 2023 05:00:00 +0000 日本マイクロソフトは、2023 年 2/28 ~ 3/3 に東京ビッグサイトにて行われた国内最大級の流通・消費財業界向け IT 展示会「リテールテック JAPAN 2023」と同じく 2/14 ~ 3/10 にオンラインにて開催された「リテールテック JAPAN Online 2023」に出展いたしました!会場およびオンラインブースに多くの皆様にご来場いただき誠にありがとうございました。また、共同出展いただいたパートナー企業様にもお礼申し上げます。

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日本マイクロソフトは、2023 年 2/28 ~ 3/3 に東京ビッグサイトにて行われた国内最大級の流通・消費財業界向け IT 展示会「リテールテック JAPAN 2023」と同じく 2/14 ~ 3/10 にオンラインにて開催された「リテールテック JAPAN Online 2023」に出展いたしました!会場およびオンラインブースに多くの皆様にご来場いただき誠にありがとうございました。また、共同出展いただいたパートナー企業様にもお礼申し上げます。

本年のマイクロソフト ブースでは、「Resilient Retail」をテーマに小売 / 流通業界におけるさらなる DX 推進に向け、最新情報をお届けしてまいりました。リアル、オンライン共に弊社が提案する「データによる新たな価値創出」「顧客エンゲージメントの向上」「リアルタイムでサステイナブルなサプライチェーン」「従業員の業務効率化と働き方改革」という 4 つの価値を軸に、具体的なソリューションと弊社が支えるテクロジ基盤のご紹介いたしました。

ここでは、リアル会場にて配布した資料を期間限定で公開している他、会場にて実施したセッション動画の情報など、本イベントに関連する各種コンテンツをお届けします。ぜひこの機会にご覧いただき、皆様の DX 推進にご活用くださいませ。


開催概要

リテールテック JAPAN 2023
[主催] 日本経済新聞社
[開催期間] 2023 年 2 月 28 日 (火) ~ 3 月 3 日 (金) 午前10時~午後5時(最終日のみ午後4時30分終了)
[会場] 東京ビッグサイト 東展示棟(東京都江東区有明3-10-1)

リテールテック JAPAN Online 2023
[主催] 日本経済新聞社
[開催期間] 2023 年 2 月 14 日 (火) ~ 3 月 10 日 (金)
[会場] 日経メッセオンライン

公式サイト > リテールテックJAPAN | 小売・流通業をデジタルで変革する (nikkei.co.jp)


各種コンテンツ

■オンライン動画のご案内

【リテールテック JAPAN Online 2023 オンデマンド】
Resilient Retail ~マイクロソフト小売業界向け取組み~> 動画はこちら
マイクロソフトが取り組む小売業界のサステナビリティ> 動画はこちら
店舗等の分散したシステムを支えるためのハイブリッド クラウドという選択肢> 動画はこちら
DX 人財の育成と市民開発の推進> 動画はこちら
Microsoft Cloud による小売業におけるデータの利活用の推進> 動画はこちら

デジタルトランスフォーメーション チャンネル(外部サイト)内の特集ページにて、「リテールテック JAPAN 2023 Online」でご紹介していたセッション動画を再公開しています。ぜひこちらもご覧ください。
デジタルトランスフォーメーション チャンネル 特集サイト

■パートナー ソリューション ガイド最新版(2023 年 2 月)のご案内

出展社/パートナー社(敬称略)資料
日本マイクロソフトResilient Retail ソリューションガイド
Intelligent Consumer Goods ソリューションガイド

■スマーター・リテイリング・フォーラム 2023

さらに、本イベントの併催セミナーとして開催された「スマーター・リテイリング・フォーラム 2023」の開催レポートも公開しております。記事内ではアジェンダごとのオンデマンド動画もご案内しておりますので、ぜひこの機会にご覧ください。
【オンデマンド配信】スマーター・リテイリング・フォーラム 2023〜流通業デジタルトランスフォーメーションの潮流〜 – マイクロソフト業界別の記事 (microsoft.com)

>>セミナーの詳細はこちら

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脳科学者がつくった EC メタバース「メタストア」開発秘話〜現実とはなんなのか。とある社会実験への招待〜 http://approjects.co.za/?big=ja-jp/industry/blog/retail/2022/12/09/metaverse-ec-neuroscientist-metastore/ Fri, 09 Dec 2022 01:11:01 +0000 「自分に見えているこの世界は、他の人たちと同じ世界なのだろうか?」と思い悩んだ経験を持つ方は、案外多いのではないでしょうか。
「現実を科学し、ゆたかにする」をミッションに掲げ、体験をデジタル化することで空間や時間、身体の制限を超えて「再現可能な体験の共有」を目指す株式会社ハコスコでは、メタバース空間に店舗や展示空間を開設できる EC メタバース「メタストア」を 2022 年 11 月から正式にリリース

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メタバース空間の小売店を背景に並ぶ男女

「自分に見えているこの世界は、他の人たちと同じ世界なのだろうか?」と思い悩んだ経験を持つ方は、案外多いのではないでしょうか。
「現実を科学し、ゆたかにする」をミッションに掲げ、体験をデジタル化することで空間や時間、身体の制限を超えて「再現可能な体験の共有」を目指す株式会社ハコスコでは、メタバース空間に店舗や展示空間を開設できる EC メタバース「メタストア」を 2022 年 11 月から正式にリリース。誰もが簡単に、0  円からバーチャルコミュニケーションを実現できるこのサービスは、法人・個人問わず幅広い活用方法が期待され、リリース直後から多くの反響を呼んでいます。

株式会社ハコスコ
代表取締役 藤井 直敬 氏

藤井直敬氏の写真

開発責任者 富田 有棋 氏

富田有棋氏の写真

社会実験の感覚でソリューションを開発するハコスコ社

――貴社の概要と提供しているサービスについてお聞かせください。

藤井 10 年以上前になりますが、私は理化学研究所で SR(代替現実)の研究をしていました。私は当時から「この技術を用いれば専用ハードウェアを使わなくても仮想空間を体験できる」と思っており、周囲の関心も高かったものの事業化したいという手は上がらず、ダンボール製のビューワーを開発したことをきっかけとして、自分自身で 2014 年に創業しました。

富田 私たちが提供するサービスは、ダンボール製 VR ゴーグルをはじめとする VR ソリューション、脳波計測アプリやニューロフィードバックなどのブレインテックソリューション、そしてECメタバース「メタストア」の開発・提供が中心となっています。

藤井 私は「現実とは何かを考えること」をライフワークとしている脳科学者です。ですから、ハコスコを脳の外側と内側の両方から現実を理解しようとする「現実科学」の社会実験プラットフォームに近い感覚で運営しています。ブレインテックなどはまさにその考え方に沿ったソリューションと言えます。
また、事業展開において私たちが大切にしているのは、「すべての人に安価で使いやすいサービスを提供すること」です。現在、ゲームプラットフォームとしてのメタバースはゲームという目的性を確立していますが、その他の領域ではまだ「なくても困らないもの」に留まっています。私たちはそれを、誰もが気軽に利用でき、日常生活で欠かせないものにしていきたい。そのために開発したのが段ボール製 MR ゴーグルであり、メタストアです。メタストアはデバイスやアプリケーションがなくても簡単にメタバース上で EC を始められる画期的なサービスです。

メタバース空間にあるECショップ

参考:
メタストア HP
ハコスコショールーム

PC とブラウザさえあれば、すぐに無料でも始められる「メタストア」

――メタストアは、無料版を追加して 11 月に正式にリリースされました。どのようなサービスなのでしょうか?

富田 メタストアは、EC やコミュニティ、展示などの空間をメタバース上に再現できる「EC メタバース」です。3D モデルを利用して、リアルな空間と同様の有機的なコミュニケーションを通じて顧客やチームメンバーとのエンゲージメントを高めることで、ユーザーの LTV(ライフタイムバリュー/顧客生涯価値)と売上の増加に貢献することができます。ターゲットとしては主に、コミュニケーションを重視する接客業やファンイベント、展示会などを想定しています。
メタストアを始めるには、特別な設備は必要ありません。PC とブラウザさえあれば誰でも簡単に利用可能で、学習コストが低く、すぐにスペースをオープンできます。導入から公開までのタイムスパンが短くて済みますし、競合サービスより安価に導入可能な価格設定も大きな特長です。

藤井 メタストアでメタバースを実用的な商用空間と定義している点は、市場に大きなインパクトを与えられると考えています。
まず実店舗が必要ありませんから、同程度の購入体験を提供できるのであれば、店舗としてはメタストアで売る方が効率が高いと言えます。また消費者にとっては、送料がかからない、ポイントが貯まるといったベネフィットがなければ、同じ商品ならどの EC サイトで買っても変わりませんが、メタストアは一般的な EC サイトでは提供できない「情報」という価値を付加して提供できます。ボイスチャット機能や今後実装予定のビデオチャット機能でコミュニケーションを図り、顧客と店舗とのエンゲージメントを高めることにより、商いの上で大切な「囲い込み」に役立てることができる。すなわち「店主の顔が見える」 EC サービスであることが大きな利点だと考えています。
個人的には、メタストアはセレクトショップのような店主の個性が前面に出るような業態に向いていると考えています。コンビニエンスストアよりは稀覯本を集めた本屋、ファミリーレストランよりはファンの集まるイベント会場のようなイメージですね。

――リリース後にはどのような反響がありましたか?

藤井 当初から想定していましたが、やはり自分でメタバース空間に店舗をつくることに対する心理的なハードルは高かったですね。ワークショップに参加していただくと、皆さん「こんな簡単にできるんだ」と驚かれます。ですから実際に手を動かすところまで誘導する作業を地道に進めることが必要だと思っています。
メタストアに興味を持たれた企業の皆さんとお話しをしたところ、共通して「イノベーティブな事業を起こさなければいけない」という課題感を持っており、メタバースをその可能性のうちのひとつとして捉えていることがよくわかりました。これまで打ち上げ花火的にメタバースにコストを掛けて、一時的な効果しか得られなかった企業も多かったようです。その点メタストアはかなり低価格で PoC を回せるので、本当に意味のあるメタバースの利用方法を試行できます。メタストアの効果は私たちとしても知りたい部分ですから、PoC のコストを両者で按分するといった提案を行うことも多いですね。

マイクロソフトとのコラボレーション効果を最大限に活用

――メタストアでは Microsoft Azure をプラットフォームとして活用されています。

富田 私は前職で Advanced Specialization を取得している企業に籍を置いており、Azure や HoloLens 2 を利用したアプリケーション開発に携わるなど、当時から日本マイクロソフトと頻繁に協業していました。ハコスコでも HoloLens 2  で 360 度映像を再生する「ホロスコ」というアプリケーションの開発や、メタストアではプロトタイプ版から Azure を使わせていただいています。
Azure は ARM テンプレートの利用によって一度つくったサービスの複製が簡単に行えるので、インフラ作業の工数を大幅に抑えることができました。また標準サービスの Application Insights によるログ監視と可用性テストによって、エラーの検知と保守作業を効率化できました。自分が使い慣れているだけでなく、知見のない作業者も簡単に扱えるのは大きな利点だと感じています。

――日本マイクロソフトには今後どのようなことを期待されていますか?

富田  Microsoft Mesh は、メタバース上でのコミュニケーションサービスとしてメタストアとの親和性が高いと感じており、期待値も高いです。今後メタストアに HoloLens 2 を対応させることも視野に入れていますから、その際にはぜひ利用したいと思っています。
また今年から Microsoft for Startups の採択を受けることになり、サブスクリプションサービスのコストを大幅に削減できました。コストを気にせずに Azure  の先進的な技術を検証できる点も含めて、大いに助かっています。また、メタバースに関する先進的な技術やノウハウの共有といったパートナーシップも大きなメリットですし、コンテストへのアサインやイベントへの登壇依頼といった事業支援も大変ありがたいです。これからも日本マイクロソフト主催・協賛のイベントや展示会には積極的に参加していきたいです。

ユーザーとともに、メタバースの可能性を探っていきたい

――今後の課題や展望についてお聞かせください。

富田 これはメタバースのサービス全体に言えることですが、導入時の効果をいかに持続させるかが課題だと考えています。導入後の管理運用コストに見合った施策を打ちながらいかに価値を維持するか。目先の宣伝効果ややっている感の充足で終わるのではなく、PoC を繰り返しながら検証を進めたいと思います。

藤井 正式リリースに際して、メタバースという利用用途が明確ではないものを世の中に受け入れてもらうためには、ユーザーの裾野を広げておく必要があると考えて無料版をリリースしました。まずは使っていただき、機能差分を超えたリクエストが出てきた場合にアップセルできればと思っています。ぜひ、「実験に参加してみる」くらいの気持ちでたくさんの人に使ってほしいですね。
また先日、3D スキャンアプリ「WIDER」を提供する株式会社 WOGO との業務提携を発表しました。WIDER を使えば、本来高価な設備が必要だった精巧な 3D モデルを、スマートフォンでスキャンした画像からつくることができます。その機能を活用してゆくゆくはメタストア内に 3D モデルを蓄積し、3D モデルの流通ネットワークを構築することで、付加価値をさらに高めたいと考えています。多言語対応やチケット機能も実装される予定ですので、海外へのサービス展開やライブコマース分野での活用も進むはずです。

――メタバースに興味を持つ方々にメッセージをお願いいたします。

藤井 メタバースは新たな可能性を持った空間であり、私たちも含めてまだ利用方法の正解を見つけた人はいません。ですから、メタストアのようなコンパクトなサービスでいろいろなことを実験的に試して可能性を探るのは、とても有意義なことだと考えています。
私たちはメタバースという奥行きと固定の空間性のある Web コミュニケーションによって、事業者は顧客エンゲージメントを増大させることができると考えています。その仮説を確かめるためにも、多くのユーザーに私たちと一緒に社会実験に参加していただき、ともにメタバースが持つ可能性を確認し、ベネフィットを享受してほしいと思います。

参考:
メタストア HP
ハコスコショールーム

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