Medtech はこのように創薬の加速に役立っています
ここでは、新薬の発見と開発における人工知能について詳しく説明するとともに、これが新薬開発のコスト削減と、命を救う治療法を患者に届けるまでの時間短縮にどのように役立っているかを紹介します。
コストの上昇が続く新薬発見と開発
医療従事者が患者を治療する方法は、急速に変化しています。精密医療 (Precision Medicine) が当たり前のものになりつつあるなかで、研究者は複雑な健康問題と格闘し、製薬業界は命を救う医薬品の開発時間短縮に奮闘しています。
現在、製薬会社が新しい医薬品を市場に送り込むにはきわめて長い時間と多額の費用がかかっています。Taconic Bioscience によれば、2019 年時点で医薬品 1 つの開発に約 28 億ドルの費用と 12 年以上の時間を要しています。それにもかかわらず、米国では新薬候補の 90% が FDA の承認不合格となっています。
朗報は、人工知能 (AI) が新薬発見と開発のプロセスを加速できる、途方もない可能性を秘めていることです。
AI はどのように新薬発見プロセスを効率化するか
ほとんどの創薬の最初のステップは、特定の疾病に関与する、標的となる分子 (通常はたんぱく質) に結合して変調させることのできる化合物を合成することです。正しい化合物を見つけるために、研究者は何千もの候補を調べます。標的が特定されたら、類似の化合物が収録された膨大なライブラリをスクリーニングして、その疾病のたんぱく質との最善の相互作用を見つけます。
現状では、ここに到達するまでに 10 年以上の時間と数百万ドルの費用がかかります。しかし、人工知能と機械学習 (ML) を使う MedTech は、このプロセスを効率化でき、製薬会社が新薬を発売するまでの時間と費用を削減します。たとえば、これらのテクノロジで次のようなことができます。
分子ライブラリをくまなく調べる
ライブラリをスクリーニングして分子候補を見つけるとき、このライブラリはあまりにも巨大であるため、人間の研究者がすべてを自分たちで精査することはほぼ不可能です。対照的に、AI は標的化合物の候補を巨大なデータセットの中ですばやく特定できるので、研究者が何百時間もラボで費やす必要はなくなります。
化合物の特性を予測する
従来の新薬発見プロセスでは、時間のかかる試行錯誤が行われます。AI と ML を組み合わせる MedTech のソリューションは、このプロセスをスピードアップするのに役立ちます。候補となる化合物の特性を予測できるので、望みどおりの構造を持つ化合物だけを合成の対象として選ぶことができます。これで、効果を持つ可能性が低い化合物を研究する必要はなくなります。
新しい化合物を発明する
スクリーニングでは有望な結果がほとんど得られなかったときでも、AI は、望みどおりのパラメーターに適合して成功の可能性が高い、まったく新しい化合物を見つけるためにアイデアをブレーンストーミングすることができます。
AI は新薬発見をこのように支援できます
AI はどのように臨床試験に使用されるか
Deloitte によれば、新薬候補のうち臨床試験段階に入ることが規制当局によって承認されるのはわずか 10% です。創薬プロセスの中で、時間も費用も最大となる段階である臨床試験では、人体での試験がいくつものフェーズに分けて行われ、各フェーズには数百あるいは数千人の参加者が関与します。
従来の直線プロセスであるランダム化比較試験 (Randomized Controlled Trial: RCT) は数十年前から変化がなく、精密医療の発展に必要な柔軟性、速さ、分析力に欠けています。企業は適切な参加者を見つけるのに苦心しており、参加者の募集、つなぎ止め、管理については言うまでもありません。このプロセスの非効率性は 新薬の発見と開発におけるコスト上昇の大きな要因であり、承認率の低さにも関係しています。
製薬会社は予測 AI モデルを新薬開発の臨床試験段階全体で、つまり設計からデータ分析までの全体で使用でき、これは次のようなことに役立ちます。
- 適切な患者を特定するために、一般利用可能なコンテンツをマイニングします。
- 試験場所のパフォーマンスをリアルタイムで評価します。
- プラットフォーム間でのデータ共有を自動化します。
- 最終報告書のためのデータを用意します。
アルゴリズムに、効果的な技術インフラストラクチャを組み合わせることによって、常時流れてくる臨床データが確実にクリーニングされ、集計され、保管され、効果的に管理されます。これで、研究者は試験で生成された膨大なデータセットを手作業で整理して分析しなくても、新薬の安全性と効能をよりよく理解できます。
新薬発見と開発における AI 導入への障壁
新薬発見プロセスでの AI の利用は拡大が続いていますが、依然として導入への障壁は存在します。
データの質
多くの業種でよく言われていることですが、データの質の低さが理由で、人工知能と機械学習の有用性が簡単に失われてしまうことがあります。新薬研究者にとっては、データの質が低ければ MedTech が信頼できなくなり、最終的には正確さ、有用性、時間節約のどの点でも従来の方法を上回ることがなくなります。
先行きの不安
多くの業種で見られる誤解の 1 つに、テクノロジがやがては人間の仕事を完全に置き換えてしまうというものがあります。製薬 産業 も例外ではありません。確かに AI は大規模なデータセットを短時間で分析できますが、熟練の人間の研究者や臨床医の代わりとなることはできません。
スキル不足
MedTech を新薬発見プロセスに導入するには、ニッチなスキルが必要です。 データをクリーンに保ち、AI が常に効果的であるようにするには、企業は従業員に技術スキルを求めるだけでなく、このプロセスの科学側も理解していることを求める必要があります。たとえば、新薬の設計、生物学、化学です。 大きな要求であり、簡単に達成できるわけではありません。
製薬業の新薬開発における AI の未来
AI は研究者のイノベーションに役立ち、臨床医が精密医療の要望に応えるのに役立ち、企業が画期的な新薬を市場に送り込むのに役立ちます。毎年、製薬会社とテクノロジ企業の間で多数のパートナーシップが誕生しており、MedTech と AI のスタートアップにも多額の資金が投じられています。
さらに、巨大製薬会社間のデータ共有も行われるようになりました。Machine Learning Ledger Orchestration for Drug Discovery (MELLODDY) は数十の加入組織間のデータ共有を促進するコンソーシアムです。MELLODDY ではブロックチェーン ベースのシステムが使用されており、企業が機密性を維持しながら専有データを共有することができます。研究者は既存のデータを利用して新薬発見プロセスをすぐに開始でき、開発期間を何年も短縮しています。
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